この記事を要約すると
- 借地権の相続には地主の承諾は必要なく、建物の相続登記を行うことが基本です。
- 相続登記義務化により、借地上の建物は3年以内に名義変更を完了させる必要があります。
- 地主から名義変更料を求められても、相続の場合は原則として支払い義務はありません。
「親が借地に家を建てて住んでいたのですが、相続のとき地主の許可が必要なんでしょうか?」
このようなご相談は、相続の現場でとても多く聞かれます。
借地権の相続は、地主の承諾なしで手続きを進められます。 これは法律上明確に認められていることですが、意外と知られていないのが実情です。
この記事では、借地権を相続したときの名義変更の手順・費用・必要書類から、地主とのトラブル対処法まで、実務に沿ってわかりやすく解説します。
この記事はこんな方におすすめ
- 親が借地に建物を建てており、相続手続きの方法を知りたい方
- 借地権の相続に地主の承諾が必要かどうか不安な方
- 借地権の名義変更に必要な書類や費用を確認したい方
目次
借地権の相続に地主の承諾は不要!基本知識を解説
借地権を相続するとき、「地主に連絡が必要なのか」「許可をもらわないといけないのか」と心配される方はとても多いです。
まずは借地権の基本と、なぜ承諾が不要なのかをわかりやすく説明します。
借地権には地上権と賃借権の2種類がある
借地権※とは、地代を支払いながら土地を借り、その土地に建物を建てる権利のことです。
大きく分けると、地上権※と賃借権※の2種類があります。
| 種類 | 性質 | 特徴 |
|---|---|---|
| 地上権 | 物権(強い権利) | 登記できる。地主の承諾なく第三者に譲渡可能 |
| 賃借権 | 債権(契約の権利) | 登記が必要とされない場合が多い。地主の承諾が原則必要 |
日常的によく見られる借地のほとんどは、賃借権です。
ただし、借地借家法によって賃借権も手厚く保護されており、相続の場面では地上権と同様に扱われます。
親が古くから借地に住んでいる場合は賃借権であるケースがほとんどですが、念のため登記簿謄本を確認してみましょう。
※借地権:地代を支払って土地を借り、その土地に建物を建てる権利のこと。借地借家法によって借り主側の権利が保護されています。
※地上権:物権のひとつで、他人の土地において建物を所有・利用する強い権利。登記が可能で、地主の承諾なく第三者に譲渡できます。
※賃借権:土地の貸し借りを定めた契約に基づく権利。地上権より効力は弱いですが、借地借家法により借り主が手厚く保護されています。
借地権の相続は地主の承諾なしでできる理由
地主から急に「承諾が必要だ」と言われると、戸惑ってしまいますよね。
しかし借地権の相続に地主の承諾が不要なのは、「相続」が「譲渡」とは法的に異なるからです。
民法では、相続が起きると相続人は被相続人の財産・権利・義務を包括的にすべて引き継ぎます(包括承継※)。
これは「別の人に権利を移す譲渡」とは本質的に異なる行為です。
借地借家法では「借地権の譲渡・転貸には地主の承諾が必要」とされていますが、相続はこの「譲渡・転貸」には当たりません。
そのため、地主の承諾なしに借地権を相続人が引き継ぐことができます。
この解釈は、民法第896条に定める相続の一般的効力(包括承継の原則)に基づくものであり、判例・通説においても確立された考え方です(最高裁昭和29年以降の一貫した解釈)。
地主から「承諾を求める」連絡が来ても、慌てる必要はありません。
参考:民法第896条(相続の一般的効力)- e-Gov法令検索
※包括承継:相続人が被相続人のすべての財産と義務を一括して引き継ぐこと。相続の基本原則です。
重要コラム
遺言書で相続する場合は「誰が引き継ぐか」に注意!
