この記事を要約すると
- 相続放棄では代襲相続は発生せず、甥姪は相続人にならない
- 兄弟姉妹が先に死亡していた場合のみ甥姪が代襲相続人になる
- 甥姪の相続放棄は自分が相続人と知ってから3ヶ月以内に行う
「兄弟が相続放棄したら、その子である甥や姪に相続権が移るのでは?」
このような疑問をお持ちの方は多いのではないでしょうか。
結論からお伝えすると、相続放棄をしても甥姪に代襲相続は発生しません。
ただし、相続人が被相続人より先に亡くなっていた場合は、甥姪が代襲相続人として相続権を得ることになります。
この記事では、相続放棄と代襲相続の違い、甥姪が相続人になるケースとならないケース、そして甥姪が相続人になった場合の相続放棄の手続きについて詳しく解説します。
この記事はこんな方におすすめ
- 兄弟姉妹が相続放棄した場合に甥姪がどうなるか知りたい方
- 甥姪として代襲相続人になり相続放棄を検討している方
- 相続放棄と代襲相続の違いを正しく理解したい方
相続放棄と代襲相続の違い|甥姪への影響を徹底解説
相続放棄と代襲相続は、どちらも相続に関する制度ですが、その仕組みはまったく異なります。
「放棄したら甥姪に引き継がれるのでは?」と心配される方も多いですよね。
ここでは、それぞれの制度の基本と、甥姪にどのような影響があるのかを解説します。
代襲相続とは?被相続人より先に相続人が死亡した場合の制度
代襲相続※とは、本来相続人になるはずだった人が被相続人より先に亡くなっていた場合に、その人の子どもが代わりに相続人になる制度です。
たとえば、父が亡くなったときに長男がすでに死亡していた場合、長男の子ども(孫)が長男に代わって相続人になります。
この制度は民法887条2項に規定されており、相続人の死亡だけでなく、相続欠格※や廃除※によって相続権を失った場合にも適用されます。
参考:民法第887条(子及びその代襲者等の相続権) – e-Gov法令検索
代襲相続が認められる理由は、本来相続人が受け取るはずだった財産を、その直系卑属※に承継させることで公平性を保つためです。
| 代襲相続の発生原因 | 代襲相続の可否 |
|---|---|
| 相続人の死亡(被相続人より先) | ○ 発生する |
| 相続人の相続欠格 | ○ 発生する |
| 相続人の廃除 | ○ 発生する |
| 相続人の相続放棄 | × 発生しない |
【用語解説】
- ※代襲相続:本来の相続人に代わって、その子どもが相続すること
- ※相続欠格:被相続人を殺害するなど重大な非行により相続権を失うこと
- ※廃除:被相続人への虐待などを理由に、家庭裁判所の審判で相続権を失わせること
- ※直系卑属:子、孫、ひ孫など、直接の血統でつながる下の世代の親族
相続放棄では代襲相続は発生しない|法律上の根拠
相続放棄をした場合、代襲相続は発生しません。
これは民法939条に「相続の放棄をした者は、その相続に関しては、初めから相続人とならなかったものとみなす」と規定されているためです。
参考:民法第939条(相続の放棄の効力) – e-Gov法令検索
相続放棄をすると、その人は最初から相続人ではなかったことになります。
代襲相続は「相続人であった人」の子どもが代わりに相続する制度ですから、最初から相続人でなかった人には適用されません。
つまり、兄弟姉妹が相続放棄をしても、その子である甥姪が代わりに相続人になることはないのです。
あなたの場合、ご兄弟が放棄を検討しているのでしょうか、それともご自身が甥姪の立場でしょうか?
