【保存版】相続登記は1人でできる?保存行為で申請できる範囲と注意点

保存行為として相続人の1人が全員分の相続登記を申請する際の必要書類と期限への対応

「親の家の名義を変えたいのに、きょうだいが協力してくれない」「相続登記の期限が気になるけれど、遺産の分け方が決まらない」。このような場合、相続人の1人から進められる手続きがあります。

遺言や遺産分割による別の取得関係がなく、法定相続分どおりの登記をする場合は、相続人の1人が全員のために申請できます。これが「保存行為として行う相続登記」です。

ただし、1人で申請できることと、自分だけの名義にできることは違います。全員分の権利を正しく登記する手続きであり、他の相続人の取り分をなくすことはできません。

この記事を要約すると

  • 法定相続分による相続登記は、共同相続人の1人から全員のために申請できます。他の相続人からの委任状は不要です。
  • 自分の持分だけを先に登記する方法ではありません。申請人にならなかった相続人には、登記識別情報が通知されない点にも注意が必要です。
  • 遺産分割が難しく期限への対応を急ぐときは、相続人申告登記も選択肢です。共有名義にする登記とは目的・効果が異なります。

この記事をおすすめしたい方

  • 他の相続人の協力が得られず、不動産の名義変更が止まっている方
  • 遺産分割が決まらないまま、相続登記の期限が近づいている方
  • 保存行為としての相続登記、法定相続分による登記というキーワードで記事をお探しの方

相続登記の進め方で迷っている方へ

遺言・相続人・登記の状況に合う手続きと、必要書類を確認します。手元にある登記事項証明書や戸籍をご用意ください。

電話で無料相談を予約する:0120-470-055
受付9:00〜21:00・年中無休

オンライン相談を予約する

1. 保存行為としての相続登記とは?

1-1. 全員の権利を保つため、1人から申請できる登記です

保存行為とは、財産の現状や権利を維持するための行為です。共有物については、民法第252条第5項が、各共有者は保存行為をすることができると定めています。

相続人が複数いる場合、相続財産は原則として共有になります(民法第898条)。遺産分割前の法定相続分による権利関係を登記に反映することは、共同相続人全員の権利を保つ手続きとして、1人から行うことができます。

つまり、申請する人を1人にすることはできても、その人が他の相続人の取り分を自由に決められるわけではありません。根拠となる共有のルールは、e-Gov法令検索の民法第252条・第898条で確認できます。

1-2. 「家族の代理」とは区別しましょう

保存行為として申請する相続人は、他の相続人から代理権をもらって全員の代理人になるわけではありません。このため、他の相続人からの委任状なしに申請できます。

一方、その申請人が司法書士などに代理申請を頼む場合には、その依頼について委任状が必要になります。「他の相続人の委任状が不要」という説明を、「誰に任せても委任状がいらない」と読み替えないことが大切です。

委任状そのものの書き方や家族に頼む場合の注意点は、相続登記の委任状を家族に頼む方法で詳しく説明しています。

2. 自分の持分だけ登記できる?できること・できないこと

2-1. 共同相続人全員の法定相続分を登記します

例えば、母が亡くなり、相続人は長女・二女・長男の3人、遺言はなく、遺産分割もしていないとします。法定相続分は各3分の1です。

この場合、長女1人から、3人が各3分の1を所有する内容の相続登記を申請できます。しかし、「まず長女の3分の1だけを登記し、残りは母の名義のままにする」という申請はできません。

希望すること 保存行為としての法定相続分による登記でできる?
1人から全員分を法定相続分どおりに登記する できます
自分の相続持分だけを先に登記する できません
話合いなしに、自分だけの所有名義にする できません
他の相続人の持分を勝手に少なくする できません
登記後、不動産全体を1人の判断で売る この登記だけではできません

遺言、すでに成立した遺産分割、相続放棄などがある場合には、それを踏まえて登記方法を判断します。法定相続分による申請を、どの相続でも使える便法と考えないようにしましょう。

2-2. 登記しても、遺産分割の話合いは残ります

法定相続分で登記したことは、最終的な遺産の分け方について合意したことを意味しません。その後の遺産分割で1人が不動産を取得することになれば、その結果を反映する登記を行います。

「名義変更が終わったから、分け方も解決した」とは限りません。全体の売却を考えている場合は、誰が取得して売るのか、共有者全員で売るのかまで見据えて進める必要があります。

3. 他の相続人の同意や書類は必要?

