【保存版】親が亡くなった後にやってはいけないこと5選|預金・遺品・相続放棄の注意点

親が亡くなった後にやってはいけないこと5選。預金・遺品・遺言書の扱いを確認する相続の注意点

親が亡くなると、葬儀の手配や支払い、実家の片付けなど、慣れないことが一度に重なります。「先に済ませておこう」と思って動いたことが、後から相続の問題になる場合もあります。

特に気を付けたいのは、親のお金や遺品を動かすこと、内容を理解しないまま書類に署名すること、借金の確認を先送りすることです。相続放棄を検討する可能性がある方は、財産を処分する前に確認しましょう。

ただし、すべての支払いや片付けが禁止されるわけではありません。この記事では、法律上避けるべき行為と、事情を確認してから進めたい行為を分けて説明します。

この記事を要約すると

  • 親の預金や価値のある遺品を処分すると、相続放棄に影響する場合があります。
  • 封印のある遺言書の開封や、内容不明の書類への署名は慎重に進めましょう。
  • 財産と借金の調査を早めに始め、相続放棄の期限が近いときは相談を優先しましょう。

この記事をおすすめしたい方

  • 親が亡くなり、支払いや片付けをどこまで進めてよいか迷っている方
  • 借金があるか分からず、相続放棄も検討している方
  • 「親が亡くなった後 やってはいけないこと」「相続放棄 注意点」というキーワードで記事をお探しの方
避けたい行動 先にすること
預金を自分のために使う 財産を区別し、支出の必要性と使途を確認する
遺品・書類をまとめて処分する 写真や一覧を残し、価値と内容を確認する
封印のある遺言書を自分で開ける 現状のまま保管し、検認の要否を確認する
内容不明の書類に署名・押印する 書類の写しを受け取り、効果を理解する
借金調査と相続放棄の判断を先送りする 期限を確認し、調査と相談を始める

1. 親の預金を自分のお金のように引き出して使う

1-1. 「自分も相続人だから自由に使える」と考えない

親名義の口座にお金が残っていても、亡くなった後に子が自由に使ってよいということにはなりません。使途や金額を説明できなければ、ほかの相続人との争いにもつながります。

また、民法第921条は、相続財産の全部または一部を処分した場合などに、相続を単純承認したものとみなすと定めています。これは、借金を含めて相続を引き受けた扱いになるということです。相続放棄の可能性があるときは、預金の解約や私的な支出を独断で進めないようにしましょう。

1-2. 葬儀費用を払っただけで、必ず相続放棄ができなくなるわけではない

一方で、「親の預金を葬儀に使ったら、必ず相続放棄できない」と決め付けるのも適切ではありません。

寺本𠮷男『Q&A 単純承認・限定承認・相続放棄の法律実務』は、葬儀費用等への支出について、金額の相当性などを踏まえて判断する必要があることを解説しています。葬儀費用という名目だけで、どのような支出でも認められるわけでもありません。

すでに支払った場合は、出金日、金額、支払先、目的、領収書を整理してください。記録を残せば問題がなくなるという意味ではありませんが、事実関係を確かめるうえで重要です。

2. 遺品や重要書類を確認せず捨てる・売る

2-1. 片付けの前に、財産と借金の手掛かりを残す

実家の片付けでは、通帳、契約書、借入れに関する通知、請求書、保険証券などが見つかることがあります。「古い書類だから」と捨てると、後から調べる手掛かりを失ってしまいます。

まずは書類を一か所にまとめ、封筒の差出人や日付も残しましょう。スマートフォンやパソコンも、初期化する前に、相続手続きに必要な情報がないか確認することが大切です。利用には契約条件やアクセス権限の確認も必要です。

2-2. 思い出の品でも、経済的な価値があるものは慎重に扱う

時計、貴金属、美術品などを売却したり、家族で分けたりする行為は、相続財産の処分として問題になる場合があります。

前掲書も、形見分けについて、品物の経済的価値によって扱いが異なり得ることを説明しています。通常のごみの処分と、価値のある財産の処分は分けて考えましょう。

売却や分配を急ぐ前に、写真を撮り、品名と保管場所を一覧にしてください。相続放棄を検討している場合は、その一覧を相談時に持参すると状況を伝えやすくなります。

3. 封印のある遺言書を自分で開ける・隠す

3-1. 見つけたら、まずそのまま保管する

自宅で封印のある遺言書を見つけたときは、内容が気になっても自分で開封せず、現状のまま保管してください。民法第1004条第3項は、封印のある遺言書を、家庭裁判所で相続人等の立会いの上で開封することとしています。

検認が必要な遺言書は、死亡を知った後、遅滞なく家庭裁判所へ提出して検認を請求します。

検認は、遺言書の状態を確認し、偽造や変造を防ぐための手続きです。遺言が有効かどうかを決める手続きではありません。詳しくは裁判所の「遺言書の検認」で確認できます。

3-2. 検認が不要な遺言もある

公正証書遺言や、法務局の保管制度を利用した自筆証書遺言については、検認が不要です。「遺言書なら全部同じ手続き」と考えず、種類や保管方法を確認しましょう。

すでに開けてしまった場合も、開封しただけで遺言が当然に無効になるわけではありません。封筒と遺言書を残し、必要な検認手続きを確認してください。自分に不利な内容でも、隠したり捨てたりしてはいけません。

