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インボイスの効力と相続の関係性について

インボイスの効力と相続の関係性について

この記事を要約すると

  • インボイス制度は消費税の仕入税額控除額を利用するために必要な制度であり、立場によって対応が異なるので注意する必要がある
  • インボイスの効力は自動的に相続されないため、相続人による対応が必要な場合がある
  • 被相続人の死亡した日がインボイス制度開始の前か後かで、相続人が事業承継するかどうかで、相続人の対応は異なる
  • 個人事業主が相続をした場合、前と同じ名義を使えるが、手続きは必要である
  • 遺産分割の際には、事業性資産を分割すると事業継続に支障が出るので注意が必要

インボイスとは?

インボイス制度とは、適格請求書(インボイス)にもとづいて消費税の仕入税額控除額を計算し、証拠書類を保存する消費税法上の制度です。正式には「適格請求書等保存方式」と呼ばれます。

インボイス制度の目的は、軽減税率の導入後、2種類の消費税が混在する中で消費税額を正確に把握することです。また、免税事業主の益税を減らし、適正な納税につなげることも目的の1つとされています。 

インボイス制度導入後、消費税の仕入税額控除を適用できるのは、適格請求書を受け取った取引のみとなります。この適格請求書を発行するためには、適格請求書発行事業者としての登録を出し、認可を受ける必要があります。

取引において適格請求書を発行するのは売り手の役割になります。発行された適格請求書に関しては、売り手、買い手ともに、課税期間の末日の翌日から2月を経過した日から7年間の保存義務があります。

インボイス制度導入後の取引は、売り手側か買い手側か、免税事業主か課税事業者かによって対応が異なります。この点が理解しにくい部分となっているため、パターン毎に対応をしっかりと理解しておく必要があります。次からそのパターンをご紹介します。

あなたが売り手で課税事業者の場合

取引相手が課税事業者であれば、取引相手が消費税の仕入税額控除を利用するためには、あなたが適格請求書発行事業者として登録し、取引相手に適格請求書を発行する必要があります。

取引相手が免税事業主である場合は、インボイス制度に関する対応はとくに必要ありません。

あなたが売り手で免税事業主の場合

取引相手が課税事業者であれば、あなたが適格請求書を発行できないために、取引相手が仕入税額控除を利用できず、消費税納税の際に余分な税を払って損失を出してしまう可能性があります。

その結果、将来的には課税事業者の取引先が減っていく可能性があります。取引相手が免税事業主である場合は、先ほどと同様、インボイス制度に関する対応はとくに必要ありません。

あなたが買い手で課税事業者の場合

取引相手が課税事業者であれば、仕入税額控除を利用するためには、取引相手に適格請求書を発行してもらう必要があります。

取引相手が免税事業主である場合は、あなたは仕入税額控除をできないので、余分な納税を行う必要が出てきます。

あなたが買い手で免税事業主の場合

取引相手が課税事業者でも免税事業主であっても、仕入税額控除に関しての対応を行う必要はありません

インボイス制度の課題

インボイス制度の導入により、仕入税額控除の適正化、適正な消費税の納付、事業者間の取引の円滑化といったメリットが期待されています。その一方で、インボイス制度の導入には、免税事業者の取引の減少、課税事業者の事務負担の増加といった課題も懸念されています。

このため、インボイス制度導入による事業者の負担軽減を図るため、インボイス登録した事業者は、経過措置として納税額の負担軽減や、補助金の加算、事務作業の負担軽減などの、様々な特例を受けられるようになっています。

 

インボイスの効力は自動的に相続されるのか?

インボイスの効力は、原則として自動的に相続されることはありません。ただし、ある一定の条件下では、一時的に被相続人のインボイス登録をしばらく利用できます。

インボイス制度では、適格請求書を発行できるのは、登録申請した適格請求書発行事業者に限られます。この適格請求書発行事業者の登録申請は、事業者ごとに判断されるものです。

そのため、無くなった適格請求書発行事業者インボイスの効力を、相続人が自動的に引き継ぐことはできません。相続人が適格請求書発行事業者として認められるためには、新たに登録申請を出す必要があります。

ただし、インボイス制度が開始される令和5年10月1日以降に、適格請求書発行事業者として登録されている被相続人が死亡した場合には、一定期間の間、被相続人のインボイスを相続人が利用できる、みなし措置を利用することできます。

みなし措置の期間は、被相続人が死亡した日の翌日から4月、もしくは相続人が新たに適格請求書発行事業者としての登録を受けた日の前日までの、いずれか早い日までとなります。このみなし措置の期間に相続人が定められたインボイス登録の手続きをしなかった場合は、インボイスは効力を失ってしまうので、手続きが遅れないように注意が必要です。

なお、相続人が事業を承継した後、インボイス登録を行わない場合であっても、相続人は、被相続人が発行したインボイスの写し等を保存しておく必要がありますので注意しましょう。 

 

相続人が被相続人の事業を承継しない場合

相続人が被相続人の事業を承継しない場合は、被相続人が課税事業者であり、生前に適格請求書発行事業者の登録申請を行っていた場合には、被相続人が死亡した日が、インボイス制度が始まる前か、後かによって異なる対応をする必要があります。

