この記事を要約すると
- 相続土地国庫帰属制度とは、相続した土地を国に返還できる制度で、返還された土地は国が適切に管理し、公共の利益のために活用する。日本には多くの放置された土地があり、この制度を利用することで、土地の有効活用が期待される。
- 相続土地国家帰属制度のメリット:農地や山林も国が引き取る対象となり、適切な管理や利用が期待される。土地を手放す際の手間や経済的な負担が軽減され、国が土地を引き取ることで安心感が得られる。
- 相続土地国家帰属制度のデメリット:利用するためには特定の条件を満たす必要があり、制度を利用できる土地は限られている。手続きには費用や負担金がかかり、審査に時間がかかる可能性がある。
相続した土地の管理に悩んでいませんか?
令和5年4月より新しい制度「相続土地国庫帰属制度」が導入され、不要な土地を国に返還できるようになりました。この制度は、特に、農地や山林などの管理が難しい土地も対象となり、国が適切に管理・利用することが期待されています。しかし、利用する際の条件やデメリットも存在します。
この記事では制度の概要とメリット・デメリットについて詳しく解説します。
相続土地国庫帰属制度の概要と事例
令和5年4月より開始された相続した土地を国に返還することができる「相続土地国庫帰属制度」について、わかりやすく解説します。
相続土地国庫帰属制度とは?
相続土地国庫帰属制度は、相続した土地を持っているけれど、管理が難しい、または必要がないと感じる方々が、その土地を国に返還することができるというものです。国は返還された土地を適切に管理し、公共の利益のために活用します。
では、なぜこのような制度が必要なのでしょうか。日本には多くの放置された土地があります。
これらの土地は、相続によって多くの相続人が存在し、誰が管理するのかが不明確になっていることが多いのです。このような土地が放置されると、草木が生い茂り、近隣住民に迷惑をかけることもあります。
この制度を利用することで、そうした問題を解消し、土地を有効活用することが期待されます。
国が初めて引き取りした事例
この制度が導入されてから、多くの方々が利用を検討しています。
法務省によると制度開始後のある時点で、全国で約1万4000件の相談があり、885件の申請があったとのことです。
そして、法務省は初めて、富山県内の2か所の土地を引き取ったと発表しました。
相続土地国家帰属制度のメリット
相続土地国家帰属制度は、相続した土地を持っているけれど、管理が難しい、または必要がないと感じる方々にとって、非常に有益な制度です。
この制度のメリットを詳しく見ていきましょう。
農地や山林も引取の対象
相続した土地の中には、都市部から離れた農地や山林が含まれることも少なくありません。これらの土地は、管理が難しく、また売却する際にも適切な買い手を見つけるのが困難です。
しかし、この新法により、農地や山林も国が引き取る対象となりました。これにより、これまでのような手間や心配をせず、土地を安心して国に返還できます。
また、農地や山林は環境保全や地域の資源としての価値があります。
国がこれらの土地を引き取ることで、適切な管理や地域の持続可能な発展にも寄与が期待されます。
さらに、農地や山林の維持管理には専門的な知識や技術が必要ですが、国が引き取ることで、そのような専門的な管理が実施されるため、土地の価値が維持されることも期待されます。
引き取り手を探す必要がない
土地を手放す際、一般的には買い手を探す必要があります。特に、土地の場所や特性によっては、売却が難しい場合もあります。
しかし、相続土地国家帰属制度を利用すると、国が土地を引き取ってくれるため、自ら買い手を探す手間が省けます。これにより、土地の売却や譲渡に関する手続きが大幅に簡素化されます。
また、買い手を探す際の広告費や仲介手数料などの経費も発生しないため、経済的な負担も軽減されます。さらに、買い手を探す過程での交渉や契約の手間もなくなるため、精神的なストレスも軽減されます。
国が引き取るので安心感がある
土地を手放す際の最大の懸念は、その後の土地の管理や利用に関することです。しかし、この制度を利用すれば、国が土地を引き取るため、その後の土地の管理や利用についての心配が不要です。
国が適切に管理し、必要に応じて再利用が保証されているため、土地を手放した後も安心して生活できます。また、国が土地を引き取ることで、土地の適切な利用や再開発が進められる可能性もあります。
これにより、地域の活性化や都市の再生など、社会全体の発展にも寄与が期待されます。
土地を管理する必要がなくなる
相続した土地の管理は、税金の支払いや草木の手入れなど、多くの負担が伴います。特に、遠方の土地や使用していない土地の場合、管理が煩雑になることも少なくありません。
しかし、この制度を利用することで、土地の管理の手間や負担から解放されます。国が土地を引き取ることで、これまでのような管理のストレスや手間を感じることなく、生活を送れます。
