この記事を要約すると
- 相続放棄した土地は次順位の相続人に移り、全員が放棄すると最終的に国庫に帰属する
- 土地を占有していた場合は放棄後も管理義務が残り、放置すると損害賠償リスクがある
- 2023年施行の相続土地国庫帰属制度を使えば、条件次第で土地を国に引き取ってもらえる
「親の田舎の土地や、古くなった空き家を相続してしまった……」
「売れない、貸せない、自分も住まない。毎年の固定資産税や草刈りの手間だけがかかる『負動産』を手放したい」
このように、利用価値のない土地を抱え、相続放棄を検討している方は急増しています。
しかし、「家庭裁判所で相続放棄さえすれば、明日から土地と完全に縁が切れる」と思っているなら要注意です。
実は、土地の状況によっては放棄した後も「管理義務」が残り、台風で屋根が飛んで近所に迷惑をかければ、損害賠償を請求されるリスクがあります。
また「全員が放棄すれば国が引き取ってくれる」というのも、実務上は大きな誤解です。
この記事では、相続放棄した土地が最終的にどこへ行くのか、どうすれば草取りやご近所トラブルの恐怖から完全に解放されるのか、法改正の最新ルールと「実務のリアルな裏側」を徹底解説します。
この記事はこんな方におすすめ
- 相続放棄した後、土地がどこへいくのか知りたい方
- 放棄後も土地の管理義務が残るか確認したい方
- 相続人が全員放棄した場合の土地の扱いを知りたい方
目次
相続放棄した土地が「誰のものになるか」基本ルール
相続放棄をすると、その人は「はじめから相続人ではなかった」という扱いになります。では、放棄した後に土地はどこへいくのでしょうか。放棄した瞬間から土地の行方がどう変わるか、順を追って確認していきましょう。
相続放棄した瞬間、土地の権利は誰に移るのか
相続放棄が認められると、民法939条により「初めから相続人でなかった」ものとみなされます。土地の権利は自動的に「次の相続人」に移ります。
参考:民法第939条(相続の放棄の効力) – e-Gov法令検索
ただし注意したいのが、「放棄と同時に特定の人に所有権が移るわけではない」という点です。放棄によって土地が宙に浮いた状態になり、次の相続人が確定するまでの間は権利関係が不安定になります。
また、土地は「相続財産」として存在し続けるため、誰かが管理しなければならないという問題も生じます。「放棄=即解放」とはならないのが、土地相続の難しいところです。
※相続放棄:家庭裁判所に申述書を提出し、相続の権利をすべて放棄する手続きのこと。財産も借金も一切引き継がなくなる
次順位の相続人がいる場合の土地の行方
相続人には法律で定められた優先順位があります。
一人が放棄した場合、その分は同順位の残りの相続人が引き継ぎます。同順位の全員が放棄した場合は、次の順位に移ります。
あなたが相続放棄を考えているなら、放棄した後に土地の相続権が「誰に移るのか」を事前に確認しておくことが、トラブル防止のために欠かせません。
| 相続順位 | 相続人 |
|---|---|
| 第1順位 | 子ども(孫・ひ孫へと代襲相続※) |
| 第2順位 | 親・祖父母などの直系尊属 |
| 第3順位 | 兄弟姉妹(甥・姪へと代襲相続※) |
※配偶者は常に相続人になります。
たとえば子どもが全員放棄すると、次は親や祖父母に相続権が移ります。
さらに親や祖父母も全員放棄すると、兄弟姉妹へと移っていきます。
自分が放棄した場合、次の順位の親族に事前に連絡しておくことが大切です。
突然「あなたが相続人です」と知らせが届くとトラブルになりやすいためです。
参考:民法第887条(子及びその代襲者等の相続権) – e-Gov法令検索
※代襲相続:相続人がすでに亡くなっている場合に、その子どもが代わりに相続権を引き継ぐこと
相続人全員が放棄したら土地はどうなるか
相続人全員が放棄した場合、土地は「相続財産法人※」となります。
この段階では誰のものでもない状態です。
その後、利害関係人(債権者など)や検察官の申立てにより、家庭裁判所が「相続財産清算人※」を選任します。
裁判所の司法統計によると、相続放棄の申述受理件数は増加傾向にあり、令和4年(2022年)には約26万件に上っています。土地の管理に困る相続人が増えていることが、この数字からもうかがえます。
