この記事を要約すると
- 銀行解約には1ヶ月以上かかる
- 銀行に亡くなった連絡をすると、被相続人の銀行口座は完全凍結する
- 口座凍結後は相続手続きが完了するまで全ての引き落とし、引き出しが停止される
家族が亡くなってから行う相続手続きの中で、おそらくほとんどの方が避けて通れないのが「銀行預金、証券口座の相続手続き」です。
1つの銀行口座の手続きだけでも1ヶ月以上の時間がかかる上、必要書類も多く、手間と時間がどうしてもかかってしまいます。1人で複数の銀行に口座を持っている場合、銀行によって細かな規定や必要書類の書式が異なることもあるので、1つ1つ調べる作業も必要です。
そして必要書類となる遺産分割協議書の修正が求められることもあり、家族総出で手続きの準備に追われることとなります。
また借金がある場合の預金の取り扱いや銀行への連絡のタイミングなど、注意が必要なポイントを知っておくことでトラブルを防ぐことができます。
今回はそんな複雑な「銀行預金口座の相続手続き」の実際の手順や注意点をご紹介していきます。
銀行預金口座の解約の流れ
銀行への連絡
家族がなくなった時、まずは被相続人がどこの銀行に口座を所有していたかを確認し、所有していた銀行への連絡を行いましょう。連絡を受けた銀行は、その時点をもって被相続人の銀行口座を完全凍結します。
これは銀行が相続トラブルに巻き込まれず、円滑な相続手続きをするために行われるものです。口座凍結後は相続手続きが完了するまで全ての引き落とし、引き出しが停止されます。
そのため光熱費などの引き落とし先となっている場合には引き落とし先口座の変更などの手続きが必要となるので注意が必要です。
また銀行に連絡をする際に、必要書類を確認して「相続手続き依頼書」の用紙をもらえるよう手配しておくと準備がスムーズです。相続手続き依頼書は店舗窓口だけでなく郵送で受け取ることも可能です。
出生から死亡までの戸籍収集
銀行への連絡後は本格的な相続手続きに向けた提出資料の収集へと進んでいきます。まずは被相続人が亡くなったことを示す為に、被相続人が生まれてから亡くなるまでの一連の戸籍を取得しましょう。戸籍が居住地にない場合には、本籍地の役所から戸籍謄本を取り寄せる必要があります。
またこれと併せて、相続人となる人物全員の1年以内の戸籍謄本と3ヶ月以内の印鑑証明書を揃えておくと今後の相続手続きがスムーズとなります。
口座ごとの残高証明書の取得
遺産分割協議や相続税の申告をする上で、相続発生時時点の正確な口座残高を確定する必要があります。そのために残高証明書を銀行窓口やカスタマーセンターから発行してもらいましょう。
残高証明書は預金残高だけではなく、ローンの借入残高などについても発行が必要です。
残高証明書は通帳がない場合やネット銀行のログインパスワードがわからない場合などにおいても、発行することが可能です。また相続人全員の委任状などは不要で、相続人もしくは委任された人単独で発行することが可能です。
ただし、残高証明書にはあくまで残高のみが記載され、入出金履歴は確認できません。
相続手続き依頼書の受け取りと記入
銀行への連絡の際に手配した「相続手続き依頼書」を手元に揃え、記載していきましょう。「相続手続き依頼書」は銀行によって書類名称や書式自体が異なり使い回しができないため、被相続人が口座を持つ金融機関の数だけ書く必要があります。また銀行口座だけでなく証券や借入れについても相続手続き依頼書が必要です。
「相続手続き依頼書」には相続人全員の署名・捺印が必要となります。全ての金融機関の依頼書を揃えた状態で手際よく記載を行いましょう。
必要書類の収集
相続手続き依頼書の他に、必要書類の収集が必要です。必要書類は基本的に以下のものになりますが、金融機関によって異なる場合があります。
銀行への連絡を行う際に確認しておきましょう。必要書類は遺言書の有無によって異なります。
遺言書がある場合
遺言書がある場合、遺言相続となるため「遺言書」の内容に合わせて必要書類や手続きが異なります。
