この記事を要約すると
- 不動産の名義変更に必要な書類は、遺言・協議・法定相続の3パターンで異なる
- 全パターン共通の書類は5点、申請書類と合わせて基本の7点をおさえよう
- 戸籍謄本の取得先や有効期限、法定相続情報証明制度の活用法も解説
「不動産を相続したけれど、名義変更にはどんな書類が必要なんだろう」そう感じている方は多いのではないでしょうか。
不動産の名義変更(相続登記※)で必要な書類は、遺言書の有無や遺産分割協議の有無によって変わります。全パターンに共通して必要な書類は7点ですが、ご自身のケースによってはさらに書類が追加されます。
この記事では、共通の必要書類から、遺言・協議・法定相続の3パターン別チェックリスト、書類の取得先や有効期限まで、もれなく分かりやすく整理しました。読み終えるころには、自分が何を準備すればよいかがはっきりするはずです。
この記事はこんな方におすすめ
- 不動産の名義変更で何を準備すればよいか分からない方
- 遺言・遺産分割協議・法定相続のどれに当てはまるか確認したい方
- 書類の取得先や有効期限、効率的な集め方を知りたい方
目次
不動産の名義変更で必要書類が変わる3つのケース
不動産の名義変更(相続登記)で必要な書類は、実は一律ではありません。まずは全パターンで共通して必要になる書類を確認したうえで、遺言書や遺産分割協議の有無によって何が変わるのかを整理していきましょう。
法務省・国土交通省の調査によると、所有者不明土地の面積は全国で約410万ヘクタールと推計されており、これは九州の面積を上回る規模です。
必要書類を正しくそろえて名義変更を終えることは、こうした問題を防ぐ第一歩でもあります。
参考:所有者不明土地の解消に向けた民事基本法制の見直し – 法務省
相続登記で共通して必要な書類5点とは
不動産の名義変更をするパターンにかかわらず、共通して必要になる書類は次の5点です。
- 被相続人※(亡くなった方)の出生から死亡までの戸籍謄本
- 被相続人の住民票の除票(または戸籍の附票)
- 相続人全員の戸籍謄本
- 不動産を取得する相続人の住民票
- 固定資産評価証明書
これらの5点に加えて、法務局への提出時には「登記申請書」の作成と、登録免許税分の「収入印紙」の準備が必要です。
書類5点と申請に必要な2点をあわせた基本の7点が、不動産の名義変更で欠かせない準備物になります。
このなかで特に時間がかかるのが「被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本」です。
転籍や結婚を経ている場合、複数の市区町村役場に順番に請求する必要があり、古い戸籍は手書きで読み取りにくいこともあります。
戸籍を何通も集めるのは、正直なところ骨が折れる作業ですよね。それでも一つずつ順番に進めていけば必ずそろいますので、焦らず取り組んでいきましょう。
※被相続人:亡くなって財産を遺した人のこと。財産を受け取る側は「相続人」と呼ぶ。
遺言書の有無で追加される必要書類
遺言書がある場合は、共通書類に加えて遺言書そのものが必要になります。
ただし遺言書の種類によって、追加で求められる書類が変わる点に注意しましょう。
自筆証書遺言※(自分で手書きした遺言書)は、原則として家庭裁判所での検認手続きを経て、検認済証明書とあわせて提出する必要があります。
一方、公正証書遺言や、法務局の自筆証書遺言書保管制度を利用していた遺言書は検認が不要で、そのまま名義変更の手続きに使用できます。
裁判所の司法統計によると、遺言書の検認事件の新受件数は年間約2万件にのぼります。
決して珍しい手続きではないので、該当する場合も落ち着いて進めましょう。
検認の申立てには、被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本など、共通書類と重なる資料も使いますので、まとめて準備すると効率的です。
