この記事を要約すると
- 未成年の子供は相続放棄を単独申述できず、親権者が法定代理人として手続きを代わりに行う
- 親権者も相続人で「子供だけ放棄させたい」場合は利益相反となり特別代理人の選任が必要
- 【注意】3ヶ月の期限は「子供」ではなく「親(法定代理人)」が知った日からカウントされる
- 必要書類は申述書・戸籍謄本など5種類で、子供1人につき収入印紙800円が別途必要
「夫が遺した借金。自分は相続放棄できると分かったけれど、まだ幼い子供の分はどうやって手続きすればいいの……?」
親が亡くなり、未成年の子供が相続人になってしまった場合、子供が未成年の場合、自分で家庭裁判所に相続放棄の申述をすることはできません。
親権者が代わりに手続きを進める必要がありますが、場合によっては「特別代理人」という第三者の選任が必要になることもあります。
この記事では、子供の相続放棄で必要な書類の一覧と、親権者が代理申請できる条件、特別代理人が必要なケースを詳しく解説します。
なお、相続放棄の「3ヶ月」という期限は、子供ではなく「親が知った日」から進み始めます。
期限がある手続きなので、早めに確認しておきましょう。
また、裁判所の統計によると相続放棄の申述件数は年間約26万件にのぼります。
未成年の子供が相続人になるケースも決して珍しくありません。
この記事はこんな方におすすめ
- 未成年の子供の代わりに相続放棄の手続きをしたい方
- 子供の相続放棄に必要な書類を具体的に知りたい方
- 「特別代理人」が必要かどうか確認したい方
目次
子供の相続放棄を親が代理申請できる条件
相続放棄は「申述」といって、家庭裁判所に書類を提出する法律行為です。
未成年の子供が相続人になった場合、誰がどのように手続きを進めるのか、まず基本的なルールを確認しましょう。
未成年の子供が単独では相続放棄できない理由
相続放棄は財産を一切受け取らないという重大な法律行為のため、判断能力が不十分とされる未成年者は単独では行えません。
突然お子さんが相続人になってしまって、どうすればいいか不安に感じている方も多いのではないでしょうか。
まずは手続きの流れを一緒に確認していきましょう。
民法では、未成年者※が法律行為を行う場合、原則として法定代理人※(親権者)の同意または代理が必要とされています。
相続放棄はこの「法律行為」にあたるため、親権者が子供に代わって家庭裁判所に申述書を提出する必要があります。
参考:民法第5条(未成年者の法律行為) – e-Gov法令検索
申述書の「申述人」欄には子供の名前を記載し、「法定代理人」欄に親権者の名前と続柄を記入します。
あくまでも相続放棄をするのは子供自身であり、親権者はその手続きを代わりに行う立場です。
※未成年者:18歳未満の者(2022年4月1日施行の民法改正以降)。法律行為を行うには原則として親権者等の同意が必要です。
※法定代理人:法律の規定により特定の者の代理人とされる人のこと。未成年者の親権者がこれにあたります。
※申述:家庭裁判所に対して一定の意思表示を書面で行うこと。相続放棄の場合は「相続を放棄する」という意思を正式に伝える手続きのことをいいます。
親権者が法定代理人になれる2つの条件
親権者が子供の相続放棄を代理できるかどうかは、「利益相反」が発生するかどうかで決まります。
今回の状況はどのパターンに当てはまるか、まず下の表で確認してみてください。
| ケース(親の立場) | 親権者が代理できるか |
|---|---|
| ケース①:親が相続人でない | 〇代理できる |
| ケース②:親も一緒に相続放棄 | 〇代理できる |
| ケース③:親がすでに放棄済み | 〇代理できる |
| ケース④:親は承認、子だけ放棄 | ✕特別代理人が必要 |
利益相反が生じない場合は、親権者がそのまま法定代理人として申述できます。
親権者が代理できる主なケースは以下の2つです。
条件①:親権者自身が相続人でない場合
子供の祖父母(父方の祖父など)が亡くなり、父親が先に亡くなっている場合、孫(子供)が代襲相続人※となることがあります。
