【増えている死後離婚】姻族関係終了届の書き方と提出先、注意点を徹底解説

姻族関係終了届提出方法

死後離婚」とは配偶者が亡くなった後、「婚姻関係終了届」を提出することによって、配偶者の家と関係を断つ手続きのことを指します。

しかし、「姻族関係終了届」の提出方法や必要書類については、ほとんど知られていません。そこで本記事では、一般的に知られていない姻族関係終了届の書き方や提出先、注意点を徹底解説していきます。

配偶者の死亡後に提出する姻族関係終了届の手続きについて、知っておかなければならない重要なポイントが盛りだくさん。この記事を読んでいただければ姻族関係終了届の不安がスッキリわかりますので、是非最後まで読み進めてください。

 

死後離婚が増えている理由とどのくらい増えているか

「姻族関係終了届」を提出して配偶者といわゆる「死後離婚」する人の数は、年々増加しています。2009年には1823件、2010年は1911件でしたが、2017年には3倍以上の6042件にまで増えました。(法務省戸籍統計による)

「姻族関係終了届」を提出する人が増えている理由として、以下のような事情があると考えられます。

舅姑との不仲、介護が煩わしい

義理の親との不仲が一番多い理由ではないでしょうか。姻族関係が続いていると、夫の親に何かあったときには「介護」や「扶養」の義務が生じます(民法730条、民法877条1項)。夫の親との関係を断ちたい場合は、姻族関係を終了することが有効です。

義理の家族との関わりが煩わしい

配偶者の死後、姻族関係が続けば義理の親や兄弟姉妹などとの親族関係が継続していきます。煩わしいと思う場合は、姻族関係の終了を選択することも考えられます。

法要に関わるのが煩わしい

配偶者の死後、法的には定められていなくても、「通常は」数年ごとに法要を行います。それが煩わしいと感じる方もいらっしゃるでしょう。姻族関係を終了すると他人になれますので、相手の親族を呼んで法要を行うといった義務はなくなります。

精神的に夫やその家族との関係を断ちたい

生前に夫やその家族との関係が悪く不仲でも、経済的事情で離婚できなかった妻が、せめて「死後でも良い。関係を断ちたい」と考え死後離婚を選択します。

 

「姻族関係終了届」とは?

姻族関係終了届を提出すると

配偶者が亡くなった場合に、生存する配偶者が提出することで、亡くなった配偶者の血族との姻族関係を終了させる届出する書類です。配偶者がなくなることによりさまざまな問題を抱える方の一つの手段として用いられています。

姻族関係継続の問題点

配偶者が亡くなった後も、姻族関係を継続することは、様々な問題を引き起こすことがあります。大きくまとめると姻族関係継続の問題点は以下の3つが考えられます。

社会的な問題

配偶者が亡くなった後も、姻族関係を継続することは、社会的な問題を引き起こすことがあります。例えば、新しいパートナーとの関係がある場合、その人との関係を継続することができない場合があります。また、配偶者の家族との関係も複雑になることがあります。

扶養・介護の問題

一般的には、配偶者の死後、配偶者親族に対して法的な扶養や介護の義務は発生しません。ただし、配偶者が生前に配偶者親族を扶養していた場合や、配偶者に介護が必要な状態にあった場合は、一定の義務が発生する可能性があります。また、遺産相続の手続きにおいて、相続人としての地位がある場合は、遺産分割の際に扶養義務が発生する場合もあります。

法的な問題

配偶者が亡くなった後も、姻族関係を継続することは、法的な問題を引き起こすことがあります。たとえば、遺産相続や保険金請求など、法的な手続きにおいて問題が生じる可能性があります。また、姻族関係が継続している場合、結婚することができないため、法的な権利を制限されることがあります。

 

「姻族関係終了届」の役割

そこで、姻族関係を終了させるために、「姻族関係終了届」が用意されています。この届出により、配偶者の死後も姻族関係を終了させ、上記のような姻族関係継続の問題点を解消することができるのです。姻族関係終了届を提出することで、配偶者の家族との関係を整理することや、新しいパートナーとの関係を築くことができるようになるでしょう。

また、遺産相続や保険金請求など、法的な手続きにおいてもスムーズに進めることができます。さらに「姻族関係終了届」は裁判所の許可は必要なく、本人の意思のみで提出することができるのも特徴です。

