この記事を要約すると
- 相続放棄はプラスの財産も一切引き継げず、原則として撤回もできない
- 放棄しても不動産の管理義務が残り、借金は次順位の親族へ移る
- 財産調査と3ヶ月以内の判断、専門家への相談でデメリットは軽減できる
「親に借金がありそうだから相続放棄したいけど、あとで後悔しないかな……」
「相続放棄すれば、それで本当にすべての問題から解放されるの?」
親が亡くなり、悲しむ間もなく借金や不動産の問題に向き合う中で、相続放棄という選択に不安を感じている方は少なくありません。
相続放棄は借金から逃れる有効な手段ですが、実は「プラスの財産まで失う」「原則やり直しがきかない」「放棄しても管理義務が残る」といった見落としがちなデメリットがあります。知らないまま手続きを進めると、あとで「こんなはずではなかった」と後悔しかねません。
この記事では、相続放棄の6つのデメリットと、それを回避・軽減するための具体的な方法を、相続実務の専門家がわかりやすく解説します。
この記事はこんな方におすすめ
- 親の借金を理由に相続放棄を考えているが、デメリットが不安な方
- 相続放棄をしたあとに「何が残るのか・何を失うのか」を正しく知りたい方
- 相続放棄と単純承認・限定承認のどれを選ぶべきか迷っている方
目次
相続放棄で失う財産・権利の3つのデメリット
相続放棄は「借金を引き継がなくてよい」という大きなメリットがある一方で、手放すものも決して小さくありません。
実際、相続放棄は年々増えており、裁判所の司法統計によると申述の受理件数は年間20万件を超えています。それだけ身近な手続きだからこそ、正しい知識が欠かせません。
出典:司法統計年報 – 裁判所
このセクションでは、相続放棄によって失う財産や権利について解説します。「放棄すれば借金だけ消える」という単純なものではない点を、まずしっかり理解しておきましょう。
プラスの財産もすべて手放すことになる
1つ目にして最大のデメリットは、借金などのマイナスの財産だけでなく、預貯金・不動産・現金といったプラスの財産もすべて放棄することになる点です。
相続放棄は「借金だけを放棄して、良い財産だけをもらう」といった都合のよい選択はできません。相続放棄をすると、法律上その人ははじめから相続人でなかったものとして扱われます(民法939条)。
たとえば、借金が300万円あっても、実家の土地や預貯金が500万円あったというケースでは、放棄することでプラスの財産まで失い、かえって損をする可能性もあります。
放棄する前に、プラスとマイナスの財産のどちらが多いのかを必ず確認することが大切です。あなたのご家族のケースでは、プラスとマイナス、どちらの財産が多いでしょうか。
参考:民法第939条(相続の放棄の効力)- e-Gov法令検索
一度認められると原則撤回・取り消しできない
2つ目のデメリットは、家庭裁判所で相続放棄が受理されると、原則として撤回や取り消しができないことです。
「放棄したあとで、実は多額の預貯金が見つかった」「思ったより借金が少なかった」という場合でも、あとから「やっぱり相続します」と撤回することはできません(民法919条)。
相続放棄は借金から逃れられる強力な手段だからこそ、いったん確定した効力は簡単には覆せない仕組みになっています。
だからこそ、放棄を決める前の財産調査がとても重要です。慌てて手続きを進めると、取り返しのつかない結果につながることもあります。
参考:民法第919条(相続の承認及び放棄の撤回及び取消し)- e-Gov法令検索
※撤回:一度成立させた意思表示を、あとから取りやめること。相続放棄は原則として撤回できない。
遺産に手をつけると放棄が無効になる注意点
3つ目のデメリットは、放棄を決める前に遺産に手をつけると、相続放棄そのものができなくなるリスクがあることです。
被相続人※の預貯金を引き出して使ったり、遺品を勝手に処分したりすると、「財産を相続する意思がある」とみなされ、法定単純承認が成立します(民法921条)。こうなると、その後に相続放棄を申し立てても認められません。
「大家さんに急かされて遺品を捨てた」「親の口座から生活費を引き出した」といった行為が、放棄できなくなる原因になりがちです。こうした失敗を「知らずにやってしまった」という方は本当に多く、あなただけではありませんので、まずは落ち着いて対応しましょう。
