相続した実家の登記事項証明書を確認したら、銀行の抵当権が残っていた。「親の借金を返さなければならないのか」「この家を売ることはできるのか」と、不安に感じる方もいるでしょう。
抵当権が登記されていても、現在も借金が残っているとは限りません。すでに完済していて、登記だけが残っている場合もあります。
まず確認したいのは、誰の借金なのか、残高はいくらか、団体信用生命保険で返済されるのかという3点です。この記事では、相続した物件に抵当権が残っていた場合の確認事項と、抹消までの手続きを説明します。
この記事を要約すると
- 登記に抵当権があっても、借金が残っているとは限りません。
- 債務者・残高・団信を確認し、完済後に抵当権抹消登記を進めます。
- 家を相続する人と借金を負担する人、相続登記と抹消登記を分けて確認します。
この記事をおすすめしたい方
- 相続した家の登記に抵当権が残っていて不安な方
- 住宅ローンの返済や団信、売却の手続きを知りたい方
- 相続した不動産の抵当権、抵当権抹消というキーワードで記事をお探しの方
相続でお困りの方に
手元の資料をもとに、必要な手続きをご案内します。
ご相談は無料です。手続きのご依頼費用は別途お見積もりします。
目次
1. 抵当権とは、不動産を借金の担保にする権利
1-1. 返済ができなくなったとき、不動産から債権を回収する仕組み
抵当権は、借金が返済されなくなった場合に、担保となっている不動産から優先的に返済を受けるための権利です。民法第369条に定められています。
身近な例が、住宅ローンを利用して家を購入するケースです。購入した土地や建物に、銀行や保証会社を抵当権者とする登記がされます。
その後、ローンの返済ができなくなると、抵当権者は抵当権を実行し、競売などによる不動産の売却代金から債権を回収します。
不動産の所有者が亡くなっても、そのことだけで抵当権は消えません。ただし、所有者が亡くなったからといって、家族がすぐに家から出ていかなければならないわけでもありません。返済状況を調べ、相続や保険、登記の手続きを進めていきます。
1-2. 登記事項証明書の「債権額」は、現在の借金残高ではない
登記事項証明書の「乙区」には、抵当権者、債務者、債権額などが記載されています。ただし、ここに書かれた債権額は、現在の借金残高を示すものではありません。
たとえば、債権額が3,000万円でも、実際の残高は500万円かもしれません。すでに全額返済している場合もあります。
毎月の返済に合わせて、登記上の債権額が減る仕組みではないためです。借金の残高は、金融機関が発行する残高証明書や、返済に関する明細で確認しましょう。
2. 相続したら「債務者・残高・団信」を確認する
2-1. 土地・建物の登記事項証明書とローン関係の書類を集める
まず、土地と建物の最新の登記事項証明書を取得してください。あわせて、自宅にあるローン契約書、返済予定表、銀行からのお知らせ、完済したときの書類を探します。
確認の際に気を付けたいのが、不動産の見落としです。土地だけを確認していて、建物の抵当権を見落とすことがあります。私道の持分など、敷地以外の不動産が同じ借金の担保になっていることもあるため、対象となる不動産を一通り調べましょう。
2-2. 借入先の金融機関に、相続が発生したことを伝える
資料が確認できたら、借入先の金融機関に電話などで連絡し、借りていた方が亡くなったことを伝えます。
金融機関から、相続人の確認に必要な書類や、今後の手続きについて案内があります。連絡する方の氏名や関係、書類の郵送先などを伝え、必要に応じて戸籍や本人確認書類を提出してください。
確認したい内容は、次のとおりです。
| 確認事項 | 確認する理由 |
|---|---|
| 債務者は誰か | 故人の借金か、会社や親族の借金かを区別するため |
| 現在の借金残高と延滞の有無 | 相続後の負担や、急いで対応すべき状況かを把握するため |
| 団信の加入者・保障内容 | 保険で返済される範囲を確認するため |
| 連帯債務・連帯保証の有無 | 借入れ以外の責任も含めて確認するため |
| 完済日と抹消書類の有無 | 抵当権を消す登記の進め方を確認するため |
借金の名義が会社や親族であれば、不動産を相続しただけで、その借金全額を個人として返済する義務が当然に生じるわけではありません。一方、返済が滞れば、その不動産に抵当権が実行される可能性があります。故人が保証人にもなっていた場合は、保証債務についても確認が必要です。
3. すでに完済している場合は、抵当権抹消登記を進める
3-1. 借金を返しても、登記上の抵当権は自動では消えない
通常の抵当権は、担保している借金を全額返済すれば、法律上は消滅します。しかし、登記簿に記録された抵当権は自動では消えません。
金融機関から抵当権を消すための書類を受け取り、法務局へ「抵当権抹消登記」を申請することで、登記上も抹消されます。