このとき、母親(子供の親権者)は相続人ではないため、利益相反は生じません。
母親が法定代理人として、子供の相続放棄を代理申請できます。
祖父母の相続でよく見られるケースですので、まず自分が相続人かどうかを確認しましょう。
条件②:親権者も一緒に相続放棄する場合
親権者自身も相続人で、子供と一緒に相続放棄を行う場合は利益相反が生じません。
親権者が自分の相続放棄申述書と、子供(法定代理人として)の申述書を同時に提出できます。
たとえば父が亡くなり、母と子供がともに相続放棄する場合がこれにあたります。
親権者が相続放棄を済ませた後でも、子供の相続放棄の代理申請は行えます。
参考:民法第915条(相続の承認又は放棄をすべき期間) – e-Gov法令検索
条件③:親権者が「すでに」自分の相続放棄を済ませている場合
実務上とても多いのがこのケースです。
親が急いで自分の放棄だけ先に済ませ、後から子供の手続きが必要なことに気づいた場合です。
親が相続放棄を済ませた後であれば、親は「初めから相続人ではなかった」扱いになるため利益相反は生じず、親が法定代理人として子供の代理申請を行えます。
※代襲相続人:本来の相続人(子など)が被相続人より先に亡くなった場合に、その代わりに相続する人(孫など)のこと。
親が相続人でもある場合の特別代理人の必要性
一方、「親も相続人であるが、子供だけ相続放棄させたい」という場合は要注意です。
このケースでは利益相反が生じるため、親権者が子供の代理人になることができません。
例えば、父が亡くなり、母と子供が相続人である場合に、母は相続を承認して子供だけ相続放棄させようとすると、子供が放棄した分だけ母の相続分が増えます。
これは親の利益のために子供に不利益を与える行為にあたるため、「利益相反行為」として法律上認められていません。
参考:民法第826条(利益相反行為) – e-Gov法令検索
こうした場合は、家庭裁判所に「特別代理人※」の選任を申し立て、その特別代理人が子供の代わりに相続放棄の手続きを行う必要があります。
| 親権者の状況 | 代理可否 |
|---|---|
| 親権者自身が相続人でない | ○ 代理できる |
| 親権者も一緒に相続放棄する | ○ 代理できる |
| 親権者が相続を承認・子供だけ放棄させたい | × 特別代理人が必要 |
※特別代理人:利益相反が生じる場面で、未成年者のために家庭裁判所が選任する代理人のこと。通常の親権者に代わって法律行為を行います。
特別代理人が必要かどうかの判断に迷ったら、早めに司法書士に相談することをおすすめします。
3ヶ月の期限を考えると、判断に時間をかけすぎることがいちばんのリスクです。
FAQ
Q. 子供が18歳なら自分で相続放棄できる?
A. はい。2022年4月から成年年齢が18歳になったため、18歳以上は自分で申述できます。
Q. 離婚後はどちらの親が手続きするの?
A. 親権者が手続きします。共同親権の場合は両親での対応が必要です。
Q. 養子でも同じ手続きですか?
A. 基本的には同じです。養親が親権者となり、法定代理人として申請します。
子供の相続放棄で揃える書類一覧
親権者が代理申請できるケースと特別代理人が必要なケースが分かったところで、実際に揃える書類を確認しましょう。
書類の不備があると申述が受理されないこともあるため、事前にリストで確認しておくことが大切です。
書類を一から揃えるのは本当に大変ですよね。
必要な書類と取得先を事前に把握しておけば、スムーズに進められますので、ひとつずつ確認していきましょう。
親権者が代理する場合に必要な5種類の書類
親権者が法定代理人として子供の相続放棄を申述する場合、以下の5種類の書類が必要です。
書類①:相続放棄申述書
家庭裁判所の窓口またはWebサイト(裁判所.go.jp)から無料で入手できる書式です。
子供1人につき1通作成します。「申述人」欄に子供の氏名を、「法定代理人」欄に親権者の氏名と続柄を記入します。記入は黒のボールペンまたは万年筆で行い、消えるボールペンは使用できません。