3-1. 委任状は不要でも、全員分の確認資料は必要です

保存行為として法定相続分による登記をする場合、他の相続人の同意書や委任状は不要です。遺産分割をしていないので、遺産分割協議書も用意しません。

ただし、申請する1人の戸籍・住民票だけで足りるわけではありません。相続人全員と各持分を確定し、全員の住所も確認する必要があります。

主な資料 確認する内容
登記事項証明書 対象不動産、現在の名義人、登記上の住所
被相続人の出生から死亡までの戸籍・除籍等 相続関係と死亡の事実
相続人全員の戸籍等 相続人であること。相続関係に応じて追加資料が必要
被相続人の住民票の除票・戸籍の附票等 登記上の名義人と被相続人が同一人であること。事案によって必要
相続人全員の住所を証する情報 住民票の写しなど。一定の方法による添付省略もあります
固定資産評価証明書・課税明細書等 課税価格、登録免許税の計算に必要な評価額

法定相続情報一覧図の利用などにより、戸籍等の添付に代えられる場合があります。2026年10月5日以降の申請では国籍等の申出にも対応する必要があり、日本国籍の方は相続人の戸籍で国籍の証明も足りる場合があります。

「1人で申請できる」と「相続人の調査を省略できる」は別です。書類と申請書は、法務局の法定相続分による相続登記の記載例・注意事項で確認してください。

3-2. 申請人にならなかった人には登記識別情報が通知されません

登記識別情報は、将来の売却などの登記で本人確認に使う、従来の権利証に相当する情報です。1人だけが申請人となる場合、申請人にならなかった相続人には通知されません。

通知されないから持分を失うわけではありませんが、将来、その人の持分を移転するときには、登記識別情報を提供できない場合の本人確認手続きが必要になることがあります。全員が申請人となる方法も含め、将来の売却予定まで考えて判断しましょう。

あわせて読みたい / 相続登記相続登記の委任状を家族に頼む方法代理を頼む場合の委任状と、保存行為として申請する場合の違いを確認できます。

4. 登記する前に相続人が亡くなったら?

最初の相続登記が終わる前に、相続人がさらに亡くなることを「数次相続」といいます。この場合、すでに亡くなった相続人の名義を経由する登記が必要になることがあります。

これは、亡くなった人へ新しく財産を渡す手続きではありません。その人が生前に相続した権利と、その後の相続を、順番に登記へ反映するためです。不動産登記法第62条は、申請できる立場の人に相続が生じた場合に、その相続人が登記を申請できることを定めています。

ただし、途中の名義を経由する必要があるかは、各相続の相続人数や、遺産分割の有無・成立時期などで変わります。「最後は1人が取得するから、必ず1回で登記できる」とは判断できません。

数次相続では、亡くなった順番を日付入りで整理し、すでに成立した遺産分割がないか確認してください。何代にもわたる相続は書類が増えるため、法務局の相続登記案内も参照し、司法書士へ登記の順序を相談すると進めやすくなります。

5. 期限が心配なら、相続人申告登記との違いを確認

5-1. 相続登記の基本的な期限は「取得を知った日から3年以内」です

2024年4月1日から、相続登記の申請は義務になりました。不動産登記法第76条の2に基づき、相続によって不動産を取得したことを知った日から3年以内に申請するのが基本です。

2024年4月1日より前に相続による取得を知っていた未登記不動産は、原則として2027年3月31日までの対応が必要です。正当な理由なく義務に違反すると、10万円以下の過料の対象になる可能性があります。

