【想定例】父から土地を相続した姉と弟。姉は維持費がかかるため早く売りたいと考えていますが、弟は「一番高い査定額を出した会社なら、より高く売れるはず」と主張します。会社ごとの金額に差があるとき、どの数字を信じて決めればよいのでしょうか。
これは説明のための想定例で、実在の相談事例ではありません。複数の不動産会社から査定を受けると、想定より大きな差が出ることがあります。高い数字を見れば期待がふくらみますが、査定額はその価格での売却を約束するものではありません。
2026年10月14日公開のファイナンシャルフィールドの記事でも、相続した土地をめぐり、A社1,800万円、B社2,400万円という査定差の例が紹介されました。こうした数字を前にしたとき、大切なのは査定額の高さだけでなく、その根拠と、売却後にいくら残るかを確かめることです。
この記事では、査定額に差が出たときに確認したいポイントを、相続した土地ならではの注意点とあわせて紹介します。
この記事を要約すると
- 査定額だけではなく、仲介か買取か、参考事例、売却までの期間、費用の前提を確認します。
- 相続税評価額と売却査定額は目的が異なるため、同じ数字として扱えません。
- 相続人同士で売却方針を話し合うときは、比較条件と査定書を共有しておきます。
この記事をおすすめしたい方
- 相続した土地の売却を考え、査定額の見方を知りたい方
- 複数社の査定額に差が出て、相続人同士の方針がまとまらない方
- 査定額の違いを相続人へ説明し、売却や遺産分割の方針を決めたい方
1. 査定額が会社によって違うのはなぜか
不動産会社の査定は、周辺の取引事例や土地の状態などをもとに、売却できそうな価格について意見を示すものです。査定額どおりの買主が現れることや、その金額で契約が成立することを保証する数字ではありません。
一方、実際に買い取る会社が提示する「買取価格」は、会社が買主となって購入する場合の価格です。仲介による売却査定と買取価格では、売却方法も前提も異なります。比較するときは、まず各社に「仲介で売る場合の査定ですか。それとも買取価格ですか」と尋ねましょう。
不動産会社が媒介契約に関して売買すべき価格について意見を述べる場合、宅地建物取引業法第34条の2第2項は、その根拠を明らかにするよう定めています。金額だけでなく、説明が具体的かどうかも会社選びの判断材料になります。
1-1. 参考にする成約事例と土地条件が違う
査定では、周辺で売買された土地を参考にすることがあります。ただし、どの事例を選ぶか、対象地と比べてどのように調整するかは、会社や担当者によって異なります。
土地の面積だけではなく、形、間口、道路との接し方、駅からの距離、高低差、用途地域、建築上の制限、境界や測量の状況などが価格に影響します。近隣にあるという理由だけで、条件の違う土地を同じように比べることはできません。
1-2. 想定する買主や売り方が違う
一般の個人に土地として売るのか、建築会社にまとめて売るのか、建物を解体して更地にするのか。どの買主を想定するかによって、売却見込みや必要な費用は変わります。
また、査定額が「売り出しの目安」なのか、「一定期間内の成約を見込む価格」なのかも確認が必要です。高い査定額でも、長期間売れない可能性を含む価格なら、売却を急ぐ家族にとって現実的な選択とは限りません。
1-3. 査定の前提に含めた費用や作業が違う
古家の解体、残置物の処分、測量、境界確認、造成などを誰が負担する前提かによって、売主の手取りは変わります。査定額の比較表に、費用の見積もりも並べて確認しましょう。
2. 高い査定額を受け取ったら、会社に聞きたい5つの質問
査定書を受け取ったら、次の点を各社へ同じ条件で質問します。
- どの成約事例を参考にしましたか。 住所を特定できない形でも、時期、面積、形、接道などの比較条件を確認します。
- この土地の個別条件をどう価格に反映しましたか。 間口、形状、高低差、境界、道路、建築上の制限などについて聞きます。
- 査定額は売出価格ですか、成約見込み価格ですか。 どの期間で売れる想定か、値下げを検討する時期も確認します。
- 仲介と買取のどちらを前提にしていますか。 買主、販売方法、価格、契約条件を分けて比較します。
- 売却までに必要な費用と、売主の手取り見込みはいくらですか。 測量、解体、残置物処分、仲介手数料などの有無と金額を確認します。
あわせて、査定額の根拠を記した書面を受け取りましょう。担当者が高い金額の理由を説明できるか、質問への回答が査定書と一致しているかも判断材料です。
複数社の回答は、次のような表にまとめると比較しやすくなります。査定額の欄だけを見比べず、同じ前提で説明されているかを確認してください。
| 比較項目 | そろえて確認する内容 |
|---|---|
| 査定の種類 | 仲介での売却見込みか、会社による買取価格か |
| 根拠 | 参考にした成約事例と対象地との条件差 |
| 期間 | いつまでに売れる想定か、見直し時期はいつか |
| 費用 | 測量・解体などの作業と、売主・買主の負担 |
周辺の取引価格を自分でも確認したい場合は、国土交通省の不動産情報ライブラリを利用できます。土地の取引価格や地価公示などを検索できますが、掲載データだけで個別の土地の売却価格が決まるわけではありません。土地の条件を踏まえた各社の説明と照らし合わせるための参考資料として使います。
3. 査定額・相続税評価額・手取りを分けて考える
