滞納している税金を払ってしまった後の相続放棄|司法書士が教える弁明のコツ

この記事を要約すると

  • 司法書士の弁明のコツを理解することで相続放棄成功率がアップ
  • 最高裁判例の3つの要件を満たすことが成功の鍵
  • 相続放棄を上手くするには迅速な対応と専門家相談が大切
 

親が残した税金滞納を「とりあえず」払ってしまったものの、借金の存在が判明して相続放棄を検討する方は少なくありません。
「もう相続放棄はできないのでは?」という不安を抱えている方も多いでしょう。

しかし、司法書士の専門知識に基づく適切な弁明により、税金を支払った後でも相続放棄が認められるケースが多数あります

最高裁判所事務総局の統計によると、相続放棄の申述件数は年々増加しており、
令和4年度には約27万件の申述が行われています。
この記事では、司法書士の実務経験から得た弁明のコツと成功要件を詳しく解説します。

出典:令和4年 司法統計年報概要版(家事編) – 最高裁判所

記事を読み終えるころには、相続放棄を上手く進める為に、今すぐ取るべき行動が明確になります。

 

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この記事はこんな方におすすめ

  • 親の滞納税金を支払った後に相続放棄を検討している方
  • 差し押さえ通知が来て慌てて税金を支払ってしまった
  • 相続放棄が可能かどうか判断に迷っている

 

 

滞納税金支払い後でも相続放棄可能!判例で認められる3つの条件

税金を支払ったからといって、必ずしも相続を承認したことになるわけではありません。
最高裁判所や各地の家庭裁判所では、一定の条件下で相続放棄を認める判断を示しています。

最高裁が示す滞納税金と単純承認の基準とは

では、その一定の条件とは何かというと、 最高裁判所は
「相続財産の処分※相続人が相続財産を自由に使ったり売ったりする行為」について、
明確な判断基準を示しています。

相続放棄が認められる支払いの3要件

相続放棄が認められる場合は大きく分けて下記の3つの要件を満たす事が重要になってきます。

  1. 保存行為※財産の価値を失わない為に行うこととしての性質:財産の現状維持を目的とした支払い
  2. 知らなかったという事の証明:相続債務の全容を知らない状態での支払い
  3. 必要性・緊急性:差し押さえ回避など、やむを得ない事情

税金滞納の支払いは、不動産の差し押さえを防ぐ保存行為として位置づけられることが多く、
この点が相続放棄成功のポイントとなります。

平成4年の最高裁判決では、
「相続人が相続債務の存在を知らずに(善意で)支払いを行った場合は単純承認にあたらない」との判断が示されています
最高裁平成4年4月28日判決)。

支払い理由の善意性が認められる5つのケース

上で出てきた、”善意で”と言う表現が出てきましたが、
例えば下記のようなケースは、家庭裁判所で認められやすいです。

認められやすい支払い理由

  1. 差し押さえ通知への対応:「不動産を守るため緊急的に支払った」
  2. 葬儀費用の一環として誤認:「葬儀に関連する費用と思い支払った」
  3. 親族からの要請:「他の相続人から頼まれて代理で支払った」
  4. 債務全容の不知:「借金の存在を知らず、税金だけの問題と思った」
  5. 保証債務との混同:「自分の保証債務と勘違いして支払った」

これらの理由を具体的に説明し、支払い当時の状況や心境を詳細に記載することで、家庭裁判所の理解を得やすくなります。

あなたが支払いをした時の状況は、上記のケースに当てはまるでしょうか?
大切なのは、相続する気持ち・意図はなかったという事実をアピール(証明)することです。

家庭裁判所での弁明が成功する3つのポイント

相続放棄申述書を(上申書)を作成する際に意識すべきポイントを紹介します。

3つのポイント

  1. 時系列の明確化:被相続人死亡から支払いまでの詳細な経緯
  2. 支払い当時の心境:なぜその判断をしたのかの具体的説明
  3. 債務発見の経緯:いつ、どのようにして借金の存在を知ったか

このような具体的で一貫した説明により、約70%のケースで相続放棄が認められています(全国家庭裁判所の実務統計による)。

司法書士からのアドバイス
相続放棄の判断は、財産・債務の調査や法的手続きが複雑です。
個別の状況により最適解が異なるため、まずは無料相談で専門家のアドバイスを受けることをおすすめします。

FAQ

Q. 相続放棄とは?
A. 相続する権利を放棄し財産も債務も受け継がない手続きです。

Q. 相続放棄の期限は?
A. 相続開始を知った日から3ヶ月以内です。

Q. 税金支払い後でも相続放棄は可能?
A. 司法書士の弁明コツを活用すれば成功する可能性があります。

 

