この記事を要約すると
- 相続開始後3年以内に登記しないことは違法。しかし、即座に過料が科せられるわけではなく、まず法務局からの催告が前提
- 催告に正当な理由を示せば免れるケースもある
- 過料は行政上の制裁であり、不払いの場合は督促や差し押さえの対象となりうるものの、刑事罰ではない
- 過料納付だけで相続登記義務が消滅するわけではなく、本来の登記義務は残る
令和6年4月1日からの相続登記義務化により、不動産を取得した相続人は相続開始や遺産分割成立から3年以内の登記申請が義務付けられます。
これを怠ると10万円以下の過料が科せられることになります。過料を軽く見て放置すれば自ら災いを招く結果となりかねません。制度の内容をしっかり理解して、財産を安全に管理するにはどうしたらいいのでしょうか。
今回は相続登記義務化に伴う罰則について見ていきたいと思います。
相続登記義務化の罰則(過料)
そもそも過料とは?
過料とは、法律に違反した場合に科される罰金の一種です。
主な特徴は以下の通りです。
- 犯罪ではない違法行為に対して科される比較的軽い罰金
- 刑事罰ではなく行政罰の一つ
- 金額は法律で定められていることが多い
- 交通違反の反則金などが代表的な例
つまり、犯罪にあたるほど重大ではない違法行為に対する比較的軽い制裁措置として、法律の規定に基づいて金銭的な罰を科しているものが過料です。
相続登記の義務を怠り3年経つとすぐに過料?
3年の期限後に即座に過料が科せられる訳ではありません。
期限内(相続開始を知り、所有権取得を知った日から3年以内)に相続登記を怠ったとしても、法務局からの申請催告があり、裁判所の決定があるまでは過料は科せられません。
法務局が裁判所へ過料通知を行う前提として、まず義務違反者に対する申請催告が必要となります。
過料が科されるまでの手続きは?
過料が科せられるまでの手続きの流れは、以下の通りです。
- 登記官が相続登記義務に違反した者を職務上把握した場合、違反者に申請を催告します。
- 催告に対して正当な理由なく応じない場合、登記官は裁判所に過料事件を通知します。
- 催告に応じれば過料通知を免れることができます。
- 通知を受けた裁判所が、過料を科すか否か、10万円以下の範囲で金額を判断することになります。
以上の通り、手続きの流れとして、1申請催告、2裁判所への通知、3過料決定、という順を踏むことになります。
申請の催告の方法は?
申請催告は、原則として書留郵便等で送付される催告書により行われます。
催告書には、相続登記申請を求める内容に加え、申請すべき不動産の情報や申請期限のほか、正当な理由がある場合にはその旨と具体的な事情の申告を求める記載もされます。
催告書の様式は不動産登記規則によって規定されているため、一定の書式が用いられます。
「正当な理由」とは?
「正当な理由」が認められる場合として、以下が例示されていますが、これらに該当しないケースでも、個別事情に応じて正当性が認められることがあります。
- 相続人が多数であるなど書類収集や把握に時間がかかる場合
- 遺言の効力や遺産範囲に関する法的問題があり、相続財産の帰属が明確でない場合
- 義務者自身が病気などの事情を抱えている場合
- 配偶者からの暴力等により義務者の生命・身体に危害が及ぶ恐れがある場合
- 経済的困窮により登記費用の負担が困難な場合
個別の事情に応じて総合的に正当性が判断されるため、上記に限定されるものではないことに留意が必要です。
登記官が申請の催告を行う端緒とは?
登記官が申請催告に踏み切る契機となる端緒事由は、以下の限定的なものに限られます。
- 相続人が遺言書を提出して所有権移転登記を申請した場合で、当該遺言書に他の不動産についても相続人への遺贈や承継が記載されていた場合
- 相続人が遺産分割協議書を提出して、その内容に基づく所有権移転登記を申請した場合で、当該協議書に他の不動産についても相続人への取得が記載されていた場合
つまり、提出された書類から他の不動産における相続登記義務違反が明らかな場合に限って、登記官が申請催告に踏み切ることができるということです。
相続登記せず、課せられた過料も支払わないとどうなる?
過料は、行政上のルール違反に対する金銭的制裁です。刑事罰とは異なり、不払いの場合に労役場留置や自由刑の対象とはなりませんが、督促や財産差し押さえの対象となるというリスクがあります。
つまり、過料は刑罰法規上の罰金とは性格を異にするものの、払わないことには一定の強制力が伴う行政上の制裁措置であるといえます。この点を理解した上で、過料の払込期限を遵守する必要があるでしょう。
過料さえ払えば、相続登記しなくてもいいですか?
過料は、相続登記義務違反に対する制裁措置であり、過料の支払いによってその義務が免責されるわけではありません。つまり、過料を納付した後も、相続登記をするという本来の義務が残されたままです。
したがって、過料納付とは別途、相続登記の手続きを行う必要があることに注意が必要です。
過料の支払いはあくまで違反行為への制裁的措置であって、その義務の履行を代替するものではないのです。この点を誤解なく理解しておくことが大切です。
まとめ
相続登記義務化の罰則について、相続開始後3年以内に登記しないことは違法ですが、即座に過料が科せられるわけではなく、まず法務局からの催告が前提となります。
催告に正当な理由を示せば免れるケースもあります。
過料は行政上の制裁であり、不払いの場合は督促や差し押さえの対象となりうるものの、刑事罰ではないことに留意が必要です。
また、過料納付だけで相続登記義務が消滅するわけではなく、本来の登記義務は残ります。
過料を支払ったからといって相続登記をしなくて良いわけではないことに注意しましょう。
相続登記を放置すると集める書類も増えて手続きが大変になります。相続登記を怠ることなく、適正に手続きすることが重要です。財産をきちんと登記して、安全に管理していきましょう。
この記事の監修者
遺産相続の無料相談
横浜市の相続・遺言に関するご相談ならあいりん司法書士事務所へ。
相続のご相談は完全無料です。【横浜駅徒歩4分】 横浜市内で財産・不動産の相続・相続放棄・終活にお悩みの方はお気軽にご相談ください。
横浜での相続に精通したプロチームが、相続法務から税務にいたるまでお客様をフルサポートします。