この記事を要約すると
- 遺留分は遺言書でも奪えない最低限の取り分で、お金で取り戻せる
- 請求できるのは配偶者・子・直系尊属で、兄弟姉妹には遺留分がない
- 時効は「知った時から1年」で、内容証明→協議→調停→訴訟の順で進める
「亡くなった親の遺言書に『全財産を兄に相続させる』と書かれていた……」
「自分には何ももらえないなんて、そんなことが許されるの?」
遺言書を開けてみたら、自分の取り分がほとんどなかった。そんな不公平な内容に、ショックと不安でいっぱいになっている方は少なくありません。
しかし、あきらめる必要はありません。 配偶者や子などの相続人には「遺留分」という最低限の取り分が法律で保障されており、遺言書の内容にかかわらずお金として取り戻せるからです。
この記事では、遺留分侵害額請求のやり方を、請求できる人・金額の計算・1年の時効・具体的な手順まで、相続実務の専門家がわかりやすく解説します。
この記事はこんな方におすすめ
- 遺言書で自分の取り分がほとんどなく、納得できない相続を受けた方
- 遺留分侵害額請求のやり方や、いくら請求できるのかを知りたい方
- 「1年の時効」が心配で、今すぐ何をすべきか知りたい方
目次
遺言書で侵害された遺留分を取り戻す基本知識
不公平な遺言書を前にしても、相続人には法律で守られた「遺留分」があります。
遺産をめぐる争いは決して他人事ではありません。裁判所の司法統計によると、遺産分割をめぐる家事調停の新受件数は年間1万件を超えており、多くの家庭で相続トラブルが起きています。
出典:司法統計年報 – 裁判所
このセクションでは、遺留分侵害額請求とは何か、誰がいくら請求できるのかという基本を解説します。まずは自分に請求する権利があるのかを確認しましょう。
遺留分侵害額請求とは?お金で取り戻せる権利
遺留分侵害額請求とは、遺言書などで侵害された自分の遺留分※を、お金で取り戻すための請求のことです。
たとえば「全財産を長男に相続させる」という遺言があっても、他の相続人は長男に対して「遺留分に相当する金額を支払ってください」と請求できます。
ポイントは、取り戻せるのは財産そのものではなく金銭という点です。
2019年の民法改正により、以前の「遺留分減殺請求」から現在の「遺留分侵害額請求」に変わり、金銭で精算する形に統一されました。
不動産などを共有で取り戻すのではなく、あくまでお金で受け取る制度だと理解しておきましょう。
参考:民法第1046条(遺留分侵害額の請求)- e-Gov法令検索
※遺留分:配偶者・子・直系尊属などの相続人に保障された、最低限の遺産の取り分のこと。遺言によっても奪えない。
請求できるのは誰?兄弟姉妹は対象外
遺留分侵害額請求ができるのは、配偶者・子(およびその代襲相続人)・直系尊属(父母や祖父母)に限られます。
注意したいのは、兄弟姉妹には遺留分がないという点です。たとえば子どものいない夫婦で、夫が「全財産を妻に相続させる」と遺言を残した場合、夫の兄弟姉妹は遺留分を請求できません。