さらに、土地の管理に関する知識や経験がない場合でも、安心して土地を手放せます。これにより、土地の適切な管理や利用が進められ、地域の環境や景観の保全にも寄与が期待されます。
相続土地国家帰属制度のデメリット
相続土地国家帰属制度は、不要な土地を国に返還できる制度です。しかし、この制度を利用する際にはいくつかのデメリットが存在します。
以下に、その主なデメリットを詳しく解説します。
条件を満たさなければならない
この制度を利用するためには、特定の条件を満たす必要があります。
例えば、土地の上に建物がないこと、危険な崖がないこと、担保になっていないこと、権利関係に争いがないことなど、さまざまな要件が設定されています。これらの条件を満たさないと、制度の利用ができません。
したがって、希望する土地を返還するためには、まずはこれらの条件をしっかりと確認し、満たしているかどうかを検討する必要があります。また、条件を満たすための手続きや、必要な書類の準備も考慮する必要があります。
これらの手続きや書類の準備には時間と労力がかかることもあるため、事前の計画が必要です。さらに、条件を満たしていると思っても、実際には満たしていない場合もあるため、専門家の意見を求めることも考えられます。
手続き自体の費用と負担金が必要になる
制度を利用するための手続きには、費用がかかります。具体的には、申請手続きや審査手続きなど、さまざまな手続きに関連する費用が発生します。これらの費用は、制度を利用する人の負担となります。
したがって、制度を利用する際には、これらの費用を考慮して、総合的なメリット・デメリットを検討することが必要です。また、手続きに関連する費用は、制度を利用する地域や申請の内容によって異なることもあるため、具体的な費用を確認することが大切です。
さらに、手続きに関連する費用の中には、予想外の追加費用が発生することもあるため、余裕を持った予算の準備が必要です。
審査に時間がかかる
制度を利用するための審査には、時間がかかります。
特に、多くの人が制度を利用しようとする場合や、審査が複雑になる場合など、審査期間が長くなることが考えられます。そのため、制度を利用する際には、審査期間を考慮して、計画的に手続きを進めることが大切です。
また、審査の結果、制度の利用が認められない場合もあるため、そのような場合の対応策も考慮する必要があります。さらに、審査の結果に不満がある場合や、審査の進捗についての情報が欲しい場合などは関連する機関や窓口に問い合わせができます。
国庫帰属制度のQ&A
Q1申請書は自分で作成しなければならないのでしょうか。
申請書の作成は、一般的には専門家の協力を得ることが推奨されますが、自分で作成することも可能です。
この制度は、土地を国に返還するための手続きを簡単にすることを目的としています。そのため、申請書のフォーマットや記入方法もわかりやすく設計されているので、申請書を自分で作成することも可能です。
しかし、間違いを避けるためにも、専門家の意見を取り入れることをおすすめします。
Q2 費用はどのくらいかかりますか。
国庫帰属制度の申請にかかる申請手数料は土地一筆当たり14,000円です。
また、相続土地国庫帰属制度の負担金は、草刈り等の管理が必要な一部の市街地等の土地を除き原則として20万円が必要になります。
ただし、専門家に依頼する場合は、その報酬も考慮に入れる必要があります。
Q3申請はどのように行えばよいのですか。
申請は、所定の申請書を用意し、必要な書類とともに関連する役所に提出します。
申請書の提出は郵送でも直接持ち込みでも可能です。申請の際には、土地の登記簿謄本や固定資産税評価証明書などの書類が必要になる場合がありますので、事前に確認しておくとスムーズです。
Q4いつの時点で土地の所有権が国に帰属するのですか。
土地の所有権が国に帰属するのは、申請が受理され、手続きが完了した後です。
具体的な日時は、申請の内容や手続きの進行状況によって異なりますが、申請から8ヶ月以内には手続きが完了することが多いです。所有権の移転が完了すると、申請者に通知が行われますので、それをもって国庫帰属が確定します。
まとめ
この記事では、相続した土地を国に返還する「相続土地国庫帰属制度」について解説しました。
この制度は、管理が難しいまたは不要な土地を国に返還し、国が公共の利益のために適切に管理・活用することを目的としています。
特に、放置された土地の問題を解消し、有効活用を促進することが期待されています。
メリットとして、農地や山林も含めた多くの土地が対象となり、手間や経済的負担が軽減される点です。一方、デメリットとして、利用条件を満たす必要があり、手続きに関連する費用や審査時間がかかることが指摘されています。
「相続したけれど土地が管理しきれない」などお悩みの方は、一度司法書士にご相談ください。
この記事の監修者
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