なお、登記に「根抵当権」と記載されている場合は、通常の抵当権とは仕組みが異なります。借入残高がゼロになっただけでは消滅しない場合があるため、金融機関や司法書士に確認してください。
3-2. 完済したときの書類が見つからない場合
「ローンは払い終わっているはずなのに、抹消書類が見つからない」ということもあります。この場合は、まず借入先の金融機関へ問い合わせましょう。
完済から長い年月がたっていると、当時の記録を調べたり、銀行の合併・商号変更を確認したりする必要があり、対応に時間がかかることもあります。書類によっては、同じものを再発行できず、別の方法を検討する場合もあります。
どこに問い合わせればよいか分からないときや、書類の案内を受けても判断が難しいときは、司法書士へ相談してください。
3-3. 個人から借りたお金の抵当権が残っている場合
抵当権抹消登記は、原則として、不動産の所有者と抵当権者が協力して行う共同申請です。
ところが、昔、個人から借りたお金の抵当権では、債権者の住所が分からない、すでに亡くなっているといった事情で、連絡が取れないことがあります。
このような場合でも、状況に応じて抹消するための手続きを検討できます。登記が古いという理由だけで消せるわけではありませんが、連絡が取れないからと諦めず、司法書士へ相談しましょう。
4. 住宅ローンを返済中なら、団体信用生命保険を確認する
4-1. 団信の保険金で、住宅ローンが返済される場合がある
団体信用生命保険は「団信」と略されることが多く、住宅ローンの返済中に加入者が亡くなった場合などに、保険金でローンが返済される仕組みです。
ただし、保障内容は一律ではありません。加入者、保障割合、免責事由のほか、ペアローンや連帯債務の契約内容によって、返済される範囲が異なります。
まず取扱金融機関へ連絡し、団信に加入しているか、保障の対象になるかを確認しましょう。加入状況が分からない場合も、その旨を伝えて調べてもらいます。
4-2. 死亡の連絡だけで終わらず、保険金請求の手続きを確認する
金融機関へ死亡の連絡をするだけで、保険金請求まで自動的に完了するとは限りません。必要書類と提出方法、保険金が支払われるまでの返済の取扱いを確認してください。
住宅金融支援機構の案内でも、本人が亡くなった際には、取扱金融機関へ連絡して団信の加入状況を確認するよう案内しています。
保険金で住宅ローンが完済された場合も、抵当権の登記は自動では消えません。金融機関から書類を受け取り、抹消登記を進めます。
4-3. 団信で返済されない借金は、相続による負担を確認する
団信で返済されない借金は、原則として相続人が引き継ぐことになります。民法第896条では、相続人は故人の財産に関する権利義務を原則として承継すると定められています。
相続人が複数いる場合、通常の金銭債務は、原則として法定相続分に応じて承継されます。ただし、連帯債務などは契約内容や債務の性質によって取扱いが異なります。
ここで注意したいのは、遺産分割協議で「長男が家とローンを引き継ぐ」と決めても、それだけで他の相続人が銀行に対する返済義務を免れるわけではないことです。
他の相続人を返済義務から外し、借金を一人にまとめるには、金融機関の承諾を得た債務引受けなどの手続きが必要です。家を取得する人を決める際は、借金の扱いも金融機関と相談してください。
5. 相続登記と抵当権抹消登記は、別の手続き
5-1. 所有者を変更する登記と、担保を消す登記を区別する
相続登記は、不動産の名義を故人から相続人へ変更する手続きです。抵当権抹消登記は、担保として登記された抵当権を消す手続きです。
相続登記をしただけで抵当権が消えるわけではなく、抵当権を抹消しただけで相続による名義変更が終わるわけでもありません。
故人の生前に完済していた場合は、相続登記より先に抹消を申請できることがあります。一方、死亡後に完済した場合は、原則として相続登記を先に行います。手続きの順序は、完済や解除の日付、登記の状況を確認して判断します。甲府地方法務局の案内でも、この違いが説明されています。
5-2. 抵当権抹消登記に必要な書類と費用
一般的には、金融機関から受け取る弁済証書や解除証書などの登記原因証明情報、登記識別情報または登記済証、委任状などを使用します。相続の状況によって、戸籍などの追加書類も必要になります。
抵当権抹消の登録免許税は、原則として不動産1個につき1,000円です。土地1筆と建物1棟なら、通常は2,000円です。土地が複数筆に分かれている場合は、その数に応じて計算します。
司法書士へ依頼する場合は、報酬や証明書の取得費用などが別途かかります。相続登記も依頼する場合は、その費用と分けて見積もりを確認してください。
必要書類や申請方法は、法務局の抵当権抹消手続の案内も参考になります。
6. 抵当権が付いた物件でも、売却はできる?