参考:民法第1004条(遺言書の検認)- e-Gov法令検索
参考:遺言書の検認 – 裁判所
※自筆証書遺言:遺言者が全文・日付・氏名を自書し押印して作成する遺言書のこと。
遺産分割協議の有無で変わる必要書類
遺言書がなく、相続人どうしの話し合いで誰が不動産を相続するかを決める場合は、遺産分割協議書と相続人全員の印鑑証明書が追加で必要になります。
遺産分割協議書には、相続人全員の署名と実印の押印が欠かせません。1人でも押印が漏れていると法務局に受理されないため、作成後は内容と押印を必ず確認しましょう。
なお、法定相続分どおりに名義変更をする場合は、話し合いをする必要がないため、遺産分割協議書は不要です。
あなたのケースは、遺言書があるパターン・話し合いで決めるパターン・法定相続分どおりに進めるパターンのうち、どれに近いでしょうか。
次の章で、パターンごとの必要書類をチェックリストの形で整理しますので、当てはまるものを確認してみてください。
作成に不安がある場合は、提出前に一度専門家へご相談ください。
FAQ
Q. 遺言書があれば遺産分割協議書は不要?
A. 原則不要です。遺言書どおりに名義変更できます。
Q. 自筆証書遺言はそのまま使える?
A. 家庭裁判所の検認が必要です(法務局保管制度利用時を除く)。
Q. 共通書類はどのパターンでも必ず必要?
A. はい、遺言・協議・法定相続のどのパターンでも共通の5点は必要です。
相続パターン別|必要書類チェックリスト
| 分類 | 概要 | メリット | デメリット |
|---|---|---|---|
| 遺言書どおり | 遺言の内容にしたがって名義変更する | 協議書・印鑑証明書が不要で書類が少ない | 自筆証書は検認に数週間〜数ヶ月かかる |
| 遺産分割協議 | 相続人全員の話し合いで決めて名義変更する | 相続人の希望を反映した分け方ができる | 全員の実印・印鑑証明書がそろうまで進まない |
| 法定相続分どおり | 民法の割合で共有名義に登記する | 話し合い不要ですぐに手続きできる | 将来の売却・活用に共有者全員の同意が必要 |
ここからは、実際にご自身がどのパターンに当てはまるかを確認しながら、必要書類をチェックリスト形式で整理していきます。
共通書類に何を追加すればよいかが一目で分かります。
遺言書どおりに名義変更する場合の書類一覧
遺言書の内容にしたがって不動産の名義変更をする場合、必要な書類は次のとおりです。
- 共通書類5点(戸籍謄本・住民票の除票・相続人の戸籍謄本・住民票・固定資産評価証明書)
- 遺言書(自筆証書の場合は検認済証明書、または法務局保管制度の遺言書情報証明書)
- 遺言執行者がいる場合は選任審判書(家庭裁判所が選任したとき)
遺産分割協議書や相続人全員の印鑑証明書は不要なため、他のパターンに比べて書類集めの負担が軽いのが特徴です。
ただし、遺言の内容と実際の不動産の表示が一致しているかは事前に確認しておきましょう。
遺産分割協議で名義変更する場合の書類一覧
相続人どうしの話し合いで不動産を相続する人を決める場合は、次の書類が必要です。
- 共通書類5点
- 遺産分割協議書
- 相続人全員の印鑑証明書
このパターンは、相続人全員の合意(署名・実印)が前提となるため、疎遠な親族がいる場合や、相続人の数が多い場合は書類が整うまでに時間がかかりやすい点に注意が必要です。
連絡先が分からない相続人がいる場合は、戸籍の附票などから住所を調査する必要があります。
法定相続分どおりに登記する場合の書類一覧
民法で定められた法定相続分のとおりに、相続人全員の共有名義で登記する場合は、次の書類のみで手続きが可能です。
- 共通書類5点のみ(追加書類なし)
