【保存版】事業承継で後継者がいないときは?5つの選択肢と相談前の準備

後継者がいない場合の事業承継・第三者への譲渡・廃業を比較するコラムのアイキャッチ

「子どもには継ぐ意思がない。頼りにしていた従業員にも断られた。この会社は、自分の代で閉じるしかないのだろうか」。長年続けた事業ほど、従業員や取引先を思い、結論を出せないことがあります。

後継者がいなくても、第三者への譲渡や外部人材の登用など、事業を残す方法はあります。ただし、候補者が見つかることと、株式・資金・保証・契約を引き継げることは別です。廃業も含めて比較し、経営者が判断できるうちに準備を始めましょう。引退直前まで待たず、候補者探しと資料整理を並行することが大切です。

この記事は、後継者が決まっていない中小企業の経営者と家族に向けたものです。株式会社を中心に、個人事業との違いも補足します。情報確認日:2026年10月25日。

この記事を要約すると

  • 親族・従業員への承継、外部経営者の登用、第三者への譲渡、計画的な廃業を比較します。
  • 社長交代だけでは、株式の所有や経営者保証の問題は解決しません。
  • 決算書・株主名簿・借入と保証の資料を集め、公的窓口と専門家へ早めに相談します。

この記事をおすすめしたい方

  • 子どもに会社を継ぐ意思がなく、次の経営者を探している方
  • 従業員の雇用や取引を残しながら引退したい方
  • 事業承継 後継者がいない、後継者不在というキーワードで記事をお探しの方

1. 後継者がいないときは「人・株式・事業」を分けて考える

最初に整理したいのは、誰が経営するのか、誰が株式を持つのか、どの事業を残すのかという三つの問題です。親族に候補者がいなくても、従業員や社外の人に範囲を広げる余地があります。

中小企業庁の事業承継の案内でも、親族内承継、従業員承継、社外への引継ぎなどが整理されています。以下の五つは、記事内で比較しやすくした対応の選択肢です。廃業自体は事業承継ではありませんが、一部の設備や技術を他者へ引き継ぐ場合があります。

後継者不在のときに検討する五つの選択肢
選択肢 検討しやすい状況 先に確認すること
親族の候補を改めて確認 子以外の親族も含め、意思を確認していない 本人の希望、適性、家族間の財産配分
役員・従業員への承継 事業を理解し、経営を担う意思のある人がいる 株式取得資金、育成期間、借入と保証
外部経営者の登用 社外に経営を任せ、所有と経営を分けたい 権限、報酬、株式の将来の持ち主
第三者への譲渡(M&A) 他社や創業希望者への引継ぎを検討できる 買い手の信用、雇用、代金、保証解除
計画的な廃業・一部資源の引継ぎ 継続条件が整わず、負担を整理して引退したい 債務、雇用、原状回復、清算費用
後継者がいない場合の親族内承継、従業員承継、外部経営者、第三者への譲渡、計画的な廃業の五つの選択肢
後継者がいないときに比較したい五つの選択肢。雇用・費用・株式・保証も併せて確認します。

2. 事業を残す四つの方法と、計画的な廃業

2-1. 親族に意思を確認する。ただし、承継を押し付けない

「子どもが継がない」ことと「親族の誰も候補にならない」ことは同じではありません。兄弟姉妹、おい・めいなども候補になり得ますが、血縁だけで適任とは判断できません。本人の生活設計、仕事への関心、経営を担う意思を確かめます。

親族内承継を考える場合も、後継者へ株式を集めることと、ほかの家族への財産配分を一緒に検討します。継ぐ意思がない人を説得し続けて時間を失うより、社内外の候補も並行して探す方が現実的です。

2-2. 役員・従業員へ引き継ぐ

現場や顧客をよく知る役員・従業員は、有力な候補です。ただし、仕事ができることと、資金繰り・採用・契約・経営判断まで引き受けたいことは別です。「社長になってほしい」と頼む前に、担う役割と責任を具体的に伝えます。

株式会社では、後継者が株式を取得する資金も課題になります。株価を税理士等と確認し、資金調達や引継ぎ時期を検討しましょう。株式を安く渡せばすべて解決するわけではなく、税務への影響も確認が必要です。段階的に仕事を任せる場合は、旧経営者がいつ、どの権限を手放すのかも決めます。

2-3. 外部の経営者を迎え、所有と経営を分ける

家族が株式を持ちながら、社外の人材に経営を任せる方法もあります。会社を売却する方法とは異なり、経営者の登用だけでは株式の所有者は変わりません。経営方針、報酬、決裁権限、任期や退任時の扱いを明確にします。

取締役の選任は原則として株主総会で行い、代表取締役を定める方法は会社の機関設計や定款によって異なります(会社法第329条・第349条・第362条)。肩書きを変えるだけで済ませず、必要な決議や登記を確認してください。

