この記事を要約すると
- 故人に子どもがおらず直系尊属が亡くなっていると、「兄弟姉妹」に相続する権利が発生する
- 兄弟姉妹の相続割合は配偶者がいる場合は財産の4分の1、いない場合は財産全て
- 兄弟姉妹の相続は相続財産が不動産しかない場合、揉めやすくなる
2024年6月9日、女優の久我美子さんが誤嚥性肺炎のため、93歳で亡くなりました。
久我美子さんは、1931年に東京府東京市牛込(現在の東京都新宿区牛込)にて誕生。父は貴族院議員の久我通顕侯爵で、久我家は摂関家に次ぐ家格の清華家の1つでした。
女子学習院在学中に、東宝ニューフェイスに応募したことがきっかけで映画界入り。華族出身で生まれ持った気品と清らかな雰囲気とにじみ出る内面の美しさで、昭和の銀幕を彩った大女優です。
1961年には俳優の平田昭彦さんと結婚しておしどり夫婦として知られていたものの、84年に先立たれています。夫婦に子どもはいませんでした。
華族出身で上流階級の人であるいうこと、そしてご主人もご自身も俳優・女優としてご活躍されていたことを考えると、おそらく遺産もたくさんあるのでは…?と推測できます。
ご主人に先立たれており、子どもがいない場合は、兄弟姉妹にも遺産を相続する権利が発生します。久我さんのように、兄弟姉妹に相続する権利が発生するケースでは、遺産分割が複雑になりやすく、トラブルに発展することも多いです。
ここでは、兄弟姉妹が相続人になるケースや相続の割合、兄弟姉妹が相続人となる場合に発生しやすいトラブルを紹介します。
目次
遺産相続で「兄弟姉妹」とは、故人の兄弟姉妹を指す
民法における「兄弟姉妹」とは、「故人」の兄弟姉妹のことです。
例えば、故人が長男・次男・三男の3人兄弟であり、そのうちの長男が亡くなったとします。その場合、民法上において相続人となる「兄弟姉妹」は、次男と三男です。長男に妻・長女・長男がいれば妻と子どもの2人に遺産を相続する権利が発生します。
もし妻が先立っていれば、長女と長男の2人が相続人です。
長男に配偶者も子どももいなかった場合に、初めて「兄弟姉妹」の遺産相続が発生します。
久我さんにも、兄と妹がいます。配偶者に先立たれて子どもがいない場合のケースに当てはまるため、兄と妹に遺産相続が発生します。
兄弟姉妹に相続する権利は認められるのか?
兄弟姉妹が相続できるケースは限られています。以下で詳しく見ていきましょう。
相続人の範囲と相続順位
被相続人(故人)の財産を相続する権利がある人を「相続人」と呼びます。民法によって相続人になれる人は定められているため、まずはチェックしてみましょう。
- 配偶者(常に相続人となる親族)
- 子(第1順位):被相続人の子ども
- 直系尊属(第2順位):被相続人の親
- 兄弟姉妹(第3順位):被相続人の兄弟姉妹
配偶者は常に相続人となり、その後は第1〜第3の順位で相続の権利が発生します。
兄弟姉妹が相続人となるケース
故人に子がおらず、直系尊属である両親等がともに亡くなっていると、故人の遺産は「兄弟姉妹」に相続する権利があります。
独身であり、配偶者も子どももおらず、両親・祖父母が亡くなっていると「兄弟姉妹」にも相続の権利が発生することはわかりやすいでしょう。
ここで気を付けたいのが、被相続人に「配偶者」がいるが、直系尊属が亡くなっていて「子」がいない場合の相続です。配偶者がいれば配偶者に相続の権利はありますが、実は「兄弟姉妹」にも相続の権利が発生します。
兄弟姉妹が相続人になる場合の遺産相続の割合
兄弟姉妹が相続人になる場合の遺産相続の割合は、相続する権利を持つ配偶者がいるかどうかで決まります。
ただし紹介するのは、あくまで法定相続分での計算方法です。相続人全員が合意をすれば、異なる割合での遺産相続もできます。