話し合いが不要なぶん準備は簡単ですが、不動産が相続人全員の共有名義になるため、将来売却や活用をする際には共有者全員の同意が必要になります。
共有状態を早期に解消したい場合は、あとから遺産分割協議に切り替えることも可能です。
不動産の使い道が決まっている場合は、遺産分割協議での単独名義化も検討しましょう。
FAQ
Q. どのパターンが一番書類集めの負担が軽い?
A. 遺言書どおりに名義変更するパターンです。協議書や印鑑証明書が不要です。
Q. 法定相続分で登記した後に協議はできる?
A. はい、あとから遺産分割協議をして単独名義に変更することも可能です。
Q. 印鑑証明書が必要なのはどのパターン?
A. 遺産分割協議で名義変更する場合のみ必要です。
必要書類の取得先・費用・有効期限まとめ
必要書類が分かったら、次は実際にどこで取得できるのか、費用はいくらか、有効期限はあるのかを確認しましょう。
効率よく書類を集めるコツもあわせて解説します。
戸籍謄本・住民票は市区町村役場で取得
戸籍謄本は本籍地、住民票は住所地の市区町村役場で取得します。本籍地と住所地が異なる場合は、それぞれ別の役場への請求が必要です。
窓口だけでなく、郵送でも請求できるため、遠方に住んでいる場合や本籍地が実家から離れている場合は郵送請求が便利です。費用の目安は次のとおりです。
| 書類 | 取得先 | 費用の目安 |
|---|---|---|
| 戸籍謄本 | 本籍地の市区町村役場 | 1通450円 |
| 除籍謄本・改製原戸籍 | 本籍地の市区町村役場 | 1通750円 |
| 住民票(除票含む) | 住所地の市区町村役場 | 1通300円程度 |
| 固定資産評価証明書 | 不動産所在地の市区町村役場 | 1通300円程度 |
なお、被相続人の戸籍謄本は出生から死亡までさかのぼって集める必要があるため、転籍や結婚の回数が多い方ほど取得する通数が増える点に注意しましょう。
戸籍謄本に有効期限はある?注意点を解説
相続登記に使う戸籍謄本や住民票について、法務局への提出書類として法律上の有効期限は定められていません。
相続開始後に取得したものであれば、古い日付のものでも基本的に使用できます。
一方で、銀行口座の解約や相続税の申告など、他の手続きでは「発行から3ヶ月以内」「6ヶ月以内」など独自の期限を求められることが多いため、複数の手続きをまとめて進める場合は、提出先ごとの期限を事前に確認しておくと二度手間を防げます。
印鑑証明書についても、相続登記の実務上は明確な有効期限の定めはありませんが、遺産分割協議書の作成時期と大きくずれていると内容確認を求められることがあるため、協議書の作成と近い時期に取得するのが安心です。
法定相続情報証明制度で書類集めを効率化
戸籍謄本を何度も提出するのが負担な場合は、法定相続情報証明制度の活用がおすすめです。
これは、一度そろえた戸籍謄本一式を法務局に提出して認証を受けると、相続関係をまとめた「法定相続情報一覧図の写し」が交付される制度です。
以後は、この一覧図の写し1枚を戸籍謄本の代わりとして、相続登記・銀行手続き・相続税の申告など複数の手続きで使い回すことができます。
手数料は無料です。
※法定相続情報一覧図:被相続人と相続人の関係を法務局が証明した書類。戸籍謄本一式の代わりとして各種手続きで利用できる。
書類集めに不安がある方は、当事務所の無料相談もご活用ください。
FAQ
Q. 戸籍謄本はどこで取得できる?
A. 本籍地の市区町村役場で取得できます。郵送での請求も可能です。
Q. 印鑑証明書に有効期限はある?
A. 相続登記の実務上、明確な期限の定めはありません。
Q. 法定相続情報証明制度の手数料は?
A. 無料です。一覧図の写しは複数枚発行してもらえます。
まとめ:不動産の名義変更は書類7点を早めにそろえよう
不動産の名義変更に必要な書類は、全パターン共通の5点に加えて、遺言・遺産分割協議・法定相続分のどのパターンに当てはまるかによって変わります。
まずはご自身がどのパターンに該当するかを確認し、共通書類と申請書類をあわせた基本の7点から準備を始めましょう。
戸籍謄本や住民票には法律上の有効期限はありませんが、他の手続きでは期限を求められることも多いため、複数の手続きを予定している方は法定相続情報証明制度の活用もおすすめです。
書類集めや遺産分割協議書の作成に不安がある場合は、無理に一人で進めず、専門家に相談することで手続きがスムーズに進みます。
まずはお気軽に無料相談をご利用ください。
この記事の監修者

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