経営を外部へ任せても、オーナーが持つ株式の相続対策は別に必要です。将来、株式が複数の相続人に分かれる可能性も踏まえ、遺言や財産配分を整理します。

あわせて読みたい / 遺言書遺言書の書き方|自筆証書・公正証書の違いと注意点株式を誰へ残すか考える方へ。遺言の方式と、財産を特定するときの注意点を解説します。

2-4. 第三者へ株式や事業を譲渡する

M&Aは大企業だけのものではありません。同業者、取引先、別分野の企業、創業を希望する個人などが引継ぎ先になる可能性があります。ただし、買い手が見つかることや希望価格で売れることは保証されません。

中小機構の後継者人材バンクの案内では、創業希望者と後継者不在の会社・個人事業主を引き合わせる仕組みが紹介されています。自社の規模や業種で利用できる支援を、地域の事業承継・引継ぎ支援センターへ確認できます。

株式会社のM&Aでは、主に「株式譲渡」と「事業譲渡」を区別します。株式譲渡は株主が株式を売る方法で、会社そのものは存続します。事業譲渡は会社等が事業の全部または一部を譲る方法で、引き継ぐ財産や契約を個別に整理します。中小企業庁のM&A手法の説明も参考になります。

個人事業には自社の「株式」がないため、株式譲渡は使いません。店舗、設備、取引、屋号など何を引き継ぐかを検討します。いずれの方法も、許認可や重要契約の変更条項などを確認し、「名前を変えれば全部引き継げる」と考えないことが大切です。

2-5. 廃業を計画し、残せる資源を検討する

承継先が見つからない、収益改善の見通しが立たない、健康上の理由で継続が難しい場合には、廃業も選択肢になります。会社全体の承継が難しくても、設備、技術、顧客への供給機能など一部を他者へ引き継げるか検討します。

株式会社では、株主総会の決議による解散など、会社法第471条に定める手続きがあります。解散後も、清算の目的の範囲で会社は存続します(会社法第476条)。営業をやめれば借金や会社が自動的になくなるわけではありません。

債務の返済、従業員への対応、賃貸物件の原状回復、在庫・設備の処分、税務と登記の費用を見積もります。支払いが難しい場合は通常の清算で終えられるとは限らないため、資金が尽きる前に弁護士等へ相談してください。個人事業の廃業も、届出だけで債務が消えるものではありません。

3. 候補者が見つかっても、先に確かめたい三つのこと

3-1. 株式・不動産・契約を、誰が持っているか

社長がすべての株式を持っているとは限りません。株主名簿、定款、過去の株式移動の資料を照合します。譲渡制限株式では、会社法第136条・第139条に基づく承認の手続きと定款の確認が必要です。

工場や店舗の土地・建物が経営者個人名義なら、会社の株式を譲渡しても、その不動産まで一緒に移るわけではありません。継続して貸すのか、売るのか、相続で誰が取得するのかを別に決めます。契約や登記の名義を確認するだけでも、引継ぎの抜けを発見できます。

事業の全部などを譲渡する場合は、会社法第467条の株主総会承認の要否も確認します。個別の対象・規模や例外で手続きが変わるため、契約前に専門家へ資料を見せましょう。

3-2. 個人保証が、いつ、どう解除されるか

社長を交代したり会社を売却したりしても、旧経営者の個人保証が自動的に外れるわけではありません。買い手が「後で外します」と言うだけでは不十分です。保証先の金融機関と、解除・変更の条件、時期、必要書類を具体的に確認します。

中小企業庁の経営者保証の案内では、保証解除の最終判断は金融機関に委ねられると説明されています。売却契約を結ぶ前の早い段階で、借入先ごとの保証と担保を一覧にしてください。

3-3. 代金・雇用・仲介費用を、書面で比較する

希望売却額だけでなく、代金の支払時期、分割払いや後払いの条件、従業員の処遇、旧経営者が残る期間も比較します。株式譲渡では会社の雇用契約は原則として存続しますが、将来の雇用条件まで保証されるわけではありません。事業譲渡で雇用を移す場合は、労働条件等を説明し、従業員本人の真意による承諾を得ることが重要です。厚生労働省の事業譲渡等指針も確認してください。

M&A仲介会社等へ依頼するときは、着手金、中間金、成功報酬、最低報酬、報酬の計算対象、途中解約後の条件を確認します。双方から依頼を受ける仲介か、自分側を支援するFAかも確かめましょう。中小企業庁の中小M&Aガイドラインは、手数料や利益相反、経営者保証などの確認に役立ちます。

会社名や財務資料を候補先へ開示する前には、開示先・範囲・秘密保持の扱いを確認します。条件に納得できなければ、契約を急がず、別の専門家や公的窓口に意見を求めてください。

