この記事を要約すると
- 生前に相続放棄はできない
- 特定の人物に財産を相続させたくない場合、遺言書の作成と相続人廃除という手段がある
- 遺留分の放棄は生前にできる
相続とは、亡くなった方(被相続人)の財産上の権利や義務を承継することです。相続は民法で様々なルールが定められており、非常に複雑ですが、いざというときに確実に対処をしなければならない問題となります。
相続放棄は相続財産の分配など遺産相続に関する問題を解決する方法の一つですが、生前には相続放棄を行うことはできないことを皆様ご存知でしょうか?
なぜなら、相続放棄は相続人としての地位を放棄する行為であり、相続人が死亡したのちに、初めて申述しうるためです。
今回は相続放棄に関する基礎知識や生前に相続放棄ができない理由、財産を特定の相続人に渡さない方法について、分かりやすくご紹介いたします。
また、生前の遺留分の放棄についても考察し、遺言書の作成や相続人廃除といった手続きが必要な場合についても触れていきます。
これらの内容は、遺産相続の問題が発生したときに、基本的な知識として備えておくと非常に安心です。
いざというときにどう対処するべきか分からない方や遺産相続をスムーズに行いたい方は、家族間のトラブルを防ぐためにも、是非ともこの記事を参考にしてください。
生前のうちに相続放棄することはできない
相続放棄とは
相続放棄とは、亡くなった人(被相続人)の財産を受け継ぐことを拒否することです。
例えば、両親のどちらかが亡くなった後、その財産が家族などの相続人に相続されますが、相続放棄をすることで、その財産を受け取らないという選択ができます。
これは、例えば親族間のトラブルや負担を避けるために行われることがあります。相続放棄をすると、その人ははじめから相続人として扱われなくなります。
つまり、財産を受け取る人のリストから外れるのです。
相続放棄を行う際には、法律で定められた手続きに厳密に従う必要があります。一般的には、相続開始から3ヶ月以内に、相続放棄の手続きを行う必要があります。
この手続きには、被相続人の最後の住所地の家庭裁判所に対して、相続放棄の届出書を提出するという形式が取られます。相続放棄をすると、その人は相続人としての権利を放棄することになります。つまり、財産を受け取る権利を喪失します。
そして相続放棄を行った場合、財産だけでなく、その人が負担している借金や他の債務などの負債も相続しません。この点は注意が必要です。
したがって、相続放棄を検討する際には、財産だけでなく、借金や債務の状況も慎重に考慮することが重要です。
相続放棄の効果
相続放棄をした場合、その人は亡くなった人(被相続人)の財産を受け取る権利を放棄することになります。相続人としての地位を失い、財産の分割を受ける人のリストから外れます。
そして、財産に関する権利や義務も失うことになります。
生前に相続放棄はできるか?
