この記事を要約すると
- 相続登記のオンライン申請は手続きの簡素化を図る新方式。書類提出や手数料支払いをオンラインで行い、自宅から申請可能。
- 提出期限や納付期限に注意。関連書類は受取後3日以内に提出し、税金支払いは申請翌日までに完了させる必要がある。
- 提出書類の誤りや不足に注意。修正が必要な場合、補正手続きを迅速に行い、相続関係の解説図にも注意し正確に作成する。
相続で不動産を受け継いだら、名義変更のために相続登記を申請しなければなりません。しかし、法務局に出向くのは面倒だし、遠方にある不動産の登記をするのは大変です。
そんなときに便利なのがオンライン申請です。自宅からパソコンで相続登記を申請できる方法とそのメリット、注意点をわかりやすく解説します。
相続登記のオンライン申請とは
相続登記のオンライン申請は、インターネットを利用して、相続に関する不動産の登記手続きを行う新しい方法です。
これまでの手続きは、実際に登記所に足を運び、書類を提出する必要がありましたが、オンライン申請を利用することで、その手間が大幅に削減されます。
相続登記のオンライン申請のメリット
自宅から申請できる
オンライン申請の最大のメリットは、自宅やオフィスからでも申請ができる点です。従来の方法では、登記所に直接行って手続きをする必要がありました。
これには時間や交通費がかかり、特に遠方に住んでいる方や忙しい方にとっては大変な負担でした。しかし、オンライン申請を利用することで、これらの手間や費用を省くことができます。
21時まで申請が可能
日中に時間が取れずに法務局になかなか行けない人も、オンライン申請を利用すれば21時まで申請手続きを行うことができます。
オンライン申請システムの申請可能時間は平日8時30分〜21時です。オンライン申請は21時まで申請できるので、多忙な現代人の生活スタイルに合わせた非常に便利な制度と言えるでしょう。
相続登記のオンライン申請の手順
続いて相続登記のオンライン申請手順を10手順で解説します。
手順1:必要書類を集める
まず始めに、相続登記のオンライン申請を行うためには、いくつかの必要書類を集める必要があります。
具体的には以下の書類が必要です。
必要書類 | 取得場所 |
被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本、改製原戸籍等 | 被相続人の本籍地の市・区役所等 |
被相続人の住民票の除票 | 被相続人の最終住所地の市・区役所等 |
相続人の戸籍妙本 | 相続人の本籍地の市・区役所等 |
遺産分割協議書 | 相続人が作成(相続人全員の署名と実印での捺印が必須) |
相続人の印鑑証明書 | 相続人の住所地の市・区役所 |
不動産を取得する相続人の住民票 | 相続人の住所地の市・区役所 |
固定資産評価証明書 | 不動産所在地の市・区役所や市・都税事務所 |
手順2:パソコンなどの準備
オンラインでの手続きを進める際にはパソコンが必要です。OSはできればWindows11か10が良いでしょう。
続いて、「登記・供託オンライン手続きポータル」のページにアクセスして、利用者データの登録(ユーザーIDとパスワードの設定)を実施し、対応した申請専用総合ソフトをパソコンに導入します。
オンラインでの手続きには、申請情報や添付情報への電子署名、電子証明書の送付が求められます。このため、電子証明書付きのマイナンバーカードと、ICカードの読み取り装置の用意が必要になります。
まだマイナンバーカードを所持していない方は、ご自身の住む市(または区)役所で、署名用電子証明書入りのマイナンバーカードを取得しましょう。
すでにカードは持っているが、電子証明書が含まれていない方は、市(区)役所を訪問し、後から電子証明書を追加してもらう手続きが可能です。ICカードの読み取り装置に関しては、マイナンバーカードと適合するタイプを選ぶようにしてください。
手順3:相続関係説明図の作成
オンライン申請では、PDFファイルなどの電子データで作成された「登記原因証明情報」を送信する必要があります。
「登記原因証明情報」の書類をすべてデータにするのは手間がかかります。そのため、相続関係説明図を作成しておくととても便利です。
相続関係説明図は、相続人が誰であるか、どのような関係にあるかを示す図です。これを作成することで、相続の流れや関係性を明確にすることができます。
手順1で集めた資料をもとにWordやExcelなどで相続関係説明図を作成し、PDF化しましょう。
手順4:申請情報の入力
オンライン申請用総合ソフトにログインし、「申請書作成」から登記申請書(権利に関する登記)(4)所有権移転(相続)【署名要】」を選択して、必要な情報を入力します。
これには、故人の情報や相続人の情報、物件の情報などが含まれます。
物件情報の入力はオンライン物件検索と直接入力がありますが、間違いを防ぐためにもオンライン物件検索を利用して入力するとよいでしょう。
手順5:添付情報の添付と電子署名
以下の流れに沿って、相続関係説明図のPDFファイルを添付します。
- 「ファイル添付」をクリック
- 「相続関係説明図」のPDFを添付
- 「署名付与」ボタンをクリック
- プレビューして最終確認を行う。
添付する流れは簡単ですが、間違いのないようにプレビューで最終確認を行いましょう。
手順6:申請情報の送信
すべての情報を入力して確認を行ったら、申請情報を送信します。法務局で申請が受け付けられると「受付確認」のボタンが表示されます。
