この記事を要約すると
- 相続財産を処分・使用すると法定単純承認となり、相続放棄が無効になる
- してはいけない行為は預貯金の引き出し・財産売却・隠匿・費用支払いの5つ
- やってしまった場合でも「知らずに処分した」等で救済できるケースがある
「親に借金があるから相続放棄したいけど、大家さんに急かされてアパートの荷物を捨ててしまった……」
「親の財布からお葬式代を出したけど、これって相続放棄できなくなるの?」
親が亡くなり、悲しむ間もなくお葬式や実家の片付けに追われる中で、「あの行動のせいで相続放棄ができなくなったらどうしよう」と不安に押しつぶされそうになっている方は非常に多くいらっしゃいます。
実は、相続放棄には「これをやってしまうと、問答無用で親の借金を背負わされる(法定単純承認)」という恐ろしい地雷がいくつも隠されています。「知らなかった」では済まされません。
この記事では、相続放棄を検討している方、すでに手続き中の方が「絶対にやってはいけない5つの行動」と、「もしやってしまった場合の救済措置」について、相続実務の専門家が分かりやすく解説します。
この記事はこんな方におすすめ
- 相続放棄を検討中または申述済みで、その後の行動に不安がある方
- 相続財産に少し触れてしまい、放棄が無効になるか心配な方
- 相続放棄後に「何をしてよくて、何をしてはいけないか」を明確にしたい方
目次
相続放棄後に財産へ触れると放棄が無効になる!法定単純承認の基本
相続放棄を決めたからといって、何をしてもよいわけではありません。
裁判所の統計によると、相続放棄の申述受理件数は年間約25万件(令和4年)にのぼり、年々増加傾向にあります。
それだけ多くの方が利用する手続きですが、放棄前後の行動を誤ると取り返しのつかない事態になります。まずは法定単純承認の仕組みをしっかり理解しておきましょう。
出典:裁判所 – 司法統計
法定単純承認とは?放棄が取り消せなくなる仕組み
法定単純承認※とは、遺産を「すべて引き継ぐ(単純承認した)」とみなされる状態のことです。
本来は本人の意思で単純承認・限定承認・相続放棄を選ぶことができます。
しかし、一定の行為をした場合は本人の意思にかかわらず、法律上「単純承認した」とみなされてしまいます。
民法921条では、法定単純承認にあたる行為として以下の3つが定められています。
■ ① 財産の処分
相続財産を売る・捨てる・使う・贈与するなど
■ ② 財産の隠匿・費消
財産を隠す・勝手に使い込むなど
■ ③ 財産目録への虚偽記載
限定承認の手続きの際に、財産の一部をわざと記載しない
①または②に該当する行為を熟慮期間中(相続放棄の申述前)にしてしまうと、その後に相続放棄の申述をしても認められなくなります。
※法定単純承認:本人の意思にかかわらず、法律上「単純承認(全財産・全負債を引き継ぐ)」とみなされる状態のこと。民法921条が根拠。
相続放棄の申述前・後でリスクがどう変わるか
相続放棄に関するリスクは、「申述前(熟慮期間中)」と「申述後(放棄受理後)」では内容が大きく異なります。
| 区分 | 概要 | 主なリスク | 注意すべき行為 |
|---|---|---|---|
| 申述前(熟慮期間中) | 相続放棄の申立てをする前 | 法定単純承認が成立し、放棄ができなくなる | 財産の処分・引き出し・費用の支払い |
| 申述後(放棄受理後) | 家庭裁判所に放棄が受理された後 | 管理義務違反のリスクが残る | 占有財産の無断処分・放置 |
申述前(熟慮期間中)のリスク
財産の処分などの行為が法定単純承認にあたると判断された場合、その後に相続放棄の申述をしても家庭裁判所に受理されません。相続放棄ができなくなると、被相続人の借金や税金の滞納をそのまま引き継ぐことになります。
申述後(放棄受理後)のリスク
相続放棄が受理された後は、財産の処分をしたとしても法定単純承認にはなりません。ただし、財産の管理義務は残ります。2023年の民法改正により、相続放棄後も「その時点で財産を占有している場合」は、次の管理者が決まるまで自己の財産と同一の注意で財産を管理する義務があります。
参考:民法第940条(相続の放棄をした者による管理)- e-Gov法令検索
※熟慮期間:相続放棄・限定承認を選択できる期間。原則として相続開始を知った日から3ヶ月以内。
法定単純承認になると借金も全額引き継ぐことになる