「借地権の相続に地主の承諾は不要」と解説しましたが、遺言書を使って借地権を引き継ぐ場合は、一つだけ重大な例外があります。
遺言によって借地権を受け取るのが「法定相続人(配偶者や子どもなど)」であれば、通常の相続と同じく地主の承諾も名義変更料も不要です。
しかし、遺言によって「法定相続人以外の人(息子の妻、お世話になった知人、内縁のパートナーなど)」が借地権を受け取る場合(特定遺贈といいます)、法律上は「譲渡」と同じ扱いになります。このケースでは、地主の承諾と名義変更料の支払いが必要になりますので、ご注意ください。
承諾不要の法的根拠について説明が必要な場合や、地主との交渉に不安がある方は、早めに司法書士にご相談ください。
相続登記義務化で借地上の建物も3年以内に名義変更を
2024年4月1日に相続登記の義務化がスタートし、借地上の建物も「知った日から3年以内」の登記申請が義務づけられました。
正当な理由なく期限を過ぎると、10万円以下の過料が科される可能性があります。
しかし、建物の名義変更(相続登記)を急ぐべき理由は、罰則だけではありません。「あなた自身の借地権を守るための強力な武器」になるからです。
もし、地主さんが底地(土地)を第三者の不動産会社などに売却した場合を想像してみてください。
この時、建物の名義が亡くなった親御さんのままだと、新しい地主に対して「私にはこの土地を借りる権利がある!」と法的に主張できないリスク(対抗要件の欠如)が生じます。
つまり、建物を自分名義にしておくことは、借地権という財産を守るための絶対条件なのです。
「まだ先でいいか」と後回しにせず、遺産分割協議がまとまったら、速やかに建物の相続登記を完了させましょう。
参考:不動産登記法第76条の2(相続等による所有権の移転の登記の申請)- e-Gov法令検索
参考:相続登記の申請義務化について – 法務省
FAQ
Q. 借地権とは何ですか?
A. 地代を払って土地を借り建物を建てる権利のことです。
Q. 相続に地主の承諾は必要ですか?
A. 不要です。相続は譲渡と異なるため地主の承諾は必要ありません。
Q. 借地上の建物の名義変更期限は?
A. 相続を知った日から3年以内の申請が法律上の義務です。
借地権の名義変更に必要な手続きと書類5点
借地権を相続したとき、まず何から手をつければいいか迷ってしまうことはありませんか?
ここでは実際に必要な手続きをステップ順に解説します。必要な書類と費用の目安もあわせて確認しておきましょう。
遺産分割協議で借地権の相続人を1人に決める
まず相続人全員で遺産分割協議を行い、誰が借地権(と建物)を引き継ぐかを決めます。
借地権と建物は、原則として同じ人が相続するのが基本です。
別々の人が相続すると、建物の所有者と借地権者が異なる状態になり、地主との契約関係がとても複雑になります。
協議が成立したら、遺産分割協議書※を作成し、相続人全員が実印で署名・押印します。
この書類は相続登記の際に必ず必要になるので、内容が正確であることをしっかり確認してください。
遺産分割協議書には「借地権」と「建物」の両方を明記することが重要です。
建物だけを記載して借地権の記載が抜けると、後のトラブルの原因になることがあります。
※遺産分割協議書:誰がどの財産を相続するかを、相続人全員で合意した内容を書面にしたもの。登記手続きなどで必要となる重要書類です。
建物の相続登記に必要な5つの書類と費用の目安
建物の相続登記(名義変更)に必要な書類は以下の5点です。
① 相続登記申請書
法務局に提出する申請書類です。書式は法務局のホームページから無料で入手できます。
相続方法(遺産分割・法定相続・遺言)によって記載内容が異なるため、誤りのないよう注意しましょう。
② 被相続人の戸籍謄本一式(出生〜死亡の連続したもの)
被相続人(亡くなった方)が間違いなく建物の所有者であることを証明するために必要です。
出生から死亡までの連続した戸籍が求められるため、複数の市区町村から取り寄せる場合があります。
③ 相続人全員の戸籍謄本
相続人の範囲を確認するために必要な書類です。被相続人との関係がわかる内容であることが条件となります。
住民票(相続人の現住所確認用)も合わせて取得しておきましょう。
④ 遺産分割協議書 + 相続人全員の印鑑証明書
遺産分割協議書には、相続人全員の実印と印鑑証明書のセットが必要です。
印鑑証明書は発行から3ヶ月以内のものが有効とされていますので、取得のタイミングに注意してください。
⑤ 建物の固定資産税評価証明書
登録免許税※の計算のもととなる書類です。市区町村役場の窓口で取得できます。
取得には200〜400円程度の手数料がかかります。
費用の目安は以下のとおりです。
| 費用の種類 | 金額の目安 |
|---|---|
| 登録免許税 | 建物の固定資産税評価額 × 0.4% |
| 司法書士報酬 | 3〜6万円程度(建物のみの場合) |
| 戸籍・証明書の取得費用 | 5,000円〜1万円程度 |
建物の固定資産税評価額が1,000万円の場合、登録免許税は4万円となります。
評価額は固定資産税の納税通知書でも確認できます。
※登録免許税:不動産の登記手続きを行う際に国に納める税金のこと。相続登記の場合は固定資産税評価額の0.4%が税率となります。
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地主へのご挨拶(通知)は早めに!ただし「内容証明」は絶対にNG
借地権の相続において、地主への通知は法律上の義務ではありません。
しかし、実務上は相続登記が完了した段階で、できるだけ早めにご挨拶を兼ねて連絡をすることをおすすめします。
理由は「今後の地代の振込先・請求先を明確にするため」と「将来の更新や建て替えをスムーズに進めるため」です。
⚠️ 実務上の重要注意ポイント:いきなり「内容証明」は送らない!