相続財産清算人は土地を含む相続財産を管理・清算し、最終的に残った財産を国庫に帰属させます。
全員が放棄した場合でも「土地が自動的に消える」わけではなく、清算のプロセスを経て国のものになります。このプロセスには数ヶ月〜1年以上かかることもあります。
※相続財産法人:相続人が全員放棄した場合などに、相続財産そのものが法律上の独立した主体として扱われる状態のこと
※相続財産清算人:家庭裁判所が選任する相続財産の管理・清算を担う人のこと。2023年の民法改正で「相続財産管理人」から名称が変更された
FAQ
Q. 相続放棄するとどうなる?
A. 初めから相続人ではなかったとみなされ、財産も負債も一切引き継ぎません。
Q. 放棄後に土地の所有権は即座に移る?
A. 即座には移らず、次の相続人が確定した時点で移転します。
Q. 全員放棄後の土地の行方は?
A. 相続財産清算人の清算手続きを経て、最終的に国庫に帰属します。
相続放棄後も続く土地の管理義務と損害リスク
「放棄したからもう関係ない」と思いがちですが、土地を占有していた場合は放棄後も管理義務が課されることがあります。
どんな条件で管理義務が残るのか、放置するとどんなリスクがあるのかを解説します。
| 状況 | 管理義務 | 対応 |
|---|---|---|
| 放棄前から土地を占有・管理していた | あり(清算人就任まで継続) | 最低限の安全管理を継続する |
| 放棄前から土地を占有・管理していない | なし | 特に対応不要 |
放棄後も管理義務が残る3つの条件
2023年4月1日施行の改正民法(民法940条※)により、相続放棄後の管理義務のルールが明確化されました。現在は「占有している場合に限り」管理義務が続くとされています。
参考:民法第940条(相続の放棄をした者による管理) – e-Gov法令検索
管理義務が残る代表的な3つのケースを確認しましょう。
①実際に土地を管理・占有していた場合
放棄前から草刈りや見回りなど土地の管理を自分で行っていた場合、相続財産清算人が就任するまでの間は管理義務が続きます。
②土地上の建物の鍵を持っている場合
建物の鍵を所持し、実質的に土地・建物を管理している状態も「占有」とみなされます。土地は使っていなくても、建物との関係で占有が認定されるケースがあります。
③放棄前から継続的に土地を利用していた場合
畑として耕作していた、駐車場として使っていたなど、継続的な利用関係がある場合も管理義務が生じます。
逆に言えば、土地を占有・管理していない状態であれば、放棄と同時に管理義務は生じません。自分が関与していたかどうかをきちんと確認することが重要です。
※民法940条:相続放棄をした者の財産管理義務を定めた条文。2023年4月の改正で「占有している場合」に管理義務が限定されることが明確化された
管理を怠ると損害賠償も!放置リスクの実例
管理義務があるにもかかわらず土地を放置すると、思わぬ損害賠償を求められる可能性があります。土地を放棄した後もこんな落とし穴があるとは、知らなかった方も多いですよね。
たとえば以下のような事例が想定されます。
- 斜面の土地が崩れて隣地の建物や車に被害を与えた
- 放置した建物が倒壊し、通行人がけがをした
- 雑草や樹木が隣地に越境し、撤去費用を請求された
民法717条(工作物責任※)や709条(不法行為責任※)に基づき、損害賠償を請求されるリスクがあります。「自分のものではない」という意識が油断につながりがちですが、管理義務がある以上は最低限の安全管理が必要です。
(工作物責任については、裁判所の判断において「占有者が損害を防ぐために必要な措置を講じなかった場合は免責されない」という立場が確立されており、放棄後の管理義務違反にも同様の解釈が及ぶとされています。)
参考:民法第717条(土地の工作物等の占有者及び所有者の責任) – e-Gov法令検索
参考:民法第709条(不法行為による損害賠償) – e-Gov法令検索