具体的には、インボイス制度が始まる前に死亡したのであれば、インボイスに関連した手続きは特に必要ありませんが、インボイス制度が始まった後では、被相続人の管轄の税務署に対して、死亡に関する届け出をする必要があります。 

令和5年9月30日までに死亡した場合   

令和5年9月30日までに被相続人が死亡した場合は、インボイス制度の適用開始前になるため、被相続人が課税事業者であり、仮に令和5年9月30日より前に適格請求書発行事業者の登録申請を行っていたとしても、登録申請の効力が発効することはありません。

ただし、個人事業主である被相続人が令和5年9月30日までに、適格請求書発行事業者の登録申請を行っていた場合には、相続人は「個人事業者の死亡届出書」を管轄の税務署に届け出て、適格請求書発行事業者の登録申請を行っていた被相続人が死亡したことを伝える必要がありますので注意しましょう。

被相続人が課税事業者であっても、適格請求書発行事業者の登録申請を行っていなかった場合や、被相続人が免税事業主であった場合には、被相続人からの相続に関連して、インボイス制度についての手続きをする必要は特にありません。

なお、被相続人が生前行っていた事業について、所得税の申告を行う必要がある場合には、別途その申告手続きが必要になります(準確定申告)。 

令和5年10月1日以降に死亡した場合

令和5年10月1日以降に被相続人が死亡した場合には、被相続人が課税事業者であり、適格請求書発行事業者の登録をすでに行っていた場合は、その登録の有効性は一定期間残りります(被相続人が死亡した日の翌日から4月を経過した日まで)。そのため、相続人は適格請求書発行事業者の死亡届出書を管轄の税務署に届け出る必要があります。

適格請求書発行事業者の死亡届出書が提出された場合には、被相続人のインボイス登録は、提出された日の翌日には効力を失います

仮に相続人が適格請求書発行事業者の死亡届出書を提出しなかった場合であっても、被相続人が死亡した日の翌日から4月を経過すると、被相続人のインボイス登録は自動的に効力が失われます

令和5年10月1日以降に被相続人が死亡した場合でも、被相続人が課税事業者であって適格請求書発行事業者の登録を行っていなかったり、免税事業主のままであった場合には、相続人はインボイス制度に関する手続きをする必要は特にありません。

 

相続人が被相続人の事業を承継する場合

相続人が被相続人の事業を承継する場合には、インボイスの効力は自動的に相続されないため、相続人が消費税の仕入税額控除額を利用するためには、適格請求書発行事業者としての登録を、相続人が新たに申請する必要があります。ただし、被相続人が死亡した日によっては、被相続人のインボイス登録を一定期間利用することができます。 

被相続人が死亡した日が、インボイス制度開始の前か後かによって対応は少し変わりますので、次からご紹介する情報を参考に、適切に対応を行っていきましょう。

令和5年9月30日までに死亡した場合  

被相続人が課税事業者であり、令和5年9月30日より前に、適格請求書発行事業者の登録申請を行っていたとしても、インボイス制度が始まる前に被相続人が死亡した場合には、その登録申請は効力が発生しません。

もし相続人が事業を承継し、課税事業者として適格請求書発行事業者に登録したいと思った場合には、適格請求書発行事業者の登録申請手続きを行う必要があります。 

相続人が事業継承して、免税事業主となる場合においては、被相続人が令和5年9月30日までに死亡している場合は、インボイス登録の申請は効力を発揮していないので、特に対応をする必要はありません。

令和5年10月1日以降に死亡した場合

被相続人が課税事業者であり、適格請求書発行事業者として登録していた場合、適格請求書発行事業者としての登録が有効になっているため、相続人は管轄の税務署に適格請求書発行事業者の死亡届出書を提出する必要があります。

適格請求書発行事業者の死亡届出書を提出すると、提出日の翌日には被相続人の適格請求書発行事業者としての登録は失効します。

相続人が事業承継した場合、被相続人のインボイス登録が自動的に相続されることはありませんので、相続人が適格請求書発行事業者として登録したい場合には、相続人が新たに適格請求書発行事業者としての登録申請を行う必要があります。 

ただし、適格請求書発行事業者としての登録を受けている被相続人が、令和5年10月1日以降に死亡した場合には、みなし措置により、被相続人が死亡した日の翌日から4月は被相続人のインボイスを利用することが可能です。

適格請求書発行事業者の死亡届出書提出の翌日か、相続開始日の翌日から4月、いずれかの早いほうで被相続人の適格請求書発行事業者としての登録は失効されます。

相続人が事業継承しても、適格請求書発行事業者としての登録を受けない場合は、相続人が適格請求書発行事業者の登録申請をする必要はありません。

ただしこの場合、被相続人の適格請求書発行事業者は、被相続人が死亡した日の翌日から4月は有効なまま残るため注意が必要です。

たとえ、適格請求書発行事業者としての登録をするつもりがなくても、適格請求書発行事業者の死亡届出書を提出しない限り、みなし措置の取引によって一定起案の間は被相続人のインボイス登録の効力が残ったままになりますので、消費税の納税義務や、適格請求書の発行義務が生じますので注意が必要です。

これは相続人が事業継承した後、免税事業主として活動していく場合も同様です。

 

相続人が登録を受けるまでの間はどうすればいい?