ネット上の記事などでは「言った・言わないを防ぐために内容証明郵便で送りましょう」と書かれていることがありますが、これは実務上、絶対に避けるべき悪手です。
内容証明郵便は「法的措置(裁判など)も辞さない」という強いメッセージ性を持ちます。
長年お付き合いのある地主さんに対して、親御さんが亡くなった直後にいきなりこのような郵便を送ると、「喧嘩を売られている」と受け取られかねません。
今後の関係性が極度に悪化し、建物の修繕や契約更新の際に不利になるリスクがあります。
通知は、あくまで丁寧な「ご挨拶状(兼 相続のご報告)」として作成し、「普通郵便」または、配達記録だけが残る「特定記録郵便」で送るのが、トラブルを生まない実務上のセオリーです。
ご挨拶状の文面に迷われたり、地主さんとの直接のやり取りに不安がある場合は、あいりん司法書士事務所が間に入ってサポートすることも可能です。
お気軽にご相談ください。
※内容証明郵便:郵便局が文書の内容・差出日・送り先を証明する郵便サービス。通知した事実を書面で記録として残せます。
FAQ
Q. 名義変更に必要な書類は何ですか?
A. 申請書・戸籍謄本・遺産分割協議書など5点が必要です。
Q. 相続登記の費用はいくらですか?
A. 登録免許税と司法書士報酬を合わせて10万円前後が目安です。
Q. 地主への通知は義務ですか?
A. 法的義務はありませんが、早めに連絡するのが望ましいです。
借地権相続でよくある3つのトラブルと対処法
実際の借地権相続では、地主とのやりとりや相続人間での調整に悩むことがあります。
ここでは頻繁に起きる3つのトラブルと、それぞれの対処法を解説します。
地主から名義変更料を求められても支払い義務はない
借地権の相続を通知したとき、地主から「名義変更料(名義書換料)」を求められるケースがあります。
突然のことで、「払うべきか、どう対応すればいいか」と迷ってしまいますよね。
しかし相続の場合、名義変更料を支払う法的義務は原則としてありません。
名義変更料が必要なのは「借地権の譲渡・転貸」の場合であり、相続はこれに当たらないからです。
「地主から請求が来たから仕方なく払った」という方もいますが、相続による引き継ぎでは支払わなくてよいのが原則です。
ただし、例外として借地契約書に「相続の場合も名義変更料を支払う」旨の特約が記載されている場合は、その内容が有効となる可能性があります。
まず手元の借地契約書を確認することが重要です。
特約の記載がない場合でも、地主との交渉において「法律ではこうなっています」と一般の方が直接主張すると、感情的なもつれに発展してしまうケースが少なくありません。
ここで重要になるのが、司法書士などの法律の専門家が間に入ることです。
第三者である専門家が、契約書の特約内容を正確に読み解き、法的根拠に基づいて地主側へ通知・説明を行うことで、相手の態度が軟化し、理不尽な請求を未然に防ぐことができます。
また、建物の相続登記から、遺産分割協議書の作成、必要であれば不動産の売却手配まで、複数の窓口をたらい回しにされることなくワンストップで解決できるのが、あいりん司法書士事務所に依頼する最大のメリットです。
しかし、借地契約書の特約内容や交渉の進め方はケースごとに異なります。まずは無料相談で専門家の確認を受けることをおすすめします。
相続人が複数いても借地権は1人が相続するのが基本
相続人が複数いる場合でも、借地権は1人が単独で相続するのが実務上の基本です。
| 相続方式 | 特徴 | メリット | デメリット |
|---|---|---|---|
| 単独相続 | 1人が全ての借地権・建物を取得 | ・手続きがシンプル ・意思決定が迅速 | ・代償金の準備が必要 ・他の相続人との合意が必須 |
| 共有相続 | 複数人で権利を分ける | ・代償金不要 ・平等感がある | ・全員同意が必要で活用困難 ・将来的に権利関係が複雑化 |