4. 相談前にそろえる資料と、最初の三つの行動

初回相談までに、すべての書類を完成させる必要はありません。手元にあるものを集め、不明な部分は「不明」と書いて持参すれば、確認の順番を相談できます。

事業承継の初回相談に持参したい資料
資料 確認すること
直近数期の決算書・申告書、直近の試算表 収益、資産・負債、足元の資金繰り
定款・登記事項証明書・株主名簿 会社の仕組み、株主、譲渡制限
借入一覧・契約書・保証や担保の資料 返済額、保証人、金融機関との調整事項
不動産・賃貸借・主要取引・許認可の資料 名義、承継時の同意や届出、利用継続の条件
従業員の状況と事業の説明メモ 人員、必要資格、強み、経営者しかできない仕事
家族構成・遺言・個人財産の資料 株式や事業用不動産の相続への備え

従業員や顧客の個人情報は、最初から候補先へ一式送る必要はありません。まず概要で説明し、相談先と必要な開示範囲を決めます。

  1. 引退したい時期と、守りたいものを書き出す。雇用、屋号、取引先との関係、家族の生活資金など、優先順位を付けます。
  2. 候補者と資金の現状を整理する。意思確認済みか、未確認かを区別し、資金繰りに余裕がある期間も確認します。
  3. 公的窓口へ初回相談を予約する。会社を売ると決める前でも、選択肢を比較する段階で相談できます。

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5. 相談先は、事業承継の窓口と専門家を組み合わせる

全体の選択肢を整理したい場合は、国が設置する事業承継・引継ぎ支援センターが相談先になります。相談は無料ですが、紹介された民間M&A支援機関や専門家の業務まで無料とは限りません。予約方法、必要資料、費用が生じる段階を確認しましょう。

そのうえで、資金調達や保証は金融機関、株式の評価・税金は税理士、契約の法的な検討・交渉や紛争は弁護士、会社の役員変更・解散等の登記や相続登記は司法書士へ相談します。労務は社会保険労務士等、許認可は所管行政庁や行政書士等との確認が必要になることもあります。

司法書士へは、会社と個人の名義の整理、必要な登記、相続で引き継ぐ不動産などを相談できます。買い手探し、税額計算、相手方との交渉まで一人の専門家がすべて担当するとは限らないため、担当範囲と費用を確かめてください。

あいりん司法書士事務所へ会社の登記や経営者個人の相続に関する相談を希望される方は、定款、登記事項証明書、株主名簿、不動産の資料など、手元にある資料とともにお問い合わせください。対応できる内容を確認し、税務・契約交渉などは適切な専門家への相談をご案内します。

あいりん司法書士事務所の相談案内を見る

6. まとめ:後継者探しと、引き継げる状態づくりを並行する

後継者がいない場合も、親族・従業員への承継、外部経営者の登用、M&Aなどを比較できます。継続が難しい場合は、計画的な廃業や一部資源の引継ぎも検討します。

最初にすることは、売却価格を決めることではなく、希望・株式・借入と保証を整理することです。家族の相続対策も含め、資料を持って早めに相談すれば、次に調べるべきことが具体的になります。

7. 後継者がいない場合の事業承継Q&A

7-1. 子どもが継がなければ、廃業するしかありませんか?

廃業だけではありません。ほかの親族や役員・従業員への承継、外部経営者の登用、第三者への株式・事業の譲渡を検討できます。候補者の意思、資金、引継ぎ条件を確認して比較します。

7-2. 従業員に株式を買うお金がない場合はどうしますか?

株式の評価額や取得方法、資金調達を税理士・金融機関等と検討します。経営を先に任せる場合も、株式の持ち主と将来の移転計画を整理します。低額で譲るだけで解決すると考えず、税務への影響も確認してください。

7-3. 小さな会社や個人事業でも、引継ぎ先を探せますか?

相談できます。事業承継・引継ぎ支援センターや後継者人材バンクでは、小規模事業者や個人事業主も支援の対象になります。ただし、引継ぎ先が見つかることや成約は保証されません。

7-4. 会社を売却すれば、社長個人の保証もなくなりますか?

自動的にはなくなりません。金融機関等との間で保証解除や変更の手続きが必要です。買い手との約束だけで判断せず、契約前から保証先へ相談し、条件・時期・実際の解除を確認します。

7-5. 後継者が決まる前に経営者が亡くなったらどうなりますか?

株式会社では、経営者個人が持つ株式等の相続と、会社の経営体制を整える手続きが別に必要になります。相続しただけで代表取締役に就任するわけではありません。個人の債務や保証も確認し、財産を処分する前に専門家へ相談してください。

7-6. 事業承継の相談には、どのくらい費用がかかりますか?

事業承継・引継ぎ支援センターの相談は無料ですが、民間の仲介、税務、契約、登記などの費用は別です。依頼する業務、実費、報酬の計算方法、最低報酬、不成立や解約時の費用を見積書等で確認してください。

監修:司法書士 梅澤 徹

司法書士・行政書士 梅澤徹

この記事の監修者

司法書士・行政書士 梅澤 徹(うめざわ とおる)

あいりん司法書士事務所 代表。神奈川県司法書士会(第2259号)・神奈川県行政書士会(第15090451号)所属。相続手続き3,000件超をサポート。プロフィールを見る 無料相談のご案内

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