抵当権が付いていても、返済や抹消の条件を整えれば売却できます。一般的には、売却代金で借金を返済し、決済時に抵当権を抹消します。
ただし、売却代金が借金残高に足りない場合は、不足額の準備や金融機関との調整が必要です。売却に伴う仲介手数料などの費用も含めて、返済できるかを確認しましょう。
抵当権を抹消できる見通しが立たないまま契約すると、引渡しができないなどのトラブルにつながるおそれがあります。売却を検討するときは、不動産会社だけでなく、金融機関や司法書士とも事前に相談してください。
7. 司法書士に相談するときに準備したい資料
相談時には、次の資料を見つかった範囲で用意しましょう。
- 土地・建物の登記事項証明書
- ローン契約書、返済予定表、返済明細
- 金融機関からの通知
- 完済時に受け取った書類、抵当権の抹消書類
あわせて、亡くなった日、相続開始を知った日、相続人の関係、家を残したいのか売却したいのかという希望も伝えると、相談がスムーズです。すべての資料がそろうまで待つ必要はありません。
登記の準備や必要書類は司法書士、団信や返済条件は金融機関が主な相談先です。債権者とトラブルになっている場合や、代理交渉を依頼したい場合は、弁護士への相談が適しています。
実家に住み続けるか迷っている方は、相続した実家に住むメリット・デメリットの解説も参考にしてください。
相続でお困りの方に
手元の資料をもとに、必要な手続きをご案内します。
ご相談は無料です。手続きのご依頼費用は別途お見積もりします。
8. よくある質問
8-1. 抵当権が付いたままでも、相続登記はできますか?
はい。抵当権が付いていることだけで、相続登記ができなくなるわけではありません。ただし、名義を変更しても、抵当権や借金が消えるわけではありません。
8-2. 親が完済していた場合、登記が残っているだけで返済を求められますか?
完済が確認できれば、登記が残っていることだけを理由に、同じ借金を再び返す必要はありません。金融機関へ完済の事実と抹消書類を確認しましょう。
8-3. 抵当権抹消登記に期限はありますか?
通常の抵当権抹消登記には、一般的な申請期限はありません。ただし、長期間放置すると書類の紛失などで手続きが複雑になる場合があります。書類がそろったら早めに申請してください。
8-4. 団信を使えば、抵当権も自動で消えますか?
いいえ。団信の保険金でローンが完済されても、登記上の抵当権は自動では消えません。金融機関から必要書類を受け取り、抵当権抹消登記を申請します。
8-5. 古い抵当権の債権者と連絡が取れません。抹消は諦めるしかありませんか?
諦める必要はありません。債権者の所在や相続人の調査、通常の共同申請以外の手続きなどを検討できる場合があります。登記事項証明書と手元の資料を持って、司法書士へ相談してください。
8-6. 借金が多く、相続するか迷っています。何から始めればよいですか?
財産と借金の全体を調べ、相続放棄も含めて検討します。相続放棄は、原則として自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内に、家庭裁判所へ申述する必要があります。調査に時間がかかる場合は期間の伸長を申し立てる方法もあるため、期限前に相談してください。詳細は、裁判所の相続放棄の案内で確認できます。
相続放棄を検討している場合は、不動産の売却や相続財産からの返済を自己判断で進めず、先に専門家へ相談してください。