状況によって対応が変わってきますので、まずはご自身の立場を整理してみてください。
| 状況 | 結果 |
|---|---|
| 兄が被相続人より先に死亡 | 兄の子(甥姪)が代襲相続人になる |
| 兄が相続放棄をした | 兄の子(甥姪)は相続人にならない |
甥姪が相続人になるのは兄弟姉妹の代襲相続のみ
甥姪が相続人になるのは、被相続人の兄弟姉妹が相続人となるケースで、その兄弟姉妹が先に亡くなっている場合に限られます。
民法上、相続人になれる順位は以下のとおり決まっています。
参考:民法第889条(直系尊属及び兄弟姉妹の相続権) – e-Gov法令検索
| 相続順位 | 相続人 | 代襲相続 |
|---|---|---|
| 常に相続人 | 配偶者 | なし |
| 第1順位 | 子 | 孫→ひ孫と続く(再代襲あり) |
| 第2順位 | 直系尊属(父母・祖父母) | なし |
| 第3順位 | 兄弟姉妹 | 甥姪まで(再代襲なし) |
甥姪は第3順位である兄弟姉妹の代襲相続人としてのみ相続権を得ます。
第1順位の子や第2順位の直系尊属がいる場合は、甥姪に相続権は発生しません。
FAQ
Q. 代襲相続とは何ですか?
A. 本来の相続人が先に亡くなっていた場合に、その子が代わりに相続する制度です。
Q. 相続放棄で代襲相続は起きる?
A. 起きません。放棄者は最初から相続人でなかったとみなされます。
Q. 甥姪が相続人になる条件は?
A. 被相続人の兄弟姉妹が先に死亡している場合のみです。
甥姪への代襲相続が発生するケース・しないケース
代襲相続の仕組みを理解したところで、実際にどのような場合に甥姪が相続人になるのか、ならないのかを具体的に見ていきましょう。
「うちの場合はどうなるの?」と不安に思われる方も多いですよね。ケース別に整理しましたので、ご自身の状況と照らし合わせてみてください。
| ケース | 甥姪の相続権 | ポイント |
|---|---|---|
| 兄弟姉妹が被相続人より先に死亡 | あり(代襲相続) | 甥姪が相続人になる |
| 兄弟姉妹が相続放棄 | なし | 甥姪は相続人にならない |
| 甥姪も先に死亡(再代襲) | なし | 甥姪の子は相続できない |
兄弟姉妹が被相続人より先に死亡→甥姪が代襲相続人に
被相続人に配偶者も子もおらず、両親も他界している場合、兄弟姉妹が相続人になります。
このとき、兄弟姉妹の中に被相続人より先に亡くなっている人がいれば、その子である甥姪が代襲相続人として相続権を得ます。
【具体例】
被相続人Aさんには配偶者・子・両親がおらず、兄Bと妹Cがいました。
兄BはAさんより先に亡くなっており、兄Bには子ども(甥)のDがいます。
この場合、Aさんの相続人は妹Cと甥Dの2人となり、法定相続分は各2分の1ずつです。
| 相続人 | 続柄 | 法定相続分 |
|---|---|---|
| 妹C | 兄弟姉妹 | 2分の1 |
| 甥D | 代襲相続人 | 2分の1 |
兄弟姉妹が相続放棄→甥姪は相続人にならない
兄弟姉妹が相続放棄をした場合、その子である甥姪は相続人になりません。
先ほど説明したとおり、相続放棄をすると最初から相続人でなかったものとみなされるため、代襲相続の対象にならないのです。
【具体例】
被相続人Aさんには配偶者・子・両親がおらず、兄Bのみが相続人です。
兄Bには子ども(甥)のDがいますが、兄Bが相続放棄をしました。
この場合、甥Dは相続人にはならず、Aさんの相続人は誰もいないことになります。
相続人が誰もいない場合、最終的に遺産は国庫に帰属します。
| 兄Bの行動 | 甥Dの相続権 | 結果 |
|---|---|---|
| 相続放棄をした | なし | 相続人不存在 |
| 被相続人より先に死亡 | あり(代襲相続) | 甥Dが相続人 |
再代襲は認められない|甥姪の子は相続人になれない
兄弟姉妹の代襲相続は甥姪までで終わり、甥姪の子(再代襲)は認められていません。
これは民法889条2項で「887条2項の規定は、前項2号に掲げる者の子について準用する」と定められており、再代襲を認める887条3項は準用されていないためです。この規定は、相続関係が際限なく広がることを防ぐ目的で設けられています。
