この記事を要約すると
- 東京23区内の火葬場のほとんどが民営であり、近年大幅に値上げしている
- 民営の火葬場に比べて、公営の火葬場の方が安価な火葬料で利用できる
- 火葬の際には火葬許可証を提出し、埋葬許可証を受け取る
近年、東京23区内の民間火葬場では、休憩室などの室料について軒並み値上げを行なっているのをご存知でしょうか?
一般的なイメージとして、”その土地の自治体が建設した火葬場を運営している”と捉えている方が多いかと思いますが、東京23区では公営による火葬場はたったの2か所のみです。
東京23区には火葬場が9か所ありますが、このうち7か所が民間企業によって運営されています。さらに、7か所ある民間火葬場のうち、6か所が東京博善株式会社という創業明治の老舗企業が運営しています。
火葬料金値上げの背景
今回、東京博善株式会社が火葬場の値上げに至った背景には、2020年に行われた『広済堂ホールディングス(現社名)による東京博善株式会社の完全子会社化』があります。
広済堂ホールディングスもまた、近年ラオックスの社長である中国人実業家・羅怡文氏のグループ企業が大半の株を取得するようになり、結果的に東京博善株式会社は、中国資本の勢力下に入ることになりました。
こういった広済堂による完全子会社化、中国資本の傘下に組み込まれることになった時期と並行するように東京博善株式会社による火葬場の強引な値上げが行われるようになりました。
例えば、一般向けグレードである火葬料金を59,000円から75,000円へと16,000円もの値上げを断行しました。東京23区内の火葬場のうち、公営の臨海斎場では火葬料44,000円で済むということからも、かなりの価格差がついていることがわかります。
(※ 臨海斎場は、港区・品川区・目黒区・大田区・世田谷区といった近隣の組織区住民でなければ利用できません。)
他にも、東京博善株式会社では22年6月から燃油サーチャージとして”燃料費特別付加火葬料”も徴収するようになりました。燃油サーチャージは、これまで国際線などの航空機を利用する際に支払いを求められていましたが、葬儀業界では事例がありませんでした。
こういった様々な値上げは東京23区民の大きな悩みの種となっています。当然、リーズナブルに火葬場に頼みたいと考えるところですが、安価な費用で利用できる公営の火葬場は東京23区内で2か所しかなく、選択肢がかなり限られています。
かといって、今後東京23区内に民間や公営問わず新しく火葬場が建設される可能性もほぼゼロに近いのが現状です。
(火葬場の建設に必要な広さの土地の確保が都心では困難であり、住民感情などさまざまな問題が立ちはだかる為)
ある程度、営利に走ることも、民間企業であれば致し方無いことも分かりますが、火葬場といえば公共のインフラといった側面もあるはずです。近年の度重なる値上げの断行によって、他の火葬場に対して多額な金額差が生じている事態に対し、都民の不満が募るのも無理はありません。
公営火葬場と民営火葬場の違い
火葬場は、公営火葬場と民営火葬場の2種類に分けられます。
公営火葬場の利用については、基本的にその火葬場がある地域の住民だけが安価に利用できるようになっています。
これに対して民営火葬場の場合は、利用者の制限がなく、誰でも利用することができます。
なぜ公営火葬場で利用者の制限があるのかというと、基本的に公営の火葬場は市ごとに建設されており、自治体が住民の税金などの公費を活用して運営しているからです。
各市区町村の公共の自治体が公営火葬場を運営していたり、複数の市区町村の自治体が組合として一つの火葬場を運営していることで、周辺住民の利用料金を安価に抑えることができます(利用にあたっては、故人の住民票が該当する市区町村である必要があります)。
もちろん市区町村外に住む方でも利用すること自体は可能ですが、市町村内に住む人に比べて利用料金が高くなったり、優先順位を後回しにされてしまうことがあるので注意が必要です。
これに対して、民営の火葬場は民間企業や葬儀社が建設し、運営を行っています。そのため、居住地による料金の変動など利用者の制限がなく、基本的に誰でも同じ条件で利用することができます。
公営火葬場と民営火葬場の料金
公営火葬場と民営火葬場の料金を比較すると、公営の方が民営の火葬場よりも安く利用することが可能です。公営の火葬料の目安は、数千円から高くても4万円くらいで、場合によっては無料で行われることもあります。
火葬料を支払えない場合は?