相続放棄を考えているなら、遺産には一切手をつけないことが鉄則です。
※被相続人:亡くなった方のこと。相続される財産・債務のもとの持ち主を指す。
※法定単純承認:本人の意思にかかわらず、法律上「すべての財産・借金を引き継ぐ」とみなされる状態のこと。
プラスの財産も含めて手放すことになるため、放棄する前に財産の全体像を把握することが何より大切です。判断に迷う場合は、行動する前にご相談ください。
FAQ
Q. 「相続放棄すれば、思い出のある実家だけは残せませんか?」
A. 残念ながらできません。相続放棄をすると、実家を含めたすべての財産を手放すことになります。特定の財産だけを残したい場合は、放棄以外の方法を検討する必要があります。
Q. 「放棄したあとに預金が見つかりました。今から相続に切り替えられますか?」
A. 原則としてできません。家庭裁判所に受理された相続放棄は撤回できないため、放棄前の財産調査が非常に重要です。
Q. 相続放棄のデメリットは?
A. プラスの財産も失い、原則撤回できない点です。財産調査をしてから判断しましょう。
相続放棄後に残る負担・周囲への3つのデメリット
相続放棄は「手続きが終われば、すべての責任から解放される」と思われがちですが、実際にはそうとは限りません。
このセクションでは、放棄したあとにも残る負担や、周囲の親族に及ぶ影響について解説します。放棄の効果を正しく理解し、トラブルを未然に防ぎましょう。
相続放棄しても不動産の管理義務が残る場合
4つ目のデメリットは、相続放棄をしても、状況によっては不動産の管理義務が残ることです。
2023年4月の民法改正により、相続放棄をした時点でその財産を現に占有している場合は、次に管理する人が決まるまで、自分の財産と同じ注意をもって管理する義務があります(民法940条)。
たとえば、親と同居していた実家を相続放棄した場合、放置して倒壊などで近隣に被害が出れば、損害賠償を求められる恐れもあります。
「放棄したから、もう何もしなくてよい」とは限らない点に注意が必要です。管理義務を完全に手放すには、相続財産清算人の選任などの手続きが必要になる場合があります。
参考:民法第940条(相続の放棄をした者による管理)- e-Gov法令検索
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次順位の親族へ借金が移り親族トラブルの原因に
5つ目のデメリットは、自分が相続放棄をすると、借金の返済義務が次の順位の親族へ移ることです。
相続放棄によって相続人でなくなると、相続権は次の順位の人へ移ります。たとえば子ども全員が放棄すれば、被相続人の親や、さらには兄弟姉妹(甥姪)へと相続権が移っていきます。
そのため、自分が放棄したことを知らせないままにしておくと、ある日突然、疎遠だった親族のもとに借金の請求が届く事態にもなりかねません。
「まさか自分に借金の請求が来るなんて」と親族が驚くのも無理はありませんよね。これが親族間のトラブルに発展するケースは少なくありません。放棄する際は、次に相続人となる親族へ事前に連絡する配慮が大切です。
手続きの手間・費用・3ヶ月の期限という負担
6つ目のデメリットは、相続放棄には手続きの手間・費用・3ヶ月という期限の負担が伴うことです。
相続放棄は、家庭裁判所へ「相続放棄申述書」や戸籍謄本などを提出して行います。必要な書類を集める手間がかかり、費用の目安は以下のとおりです。
相続放棄にかかる主な費用
| 項目 | 費用の目安 |
|---|---|
| 収入印紙(申述人1人あたり) | 800円 |
| 郵便切手 | 数百円〜(裁判所により異なる) |
| 戸籍謄本などの取得費用 | 数千円程度 |
| 専門家へ依頼する場合の報酬 | 3万〜10万円程度 |
さらに、相続放棄には「相続の開始を知った日から3ヶ月以内」という期限(熟慮期間)があります。この期間を過ぎると、原則として放棄が認められなくなる点に注意が必要です。