まずは自筆証書遺言の場合には遺言書が法的に有効であることを示す「遺言書の検認」を行います。公正証書遺言書または検認された自筆遺言書が用意できた時点で、改めて銀行へ手続きの相談をしましょう。
【遺言書がある場合の主な必要書類】
- 遺言書
- 被相続人の戸籍謄本・除籍謄本または全部事項証明書
- 遺言執行者の選任審判謄本
- 遺言執行者の印鑑証明書(いなければ相続人の印鑑証明書)
- 自筆証書遺言の場合には検認調書または検認済証明書
遺言書がない場合
遺言書がない場合には相続人全員の必要情報を銀行に示す必要があります。また遺産分割協議を行う場合には、遺産分割協議書に相続人全員の署名・捺印をする必要があるので注意が必要です。
【遺言書がない場合の主な必要書類】
- 被相続人の戸籍謄本・除籍謄本または全部事項証明書
- 相続人全員の戸籍謄本または全部事項証明書
- 相続人全員の印鑑証明書
- 遺産分割協議をした場合は相続人全員の署名・捺印のある遺産分割協議書
銀行へ書類を提出
銀行へ書類一式を提出しても、不足や不備がある場合には受理されません。ただでさえ不慣れな手続きに、多くの必要書類の用意をする必要があるため、早くても提出まで1ヶ月以上の時間がかかることを留意しておきましょう。
相続払戻金の受け取り
被相続人の預金は銀行が書類一式を受理してからスムーズにいけば1〜2週間ほどで、相続人の口座へ振り込まれます。この預金を遺言や遺産分割協議書の内容に従って他の相続人へ分けることで、銀行預金の相続は完了します。
銀行預金口座の相続手続きでのNG行動
銀行預金口座の相続手続きにおいて早まった行動をとってしまうと、相続放棄ができなくなったり葬儀費用などの捻出に苦労することとなります。
以下の2つの行動に注意しながら、相続手続きは焦らず段階を踏んで行うことが重要です。
被相続人に借金がある場合は預金を引き出さない
預金などのプラスとなる財産だけでなく、借金などのマイナスの財産にも相続は発生します。
借金などが多くて相続される財産が全体でマイナスとなる場合、相続の発生を知ってから3ヶ月以内に全ての財産を一括して放棄する「相続放棄」を行うことで、相続人は借金を肩代わりしないで済むこととなっています。
しかし預金を引き出すことで、その目的によっては相続を受け入れる「単純承認」とみなされて「相続放棄」ができなくなってしまうことがあります。
単純承認とはプラスの遺産だけでなくマイナスの遺産も全て継承することを意味します。そのため借金が多い場合の相続においては、結果的に借金の肩代わりのみが残ってしまうのです。
相続する財産の全体を把握するまで、預金を先に下ろすことは控えておきましょう。
銀行にすぐになくなった旨を伝えない
被相続人の死亡を銀行に伝えると、その時点で被相続人の銀行預金口座は完全凍結されます。
完全凍結後には相続手続きが完了するまで、キャッシュカードによる引き出しやクレジットカードや光熱費、携帯代金の引き落としなど、全ての支払いがストップします。
カード会社などへの連絡を済ませた上で銀行への連絡を行うと、支払いの延滞なども起こりづらいでしょう。
また、すぐに銀行へ連絡を行い口座凍結すると葬儀費用や医療費などの引き出しがしづらくなるので注意が必要です。遺産分割協議の前にどうしても必要な支払いに追われた場合には、預金の仮払い制度も利用が可能です。
条件によって上限金額はありますが、相続人1人で時間をかけずに預金を引き出すことができます。
相続人の合意が得られなかった場合や遺産分割協議で相続手続きに時間がかかりそうな場合には制度をうまく活用しましょう。
まとめ
銀行口座の相続手続きは銀行とのやりとりや必要書類の準備など、とても手間と時間が掛かります。
この手続きを相続人同士の足並みを揃えながらご自身で行うには、かなりの根気強さが求められます。さらに葬儀の準備や遺品整理などと並行して行うのは決して容易ではないでしょう。
亡くなられた家族とのお別れに少しでも穏やかに向き合えるよう、面倒な相続手続きは私たち「あいりんグループ」に丸投げでお任せください。
この記事の監修者
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