参考:民法第938条(相続の放棄の方式) – e-Gov法令検索
書類②:被相続人の死亡が記載された戸籍謄本
亡くなった方(被相続人)の死亡が記載された戸籍謄本が必要です。被相続人の本籍地の市区町村役場で取得できます。
死亡診断書や除籍謄本が該当する場合もあります。被相続人が転籍を繰り返している場合は、すべての戸籍を取得する必要があることもあります。
書類③:被相続人の住民票除票または戸籍附票
被相続人の最後の住所を証明する書類です。
住民票除票※は亡くなった方の住所地の市区町村役場で、戸籍附票は本籍地の市区町村役場で取得できます。
相続放棄の申述先(家庭裁判所)を確認するためにも必要な書類です。
書類④:申述人(子供)の戸籍謄本
相続放棄をする子供自身の戸籍謄本です。子供の本籍地の市区町村役場で取得できます。
この書類で子供が未成年であること、および親権者との親子関係が確認されます。
通常、親権者が記載されているため、法定代理人の証明書類として兼用できます。
書類⑤:収入印紙と連絡用郵便切手
申述書には収入印紙800円分(子供1人につき)を貼付します。
また、裁判所からの照会書等の郵送に備えて、連絡用郵便切手も添付します。
切手の金額は申述先の家庭裁判所によって異なるため、事前に確認しておきましょう(多くの裁判所では1,000円程度です)。
※住民票除票:亡くなった方や転出した方の住民票記録のこと。生存者・現住所向けの住民票とは異なり、削除後も一定期間保存されます。
子供が複数人いるときの書類と注意点
子供が複数人いる場合、全員まとめて申述するか、1人ずつ別々に申述するかを選択できます。
ただし、申述書は子供1人につき1通が必要で、書類もそれぞれ用意する点に注意してください。
共通書類(被相続人の戸籍謄本・住民票除票)は1セットで済みますが、収入印紙は子供の人数分(1人800円)必要です。
また、子供が複数人いる場合でも、相続放棄は各自が独立して行う手続きのため、一人の子供が放棄しても他の子供が自動的に放棄になるわけではありません。
| 書類 | 子供1人の場合 | 子供2人の場合 |
|---|---|---|
| 相続放棄申述書 | 1通 | 2通 |
| 被相続人の戸籍謄本 | 1通 | 1通(兼用可) |
| 申述人(子供)の戸籍謄本 | 1通 | 2通(各自) |
| 収入印紙 | 800円 | 1,600円 |
各書類の取得先・有効期限・費用の目安
各書類をどこで、いくらで取得できるのかをまとめました。
戸籍謄本などは申請から数日かかる場合もあるため、早めに動き出すことが重要です。
| 書類 | 取得先 | 費用の目安 |
|---|---|---|
| 相続放棄申述書 | 家庭裁判所・裁判所Webサイト | 無料 |
| 被相続人の戸籍謄本 | 被相続人の本籍地市区町村役場 | 450円/通 |
| 被相続人の住民票除票 | 被相続人の住所地市区町村役場 | 300円程度 |
| 申述人(子供)の戸籍謄本 | 子供の本籍地市区町村役場 | 450円/通 |
| 収入印紙 | 家庭裁判所・郵便局 | 800円/人 |
戸籍謄本の有効期限については、相続放棄申述において特段の有効期限は定められていませんが、発行から3ヶ月以内のものを用意するのが無難です。
役場の窓口に行く時間が取れない場合は、郵送申請を活用しましょう。
近年は「広域交付制度」により、どの市区町村役場でも戸籍謄本が取得できるようになっています。
書類集めに困ったら司法書士にお任せいただくことも可能です。
FAQ
Q. 子供の相続放棄の申述先はどこ?
A. 被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所です。
Q. 書類はコピーでいい?
A. 戸籍謄本などは原本が必要です。コピーでは受付されません。
Q. 司法書士への依頼費用は?
A. 子供1人あたり3〜5万円程度が相場です。書類収集から申述まで一括対応できます。
特別代理人が必要なケースと選任手続きの流れ
「子供だけ相続放棄させたい」「親は相続を承認したい」という場合は特別代理人の選任が必要です。
手続きに時間がかかるため、3ヶ月の期限を意識しながら早めに動き出すことが大切です。
特別代理人の選任申立てに必要な3つの書類
家庭裁判所に特別代理人の選任を申し立てる際には、以下の3種類の書類が必要です。
書類①:特別代理人選任申立書
家庭裁判所の窓口またはWebサイトから入手できる書式です。
申立書には申立人(親権者)の情報、未成年者(子供)の情報、特別代理人候補者の情報、そして利益相反が生じる理由(相続放棄をさせる旨)を記載します。
収入印紙は申述人(子供)1人につき800円が必要です。
書類②:利益相反の事実を示す書類
親権者と子供の間に利益相反が生じていることを示す書類です。
