この記事を要約すると
- パソコンで作成された自筆証書遺言は有効となった
- 2019年1月13日以降、遺言書の財産目録はパソコンでの作成が可能
- 遺言書の作成は法改正で一部パソコン利用が可能になり、作成が楽になった
遺言書を作成する際、パソコンを使用したいと考える方は多いでしょう。
一方、遺言書の書き方について少なからず不安に感じる方はおられます。本記事では主にパソコンを使用した遺言書の作成方法を詳しく解説します。
自筆証書遺言はパソコンで作成できる?
結論としては、2020年に行われた法改正によって、手書き以外にパソコンなどを使用して作成された自筆証書遺言については、一部有効となりました。
一部有効とは、遺言書に含まれる財産目録のみ、パソコンで作成可能になったことを示します。詳しくは後述しますが、財産目録とは被相続人が持つ財産(預金や不動産、借金含む)を一覧化したものです。
また、パソコンで作成する遺言書にはいくつかの要件があります。作成する前に内容を正確に把握しておきましょう。
遺言書の種類
遺言書には3つの種類があります。
以下で、遺言書の種類や特徴を表にまとめました。
遺言書の種類 | パソコンでの作成可否 | 遺言書の特徴 |
①自筆証書遺言 | 財産目録のみ可 | すべて被相続人が作成する。 代筆やパソコンを使用したものは無効。 法改正により財産目録のみパソコンを使用して作成可能となった。 |
②秘密証書遺言 | すべてにおいて可 | 被相続人が作成し、他人には内容を秘密にする方式。 すべてパソコンで作成可能。 公証役場や家庭裁判所を介すなど、手続きが複雑。 |
③公正証書遺言 | すべて公証人が作成 | 公証役場で公証人が作成。 専門家が作成するため不備が少ない。 原本は公証役場で保管される。 |
①自筆証書遺言
最も多く利用されている方式で、以下5つが自筆証書遺言の要件です。
- 遺言者が遺言書の全文を自筆で書く
- 氏名を自筆で書く
- 作成した日付を自筆で書く
- 押印をする
- 訂正する際は押印し、欄外に訂正箇所と署名をする
代筆したものや、遺言書の本体をパソコンやワープロなどを使用して作成したものは、自筆証書遺言の有効要件を満たさないため無効です。
ただし、遺言書に添付する財産目録は、2019年1月からパソコンを使用して作成できるようになりました。
②秘密証書遺言
秘密証書遺言は、遺言者本人以外が遺言内容を見ることができないように遺言書を作成する方式です。遺言者本人が遺言書を作成後、封筒に入れて封をします。
公証役場にて、2人以上の証人と公証人の前で遺言書を提示し、自身の遺言書であることを証明します。偽造や変造が防げ、遺言書本体を含めすべてパソコンで作成できる点が長所といえます。
ただ、家庭裁判所の検認など必要な手続きが複雑であることに注意が必要です。
③公正証書遺言
遺言者に代わり公証人が作成する遺言書のことです。公証役場にて、2人以上の証人の立会いのもとで公証人がパソコンで作成します。
公証人とは、退任後の元弁護士や元裁判官などの法律実務経験を持つ人の中から法務大臣が任命した準国家公務員のことです。
公証人は法律や行政手続きの専門家であるため形式の不備がないことや、原本を公証役場で保管できることなどがメリットです。
パソコンで作成可能な財産目録
財産目録とは、被相続人が持つ財産の一覧表を指します。財産の内容は預貯金や不動産だけでなく、被相続人の借金やその他の負債なども記入します。
財産目録の作成は義務ではなく、あくまでも任意です。一方、相続財産が複数あるケースでは、相続人が内容を理解しやすくするため、財産目録を作成するケースが一般的です。
以下で、財産目録について詳しく解説します。
財産目録は自書しなくてもよい
前述の通り、2019年1月13日以降、遺言書の財産目録はパソコンでの作成が可能となりました。ほかにも、代筆が可能であったり、登記事項証明書・通帳の写しなどの添付が可能など、これまでの手間が大幅に軽減されたのです。
ただし、自書でない財産目録は、各項に署名捺印が必要です。記載が用紙の両面にあれば、両面に署名捺印をする必要があります。
財産目録を作成するメリット