【具体例】
被相続人Aさんの兄Bは先に亡くなっており、兄Bの子である甥Dも亡くなっています。
甥Dには子どもEがいますが、Eは相続人になれません。
| 相続順位 | 代襲相続 | 再代襲 |
|---|---|---|
| 第1順位(子) | 孫が代襲 | ひ孫が再代襲(認められる) |
| 第3順位(兄弟姉妹) | 甥姪が代襲 | 甥姪の子は再代襲できない |
第1順位の子の場合は再代襲が認められ、孫もひ孫も亡くなっていればその下の世代へと続きます。
しかし、兄弟姉妹の場合は甥姪の一代限りで代襲相続は終了します。
ご自身のケースがどれに該当するか判断に迷う場合は、無料相談で専門家のアドバイスを受けることをおすすめします。
FAQ
Q. 甥姪に相続させたくない場合は?
A. 遺言書を作成して他の人に遺贈する方法があります。
Q. 兄弟全員が放棄したらどうなる?
A. 相続人不存在となり、最終的に遺産は国庫に帰属します。
Q. 再代襲が認められない理由は?
A. 相続関係が際限なく広がることを防ぐためです。
甥姪が相続人になった場合の相続放棄の手続きと注意点
甥姪が代襲相続人として相続権を得た場合でも、相続放棄をすることは可能です。
突然相続人になったと知らされて戸惑う方も多いですよね。
大丈夫です、手続きの流れを理解すれば落ち着いて対応できます。
ここでは、甥姪が相続放棄をする際の手続きと注意点を解説します。
なお、法務省の統計によると、令和4年度の相続放棄申述受理件数は約26万件に上り、年々増加傾向にあります。
相続放棄は決して珍しい手続きではありません。
甥姪の相続放棄は3ヶ月以内|熟慮期間の起算点に注意
相続放棄は、自己のために相続の開始があったことを知った時から3ヶ月以内に行う必要があります。
参考:民法第915条(相続の承認又は放棄をすべき期間) – e-Gov法令検索
甥姪の場合、この「知った時」の起算点に注意が必要です。
代襲相続人である甥姪は、被相続人が亡くなったことを知っただけでは熟慮期間※は始まりません。
自分が代襲相続人として相続権を持つことを知った時から3ヶ月のカウントが始まります。
| 起算点となる時期 | 具体例 |
|---|---|
| 被相続人の死亡を知った時 | × 起算点にならない場合がある |
| 自分が相続人であることを知った時 | ○ 起算点となる |
| 先順位相続人全員の放棄を知った時 | ○ 起算点となる |
たとえば、被相続人の子が全員相続放棄をしたことで、甥姪が相続人になった場合は、その放棄を知った時から3ヶ月となります。
【用語解説】
- ※熟慮期間:相続を承認するか放棄するかを検討するための期間のこと
期限に間に合わない場合は、家庭裁判所に熟慮期間の伸長を申し立てることも可能です。
相続放棄に必要な書類は戸籍謄本など5種類
甥姪が相続放棄をする場合、以下の書類を準備して家庭裁判所に提出する必要があります。
| 必要書類 | 取得先 | 手数料 |
|---|---|---|
| 相続放棄申述書 | 裁判所HPからダウンロード | 収入印紙800円 |
| 被相続人の住民票除票または戸籍附票 | 市区町村役場 | 300円程度 |
| 被相続人の死亡記載のある戸籍謄本 | 市区町村役場 | 450円〜750円 |
| 被代襲者(親)の死亡記載のある戸籍謄本 | 市区町村役場 | 450円〜750円 |
| 申述人(甥姪)の戸籍謄本 | 市区町村役場 | 450円 |
甥姪の場合は、通常の相続放棄よりも戸籍の収集が複雑になります。
被相続人との関係を証明するために、被代襲者(亡くなった親)の戸籍も必要になるためです。
また、郵送で申述する場合は、返信用切手(84円×4枚程度)も必要です。
複数の甥姪がいる場合は全員での放棄手続きを検討
被代襲者に複数の子どもがいる場合、甥姪全員が代襲相続人となります。
相続放棄は各自が個別に行う必要がありますが、全員で放棄する場合は同時に手続きを進めることをおすすめします。
同時申述のメリット
甥姪全員で同時に相続放棄の申述をすると、戸籍謄本などの共通書類を1セットで済ませられる場合があります。
また、手続きの進捗状況を共有しやすく、全員が確実に期限内に放棄を完了できます。
一部の甥姪だけが放棄した場合
甥姪の一部だけが相続放棄をすると、放棄しなかった甥姪の相続分が増加します。
たとえば、甥A・甥B・姪Cの3人が代襲相続人で、甥Aだけが放棄した場合、甥Bと姪Cの相続分はそれぞれ2分の1ずつになります。
| 状況 | 甥Aの相続分 | 甥Bの相続分 | 姪Cの相続分 |
|---|---|---|---|
| 全員が相続 | 3分の1 | 3分の1 | 3分の1 |
| 甥Aのみ放棄 | なし | 2分の1 | 2分の1 |
一部の人だけが放棄すると、残った人に債務が集中してしまいます。事前に甥姪間で話し合いをすることが大切です。
FAQ
Q. 甥姪の相続放棄の期限は?
A. 自分が相続人と知った時から3ヶ月以内です。
Q. 相続放棄の費用はいくら?
A. 収入印紙800円と戸籍取得費用で3,000円程度です。
Q. 期限に間に合わない場合は?
A. 家庭裁判所に熟慮期間の伸長を申し立てることができます。
まとめ
相続放棄と代襲相続は混同されやすい制度ですが、結果はまったく異なります。
相続放棄をしても代襲相続は発生しないため、兄弟姉妹が相続放棄をしても甥姪は相続人になりません。
一方、兄弟姉妹が被相続人より先に亡くなっていた場合は、甥姪が代襲相続人として相続権を得ます。
また、兄弟姉妹の代襲相続は甥姪の一代限りで、甥姪の子(再代襲)は認められていません。
甥姪が相続人になった場合でも、自分が相続人であることを知ってから3ヶ月以内であれば相続放棄は可能です。
ただし、戸籍収集が複雑になりやすく、手続きに時間がかかるケースも少なくありません。
「自分のケースはどうなるのか分からない」「期限内に手続きを終えられるか不安」という方は、お早めに専門家へご相談ください。
当事務所では無料相談を実施しておりますので、お気軽にお問い合わせください。
この記事の監修者

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