売却後に残る金額は、査定額だけでは分かりません。売買価格から仲介手数料や測量・解体などの費用を差し引き、譲渡益が出て税金がかかる場合はその税額も考慮します。譲渡所得の計算要素は、国税庁「譲渡所得(土地や建物を譲渡したとき)」で確認できます。費用が発生するか、売主・買主のどちらが負担するかは契約内容や土地の状態によって異なります。
例えば、査定額が高くても、売却までに大規模な測量や造成が必要なら、手取りが想定より減る場合があります。反対に、少し低い査定額でも、早期売却の見込みが具体的で追加費用が少なければ、家族の希望に合うこともあります。
各社に「売却価格の見込み」「売却までの期間」「必要な作業と費用」「税金を除く手取りの概算」を同じ条件で出してもらい、比較しましょう。税引後の金額を確かめる際は、土地の取得費や相続税の申告状況によって計算が変わるため、税理士への確認も検討します。
比較表を作るときは、金額の欄だけでなく「価格の前提」「いつまでに売る想定か」「売主が負担する費用」も記録しておくと、査定額の差を説明しやすくなります。相続人で共有する場合も、査定書と見積書を一緒に見れば、数字だけが独り歩きするのを防ぎやすくなります。
相続した土地について、「会社の査定が2,400万円なら、相続税の計算でも2,400万円になるのか」と疑問に思う方もいるでしょう。売却査定額を、そのまま相続税評価額として扱うことはできません。
相続税や贈与税の計算では、土地は原則として地目ごとに評価し、路線価方式または倍率方式を使います。路線価方式では、路線価に土地の形状などに応じた補正を行い、面積を乗じて評価します。計算方法は国税庁「土地家屋の評価」で確認できます。
一方、遺産分割で相続人同士が土地の評価額に合意できないときは、売却査定だけで決着するとは限りません。相続税申告、遺産分割、売却のどの目的で価格を知りたいのかを整理し、必要に応じて税理士や不動産鑑定士など、それぞれの分野の専門家へ相談してください。国土交通省の不動産鑑定評価ポータルでは、不動産鑑定評価と不動産鑑定士について案内しています。
3-1. 相続人が複数いる場合は、価格の決め方を先に話し合う
土地の売却代金を相続人で分ける予定なら、誰が売主となるのか、売却に必要な費用をどう負担するのか、売却後の代金をどの割合で分けるのかを先に話し合います。査定額の差をそのまま取り分の差と結びつけず、複数社の査定書と費用見積もりを共有して、売却方法と分配方法を遺産分割協議書などに明確に残しましょう。
遺産分割のために価格を知りたい場合も、「いま売る場合の見込み価格」と「特定の相続人が取得するときの代償金の基準」では目的が異なります。相続登記や遺産分割は司法書士へ、税額の試算は税理士へ、評価額に大きな隔たりがある場合は不動産鑑定士へ相談するなど、相談内容に応じて専門家を選びましょう。
【想定例の続き】姉と弟は、査定額の高さだけで決めず、いつまでに売りたいか、測量や解体にどの程度の費用がかかるかを先に共有します。その条件を各社に同じように伝えたうえで、金額の根拠と売却後の見込みを比べれば、二人が納得できる売却方針を話し合いやすくなります。
まとめ
相続した土地の査定額が会社によって大きく違っても、一番高い数字だけで依頼先を決めるのは避けましょう。査定額は売却の保証ではなく、各社の前提や参考事例、売り方によって差が生じます。
根拠となる成約事例、土地の個別条件、販売期間、売却に必要な作業と費用を同じ条件で確認し、最終的な手取り見込みまで比べることが大切です。また、売却査定額と相続税評価額は目的も算定方法も異なります。
相続人同士で売却や分配の方針がまとまらないときは、価格だけで結論を急がず、遺産分割や相続登記の状況を整理してから専門家へ相談しましょう。
相続不動産の売却手順を確認したい方は、相続した土地や実家を売却する流れ・査定方法もご覧ください。相続人間で売却代金を分ける予定の方は、換価分割の進め方とトラブル例も参考になります。
相続登記や遺産分割、売却手続きの整理が必要な場合は、相続不動産の名義変更と売却の相談案内からご相談いただけます。
よくある質問
相続した土地の査定額が会社によって違うのはなぜですか?
参考にする成約事例、土地の形や接道などの評価、想定する買主や販売方法が異なるためです。各社に査定の根拠と売却までの想定期間を尋ね、同じ条件で比較してください。
一番高い査定額を出した不動産会社に依頼すればよいですか?
査定額だけで決めないことが大切です。その金額で売れると考えた成約事例、販売方法、売却までの期間、必要費用を確認し、説明に具体的な根拠があるかを判断します。
不動産会社の査定額は、そのまま売却価格になりますか?
なりません。査定額は不動産会社が売却見込みについて示す意見であり、買主が現れて契約が成立する価格を保証するものではありません。買取価格と仲介による査定額も区別して確認しましょう。
相続税評価額と不動産会社の査定額は同じですか?
同じとは限りません。相続税の土地評価は、原則として路線価方式または倍率方式で行います。不動産会社の査定額は売却を想定した価格の意見です。相続税の申告については税理士へ確認してください。
査定額の根拠として何を見せてもらえばよいですか?
比較対象にした成約事例、土地の条件をどう価格に反映したか、売出価格と成約見込み価格の区別、売却期間、測量・解体などの費用を確認します。説明内容を査定書など書面でも受け取っておくと、相続人間で共有しやすくなります。
査定額に納得できないときはどうすればよいですか?
査定額を出した会社に、比較した成約事例や土地条件の補正内容を具体的に尋ねます。その説明が曖昧な場合は、同じ物件情報と売却条件を別の会社にも伝えて査定を依頼し、根拠と費用をそろえて比較しましょう。査定額の高さだけで媒介契約を急いで結ばないことも大切です。