相続人の種類ごとに遺留分の有無を整理すると、以下のとおりです。
| 相続人 | 遺留分 |
|---|---|
| 配偶者 | あり |
| 子(代襲相続人を含む) | あり |
| 直系尊属(父母・祖父母) | あり |
| 兄弟姉妹(甥姪を含む) | なし |
あなたは遺留分を請求できる立場にあるでしょうか。
まずはここで確認しておきましょう。
参考:民法第1042条(遺留分の帰属及びその割合)- e-Gov法令検索
請求できる金額はいくら?割合と計算式
請求できる金額は、遺産全体に対する「遺留分の割合」×「自分の法定相続分」で計算します。
遺留分の総体的な割合は、相続人の構成によって次のように決まっています。
| 相続人の構成 | 遺留分の総体割合 |
|---|---|
| 配偶者のみ・子のみ・配偶者と子 | 2分の1 |
| 直系尊属のみ | 3分の1 |
| 兄弟姉妹 | なし |
たとえば、遺産が6000万円で、相続人が配偶者と子ども2人のケースを考えます。「全財産を長男へ」という遺言があった場合、次男の遺留分は次のように計算します。
6000万円 × 2分の1(総体割合)× 4分の1(次男の法定相続分)= 750万円
このように、次男は長男に対して750万円を請求できます。
特別受益※や生前贈与が絡むと計算はさらに複雑になるため、正確な金額は専門家に確認すると安心です。
※特別受益:一部の相続人が生前贈与や遺贈で特別に受け取った利益のこと。遺留分の計算に影響する場合がある。
自分が請求できる立場か、いくら請求できるのかを知ることが第一歩です。判断に迷う場合はご相談ください。
FAQ
Q. 遺留分侵害額請求とは?
A. 遺言などで侵害された最低限の取り分を、お金で取り戻す請求です。
Q. 兄弟姉妹に遺留分はある?
A. ありません。遺留分があるのは配偶者・子・直系尊属だけです。
Q. 遺留分はいくら請求できる?
A. 遺産に遺留分割合と自分の法定相続分を掛けた金額です。
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遺留分侵害額請求の手続きと1年の時効
遺留分侵害額請求で最も注意すべきは「時効」です。動き出しが遅れると、請求できる権利そのものを失いかねません。
このセクションでは、1年の時効と、実際に請求を進める4つのステップ、必要な書類について解説します。
期限を意識しながら進めましょう。
時効は1年!請求が遅れると権利が消える
遺留分侵害額請求には、「相続の開始と遺留分の侵害を知った時から1年以内」という短い時効があります。
この1年を過ぎると、原則として請求する権利が消えてしまいます。
「遺言の内容を知ってから、ゆっくり考えよう」としているうちに、時効が完成してしまうケースは少なくありません。
さらに、相続開始を知らなかった場合でも、相続開始の時から10年を過ぎると請求できなくなります。
まずは時効を止めるために、内容証明郵便で請求の意思を伝えることが重要です。
1年はあっという間ですので、遺言の内容に納得できないなら、すぐに動き出しましょう。
参考:民法第1048条(遺留分侵害額請求権の期間の制限)- e-Gov法令検索
※時効:一定の期間が過ぎると権利が消えたり得られたりする制度。遺留分侵害額請求権は原則1年で消滅する。
内容証明から始める請求の4ステップ
遺留分侵害額請求は、いきなり裁判をするわけではありません。
次の4つのステップで進めるのが一般的です。
遺留分侵害額請求の4ステップ
- 内容証明郵便で請求:時効を止めるため、まず請求の意思を書面で通知する
- 当事者間の話し合い(協議):支払う金額や方法について相手と交渉する
- 家庭裁判所での調停:話し合いでまとまらない場合、調停委員を交えて解決を図る
- 地方裁判所での訴訟:調停でも合意できなければ、最終的に裁判で決着させる
多くのケースは、内容証明の送付と話し合いで解決します。
まずは①の内容証明で時効を止めることが、その後の交渉を有利に進める出発点になります。
いきなり訴訟にはならないので、「裁判なんて大げさで気が引ける」と心配する必要はありませんよ。
請求に必要な書類と財産の調べ方
請求金額を正確に出すには、遺産の全体像を把握するための資料集めが欠かせません。
主に必要となる資料は以下のとおりです。
- 遺言書の写し
- 被相続人※の戸籍謄本(相続人を確定するため)
- 不動産の登記事項証明書・固定資産評価証明書
- 預貯金の残高証明書、有価証券の残高報告書
- 生前贈与がわかる資料(贈与契約書・通帳の履歴など)