法定単純承認になると、被相続人の財産をプラスもマイナスもすべて引き継ぐことになります。
たとえば、被相続人に500万円の借金があった場合、単純承認になるとその500万円を相続人が返済しなければなりません。相続放棄をしようとしていた方にとっては、最も避けたい事態です。
さらに、一度単純承認(または法定単純承認)になってしまうと、撤回することはできません(民法919条)。「知らなかった」という事情があっても、原則として取り消せないため、事前の注意が非常に重要です。
参考:民法第919条(相続の承認及び放棄の撤回及び取消し)- e-Gov法令検索
※単純承認:相続財産(プラスの財産)も債務(借金・税金等の負債)もすべてを引き継ぐ相続方法。法定単純承認はこれが強制的に成立した状態。
相続放棄を考えているなら、財産には一切触れないことが鉄則です。判断に迷う場合は、行動する前に必ずご相談ください。
FAQ
Q. 「大家さんに言われて親の遺品を少し捨ててしまいました。もう放棄できませんか?」
A. 原則として「処分」にあたり放棄できなくなるリスク(法定単純承認)が高いです。
ただし、資産価値のない明らかなゴミを捨てただけであれば争える余地もあるため、すぐに専門家へご相談ください。
Q. 「相続放棄が裁判所に認められたら、実家の空き家はもう放置していいですよね?」
A. いいえ、放置は危険です! 放棄後も次の管理者が決まるまでは財産の「管理義務」が残ります。
倒壊等で近隣に被害が出た場合、損害賠償を請求される恐れがあります。
Q. 「10年以上疎遠だった父親が亡くなったと、半年後に役所からの手紙で知りました。もう3ヶ月過ぎているから借金を被るしかないですよね?」
A. 諦めるのは早いです!今すぐ動けば間に合う可能性が高いです。
相続放棄のタイムリミットである「3ヶ月」は、「親が亡くなった日」ではなく「自分が相続人になった(親が亡くなり、借金があること)を知った日」からスタートします。通知が届いたばかりなら十分に間に合います。
相続放棄後に絶対してはいけない5つの具体的な行為
相続財産への関わり方が「処分」にあたるかどうか、自信を持って判断できますか?
「これくらいは大丈夫だろう」という感覚が、思わぬトラブルを招くことがあります。ここでは、実際に問題になりやすい5つの行為を具体的に解説します。相続放棄を予定している方は、これらを確実に避けてください。
被相続人の預貯金・現金を引き出す・使う行為
最も多いトラブルのひとつが、被相続人の銀行口座からお金を引き出してしまうケースです。
「少額だから問題ないだろう」「生活費が足りなくて仕方なかった」という事情があっても、相続財産※である預貯金を処分したことに変わりはなく、法定単純承認と判断されるリスクがあります。
特に注意が必要な行為は以下のとおりです。
- 被相続人の銀行口座からATMで引き出す
- 被相続人が残した現金を生活費や借金の返済に使う
- 被相続人の口座から自分の口座へ振り込む
- 被相続人のクレジットカードを死亡後に使用する
葬儀費用は例外的に認められる場合があります。 社会的儀礼として相当と認められる範囲内の葬儀費用であれば、被相続人の財産から支出しても法定単純承認にあたらないと判断されることがあります(実務上および裁判例の傾向として)。ただし金額・状況によって判断が分かれるグレーゾーンのため、事前に専門家に相談することをおすすめします。
※相続財産:被相続人(亡くなった方)が所有していた財産すべて。預貯金・不動産・有価証券・現金・動産などが含まれる。
財産の売却・解体と「賃貸アパートの遺品整理の罠」
不動産・車などの財産を処分する行為も法定単純承認になりますが、実務で圧倒的に多い落とし穴が「賃貸アパートの解約と遺品整理」です。
【絶対にしてはいけない処分行為の例】
- 被相続人名義の土地・建物を売却する
- 被相続人の車を売る・廃車にする
- 親が住んでいた賃貸アパートの解約手続きをする
- アパートの遺品(残置物)をゴミとして捨てる・業者に撤去させる
親が亡くなった場合、大家さんから「早く部屋を片付けて退去してくれ」と強く迫られることがよくあります。
しかし、これに応じて勝手に遺品を捨てたり解約書にサインしてしまうと、法的に「財産を処分した=単純承認」とみなされ、借金を背負わされる危険性があります。
大家さんからの催促であっても、「相続放棄する予定なので手を出せません」と毅然と断る必要があります。