4. 内容が分からない書類に署名・実印を押す

4-1. 「手続きに必要だから」だけで押印しない

ほかの相続人から遺産分割協議書を渡されても、内容を理解しないまま署名・押印するのは避けましょう。

確認したいのは、誰が相続人なのか、どの財産を誰が取得するのか、ほかに調査すべき財産や借金がないかという点です。説明が分からない場合は、まず写しを受け取り、確認する時間を取りましょう。

4-2. 「何ももらわない」と「相続放棄」は違う

「私は財産をもらわない」と遺産分割協議書に記載しても、それだけで家庭裁判所の相続放棄をしたことにはなりません。

前掲書は、この違いを独立した項目で解説しています。家族の間で借金の負担者を決めても、それだけで債権者からの請求を免れるとは限りません。借金を引き継がないことが目的なら、相続放棄の手続きを含めて確認する必要があります。

債権者から支払約束の書類などが届いた場合も、内容を確認してから対応してください。相続人間で争いがある場合や、債権者との交渉が必要な場合は、弁護士への相談を検討しましょう。

「遺産放棄」と相続放棄の違いを詳しく読む

5. 借金の確認と相続放棄の判断を後回しにする

5-1. 原則3か月の期限を確認する

相続放棄は、原則として「自己のために相続の開始があったことを知った時」から3か月以内に、家庭裁判所へ申述する必要があります(民法第915条・第938条)。家族への口頭の意思表示だけでは手続きになりません。

起算点は、死亡日から一律に数えるものではありません。ただし、親の死亡と自分が相続人になったことをその日に知った場合は、通常、その時点を基準に期限を考える必要があります。借金の通知が来るまで待ってよいという意味ではありません。

5-2. 調査が間に合わない場合は、期限前に期間伸長を検討する

財産や借金の調査をしても判断材料がそろわないときは、家庭裁判所に熟慮期間の伸長を申し立てる方法があります。調査中だからといって、自動的に期限が延びるわけではありません。

裁判所の相続放棄ガイダンスでも、調査をしても判断資料が得られない場合の期間伸長が案内されています。

すでに3か月が過ぎたと思われる場合も、いつ何を知ったのかによって検討が必要です。自分で「もう無理だ」と決めず、死亡を知った日、借金を知った日、これまでに行った支払いや処分を整理して相談しましょう。

相続放棄の期間伸長の申立て方法・必要書類を確認する

6. 迷ったときは「保全・記録・相談」から始める

何もかも止める必要はありません。まず、財産と書類を失わないように保管し、見つかったものや支出を記録しましょう。漏水など、放置すると損害が広がる問題まで先送りしないことも大切です。

相談時は、親の死亡日、死亡と相続を知った日、相続人の関係、判明した財産と借金、すでに行った支払いや処分をメモにまとめると伝えやすくなります。書類作成などの相続手続きは司法書士、争いや交渉は弁護士、税務は税理士と、困り事に応じて相談先を選びましょう。

7. よくある質問

7-1. 親の預金から葬儀費用を払いました。相続放棄はできませんか?

支払っただけで必ずできなくなるとは限りません。支出額、使途、事情などを確認する必要があります。領収書や出金記録を残し、相続放棄の期限内に相談してください。

7-2. 遺品整理をすると相続放棄ができなくなりますか?

遺品整理という名称だけで決まるものではありません。通常のごみ処分と、価値のある遺品の売却・分配は区別が必要です。何をどう扱うのかを確認してから進めましょう。

7-3. 遺言書を開封してしまったら無効ですか?

開封しただけで当然に無効になるわけではありません。ただし、封印のある遺言書の裁判所外での開封には過料の規定があります(民法第1005条)。封筒も含めて保管し、検認の要否を確認してください。

7-4. 遺産をもらわなければ、借金も相続しませんか?

遺産分割協議で財産を取得しなくても、それだけで借金の相続を免れるわけではありません。相続放棄とは手続きも効果も異なります。

7-5. 借金が分からないまま期限が近づいたらどうすればよいですか?

調査状況を整理して早めに相談し、期限前に家庭裁判所への期間伸長の申立てを検討してください。調査中というだけでは期限は延びません。

7-6. すでに預金を使ったり遺品を売ったりした場合は?

行ったことを隠さず、対象、日付、金額、使途、残金や品物の所在を整理してください。さらに処分を重ねる前に、相続放棄への影響を個別に確認しましょう。

参考文献・法令

  • 寺本𠮷男『Q&A 単純承認・限定承認・相続放棄の法律実務―判断ポイントと事例・書式』(日本法令、2024年)。第6章Q1・Q2、第9章Q1・Q2・Q7・Q8、第10章Q3を参照。BUSINESS LAWYERS LIBRARYの書籍情報。
  • e-Gov法令検索「民法」:第915条・第921条・第938条・第1004条・第1005条。

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司法書士・行政書士 梅澤徹

この記事の監修者

司法書士・行政書士 梅澤 徹(うめざわ とおる)

あいりん司法書士事務所 代表。神奈川県司法書士会(第2259号)・神奈川県行政書士会(第15090451号)所属。相続手続き3,000件超をサポート。プロフィールを見る 無料相談のご案内

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