まずは、一般的な例を知っておきましょう。
配偶者と兄弟が相続人の場合
配偶者と兄弟が相続人の場合、遺産相続の割合は以下のとおりです。
兄弟姉妹の全員で4分の1を相続する権利を持つため、権利のある兄弟姉妹が2人いると実際に相続するのは4分の1を2分割した「8分の1」ずつです。
兄弟のみが相続人の場合
配偶者も子どもも、そして直系尊属も亡くなっている場合は、第3相続順位の兄弟姉妹のみに遺産を相続する権利があります。
遺産を兄弟姉妹の人数分で分割します。兄弟姉妹が2人いれば、法定相続分は2分割した「2分の1」ずつです。
兄弟姉妹が相続人となる遺産相続で起こりがちなトラブル
兄弟姉妹が相続人となる遺産相続では、よくトラブルが起こります。ではどのようなトラブルが発生しやすいのか、2つのケースを見ていきましょう。
故人の兄弟姉妹が非協力的だと相続手続きが終了しない
相続発生時、遺言がない場合は相続人全員で遺産分割協議をして、遺産をどのように分けるかを話し合います。そして、相続人全員が合意したうえで、遺産の分け方を決定する必要があります。
そのため、相続人が1人でも納得しないと遺産分割協議は成立しません。兄弟姉妹に相続する権利が発生しており、誰が相続するか・相続割合はどうするかなどの意見が合致しないと、相続手続きは終了できないままです。
自宅不動産しか主だった遺産がない場合、もめる要因に
相続する財産はないから心配する必要がない、と思っていても安心はできません。
自宅を所有している人は、自宅不動産が「相続財産」となります。住宅ローンを支払っている場合は、ほとんどのケースで団体信用生命保険にも加入しているでしょう。
ローンの名義人がなくなると、完済となって住宅ローンのない自宅不動産が「相続財産」になります。
自宅不動産の価値にもよりますが、例えば2,000万円の価値があるとすると、配偶者が4分の3の1,500万円、兄弟姉妹全員で500万円を相続する権利が発生します。兄弟姉妹が2人いれば、それぞれに250万円ずつの権利があるのです。
兄弟姉妹が主張してきたら支払えばいいのでは?と思うかもしれません。
しかし、現金として手元にある財産がなければ、兄弟姉妹に渡す相続財産が捻出できないでしょう。結果として残された配偶者は自宅を売って遺産を分割しなくてはならなくなるかもしれません。
まとめ
この記事では、故人の兄弟姉妹には相続する権利が発生するか、発生する場合の遺産相続の割合はどれぐらいなのかを解説しました。
故人(被相続人)に子どもがおらず直系尊属が亡くなっている場合に限り、兄弟姉妹に相続する権利が発生します。配偶者がいても子どもがいなければ、兄弟姉妹にも相続する権利があるため、兄弟姉妹を含めた相続人全員で遺産分割協議をしなければなりません。
遺産分割協議で相続人全員の合意が得られなければ相続の手続きは終了せず、兄弟姉妹が相続人となるケースではトラブルが起こりやすいです。
また、自宅不動産しか相続財産がなく兄弟姉妹が財産の相続を主張している場合は、配偶者が住んでいる家を売却して兄弟姉妹に財産を渡さなくてはならなくなるかもしれません。
ただし、遺言があれば兄弟姉妹には法律で保障されている「遺留分」は発生しません。故人の意志通りに財産が相続されます。
「兄弟姉妹には財産を渡したくないけれど、どうしたらいいかわからない」「相続人同士でもめず相続協議を終えたい」などのお悩みがある方は、ぜひ一度司法書士にご相談ください。相続の無料相談はこちら。
この記事の監修者
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