財産は、目録にしなくても、遺言書の本体に記載が可能です。一方、財産目録の作成には、以下のようなメリットがあります。
- 相続税申告の有無が明確になる
- 相続対象の財産が明確になる
- パソコンで作成できるため、作成時間を短縮できる
- オンライン株式や仮想通貨など、インターネット上で管理する資産の記録が容易
財産目録があれば相続内容が明確になり、相続手続きがスムーズに進みます。
パソコンで財産目録を作成する方法
本章では、パソコンを使った財産目録の作成方法について解説します。
パソコンで作成する財産目録は遺言書本体と別の用紙を使う
財産目録をパソコンで作成するときは、必ず遺言書本体と別の用紙を使って作成します。
一緒の用紙で作成してしまうと、遺言書としての要件を満たさず無効になります。
すべてのページに署名捺印する
手書き以外で作成した財産目録には、すべてのページに署名捺印が必要です。
署名捺印がないページに記載されている内容は、遺言書としての要件を満たさないため、無効になります。
捺印に使用する印鑑は、どのようなものでもよいとされています。
ただ、遺言書の性質上、実印の使用がおすすめです。実印を使用することで、自ら作成した遺言書であることを証明しやすくし、トラブルを回避できます。
内容の修正は避ける
財産目録の修正には厳格なルールが定められ、ルールを遵守していない遺言書は無効です。
修正する際には、以下に遵守することが必要です。
- 訂正する箇所には二重線をひく
- 二重線に重ねて押印する
- 訂正箇所の横に正しい文字を記載する
- 余白に『訂正した箇所』『削除した文字数』『追加した文字数』を自書し、署名捺印する
指定する文字を統一する
財産目録の各項目名と遺言書に記載する指定文字は、一言一句統一します。
誰が見ても、どの財産を示すかを分かりやすくし、理解の違いに起因する不要なトラブルを防ぐためです。
例えば、財産目録で相続する土地を「その1」と記載しているときは、遺言書にはその財産の情報は細かく記載せず「その1」と記載します。
遺言書を作成する際は、誰もが正しく理解できる書き方を心がけましょう。
パソコンで財産目録を作成する際のポイント
パソコンでの財産目録作成は、自筆に比べて手間が少ないです。ただ、ひとつでも遺言書としての要件を満たさない箇所があると、無効になるおそれがあります。
本章では、パソコンで財策目録を作成する際のポイントについて解説します。
ルールに則った形式で作成する
遺言書の作成については、法律によって有効要件が定められています。
遺言書の記載内容が有効要件を満たしているか不安を感じるときは、トラブルを防ぐため行政書士や弁護士などの専門家に添削してもらうことをおすすめします。
作成後の保管方法が重要
自筆証書遺言の保管場所に制限はありません。
ただし、事故による紛失や第三者による改ざんや隠蔽のおそれがあるため、見つかりにくく、かつ相続人の手に渡りやすい場所を選ぶ必要があります。
誰にも見つからない場所に保管してしまうと遺言書が発見されない可能性が考えられます。遺言書の保管する場所を決める際は、相続人が遺言書を発見できるように保管場所を伝える方法を準備することが大切です。
専門家である行政書士に相談する
財産目録や遺言書は法律で細かく作成方法が定められています。
ルールに則っていない方法で作成された遺言書は無効になり、本来の目的を果たせません。
専門家の添削を受けずに個人の知識で遺言書を作成すると、トラブルになる可能性が高いといえます。希望通りに相続を完了させるため、専門家への添削依頼を検討することをおすすめします。
まとめ
これまで自筆での作成しか認められなかった遺言書は、法改正で一部パソコン利用が可能になり、作成が楽になりました。
一方、遺言書の有効要件は引き続き厳格です。遺言書作成の要件を踏まえず、専門家の添削を受けていない遺言書は、無効になる可能性があります。
トラブル回避のため、遺言書作成は専門家である行政書士に相談しましょう。
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この記事の監修者
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