遺産分割協議に参加できる人について
遺産分割協議の当事者としては共同相続人があげられます。また共同相続人に準ずる人として包括受遺者(民法990条)、相続分の譲受人(民法905条)、などが含まれます。
遺言執行者は、分割の「当事者」ではなく、遺言執行に必要な限度で利害関係人として分割協議に参加できます。
共同相続人
遺言による遺産分割の禁止の定めがなければ共同相続人はつねに全員の協議によって遺産分割できます(民法907条)。
共同相続人の一人から遺産分割協議の請求があれば他の共同相続人は遺産分割の協議に応じなければなりません。
共同相続人の一部が遺産分割協議に応じない時は家庭裁判所に申し立てる方法で遺産分割の請求ができます。(民法907条二項)
協議は全員の参加と合意が必要
有効な遺産分割協議と言えるには共同相続人全員の参加と合意を必要とし、一部の相続人を除外してされた遺産分割の協議は原則として無効になります。
(東京地判昭和39年)
例えば共同相続人の中に行方不明者がいる場合は、その人を省いて遺産分割協議をすることはできません。
この場合には、行方不明者のために家庭裁判所に不在者財産管理人の選任を申し立てた上、選任された不在者財産管理人が家庭裁判所の許可を得て不在者のために遺産分割協議に参加することができます。
相続放棄者、特別受益者
相続放棄を家庭裁判所にした相続放棄者ははじめから相続人とならなかったものとみなされます。(民法989条)
これにより遺産分割協議の当事者になることはできなくなります。
また、民法903条二項の超過特別受益者がいる場合にはその人の相続分がないことの証明書とその人を除く共同相続人間の遺産分割協議書を添付して相続登記を申請することができます。
代理人による協議
相続人が未成年者である時はその法定代理人が代理し、成年被後見人も共同相続人の一人であるときは利益相反の問題が生じます。
また、児童福祉説長は入所中の児童に代わり、その法定代理人として遺産分割協議に加わることができます。
もっとも遺産分割協議は法膣行為の一つですので、代理人が協議を行うことができます。
代理人が参加した遺産分割協議書を添付して相続登記の申請は受理されることになります。
包括受遺者、相続分の譲受人
相続人が遺産分割協議に参加できるので、相続人と同じ権利義務を有する包括受遺者も遺産分割に参加できます。
従って包括受遺者を加えない遺産分割協議は無効になりますのでご注意ください。なお、特定受遺者はその当事者にはなりません。
それでは共同相続人から相続分の譲渡を受けた第三者はどうでしょうか。
この場合、ほかの共同相続人から取戻権の行使を受けない限り(民法905条)共同相続人と同一の権利義務を有しますので遺産分割に参加できます。
利益相反行為について
被相続人の夫甲は妻乙、子丙、子丁がいます。丁が未成年者である場合、遺産分割協議の結果乙は相続財産を受け取らないという結果になりました。
この場合、丁のために特別代理人を選任する必要があるのか。ここで民法826条を確認します。
「親権を行う父または母とその子との利益が相反する行為については、親権を行う人は、その子のために特別代理人を選任することを家庭裁判所に請求しなければいけない」とされています。
さらに「親権を行うものが数人の子に対して親権を行う場合において、その一人と他の子の利益が相反する行為については、親権を行うものは、その一方のために特別代理人を選任することを家庭裁判所に請求しなければならない」と規定しています。
民法826条はもっぱら未成年者の利益を守ることが目的であり、子が親から不動産を取得するなどは想定外です。
ですが様々な裁判例を経て、現在では上記設問のようなケースでも親権者と親権に服する子とが共同相続人である場合、または同一の親権に服する数人の子が共同相続人である場合における遺産分割協議は、利益相反行為に該当すると思われます。したがって特別代理人の選任が必要です。
遺産分割協議と利益相反についてのまとめ
いかがだったでしょうか。遺産分割協議はだれでも参加できるわけでもなく、参加資格があったとしても利益相反にあたれば特別代理人の選任が必要です。
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