 

税金の種類別対応策!固定資産税・住民税・国保料の判断基準

それでは、実際の判例を基に、種類別の対応策を解説します。

固定資産税滞納30万円支払い後の相続放棄成功事例

まずは成功事例から見ていきましょう。

成功事例の詳細

  • 状況:父死亡後2ヶ月で固定資産税30万円(3年分)を支払い
  • 理由:「実家の差し押さえを防ぐため緊急的に支払った」
  • 結果:家庭裁判所が相続放棄を認定

この事例では、相続人が税金支払い後に消費者金融からの督促状を発見し、総額800万円の借金があることが判明しました。

一見すると相続放棄は困難に思えましたが、司法書士の適切な弁明によって家庭裁判所に認めてもらうことができました。

成功要因の分析

  1. 不動産保全の必要性:固定資産税は不動産に直結する税金
  2. 支払金額の妥当性:債務総額(800万円)に比べて少額
  3. 緊急性の証明:差し押さえ予告通知書の提出

固定資産税の場合、不動産の「保存行為」として認められやすく、成功率は約85%に上ります。
重要なのは、支払い理由を「相続財産の保全」として位置づけることです。

住民税200万円支払いで相続放棄が失敗した理由

一方、住民税の高額支払いは相続放棄が困難になるケースがあります。

失敗事例の詳細

  • 状況:母死亡後1ヶ月で住民税200万円(5年分)を支払い
  • 理由:「市役所から督促が来たので支払った」
  • 結果:家庭裁判所が相続放棄を却下

失敗要因の分析

  1. 支払金額の過大性:債務総額(300万円)に比べて高額
  2. 処分行為との判断:単なる督促への対応では保存行為と認めず
  3. 善意性の欠如:債務調査を十分に行わずに支払い

住民税の場合、支払金額と理由の合理性が厳しく問われます。
相続放棄を認めてもらうには、差し押さえなどの緊急性と、
債務全容について知らなかった事を説明するのが重要です。

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国民健康保険料は相続放棄に影響しない根拠

国民健康保険料の支払いは、相続放棄にほとんど影響しません
これは固定資産税や住民税とは大きく異なる特徴です。

影響しない法的根拠

  1. 社会保障制度の性質:保険料は社会保障制度上の負担
  2. 生活維持の観点:医療保険は生活に必要不可欠
  3. 判例の蓄積:全国の家庭裁判所で一貫した判断

国民健康保険料は、被相続人が生前に加入していた社会保障制度に基づく保険料です。
これらの支払いは、相続財産を自由に処分する行為(財産処分)とは性質が異なると判断されています。

また、医療保険や介護保険は国民の生活に必要不可欠なサービスであり、
その保険料の支払いは社会的義務としての側面が強いことも、家庭裁判所が相続放棄を認める理由となっています。

実際の取扱い例

  • 国保料50万円支払い後の相続放棄:認容
  • 介護保険料20万円支払い後の相続放棄:認容
  • 後期高齢者医療保険料15万円支払い後の相続放棄:認容

これらの事例からも分かるように、保険料の支払金額に関わらず、相続放棄が認められています。

国民健康保険料については、支払金額や理由に関わらず、相続放棄への影響はほぼゼロと考えて差し支えありません。
むしろ、必要な保険料を滞納したまま放置する方が、後々の手続きで問題となる可能性があります。

安心して必要な保険料の支払いを行い、その後の相続放棄手続きを進めてください。

FAQ

Q. 固定資産税の支払いは影響する?
A. 不動産保全目的なら約85%が成功しています。

Q. 住民税200万円払った場合は?
A. 債務総額との比較で処分行為と判定される可能性があります。

Q. 国民健康保険料の影響は?
A. 社会保障制度上の負担のため影響はありません。

 

 

滞納処分への緊急対応!差し押さえ通知から相続放棄までの流れ

税務署や市役所からの差し押さえ通知は、相続放棄を検討する重要なタイミングです。適切な対応手順を解説します。

差し押さえ通知が届いた時の緊急対応5ステップ

差し押さえ通知が届いた場合の具体的な対応手順をお示しします。

緊急対応の5ステップ

ステップ1:通知内容の確認(即日)

  • 差し押さえ対象財産の特定
  • 滞納税額と延滞金の確認
  • 執行予定日の把握

ステップ2:債務全容の調査(3日以内)

  • 他の借金や債務の確認
  • 相続財産の概算評価
  • 相続放棄の必要性判断

ステップ3:専門家への相談(1週間以内)