 被相続人が、課税事業者として適格請求書発行事業者に登録していた場合、その登録は自動で相続されませんので、もし相続人が適格請求書発行事業者として事業を承継して続けていく場合には、相続人が新たに適格請求書発行事業者として申請する必要があります。

相続人が適格請求書発行事業者としての申請を出して、受理されるまでの対応については、インボイス制度が開始される前と後とで対応が異なります。

インボイス制度が開始される前に被相続人が死亡した場合には、被相続人の適格請求書発行事業者としての登録は有効になっていないので、相続人が適格請求書発行事業者として登録したい場合には、新たに適格請求書発行事業者としての登録申請を出すだけで大丈夫です。 

この場合、登録申請されるまでは、適格請求書発行事業者としてインボイスを発行するなどの活動はできないので注意しましょう。

もし被相続人が生前に、取引先に適格請求書発行事業者となることを伝えていたのなら、適格請求書発行事業者としての登録が遅れることを伝えておくと良いでしょう。

インボイス制度が開始した後に被相続人が死亡した場合、被相続人が適格請求書発行事業者として登録されていれば、みなし措置により、被相続人が死亡した日の翌日から4月は、被相続人のインボイス番号をそのまま使えます。

このため、相続人が急いで適格請求書発行事業者の申請登録をする必要はありません。みなし措置による期間が終わるまでに、相続人は適格請求書発行事業者としての登録を完了しておきましょう。

 

個人事業主が相続!事業の名義変更は必要か?遺産分割の注意点

個人事業主が相続人から事業を相続する場合、事業の名義変更は必ずしも必要ありません

個人事業主である被相続人が死亡した場合、その事業を承継するためには、被相続人に対する廃業届を出し、一旦廃業の形を取ってから、相続人が新たに開業する形を取るようになります。

相続人が名義変更して事業を承継する場合、管轄の税務署や都道府県に変更に関する届け出を出す必要があります。

相続の際、事業の名義として使っていた屋号を変更することもできますが、屋号をそのまま引き継いで使用することもできます。取引先との関係から、屋号をそのまま使用するパターンが多いようです。

 遺産分割の際には、事業を承継する相続人と、承継しない相続人との間でトラブルが起きやすいので注意が必要です。

 もし事業用資産を、事業を承継する人以外の相続人が相続した場合は、最悪の場合は事業に必要な資産が使えなくなったり、資産を勝手に処分されるなどして、事業の継続に支障を来す場合があります。

このため、事業用の資産に関しては全て、事業を承継する相続人が取得することが望ましいとされています。

被相続人の名義となっていた資産は、特に遺言による指定がない場合には、相続のルールに従って、法定相続人の間で遺産相続されてしまいます。

被相続人となる可能性のある人は、生前に遺産分割についてのルールを決め、遺言状のように法的に有効な形で残しておくことが、後の遺産分割の際のトラブルを防ぐために役立ちます。

 また、負債が資産を上回る、いわゆる債務超過の状態になる場合も、遺産分割の際に問題になりやすいパターンとなります。

負債に関しても相続時の遺産分割の対象となりますが、事業を承継する相続人とそれ以外の相続人の間で、事業資産と負債の分割について揉める場合があります。

後のトラブル防止のため、被相続人となる人が生前に遺書等で決めておくのが良いですが、もし遺産分割の段階でトラブルになり、債務超過により事業を承継することが困難になった場合には、最悪のケースでは相続を放棄することを選択する必要があります。

 

まとめ

インボイス制度の開始後は、消費税の仕入税額控除額を利用するために、事業者は適格請求書発行事業者となる必要があります。

 インボイスの効力は、相続の際に自動的に引き継がれないため、相続人が適格請求書発行事業者として事業を継続する場合には、新たに申請手続きをする必要があります。ただし条件によっては、みなし措置を利用して、一時的に被相続人のインボイスを利用することも可能です。

また、相続人が事業承継をするか、承継する場合は課税事業者として活動するか、免税事業主として活動するかによっても、対応が変わってきます。

事業を相続した場合、名義変更等の手続きのほか、遺産分割トラブルにも注意する必要があります。被相続人となる人が存命の間に、遺産分割のルールを決めておくことは、後のトラブル防止に役立ちます。

インボイス制度と相続の問題は、パターン毎に対応が異なりますので、記事で紹介した内容を参考にしながら、適切な対応を行ってください。

この記事の監修者

あいりん行政書士法人    梅澤 徹

資格:司法書士・行政書士・宅建取引士

横浜市内の相続専門司法書士事務所で修行したのち独立。不動産が絡む難しい相続手続きが得意。宅地建物取引士資格も保有し、不動産コンサルティングには定評あり。

現在はあいりん行政書士法人と司法書士事務所を経営。相続専門5期目として相続業務を幅広く対応。

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