相続放棄をした方が良い場合
一般的に相続財産の内訳が預金等のプラスの相続財産よりもローン等のマイナスの相続財産の方が多いことが明確であり、相続人が不利益を被ることが明らかな場合、または相続争いに関与したくない場合等には相続放棄を検討される相続人様が多いです。
近年の相続放棄の受理件数
全国の家庭裁判所で受理された「相続放棄の申述の受理」件数は約23万5,000件。2016年から2020年までの5年間で受理件数は年々増加しています(2020年の司法統計年報より)。
近年の相続放棄の却下件数
裁判所が公表している司法統計によると、相続放棄の「却下率(※)」は下記の通り、毎年0.2%前後で推移しています。相続放棄を申し立てれば原則却下されませんが、相続放棄を却下されるケースがあることはご承知おきください。
相続放棄の却下とは
相続放棄が受理されず、相続放棄を行えないことを表します。なお相続放棄の申し立てが却下された場合、原則二度と相続放棄の申し立てをすることはできません。
相続放棄の却下率
相続放棄をされる相続人様は統計上一定数存在します。借金やローン、不明な相続財産がある場合は是非一度相続放棄をご検討ください。
相続放棄のメリットとデメリット
相続放棄には利点と欠点があります。わかりやすく端的にまとめましたのでご確認ください。
相続放棄のメリット
相続放棄をすれば相続人が不利益を被ることを予防できる利点があります。 相続でプラスの財産を得られるつもりが反対に被相続人の債務を背負うことになってしまっては、相続人にとって不本意でしかないでしょう。 また、遺産分割等の相続人間の争いから回避できることも相続放棄の利点として挙げられます。
相続放棄のデメリット
財産調査を十分に行なっていない段階で相続放棄を行うと損をする危険性があります。そのような危険性を孕んでいることは欠点と言えるでしょう。また、相続放棄を行うことで相続人が変わります。その場合、マイナスの財産が移行し、他の相続人の負担となることも考えられます。
相続放棄を行う場合の費用
相続放棄を家庭裁判所に申し立てる際には必ずかかる費用とかからない費用がありますが、わかりやすくまとめましたのでご確認ください。
- 収入印紙代:800円
- 郵便切手代:裁判所により異なる
- 司法書士等に依頼する場合の費用
相続放棄を行う場合の必要書類
家庭裁判所で相続放棄を申し立てる場合、次のような書類が必要です。
また個々の事案により必要な書類が異なりますのでご確認ください。
- 相続放棄申述書(相続放棄の意思表示を記載した書類)
- 被相続人の住民票除票又は戸籍附票
- 申立人の戸籍謄本
その他の必要な書類
上記は相続放棄を申し立てる場合に共通する書類ですが、相続状況により必要な書類が異なりますのでご確認ください。
申立人が配偶者の場合
被相続人死亡記載のある戸籍(除籍・改製原戸籍)謄本
申立人が子供や孫(直系卑属)の場合
被相続人死亡記載のある戸籍(除籍・改製原戸籍)謄本、申立人が孫の場合本来の相続人の死亡記載のある戸籍(除籍・改製原戸籍)謄本
申立人が配偶者の場合
申立人が両親や祖父母(直系尊属)の場合
被相続人の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍・改製原戸籍)謄本
被相続人の子供で死亡者がいる場合:その子供の出生時から死亡時までの戸籍(除籍・改製原戸籍)謄本
被相続人の直系尊属に死亡者がいる場合:その者の死亡記載のある戸籍(除籍・改製原戸籍)謄本
申立人が兄弟姉妹、甥姪の場合
被相続人の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍・改製原戸籍)謄本
被相続人の子供で死亡者がいる場合:その子供の出生時から死亡時までの戸籍(除籍・改製原戸籍)謄本
被相続人の直系尊属の死亡記載のある戸籍(除籍・改製原戸籍)謄本
申立人が甥姪の場合:本来の相続人の死亡記載のある戸籍(除籍・改製原戸籍)謄本
相続放棄の全体像
必要書類や費用の準備を行った後は、家庭裁判所に申述書等を提出し、申し立てを行います。
相続放棄の申述手続きまでの作業時間の目安としては簡易な事案の場合、実働2時間程度かと考えます。
郵送による手続きも可能
相続放棄の手続きを行う際、必要な書類をすべて揃えていれば郵送でも可能です。
但し、裁判官が審理するにあたり面接等を求めてきた場合、裁判所へ直接足を運ぶ必要があります。
年金や生命保険金の受取り
たとえ相続放棄を選び、被相続人が所有していたすべての相続財産を放棄した場合でも、生命保険金や遺族年金は受け取ることが可能です。
生命保険金や遺族年金は相続人に直接支払われる点で、相続財産とは異なるからです。
受取人が指定されている生命保険金と、受給権者を遺族と定めている遺族年金は、受取人と受給権者各々の財産として認められます。