このボタンをクリックすると「受付のお知らせ」が表示されますので、「受付のお知らせ」を印刷しておきましょう。
「受付のお知らせ」に記載された受付年月日と受付番号は、申請した案件を特定するためにも必要になります。
手順7:登録免許税の納付
申請を行った後、登録免許税の納付が必要です。
納税方法は以下の3つがあります。
- 電子納付
- 現金納付
- 収入印紙による納付
1.の電子的な方法での納付を選んだ場合、申請の日を含めた2日間の間に、申請用のソフトウェア内の「納付」から手続きを進めることが必要です。
この電子的な方法は、オンラインを通じた申請をした際だけが対象で、窓口や郵便での申請の際には使用することはできません。
2.の場合、法務局での直接の現金受付は実施されておらず、指定された金融機関や税務署を利用して、登録免許税に該当する料金を支払う際に、領収書を受け取る必要があります。
その後、領収書は申請の際に使用する「登録免許税納付書類」に添付し、法務局に提出する手続きが求められます。
3.の収入印紙を利用した納付の場合も、同じ「登録免許税納付書類」に収入印紙を貼り付けて提出する流れとなります。
手順8:添付書面の送付
オンラインでの申請が完了した後、戸籍藤本等の必要な書類の原本を法務局へ持参もしくは郵送する必要があります。
用意するものは以下の通りです。
- 「書面により提出した添付情報の内訳表」
- 手順1で集めた書類一式
- 手順3で作成した相続関係説明図
- 切手を貼付した返信用封筒(※郵送での返却を希望する方のみ)
- 「登録免許納付用紙」(※電子納付以外を選択した場合のみ)
手順1で収集した文書や手順3で整備した相続関係の図を、申請の日から3日以内に法務局まで直接持参するか、もしくは郵便で送ります。
もし郵送を選ぶなら、簡易書留やレターパックプラスでの発送がお勧めです。
送付する際の詳細として、まず、申請専用総合ソフトから「書面により提出した添付情報の内訳表」を印刷し、用紙の押印蘭に捺印(認印)します。
捺印した内訳表を表紙にして関連する文書全体をホッチキスやクリップで束ねます。
もし、登記が終わった後に、登記情報や返却される原本を郵便で受け取りたい場合は、必要な料金分の切手が貼られた返信用の封筒(レターパックプラスも使用可)を同封してください。
手順9:完了確認
申請した情報に間違いがなければ、申請から1〜2週間ほどで登記が完了します。
申請についての完了予定日などは法務局のホームページやオンライン申請をした場合は申請用総合ソフトで申請した内容の処理情報を確認できます。
「手続き完了」と表示されていれば登記が完了しています。
手順10:登記識別情報通知などの受領
最後に、登記識別情報(12桁の数字と記号)の通知が届きます。これにより、正式に相続登記が完了したことが確認できます。通知が届いたら、大切に保管しておきましょう。
以上が、相続登記のオンライン申請の手順となります。一つ一つの手順を丁寧に行い、必要な書類や情報を正確に提供することで、スムーズに手続きを進めることができます。
相続登記のオンライン申請での注意点
相続登記のオンライン申請はとても便利ですが、注意する点もいくつかあります。ここでは3つをご紹介します。
送付(持参)期限、納付期限に注意!
先述した手順でも解説しましたが、関連する書類は受け取りの日から3日以内に法務局へ郵送もしくは直接持って行く必要があります。
さらに、登録免許税をオンラインで支払う際は、申請後翌日までに支払いを終える必要がございます。
期限内に支払わなかった場合、申請が却下されるリスクがありますので、書類の提出やオンラインでの税金の支払いは迅速に対応することをお勧めします。
「 補正のお知らせ」に注意!
提出内容や関連文書に誤りや不足が見られた際、法務局より「補正のお知らせ」が送られてきます。
申請に関する軽微なミスでも法務局での修正は行われないため、提出者自身が補正情報を作り、それに電子署名をして再送が求められます。
さらに、戸籍謄本などの不足や、遺産の分割に関する協議書の修正が必要な場合にも同じく補正の連絡が届くことになります。
この時には、新たに提出したり、元の文書を更新して提供する必要が生じます。この補正手続きにも締め切りが存在し、指定された期間内に対応を取らない場合、申請が却下されるリスクがあります。
相続関係説明図に間違いがあるとやり直しに
オンラインでの提出の際、提供された登記原因の証明資料(相続関係の解説図)のPDFファイルを再アップロードや置き換えることはできません。
したがって、相続関係の解説図にミスや不足が存在する場合、それを修正(訂正)することは許可できず、申請の手続きを最初から再開する必要が生じます。
相続関係の解説図は正確に作成することが重要です。
まとめ
オンライン申請を利用すれば、法務局に出向く必要がなく、遠方の不動産の登記も自宅から行えます。
しかし、オンライン申請にはパソコンやマイナンバーカード、電子証明書などの準備が必要で、申請情報や相続関係説明図を送信するだけでなく、添付書面の提出や登録免許税の納付も別途行わなければなりません。
また、申請情報や添付書面に不備がある場合は申請が却下される可能性があるため不備のないように一つ一つ確認を行いましょう。
オンライン申請は便利な制度ですが、パソコン操作が苦手な人やシステム環境が整っていない人は専門家に依頼することをおすすめします。
この記事の監修者
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