また、「形見分け」として時計や貴金属を親族に渡す行為も法的には「処分(贈与)」にあたります。財産的価値のない写真等を除き、持ち帰るのは絶対にやめましょう。
相続財産で税金や費用を払うと法定単純承認になる
被相続人の財産(預貯金など)を使って固定資産税や管理費などの費用を支払う行為も、法定単純承認にあたる可能性があります。
法定単純承認になりうる支払い行為の例
- 被相続人の固定資産税を相続財産から支払う
- 被相続人名義の不動産の管理費・修繕費を相続財産から払う
- 被相続人の国民健康保険料や光熱費を相続財産で支払う
これらは「財産を維持するための行為(保存行為)」にあたるようにも思えますが、相続財産を「費消(使い込む)」する行為として法定単純承認と判断されるリスクがあります。
一方で、自分自身のお金で被相続人名義の不動産の維持費を支払うことは問題ありません。重要なのは「誰のお金を使うか」です。相続財産には手をつけず、費用が必要な場合は自分の財産から支出するようにしましょう。
グレーゾーンの行為については個別の事情によって結論が変わります。不安な場合は行動前に必ず無料相談をご活用ください。
FAQ
Q. 「親の財布に数万円入っていました。お葬式代の足しにしても大丈夫ですか?」
A. 身分相応の葬儀費用であれば例外的に認められるケースもありますが、判断が難しく非常にグレーな行為です。安全に放棄したいなら「親のお金には1円も触れない」のが鉄則です。
Q. 「親の形見の時計だけ、どうしても持っておきたいのですが…」
A. 時計や貴金属を持ち帰る行為は「単純承認(処分)」とみなされる危険性が高いです。財産的価値がまったくない写真や手紙などを除き、持ち帰るのは絶対にやめましょう。
Q. 「亡くなった親の実家宛てに『固定資産税』の納付書が届きました。役所から怒られそうなので、親の通帳から払おうと思うのですが……」
A. ストップ!親の預金から税金を払うと「単純承認」とみなされる危険大です。
相続財産から支払いをしてしまうと、借金もすべて背負うことになりかねません。相続放棄をする予定であれば、役所からの通知であってもご自身で支払う必要はありません。
相続放棄後にやってしまった!そのときの対処法
「まさかそれがダメだったとは……」と気づいて焦っている方もいるかと思いますが、まずは落ち着いて状況を整理しましょう。
状況によっては法定単純承認の成立を争える場合や、専門家のサポートで解決できるケースもあります。いきなり諦める必要はありません。
財産を処分してしまっても放棄できるケースと条件
財産を処分した後でも、以下のような事情がある場合は、法定単純承認の成立を争える可能性があります。
救済が認められやすいケース
- 相続財産であると知らずに処分してしまった場合(例:自分のものだと思っていた)
- 腐敗・滅失が差し迫っていた財産をやむを得ず処分した場合
- 財産的価値がほとんどない日用品を処分した場合
相続財産と認識せずに処分した場合は、法定単純承認に必要な「処分の認識」がなかったとして争える余地があるとされています(実務上の取り扱いおよび裁判例の解釈より)。ただし、「知らなかった」という主張は事実の立証が必要です。知らなかった経緯を示す書類・証言などを収集し、家庭裁判所または専門家に状況を説明することが重要です。
また、相続放棄の申述期限(原則3ヶ月)が迫っている場合は、まず熟慮期間の延長申立てを行いながら対応を検討することが有効な手段のひとつです。
※保存行為:財産の価値を維持・保全するための行為。相続放棄を選択する前であっても、保存行為は法定単純承認にあたらないとされる。
相続放棄後に「してよいこと」との3つの判断基準
「何もしてはいけないのか」と不安になる方も多いですが、すべての行為が禁止されているわけではありません。次の3つの基準で判断してみてください。
■ 判断基準①:財産の価値を「減少・変質」させるかどうか
財産の価値をそのまま維持する行為(保存行為)は、法定単純承認にはあたりません。(中略:本文そのまま)
■ 判断基準②:「誰のお金」で支払うか
被相続人の口座・現金などの相続財産を使って費用を支払うことはアウトです。一方で、自分自身のお金で未払い費用を立て替える行為は問題ありません。
■ 判断基準③:「相続財産」か「固有財産」かを見極める
【重要】死亡保険金(生命保険)は受け取ってもOKです!