具体的には、親権者が相続承認する予定であることを示す書類や、「相続放棄申述書(案)」を添付することで子供に相続放棄させる予定であることを明示します。
何を添付すれば良いか迷った場合は、申立前に管轄の家庭裁判所に確認することをおすすめします。
書類③:戸籍謄本類
申立人(親権者)、未成年者(子供)、被相続人それぞれの関係を証明する戸籍謄本が必要です。
被相続人の死亡を証明する書類と、親子関係・相続関係を示す戸籍謄本を揃えます。
なお、特別代理人候補者の戸籍謄本と住民票が必要になるケースもあるため、候補者にも事前に準備をお願いしておきましょう。
家庭裁判所での選任手続きと2週間の目安期間
特別代理人選任の申立先は、子供(未成年者)の住所地を管轄する家庭裁判所です(相続放棄の申述先とは異なる場合があります)。
申立後、家庭裁判所の審判※により特別代理人が選任されるまで、おおむね2週間〜1ヶ月程度かかります。
特別代理人の候補者として推薦できるのは、利害関係のない成人であれば基本的に誰でも構いません。
親族(祖父母や叔父叔母など)を候補者とすることが多いですが、適当な候補者がいない場合は司法書士や弁護士などの専門家を候補者として指定することもできます。
「親族に面倒な手続きの負担をかけたくない」「複雑な借金の事情を身内に知られたくない」という方は、司法書士自身を特別代理人の候補者として指定できるため、ワンストップで任せることが可能です。
なお、特別代理人選任の申立て自体は相続放棄の3ヶ月の期限内に行えばよく、審判確定まで時間がかかっても期限を超えたとは扱われません。
ただし余裕を持って早めに申立てることを強くおすすめします。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 申立先 | 未成年者(子供)の住所地を管轄する家庭裁判所 |
| 申立費用 | 収入印紙800円(子供1人につき)+連絡用郵便切手 |
| 選任までの期間 | 2週間〜1ヶ月程度 |
| 特別代理人候補者 | 親族・専門家(司法書士・弁護士など) |
※審判:家庭裁判所が一定の事項を判断・決定する手続きのこと。「審判書」として文書が交付され、確定後に効力を持ちます。
特別代理人が選任後に行う相続放棄の流れ
家庭裁判所から特別代理人選任の審判が確定したら、その特別代理人が子供(未成年者)を代理して相続放棄の申述を行います。
特別代理人は、申述書の「法定代理人」欄に「特別代理人」として記名・捺印します。
提出する書類は第2章で紹介した書類に加え、「特別代理人選任の審判書謄本」が必要となります。
申述書の提出先は被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所です。
申述後は家庭裁判所から照会書(意思確認のための書類)が届くことがあります。
照会書が届いた場合は、特別代理人が回答・返送します。問題がなければ相続放棄の申述が受理され、申述受理通知書※が届いて手続きが完了します。
※申述受理通知書:家庭裁判所が相続放棄の申述を受理したことを知らせる書類。この通知書が届くことで相続放棄が正式に完了します。
FAQ
Q. 特別代理人の費用は?
A. 裁判所への申立は収入印紙800円程度。専門家を選任した場合は別途報酬が発生します。
Q. 一緒に放棄すれば特別代理人は不要?
A. はい。親権者も一緒に相続放棄する場合は利益相反がないため、特別代理人は不要です。
Q. 選任期間中に3ヶ月を超えたら?
A. 選任申立てを3ヶ月以内に行えば問題ありません。審判確定後の申述で不利益は生じません。
まとめ:子供の相続放棄は3ヶ月以内に代理人と書類を確認しよう
子供(未成年者)の相続放棄は、親権者が法定代理人として手続きを進めます。
ただし、親権者自身も相続人であり「子供だけ相続放棄させたい」場合は利益相反が生じるため、特別代理人の選任が必要になります。
必要書類は相続放棄申述書・戸籍謄本・住民票除票など5種類で、子供1人につき収入印紙800円が必要です。
子供が複数いる場合は申述書と収入印紙を人数分用意します。
特別代理人の選任が必要な場合は、家庭裁判所の審判が確定するまで2週間〜1ヶ月程度かかります。
相続放棄には3ヶ月という期限があり、この期限は「親が知った日」からカウントされるため、早めに状況を確認することが大切です。
「自分のケースがどれに当てはまるか分からない」「特別代理人が必要か判断できない」という場合は、ひとりで抱え込まずに専門家へご相談ください。
「まずは状況を整理したい」という段階でも構いません。
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この記事の監修者

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