この記事を要約すると
- 相続手続きには期限が設けられており、期限内に行わない場合、遅延による罰金や利息の発生、法的な権利の損失などのデメリットが生じる
- 相続放棄には3カ月の期限があり、これは遺産を承継したくない場合に行う手続き。相続放棄をする際は、遺産の正確な財産状況を把握した上で、家庭裁判所に申し立てを行う必要がある
- 特定の相続手続きには期限が設定されていないものもありますが、それでも迅速な対応が推奨されている
遺産相続時にはさまざまな手続きが必要です。
遺産相続手続きには期限があるもの・ないものがあり、特に期限のあるものは忘れないように手続きを行うことが大切です。
そこで期限のある手続きと期限のない手続き、それぞれについて解説していきます。
目次
遺産相続に必要な手続きの期限
期限のある相続手続き
相続手続きには様々な期限が設けられています。
例えば、相続税の申告・納税には、相続の開始が合ったことを知った日の翌日から10ヶ月の目の日までの期限(法定納期限)があります。
また、遺産分割協議を行う場合も、特に期限が設定されているわけではありませんが、早期に協議を行い合意に至ることが推奨されます。
なぜなら、時間が経過するにつれ、相続人間の意見の相違が生じやすくなり、トラブルに発展する可能性が高まるからです。
いつを起点に期限を計算するのか?
相続手続きの期限を計算する起点は、基本的に被相続人の死亡日となります。この日から様々な手続きの期限がスタートします。
たとえば、相続税の申告・納税期限は、相続の開始が合ったことを知った日の翌日から数えて10ヶ月以内となっています。重要なのは、これらの期限を逃さないように、早めに手続きを開始することです。
期限を逃すと、延滞税や罰金が課されることがあり、相続の手続きがさらに複雑かつ負担となる可能性があります。
【7日】死亡届、火葬許可申請書
相続手続きの中には、非常に短い期限で行う必要があるものもあります。その代表的なものが、死亡届と火葬許可申請書の提出です。
これらの書類は、被相続人の死亡が確認された後、7日以内に最寄りの市区町村役場へ提出しなければなりません。
死亡届は、遺族が被相続人の死亡を公的に届け出るためのものであり、火葬許可申請書は、遺体を火葬するための許可を得るために必要です。
これらの手続きは、相続手続きの初期段階で必ず行うべきものであり、期限内に完了させることが重要です。
【14日】年金受給停止、健康保険資格喪失や世帯主の名義変更の期限
年金の受給停止
被相続人が年金受給者だった場合、その死亡をもって年金の受給資格は失われます。
遺族は、被相続人の死亡を受け、速やかに最寄りの年金事務所に連絡し、必要な手続きを行う必要があります。この手続きを怠ると、不正受給とみなされ、後日返還請求が来ることがあります。
健康保険の資格喪失
被相続人が会社員等であった場合、健康保険の資格も死亡と同時に喪失します。
遺族は、被相続人が加入していた健康保険組合や市町村の国民健康保険に対して、死亡届を提出し、手続きを行う必要があります。
世帯主の変更
故人が世帯主であった場合、その死亡によって世帯構成が変わるため、市区町村役場にて世帯主の変更手続きを行う必要があります。
これは、住民票の変更や各種公的手当ての受給資格確認などに影響を及ぼします。
公共料金の名義変更
電気、ガス、水道などの公共料金の契約名義人が故人であった場合、遺族は名義変更の手続きを行う必要があります。
公共料金の名義変更をすることで、サービスの中断を避け、円滑な利用が可能となります。
司法書士などの専門家へ相続相談をお考えの方へ
相続手続きは複雑であり、遺族にとって精神的にも負担が大きいものです。特に、上記のような期限付きの手続きは、見落としや遅延が発生しがちです。
そのため、相続発生時には、早期に司法書士などの専門家に相談することをお勧めします。
適切なアドバイスとサポートを受けることで、手続きの遅れやトラブルを避け、スムーズに相続手続きを進めることができます。
【3カ月】相続放棄の期限
相続が発生した際、遺産の承継を拒否する選択肢として相続放棄があります。
相続放棄とは
相続放棄とは、相続人が、被相続人の権利義務の承継を拒否する意思表示のことです。
これを行うことで、マイナスの財産、つまり負債から逃れることができます。相続放棄は家庭裁判所に申し立てを行います。
相続放棄を検討すべきケース
相続放棄を検討すべき主なケースは、故人の負債が遺産の価値を上回っている場合です。
例えば、高額な借金や保証債務があり、それが相続財産を上回る場合、相続放棄することよって借金の責任を負わずに済みます。
また、故人と疎遠だったり、遺産に対する関心が低い場合にも、相続放棄が選択されることがあります。
熟慮期間について