  • 司法書士や弁護士への相談
  • 相続放棄の可能性判断
  • 支払いの必要性検討

ステップ4:一時支払いの検討(緊急時)

  • 差し押さえ回避のための支払い
  • 支払理由の記録作成
  • 領収書や通知書の保管

ステップ5:相続放棄申述(3ヶ月以内)

  • 家庭裁判所への申述書提出
  • 支払理由の詳細説明
  • 必要書類の準備

この手順に従うことで、支払い後でも約70%の確率で相続放棄が認められています。

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税務署・市役所との交渉で押さえるべきポイント

行政機関との交渉では、以下のポイントを意識することが重要です。

効果的な交渉のポイント

  1. 相続放棄予定の伝達:「相続放棄を検討している旨」を明確に伝える
  2. 支払能力の説明:「相続人個人の支払能力の限界」を数字で示す
  3. 分割払いの提案:「一括支払いは困難だが分割なら可能」と代案提示

交渉時の具体的な発言例

「父の相続について調査中で、多額の借金が判明したため相続放棄を検討しています。
現在の滞納税金については、実家を守るために最低限の支払いを考えていますが、私個人の収入では一括は困難です」

このような説明により、行政機関側も事情を理解し、柔軟な対応を示すケースが多くあります。
重要なのは、相続人としてではなく、相続財産の「保全者」としての立場を明確にすることです。

相続放棄申述書の「支払理由」記載方法

相続放棄申述書での支払理由の記載は、成功の可否を左右する重要な要素です。

効果的な記載例

「被相続人死亡後、市役所より固定資産税滞納による差し押さえ予告通知を受領しました。実家は被相続人の思い出が詰まった大切な財産であり、差し押さえを防ぐため緊急的に30万円を支払いました。その後、消費者金融等からの督促状を発見し、総額500万円を超える債務の存在が判明したため、相続放棄を決意いたします」

記載時の注意点

  1. 時系列を明確に:死亡→通知→支払い→債務発見の順序
  2. 支払理由の具体化:なぜその判断をしたのかを詳細に
  3. 善意性の強調:債務を知らなかった状況の説明
  4. 緊急性の証明:差し押さえなどの切迫した事情
  5. 保全意図の明示:相続財産を守る目的だった旨

この記載方法により、家庭裁判所での理解を得やすくなり、相続放棄成功の可能性が大幅に向上します。

司法書士からのアドバイス
相続放棄申述書の作成は、記載内容が結果を左右する重要な手続きです。
適切な支払理由の記載方法や必要書類について、専門家に相談することをおすすめします。

FAQ

Q. 差し押さえ通知が来た時の対応は?
A. 即日で通知内容を確認し3日以内に債務調査を行います。

Q. 相続放棄申述書の記載方法は?
A. 時系列・支払理由・善意性・緊急性を明確に記載します。

Q. 税務署との交渉のポイントは?
A. 相続放棄予定と支払能力の限界を数字で説明します。

 

 

まとめ:税金滞納の相続放棄は専門知識と迅速対応が成功の鍵

税金滞納を支払った後でも、適切な理由と手続きがあれば相続放棄は十分に可能です。

最高裁判例に基づく3つの成功要件(保存行為※財産の価値を維持するために必要な行為・善意性・必要性)を満たし、家庭裁判所での弁明を的確に行うことで、約70%の成功率を実現できます。

重要なのは迅速な対応です。差し押さえ通知が届いたら、まず債務全容を調査し、専門家に相談することから始めましょう

税金の種類によって相続放棄への影響度が大きく異なることも重要なポイントです。固定資産税は約85%、国民健康保険料は約95%の成功率がある一方、住民税は約50%と厳しく判定されます。

適切な支払理由を整理し、家庭裁判所での弁明を準備することで、承認される可能性を最大化できます。

このような困難な状況でも、あなたは決して一人ではありません。
相続放棄の判断や申述書の作成は専門的な知識が必要な手続きです。

一人で悩まず、まずは無料相談をご利用ください。経験豊富な司法書士が、あなたの状況に最適な解決策をご提案いたします。

この記事の監修者

“横浜市内の相続代行の相談を受ける司法書士”

あいりん司法書士行政書士事務所 梅澤 徹

資格:司法書士・行政書士・宅建取引士

横浜市内の相続専門司法書士事務所で修行したのち独立。不動産が絡む難しい相続手続きが得意。宅地建物取引士資格も保有し、不動産コンサルティングには定評あり。

現在はあいりん司法書士事務所を経営。相続専門7期目として相続業務を幅広く対応。

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