※熟慮期間:相続放棄・限定承認を選択できる期間。原則として相続開始を知った日から3ヶ月以内。
管理義務や次順位の親族への影響まで見据えて動くことが、後々のトラブルを防ぐポイントです。連絡や手続きに不安があれば、早めにご相談ください。
FAQ
Q. 「相続放棄したら、実家の固定資産税はもう払わなくてよいですか?」
A. 放棄によって納税義務は原則なくなりますが、財産を占有している場合は管理義務が残ることがあります。管理を完全に手放すには追加の手続きが必要な場合があります。
Q. 「兄弟に黙って相続放棄しても問題ないですか?」
A. 法律上は連絡義務はありませんが、借金が次順位の親族に移るため、トラブル防止のためにも事前に伝えておくことを強くおすすめします。
Q. 相続放棄の費用は?
A. 収入印紙・切手・戸籍代で数千円、専門家に依頼すると3万〜10万円程度です。
相続放棄のデメリットを回避する3つの方法
ここまで見てきたデメリットは、事前の準備と正しい手順によって、その多くを回避・軽減できます。
このセクションでは、相続放棄で後悔しないための3つの具体的な方法を解説します。「放棄すべきか迷っている」という方こそ、判断の前に確認してください。
財産を調査し単純承認・限定承認と比較する
デメリットを回避する第一歩は、プラスとマイナスの財産をすべて調査し、相続方法を比較することです。
相続には、放棄のほかに次の3つの選択肢があります。
相続の3つの選択肢の比較
| 相続方法 | 概要 | メリット | デメリット |
|---|---|---|---|
| 単純承認 | すべて引き継ぐ | ・財産をすべて取得 | ・借金も全額背負う |
| 限定承認 | 財産の範囲で返済 | ・借金は財産の範囲内 | ・手続きが複雑 |
| 相続放棄 | 一切引き継がない | ・借金を負わない | ・財産も失う |
借金の額がはっきりしない場合は、限定承認が有効なこともあります。財産の全体像がわからないまま放棄すると、プラスの財産まで失う恐れがあります。
まずは預貯金・不動産・借金を丁寧に洗い出し、どの方法が最も損をしないかを見極めましょう。
3ヶ月の熟慮期間内に動き延長申立ても検討
2つ目の方法は、3ヶ月の熟慮期間を意識して早めに動き、間に合わないときは延長を申し立てることです。
相続放棄は「相続の開始を知った日から3ヶ月以内」に手続きをしなければなりません。財産調査に時間がかかり、この期間内に判断できないケースもあります。
そのような場合は、家庭裁判所に「熟慮期間の伸長」の申立てを行うことで、期限を延長できる可能性があります。
「3ヶ月を過ぎそうだから」と諦めて安易に単純承認するのではなく、まずは延長という選択肢があることを覚えておきましょう。
迷ったら司法書士・弁護士など専門家へ相談
3つ目の方法は、判断に迷ったら、早めに司法書士や弁護士などの専門家へ相談することです。
相続放棄は、財産調査・書類収集・期限管理など、慣れない手続きが数多く発生します。自己判断で進めた結果、「遺産に手をつけて放棄できなくなった」という失敗も後を絶ちません。
専門家に相談すれば、放棄すべきかどうかの判断はもちろん、債権者や次順位の親族への対応まで含めてサポートを受けられます。
3ヶ月という限られた期間の中で後悔のない選択をするためにも、少しでも不安があれば早い段階で専門家の力を借りることをおすすめします。
財産調査・期限管理・親族への配慮を、3ヶ月という短い期間の中で正確に進めるために、私たち専門家をぜひご活用ください。
FAQ
Q. 「借金がいくらあるか、どうやって調べればよいですか?」
A. 信用情報機関への開示請求で借入の有無を確認できます。督促状や契約書、通帳の引き落とし履歴も手がかりになります。調査に不安があれば専門家に相談しましょう。
Q. 「限定承認と相続放棄、どちらを選ぶべきか分かりません」
A. プラスの財産を一部でも残したい場合は限定承認、関わりを断ちたい場合は放棄が向いています。ただし限定承認は手続きが複雑なため、専門家への相談をおすすめします。
Q. 相続放棄は自分でできる?
A. 可能ですが期限や書類が複雑なため、専門家に相談すると安心です。
まとめ:相続放棄はデメリットを理解し3ヶ月以内に判断
相続放棄には、プラスの財産も失う・原則撤回できない・管理義務が残る・次順位の親族に借金が移るといった見落としがちなデメリットがあります。
しかし、これらの多くは「放棄する前」の準備で回避できます。財産をしっかり調査し、単純承認・限定承認とも比較したうえで、3ヶ月の期限内に最適な方法を選ぶことが後悔しないための鍵です。
「放棄すべきか判断できない」「借金の額が分からず不安」という方は、ネットの情報だけで自己判断せず、まずは専門家にご相談ください。あいりん司法書士事務所では、あなたの状況に合わせて「今すべきこと」を的確にアドバイスいたします。
相続放棄の期限は「たった3ヶ月」です。手遅れになる前に、まずはお気軽にお声がけください。
【相談無料】相続放棄のデメリットや進め方について、専門家に相談してみる
この記事の監修者

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