「自分は放棄したから関係ない」と思い込む前に、占有の有無を専門家と一緒に確認されることをおすすめします。まずは無料相談をご活用ください。
※民法717条(工作物責任):土地の工作物(建物・塀・擁壁など)の欠陥によって損害が生じた場合に、占有者や所有者が賠償責任を負うことを定めた規定
※民法709条(不法行為責任):故意または過失によって他人に損害を与えた者は、賠償責任を負うという民法の基本原則
管理義務が消えるタイミングはいつか
管理義務が消えるタイミングは、相続財産清算人が選任されて土地の管理を引き継いだ時点です。清算人が就任するまでの間は、たとえ放棄していても管理を続ける義務があります。
| 管理義務が終わるタイミング | 内容 |
|---|---|
| 次の相続人が相続を承認したとき | 土地が次の相続人のものになった時点で終了 |
| 相続財産清算人が就任したとき | 家庭裁判所の選任後、清算人が管理を引き継いだ時点で終了 |
「いつ管理義務が終わるか」を確認しないまま放置することは避けてください。
管理義務が続いている間に事故が起きると、法的責任を問われる可能性があります。
なお、相続財産清算人の選任には申立費用(実費・予納金※)がかかるため、事前に見積もりを確認しておくことをおすすめします。
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※予納金:家庭裁判所に申立てを行う際に、手続きの費用として事前に納付するお金のこと。実際にかかった費用と精算される
FAQ
Q. 放棄後に管理義務はある?
A. 土地を占有していた場合、相続財産清算人の就任まで管理義務が続きます。
Q. 放置した土地で損害が出たら?
A. 管理義務がある場合、損害賠償責任を負う可能性があります。
Q. 管理義務が消えるのはいつ?
A. 次の相続人の承認または相続財産清算人の就任時に終了します。
誰も相続しない土地を国に渡す2つの方法
相続人全員が放棄した場合、最終的に土地は国庫に帰属しますが、そのルートは2つあります。
従来からある「相続財産清算人を通じたルート」と、2023年に施行された「相続土地国庫帰属制度」です。それぞれの特徴を解説します。
| 方法 | メリット | デメリット |
|---|---|---|
| 相続財産清算人ルート | ・全員放棄後に手続きが進む・特定の費用負担なし(財産から賄われる) | ・時間がかかる(数ヶ月〜1年以上)・予納金が必要なケースがある |
| 相続土地国庫帰属制度 | ・特定の土地だけ国に渡せる・相続放棄不要 | ・要件審査があり却下リスクがある・負担金(原則20万円)が必要 |
相続財産清算人の選任から国庫帰属までの流れと「塩漬け」の現実
相続人全員が放棄した場合、最終的に土地は国庫に帰属しますが、「放棄すれば自動的に国が引き取ってくれる」というのは実務上、非常に大きな誤解です。
国庫に帰属させるには、家庭裁判所に「相続財産清算人」の選任を申し立てる必要がありますが、その流れと現実にかかる費用は以下の通りです。
①相続財産清算人の選任申立てと「高額な予納金」
家庭裁判所に選任の申立てを行います。
ここで立ちはだかるのが「予納金」の壁です。
これは清算人の報酬や経費としてあらかじめ裁判所に納めるお金ですが、遺産が「売れない土地」ばかりの場合、申立人が自腹で予納金を納める必要があります。
実務上、この予納金は100万円前後に上るケースも決して珍しくありません。
②債権者への公告・弁済
選任された清算人が、債権者がいないか官報で公告し(2ヶ月以上)、負債の清算を行います。
③残余財産の国庫帰属
清算手続きを終え、残った土地がようやく国庫に帰属します。
手続き全体には数ヶ月〜1年以上かかります。
【最も注意すべき「塩漬け」問題】
もし、誰も自腹を切ってまで高額な予納金を払いたがらず、清算人の申立てを行わなかったらどうなるのでしょうか?