期限への対応には、法定相続分による登記のほか、次の相続人申告登記という方法もあります。法務省の相続登記義務化Q&Aで、自分の状況に応じた期限を確認しましょう。

5-2. 相続人申告登記は、共有名義にする手続きではありません

相続人申告登記は、不動産登記法第76条の3に基づき、自分が登記名義人の相続人であることなどを申し出る制度です。期限内の相続登記が難しい場合に、基本的な申請義務を履行するために利用できます。

比較項目 法定相続分による相続登記 相続人申告登記
主な目的 全員の所有権・持分を登記に反映する 申出対象者の基本的な申請義務に対応する
他の相続人の範囲・持分の確定 必要 不要
登録免許税 原則必要。土地には一定の免税措置あり かかりません
手続後の権利関係 全員の法定相続分が登記される 所有権や持分は確定・公示されません
後で遺産分割が成立した場合 結果を反映する登記が必要 別途、遺産分割に基づく登記が必要

自分だけが相続人申告登記をしても、他の相続人全員の義務まで果たしたことにはなりません。他の人の分もまとめる場合には、連名や代理申出など、対象者に応じた方法を取ります。

また、相続人申告登記だけでは、そのまま売却登記へ進めません。遺産分割後の登記義務を代わりに果たす制度でもないため、すでに話合いが成立している場合は注意してください。遺産分割が成立した場合は、その成立日から3年以内に結果に応じた登記を申請します。法定相続分で登記済みの場合は、分割によってその持分を超える所有権を取得した人が対象です。詳しくは法務省の相続人申告登記の案内をご覧ください。

法定相続分による相続登記と相続人申告登記の目的・権利関係・登録免許税の比較
全員の持分を登記する方法と、相続人であることを申し出る方法は効果が異なります。

あわせて読みたい / 相続人申告登記相続人申告登記の期限・必要書類・注意点分割が難しいときに、基本的な申請義務に対応する方法を詳しく確認できます。

6. 費用と申請前の確認ポイント

6-1. 1人から申請しても、登録免許税が自分の持分だけになるわけではありません

法定相続分で全員分を登記する場合、登録免許税は原則として、今回移転する不動産の固定資産税評価額の合計に0.4%を掛けて計算します。申請人が1人でも、自分の持分だけを課税対象にすることはできません。

例えば、今回相続で移転する土地・建物の評価額の合計が1,500万円で、免税等がない場合、登録免許税は6万円です。戸籍や証明書の取得費用、郵送費、依頼する場合の司法書士報酬は別にかかります。

また、相続した人が登記前に亡くなり、その人を名義人とする土地の登記には、2027年3月31日まで免税措置があります。建物には、この土地向けの免税措置は適用されません。

2026年11月1日に確認した法務局の案内では、根拠条項は「租税特別措置法第84条の2の2第1項」です。古い記事の条文番号をそのまま写さず、法務局の相続登記に関する免税措置で適用条件と申請書への記載を確認してください。

6-2. 相談前は、この5項目を整理しましょう

  1. 登記事項証明書で、現在の所有者と対象不動産を確認する。
  2. 遺言・遺産分割・相続放棄の有無を確認する。
  3. 相続人と、亡くなった方の死亡日を整理する。
  4. 取得を知った日と、登記・申告の期限を確認する。
  5. 売却予定、最終的に取得したい人、他の相続人との連絡状況をメモする。

戸籍や権利関係が整理でき、申請書を自分で作成できる場合は、本人申請を検討できます。申請先は不動産の所在地を管轄する法務局です。申請書と添付資料を提出し、不備の連絡があれば補正したうえで、完了後の名義・持分と受領書類を確認します。管轄の調べ方は相続登記はどこの法務局?も参考にしてください。一方、相続人が多い、数次相続がある、必要書類が集まらない場合は、司法書士への相談が役立ちます。