「生命保険を受け取ったら相続放棄できない」と勘違いしている方が非常に多いですが、受取人が相続人自身に指定されている死亡保険金は、その人の「固有財産」となるため、受け取っても相続放棄は可能です(※受取人が被相続人になっている等の例外を除く)。
誤解で放棄を諦めないようにしましょう。
専門家に「ワンストップ」で頼む圧倒的メリット
「もしかして法定単純承認になってしまったかも」と気づいたときは、一人で抱え込まず、できるだけ早く専門家に相談することが重要です。
相続放棄は、ただ裁判所に書類を出せば終わりではありません。「債権者(借金取り)からの督促への対応」「大家さんとの交渉」「次順位の親族への説明」など、精神的にも負担の大きいやり取りが同時に発生します。
一般的な書類作成しかできない士業事務所に頼むと、こうしたトラブル対応はすべて自分でやらなければなりません。
その点、司法書士や行政書士が在籍し、弁護士等の他士業とも連携している「相続特化のワンストップ窓口」であれば話は別です。申述手続きのサポートはもちろん、債権者や大家さんからの理不尽な要求に対する「正しい断り方・対応方法」まで、総合的なアドバイスが可能です。期限(3ヶ月)に追われる焦りから解放されるためにも、総合力のある窓口を選ぶことをおすすめします。
FAQ
Q. 「親の未払いのスマホ代や家賃の請求書が届きました。私のお金で立て替えて払うのはOKですか?」
A. あなた自身の(固有の)お金で支払う分には問題ありません。 絶対にやってはいけないのは「親の預金を引き出して支払うこと」です。
Q. 「期限の3ヶ月ギリギリです!今からでも間に合いますか?」
A. 急いで家庭裁判所に「期間伸長の申立て(期限の延長)」を行うことで間に合う可能性があります。1日でも期限を過ぎるとアウトなので、一刻も早く専門家に駆け込んでください。
Q. 「親に借金があるとは知らず、実家に放置されていたボロボロの古い車を数万円で業者に引き取ってもらいました。もう手遅れですか?」
A. 事情によっては救済(放棄)が認められる余地があります。
「明らかに無価値な廃車同然のものを処分した」「借金が全くないと思い込んでいた」などの場合、「財産を処分する意思はなかった」として家庭裁判所に事情を説明し、放棄が認められたケースもあります。自己判断で諦めず、すぐに専門家にご相談ください。
まとめ:相続放棄後に大切な2つのルールと今すぐすべきこと
最後に:不安で押しつぶされそうなら、一人で抱え込まず今すぐご相談ください
「自分のやってしまった行動で、放棄できなくなるか知りたい」
「借金取りや大家さんから連絡が来ていて、どう対応していいか分からない」
そうお悩みの方は、ネットの情報だけで自己判断せず、まずは私たちの無料相談をご活用ください。
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「もしかしてアウトかも…」と不安な状態でも全く問題ありません。
手遅れになる前に、まずは現状の頭の整理をするつもりで、お気軽にお声がけください。
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この記事の監修者

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