法律上は複数の相続人で共有することも可能ですが、共有名義には以下のようなデメリットがあります。
- 借地権を利用・処分(売却や建て替えなど)する際に、共有者全員の同意が必要
- 将来的に共有者の相続が発生すると、権利関係がさらに複雑になる
- 地主との交渉窓口が不明確になり、トラブルの原因となる
実務では、1人が借地権・建物を引き継ぐ代わりに、他の相続人に代償金を支払う「代償分割※」の方法が多く採用されます。
遺産分割協議の段階で、この点をしっかり話し合っておくことが重要です。
共有名義を選択した場合のリスクも理解したうえで、慎重に決めることをおすすめします。
※代償分割:特定の相続人が遺産を取得する代わりに、他の相続人に対して現金などの代償金を支払う遺産分割の方法です。
借地契約は相続で自動継承されるが3点の確認が必要
借地契約は相続によって自動的に引き継がれます。
新たに地主と契約書を結び直す必要はありません。
ただし、契約内容を確認しないまま引き継いでしまうと、後々思わぬ問題が起きることがあります。
以下の3点を必ず確認しましょう。
① 残存期間の確認
現在の借地契約があと何年有効かを確認します。
旧借地法(1992年以前の契約)の場合、建物所有目的の借地権の期間は30年が多く、更新によって延長されています。
残存期間が短い場合は、更新手続きについて地主と早めに話し合っておくことをおすすめします。
② 地代(月額)の確認
現在支払っている地代の金額と支払い方法を確認します。
長年据え置きになっているケースでは、周辺相場と大きくかけ離れていることがあります。
地代の増額・減額の交渉が必要になる可能性もあるため、現状を把握しておきましょう。
③ 更新料・建替承諾料の有無
契約書に「更新料を支払う」「建て替えの際に承諾料が必要」といった特約が記載されているか確認します。
相続の段階でこの特約の内容を把握しておくと、将来のトラブルを未然に防ぐことができます。
FAQ
Q. 名義変更料の支払い義務はありますか?
A. 相続の場合は原則として支払い義務はありません。
Q. 借地権を共有名義にすることはできますか?
A. 法律上は可能ですが後のトラブルになりやすく、単独相続が基本です。
Q. 借地契約は相続後どうなりますか?
A. 自動的に引き継がれますが、期間・地代・特約の3点確認が重要です。
まとめ:借地権の相続は地主との「最初のアプローチ」が肝心です
借地権の相続についての要点をまとめます。
・借地権は、地主の承諾なしに相続人が引き継ぐことができます。
これは民法・借地借家法と判例によって確立した解釈であり、相続は譲渡とは法的性質が異なるためです。
・相続後は、遺産分割協議で相続人を決めたうえで、建物の相続登記を進めましょう。
相続登記の義務化により、3年以内の名義変更が法律上の義務となっています。登記を後回しにすると10万円以下の過料が科されるリスクもあるため、早めの対応が重要です。
・地主から名義変更料を求められても、相続の場合は原則として支払い義務がありません。
借地契約書に特約がある場合は内容を確認したうえで対応してください。
借地権の相続手続きは、通常の不動産相続とは異なり、地主との契約内容の確認や将来の更新を見据えた慎重な判断が求められます。
「うちの借地契約書には、どんな特約が書かれているか見てほしい」
「地主さんにどう連絡すれば角が立たないか、アドバイスが欲しい」
「とりあえず、自分のケースで名義変更にいくらかかるか知りたい」
このような、ほんの少しの疑問や不安でも構いません。
地主さんへ連絡を入れてしまう前に、まずは一度、あいりん司法書士事務所の無料相談をご活用ください。数多くの相続現場に立ち会ってきたスタッフや専門家が、あなたの状況に合わせた最適な進め方を丁寧にご提案いたします。
この記事の監修者

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