生活保護を受けている場合は、生活保護制度の一種で自治体から‘葬祭扶助’が受けられます。
葬祭扶助とは、亡くなった方を供養(火葬)する人自身が生活保護を受けている場合のみ受けることができる制度です。
葬祭扶助で支給してもらえる費用の限度額はおよそ20万円であり、その中から火葬料や、お葬式で使った経費が支給されます。火葬料は、自治体から直接火葬場へ支払われる場合があります。
ただし、一点注意が必要なのが、”故人の遺産”です。遺産相続などで財産がある場合は、葬祭扶助で支給してもらえる金額が減額されるので注意しましょう。
火葬料を安く済ませるには?
前述の通り、民営の火葬場ではなく、故人が住んでいた地区が運営している公営の火葬場を選択すれば、ある程度火葬費用を抑えることができます。
もしも居住地よりも遠方の病院で入院していた方が亡くなり、火葬場を病院の近くで済ませようと考えている方がいれば注意してください。
火葬とは、火葬の流れは?
火葬とは、ご遺体を焼いて遺骨にする葬送形式の一つです。現代の日本では、99.9%が火葬により葬送しています(厚生労働省 令和3年度 衛生行政報告例より)。
墓地、埋葬等に関する法律によって、死後24時間経過してから火葬が行われます(※感染症などで死亡した場合を除く)。
火葬の流れ
①火葬許可証を提出する
火葬場に到着後、火葬許可証を提出します。
火葬許可証を紛失してしまうと、火葬自体できなくなってしまうので管理には十分に注意してください。実際に他の葬祭準備に気を取られて、火葬場へ火葬許可証を持参することを忘れてしまうケースがあります。
そうならない為に、火葬の前日までに火葬許可証を葬儀社に預けておくと安心です。また、火葬許可証以外にも申請書類に必要事項を記載する為、提出業務に慣れている葬儀社に依頼しましょう。
※火葬許可証の入手方法
市区町村の役所に死亡届を提出すると火葬許可証を発行してもらえます。葬儀社が死亡届の提出を代行してくれるので、死亡届に必要事項を記載し、認印を準備しておきましょう。
②納めの式を行う
柩が炉の前に安置され、線香台が置かれます。ここで僧侶が同行している場合、読経が行われる中、焼香が始まります。
焼香の順番は、喪主→遺族→親族→故人の知人・友人の順に行います。火葬炉の前で柩に最後のお別れをし、棺が火葬炉に納められるところまで全員で見届けます。
③火葬
火葬は一般的に10時から15時の間で予約を受け付けている火葬場が多いです。
火葬にかかる時間は、短ければ40分、長いところで1時間30分程度です。故人の体型や火葬炉そのものの性能によっても異なります。
④骨上げ・収骨を行う
火葬後、遺骨を遺族や参列者の手によって骨壷に納めます。収骨の順番も、はじめは喪主、次いで故人と血縁の深い順に拾っていきます。
⑤埋葬許可証を受け取る
遺骨と共に「火葬済証明印」が押された「埋葬許可証」が火葬場から渡されます。
「埋葬許可証」もまた、納骨堂やお墓に遺骨を納める際に必要になる書類なので無くさないように十分に気をつけて保管しましょう。
※保管場所に注意
「埋葬許可証」を無くさないように、多くの火葬場では骨壷と一緒に桐箱の中に納める場合が多いようです。ただし、「埋葬許可証」がどういった形式で渡されるのかは、火葬場によっても異なるので十分に気をつけましょう。
まとめ
現在、日本では葬送の多くが火葬で行われています。火葬料を安く抑えるためには、民営ではなく居住地近くにある公営の火葬場を利用するのも一つの手です。
しかし、東京23区の場合はもともと公営の火葬場が少なく、選択肢があまりありません。それにも関わらず、東京23区内の火葬場のほとんどを占めている東京博善は、火葬料そのものの値上げだけでなく燃料費特別付加火葬料という燃油サーチャージの料金まで請求するようになりました。
この背景には、近年東京博善が中国資本の傘下に組み込まれたことが挙げられます。将来的に火葬場不足が予想される現代において、今後も多くの課題が考えられます。
この記事の監修者
遺産相続の無料相談
横浜市の相続・遺言に関するご相談ならあいりん司法書士事務所へ。
相続のご相談は完全無料です。【横浜駅徒歩4分】 横浜市内で財産・不動産の相続・相続放棄・終活にお悩みの方はお気軽にご相談ください。
横浜での相続に精通したプロチームが、相続法務から税務にいたるまでお客様をフルサポートします。