遺産分割の交渉や相続人間の紛争は弁護士、相続税の申告などは税理士の担当です。法務局の手続案内は申請方法等の情報提供であり、分け方の交渉や申請書の代筆をするサービスではありません。

登記方法や相談先で迷う場合は、手元の登記事項証明書、戸籍、課税明細書を分かる範囲で準備し、あいりん司法書士事務所の無料相談をご利用ください。すべての書類を集め終えてから相談する必要はありません。

7. まとめ:1人で進める前に「何のための登記か」を確認

保存行為としての相続登記は、他の相続人の委任状がなくても、全員の法定相続分を登記できる方法です。ただし、共有の解消や、遺産分割の合意まで実現する手続きではありません。

まずは遺言・相続人・登記の状況を確認し、「全員の権利を登記する」「最終的な取得者の名義にする」「期限内の基本的な義務に対応する」のどれが必要かを整理しましょう。その目的に合わせて、遺産分割に基づく登記や相続人申告登記も比較することが大切です。

相続登記の進め方で迷っている方へ

遺言・相続人・登記の状況に合う手続きと、必要書類を確認します。手元にある登記事項証明書や戸籍をご用意ください。

電話で無料相談を予約する:0120-470-055
受付9:00〜21:00・年中無休

オンライン相談を予約する

執筆:司法書士 梅澤 徹 | プロフィール
法令・手続情報確認日:2026年11月1日

8. よくある質問

8-1. 他の相続人が反対していても、1人で相続登記できますか?

遺言や遺産分割等による別の取得関係がなく、法定相続分どおりに全員分を登記する場合は、保存行為として1人から申請できます。ただし、自分の単独名義にしたり、他の相続人の持分を減らしたりすることはできません。相続人や権利関係そのものに争いがある場合は、申請前に専門家へ相談してください。

8-2. 自分の相続持分だけを先に登記できますか?

この方法で、亡くなった方の名義から自分の持分だけを相続登記することはできません。申請する人が1人でも、共同相続人全員の法定相続分を登記する必要があります。

8-3. 他の相続人の委任状や印鑑証明書は必要ですか?

相続人の1人が保存行為として法定相続分による登記を申請する場合、他の相続人の委任状や、遺産分割協議書のための印鑑証明書は不要です。ただし、全員の相続関係や住所を証する資料等は必要です。申請人が司法書士などへ代理申請を委任する場合は、別途委任状を用意します。

8-4. 1人で申請すると、全員に登記識別情報が届きますか?

届きません。法務局の記載例では、申請人にならなかった相続人には通知されないとされています。その人の持分がなくなるわけではありませんが、将来の売却等で必要になる本人確認手続きに関係します。

8-5. 相続人申告登記だけで不動産を売れますか?

売却に必要な相続登記の代わりにはなりません。相続人申告登記は所有権・持分を公示する制度ではなく、売却するには別途、権利関係を反映した相続登記を行う必要があります。

8-6. 相続人が登記前に亡くなっても手続きできますか?

できます。相続した権利は次の相続人に引き継がれます。ただし、死亡の順序、各相続の相続人、遺産分割の成立状況により、必要な登記と書類が変わります。亡くなった相続人の名義を経由する登記が必要になることもあるため、戸籍と日付を整理して確認してください。

司法書士・行政書士 梅澤徹

この記事の監修者

司法書士・行政書士 梅澤 徹(うめざわ とおる)

あいりん司法書士事務所 代表。神奈川県司法書士会(第2259号)・神奈川県行政書士会(第15090451号)所属。相続手続き3,000件超をサポート。プロフィールを見る 無料相談のご案内

【最低価格保証】
当公式サイトからのご予約が1番お得です!

電話で相談する

実績豊富な専門家が無料でお話を伺います phone 0120-470-055
  • 土日祝日も対応
  • 受付9:00-21:00

オンライン相談を予約する

Zoom・Google Meetで
ご相談いただけます
\日時を選んで予約/
代表司法書士梅澤

専門スタッフ
がお答えします