一般的に、生前に相続放棄をすることはできません。それは相続放棄が相続人としての地位を放棄する行為であり、相続人が死亡した後に行うものであるからです。
生前に相続放棄をすることが困難である具体的な理由は、生前に自分の死後の相続に関する決定を行うことが法的な観点から非常に複雑であり、またその財産がどのように分配されるかなどを正確に予測することが難しいからです。
そのため、相続放棄は通常、被相続人が死亡した後に行われるものとされています。
特定の人物に財産を相続させない方法
遺言書を作成する
遺言書は、自分が亡くなった後に残された財産を誰にどのように分割するかを指定する文書のことです。遺言書を作成することで、自分の意思に基づいて財産を配分することができます。
特定の人物に財産を相続させたくない場合や特定の人物に遺産を集中させたい場合には、遺言書にその旨を明確に記述しないといけません。
このような遺言書を作成することで、特定の人物に財産を相続させないことが可能です。ただし、遺言書を作成し、財産の相続の分割に関する記述をするときには、遺留分の侵害に注意しなければなりません。
遺留分とは、亡くなった人(被相続人)の財産を分配する際に、兄弟姉妹を除く法定相続人(配偶者・子・直系尊属)が受け取る権利の最低限の部分を指します。
つまり、亡くなった人(被相続人)が遺言書などで特定の相続人にのみ財産を分配するという記述をしていた場合でも、遺言書の内容が全て有効になるわけではなく、遺留分侵害請求を受けることがあります。
遺留分は、亡くなった人(被相続人)の財産を合法的かつ公平に相続人に分配するために法律で定められているものなので、遺言書などでこれを完全に無視することはできません。
相続人廃除を行う
相続人廃除とは、法的な手続きによって相続人の地位を剥奪することです。これは、特定の理由に基づいて相続人としての地位を無効にする手続きです。
相続人廃除となったその人物は法的に相続人として排除され、遺産相続の対象から外れます。
具体的な条件としては、相続人となることによって法律上の義務が生じることを妨げる重大な事情(例:被相続人を虐待していた、被相続人に対して重大な屈辱を与えた)や、相続人となることが公序良俗に反する場合(例:財産を目的とした婚姻、財産目当ての養子縁組)などがあります。
相続人廃除が認められた場合、その相続人廃除をされた人物は一切の相続権や遺留分を請求する権利も失います。
また相続人廃除を行うには、亡くなった方(被相続人)の住所地を管轄する家庭裁判所での申立て手続きを経ないといけません。
その場合、法的な専門知識が必要になる場合が多いため、司法書士や弁護士などの専門家の助言を受けた上で行ったほうが良いでしょう。
生前に遺留分の放棄はできるのか?
生前に遺留分を放棄することは、一般的には難しいものの、裁判所の許可を得た場合は遺留分の放棄が可能となります。
ただ遺留分は法律によって厳格に定められており、司法的な判断が求められるため、遺留分の放棄を検討する際は司法書士や弁護士など専門家に相談すると良いでしょう。
遺留分の放棄とは、一定範囲の法定相続人に認められた最低限の遺産の取り分である遺留分の権利を放棄することを言い、具体的には「遺留分を受け取らない」「遺留分を請求しない」ことを意味します。
相続放棄と似ていますが、死後に手続きをしないといけない相続放棄と異なり、遺留分の放棄は生前でも可能で、また遺留分放棄の場合は相続権は残ります。
要は、遺留分放棄をしても法定相続分や指定相続分を受け取れる可能性はありますが、相続放棄をしてしまうと一切の財産を受け取ることはできなくなるという点が異なっています。
その結果、遺留分放棄によって他の相続人の遺留分が増えることはありませんが、相続放棄は相続人が最初から1人いなかったものと見なすため、他の相続人の相続分や遺留分が増える場合があります。
また遺留分の放棄をする場合は、亡くなった方(被相続人)の生前では裁判所の許可が必要となるが、死後は自由に放棄を選択することができます。
死後の遺留分放棄は、相続人間で遺留分放棄の意思が伝わればよいものの、安易に遺留分を放棄して、後からやっぱり財産の一部が欲しいとなってしまうと大きなトラブルになりかねないため、遺留分放棄をする際には文書などを作成するのが無難でしょう。
まとめ
この記事では相続放棄に関する内容について解説しました。各々の方法には注意点もあり、慎重な判断が必要です。
また遺産相続には、民法など複雑なルールが絡むことが多いため、専門的な知識を有している人間に頼るのが一番だと言えます。
まずは司法書士などの専門家に無料相談をすることをおすすめします。小さな相談にも応じますので、不明点がある方は、是非とも相談してください。
この記事の監修者
遺産相続の無料相談
横浜市の相続・遺言に関するご相談ならあいりん司法書士事務所へ。
相続のご相談は完全無料です。【横浜駅徒歩4分】 横浜市内で財産・不動産の相続・相続放棄・終活にお悩みの方はお気軽にご相談ください。
横浜での相続に精通したプロチームが、相続法務から税務にいたるまでお客様をフルサポートします。
この記事を読んだ方はこちらの記事も読んでいます