相続放棄を決断するにあたっては、十分に考慮することが必要です。家庭裁判所に相続放棄の申し立てをする前に、故人の財産状況を正確に把握することが大切です。
そのためには、以下のような情報を確認する必要があります。
- 銀行口座の残高
- 不動産の所有状況
- 借金の有無と金額
- 未払いの税金やその他の債務
3カ月の期限内に、これらの情報を集め、相続放棄が最善の選択であるかどうかを慎重に判断することが求められます。
相続放棄は、相続における重要な選択肢の一つです。遺産の承継を放棄することで、未来の負担から逃れることができる場合もありますが、一度放棄を決定すると撤回はできないため、慎重な判断が必要となります。
【10カ月】相続税の申告・納付の期限
相続が発生した際、相続税の申告と納付が必要になる場合があります。
この期限は、相続の開始があったことを知った日(通常の場合は、被相続人の死亡の日)の翌日から10カ月以内です。相続税の申告・納付を怠ると、遅延税の課税などのペナルティが発生する可能性があるため、注意が必要です。
相続税の申告期限に間に合わないときの対処法|延納と物納
申告期限に間に合わない場合の対処法として、「延納」と「物納」があります。
延納は、特別な事情がある場合に限り、税金の支払いを後延ばしにできる制度です。
一方、物納は、現金での支払いが困難な場合に、不動産や株式などの財産を税金として納める方法です。
これらの制度を利用することで、負担を少し和らげることが可能になりますが、申請にはそれぞれ条件がありますので、専門家のアドバイスを受けることをお勧めします。
【3年】相続した不動産の名義変更(相続登記)
2024年4月1日より、相続により不動産を承継した場合は3年以内に相続登記を完了させることが義務化されます。
相続登記を行わないと、将来的に不動産の売買や抵当権設定時にトラブルが発生する可能性が高まります。
相続登記は、相続人が法的に不動産の所有者であることを明確にし、権利関係を正確に反映させるために重要な手続きです。
相続登記を行うことで、不動産に関する権利を守ることができます。
【還付請求期限5年、相続税申告期限10カ月】相続税の還付
相続税が過剰に納付された場合、還付を受けることができますが、その請求には期限が設定されています。相続税の還付請求は、納税した日から5年以内に行う必要があります。
過剰納付が発覚した場合は、速やかに税務署に還付請求を行うことが重要です。
還付請求は、相続人が納税時に知り得なかった事実が後に判明した場合や、誤って過多に納付した場合などに行われます。期限内に適切な手続きを行うことで、過剰に納めた税金を取り戻すことが可能です。
特に期限のない相続手続き
相続手続きには、明確な法定期限が設けられているものもあれば、特に期限の設定がないものもあります。
期限が設定されていない手続きでも、適切なタイミングで行うことが、相続の円滑な進行には必要です。以下に、特に期限のない相続手続きについて解説します。
遺言書の検認
遺言書が発見された場合、その内容を正式に確認する「遺言書の検認」手続きが必要になります。
この手続きには法的な期限は設けられていませんが、遺言書に基づく相続手続きを進めるためには、遺言書の真正性を確認し、内容を関係者に知らせることが重要です。検認は、遺言書を管轄する家庭裁判所で行われます。
遺産分割協議・調停・審判
遺産分割に関して、相続人間の遺産分割協議をします。
合意に至らない場合は、家庭裁判所による調停や審判を申し立てることができます。これらの手続きには特に期限が設けられていないものの、相続人間のトラブルを避け、円滑に相続を進めるためには、早期に解決を図ることが望ましいです。
銀行口座などの名義変更
故人名義の銀行口座や証券口座などの資産についても、相続による名義変更が必要です。
この手続きに法定期限はありませんが、資産の管理や利用をスムーズに行うためには、遺産分割協議が終了した後、速やかに名義変更を行うことが推奨されます。
名義変更は、各金融機関による手続きが必要となりますが、必要書類や手続きの詳細は機関によって異なるため、個別に確認が必要です。
まとめ
相続手続きには期限が設けられており、適時に対応しないと罰金や法的権利の損失などのデメリットを被る場合があります。
特に、相続放棄や相続税の申告・納付、不動産の名義変更には注意が必要です。また、遺言書の検認や遺産分割に関しても迅速な手続きが推奨されます。
相続に関する手続きは複雑であり、個別の事情によって最適な対応が異なるため、専門家による無料相談を活用することで、スムーズで正確な手続きが可能となります。まずは無料相談で、安心の第一歩を踏み出しましょう。
この記事の監修者
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