答えは、「誰のものにもならず、国にも引き取られないまま、永遠に放置(塩漬け)される」です。
全員が放棄しても手続きを進めなければ、土地はずっと宙に浮いたまま存在し続けるという厳しい現実があります。
当事務所のような、司法書士・行政書士・宅建士が連携しているワンストップ事務所であれば、法的手段の前に「独自のルートで買い取ってくれる不動産業者はないか」といった査定・売却の検討からスタートできます。
万が一売れなくても、国庫帰属や相続放棄の代理手続きまで一つの窓口で完結できるため、最も損をしない「土地の手放し方」をご提案可能です。
※官報:国が発行する公式な機関紙のこと。法的な公告(告知)をする際に使用される
2023年施行!国庫帰属制度の「負担金20万円」に潜む隠れコスト
もう一つのルートが、2023年にスタートした「相続土地国庫帰属制度」です。一度相続した後でも、要件を満たせば特定の土地だけを国に引き取ってもらえます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 申請手数料 | 1筆あたり1万4千円 |
| 負担金 | 原則20万円(農地・森林は別途計算) |
| 審査期間 | 申請から数ヶ月〜半年程度 |
表を見ると「原則20万円の負担金で手放せるなら安い!」と思うかもしれません。しかし、実務上これだけで済むことは稀です。国に引き取ってもらうためには厳しい審査があり、審査をクリアするための「隠れコスト」が重くのしかかります。
- 建物の解体費(約100万〜数百万円):空き家などの建物が残っていると申請できません。自費で更地にする必要があります。
- 境界確定の測量費(約30万〜80万円):隣地との境界が不明確な土地は引き取ってもらえません。専門家(土地家屋調査士)に依頼し、隣人の立ち会いのもと境界を確定させる必要があります。
つまり、負担金20万円に加えて事前の準備費用がかかり、結果的に100万〜200万円の持ち出しになるケースが多発しています。
「国に返すにも高額な費用がかかるなら、専門家(宅建士など)のネットワークを活用して、タダ同然でも不動産会社や近隣の方に引き取ってもらった方が安く済んだ」というケースも珍しくありません。制度に飛びつく前に、全体でいくらかかるかを冷静に判断することが重要です。
国庫帰属制度で却下される土地の3つのパターン
相続土地国庫帰属制度は便利な制度ですが、すべての土地が対象になるわけではありません。
法務局の審査で却下される主なパターンを確認しておきましょう。
①空き家など「建物」が残っている土地
建物が残っている土地は原則として申請できません。解体・撤去してから申請する必要があります。
未登記の建物が残っているケースでも同様です。
②権利関係が複雑な土地
抵当権などの担保権が設定されている土地、境界が不明な土地、他人の利用が予定されている土地(通路・水路・用悪水路など)は申請できません。
事前に境界確定や担保権の抹消が必要です。
③崖地や土壌汚染など「管理が困難」な土地
崖地、土壌汚染のある土地、廃棄物が埋まっている土地など、国が通常の管理コスト以上の費用をかけなければならない土地は却下されます。
傾斜が30度以上の斜面が含まれる土地なども対象外になることがあります。
申請前に対象の土地が要件を満たすかどうかを司法書士に確認することをおすすめします。
費用をかけて申請したものの却下されるという事態を防ぐためです。
FAQ
Q. 国庫帰属制度とは?
A. 相続した土地を国に直接引き取ってもらえる2023年施行の制度です。
Q. 申請費用はいくらかかる?
A. 申請手数料1万4千円と負担金(原則20万円)が必要です。
Q. 建物付きの土地は申請できる?
A. 建物がある土地は申請できません。事前に解体・撤去が必要です。
まとめ:相続放棄した土地は3ヶ月以内の確認で将来が変わる
この記事では、相続放棄した後に土地がどうなるかについて解説しました。
- 放棄した土地は次順位の相続人に移り、全員が放棄した場合は相続財産清算人を経て国庫に帰属する
- 土地を占有・管理していた場合は、放棄後も清算人就任まで管理義務が続く
- 2023年施行の国庫帰属制度を使えば、条件を満たす土地を国に直接引き取ってもらえる
「放棄すれば終わり」と思い込んで放置すると、管理義務の問題や損害賠償リスクが残ったままになります。
相続放棄には死亡を知った日から3ヶ月以内という期限があるため、判断を先送りにすると選択肢が狭まってしまいます。
「このまま放置すれば、子どもや孫の代に負動産を押し付けることになる……」
そう分かっていても、何から手を付ければいいか分からず途方に暮れてしまいますよね。
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この記事の監修者

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