不動産の評価額や生前贈与の有無によって、請求できる金額は大きく変わります。
相手が財産を開示してくれない場合もあるため、早めに資料を集めておくことが大切です。
※被相続人:亡くなった方のこと。相続される財産のもとの持ち主を指す。
1年という期限はすぐに来てしまいます。まずは内容証明で時効を止めることが最優先です。手続きに不安があれば、早めにご相談ください。
FAQ
Q. 遺留分侵害額請求の時効は?
A. 相続と侵害を知った時から1年、相続開始から10年です。
Q. 請求はどうやって始める?
A. まず内容証明郵便で相手に請求の意思を伝えます。
Q. 必ず裁判になる?
A. いいえ。多くは話し合いや調停で解決します。
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遺留分侵害額請求は、対象になる財産の範囲や相手の対応によって、結果が大きく変わります。
このセクションでは、請求で損をしないために知っておきたい3つの注意点を解説します。
事前に押さえておくことで、有利に手続きを進められます。
生前贈与や生命保険は請求対象になる?
遺留分の計算では、遺言で渡された財産だけでなく、一定の生前贈与も対象に含まれる点に注意が必要です。
相続人への生前贈与は原則として相続開始前の10年間、相続人以外への贈与は原則1年間分が、遺留分を計算する財産に加えられます(民法1044条)。
「生前に多額の贈与を受けていた」という事情があれば、請求できる金額が増える可能性があります。
一方で、生命保険金は原則として遺留分の対象外です。受取人固有の財産と扱われるためですが、金額が遺産に比べて極端に大きい場合などは例外的に対象となることもあります(最高裁平成16年10月29日決定の考え方による)。
どこまでが対象になるかは判断が難しいため、専門家に確認するのが確実です。
参考:民法第1044条(遺留分を算定するための財産の価額)- e-Gov法令検索
相手が支払いに応じないときの対処法
内容証明を送っても、相手が支払いに応じないケースは珍しくありません。
そのような場合は、家庭裁判所の調停を申し立てるのが次の一手です。
調停では調停委員が間に入り、双方の言い分を聞きながら解決を目指します。
感情的な対立があっても、第三者を介することで冷静な話し合いがしやすくなります。
調停でも合意できなければ、最終的に地方裁判所へ訴訟を提起します。
訴訟では遺産の評価額や生前贈与の有無が争点になることが多く、証拠の準備が結果を左右します。
「相手が話し合いに応じてくれない」という段階になったら、早めに専門家の力を借りることをおすすめします。
請求を有利に進めるなら早めに専門家へ
遺留分侵害額請求は、財産調査・金額計算・時効管理・相手との交渉が同時に必要になる、負担の大きい手続きです。
特に、不動産の評価額の算定や生前贈与の扱いは専門的で、自己判断で進めると本来もらえる金額より少なくなってしまう恐れがあります。
相手が親族であるほど、直接の交渉は精神的にもつらいものです。
専門家に依頼すれば、正確な金額の計算はもちろん、内容証明の作成から相手との交渉まで任せられます。
1年という時効に追われる中で、冷静かつ有利に進めるためにも、早い段階での相談が安心につながります。
「損をしていないか」を正しく判断するためにも、請求する前に専門家のチェックを受けることをおすすめします。まずは無料相談をご活用ください。
FAQ
Q. 生前贈与も遺留分の対象?
A. 相続人への贈与は原則10年分などが対象になります。
Q. 生命保険金は請求できる?
A. 原則対象外ですが、金額が過大な場合は例外もあります。
Q. 相手が払わないときは?
A. 家庭裁判所の調停、最終的には訴訟で解決します。
まとめ:遺留分侵害額請求は1年の時効内に動くのが鉄則
遺言書で不公平な相続を受けても、配偶者・子・直系尊属であれば、遺留分をお金で取り戻せる権利があります。
ただし、この権利には「知った時から1年」という短い時効があります。
まずは内容証明郵便で請求の意思を伝えて時効を止め、話し合い・調停・訴訟へと段階的に進めるのが基本の流れです。
生前贈与や不動産の評価が絡むと金額の計算は複雑になり、自己判断では損をしてしまうこともあります。
「遺言の内容に納得できない」「いくら請求できるのか知りたい」という方は、時効が来る前にご相談ください。
あいりん司法書士事務所では、あなたの状況に合わせて請求の進め方を的確にアドバイスいたします。
手遅れになる前に、まずはお気軽にお声がけください。
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この記事の監修者

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