ここまでで「姻族関係終了届」がとういったものなのかの大枠を理解していただけたかと思います。

しかし、あまり聞き馴染みのない「姻族関係終了届」ですが、一体どれくらいの人達が利用しているのでしょうか。政府の統計情報をもとに提出率の推移をみてみましょう。

「姻族関係終了届」提出率推移

法務省戸籍統計による推移

上記は統計情報をもとに作成したグラフです。姻族関係終了届の提出件数は、2021年には2,934件が提出され、前年度の3,022件から減少しました。過去10年間で最も多かったのは2017年の4,895件であり、その後は減少傾向にあります。近年減少傾向にありますが、依然として一定数の人々が提出しているのも事実です。

 

「姻族関係終了届」の提出先と期限

提出先はどこ?

「姻族関係終了届」の提出先は、主に市区町村役場や区役所などのです。提出方法は、窓口で直接提出または郵送などがあります。提出方法は、自治体によって異なる場合があるため、事前にお住まいの市町村役場や区役所で確認しておくこと良いでしょう。

提出期限はあるのか?

 「姻族関係終了届」には、提出期限は特に設けられていませんが、義理の親族関係の悩みを抱えているのでしたらできるだけ早めに提出することが望ましいです。なぜなら、姻族関係が継続している場合、遺産相続や保険金請求など、法的な問題が生じる可能性があるからです。そのため、配偶者が亡くなったことが確認されたら、早めに届出を行い、姻族関係を正式に終了させることが大切です。

 

「姻族関係終了届」の書き方

「姻族関係終了届」は、配偶者との関係を正式に終了するための手続きです。この手続きを行うにあたり、必要な書類や手順について解説します。

提出に必要な書類の詳細

手続きを行う際に必要になるものは以下の4つです。

  •    姻族関係終了届 1通
  •    戸籍謄本(戸籍全部事項証明書) 1通 ※本籍地に提出する場合は不要なことが多い
  •    印鑑(認印可)
  •    届出の持参者の身分証明書(運転免許証、健康保険証、マイナンバーカードなど)

書き方の手順

提出する書類が用意できたら、手順に沿って「姻族関係終了届」を書いていきます。書き方は、姓や名、生年月日などの基本情報から始まり、配偶者との関係性や終了理由などの詳細を記入していきます。また、署名や捺印も必要ですので、書類に不備がないように注意してください。

また、姻族関係終了届の用紙については、市区町村役場(所)やそのホームページから入手できます。

 

「姻族関係終了届」のメリット・デメリット

姻族関係は婚姻によって生じる新たな家族関係、それは配偶者の血族との関係です。しかし、親族との関係が悪く、配偶者の死後に姻族関係を終了させたいと考える方もいらっしゃるでしょう。

そんな時に役立つのが「姻族関係終了届」です。今回は、そのメリットとデメリットについて詳しく見ていきましょう。

メリット

配偶者の血族との関係を終了させることができる

姻族関係終了届を提出することで、配偶者の血族との法的な関係を終了させることが可能です。

これは、例えば離婚後に元配偶者の家族との関わりを断ち切りたい、または配偶者が亡くなった後にその家族との関係を続けるのが困難であると感じる場合に有効です。

舅や姑の介護をする義務を負うことがなくなる

姻族関係が継続していると、民法第877条第2項により、義父母の扶養義務を負わされる可能性があります。しかし、配偶者の親族との姻族関係が終了すると、民法第877条の扶養義務者から外れるため、配偶者親族の扶養義務を負わされずに済みます。

介護問題は経済的な問題や仕事への影響があるため、配偶者の死後に義父母の介護に不安がある場合は姻族関係修了届を提出すると良いでしょう。

自分の意思だけで夫の親族との関係を断ち切ることができる

姻族関係終了届は、自分自身の意思で提出することができます。これにより、自分自身の意思で配偶者の親族との関係を終了させることが可能となります。

相続した財産を返す必要はなく、遺族年金もそれまでどおりもらえる

姻族関係終了届を提出した後も、既に相続した財産を返す必要はありませんまた、遺族年金も引き続き受け取ることができます。これは、経済的な安定を求める方にとって大きなメリットとなります。

しかし、姻族関係終了届にはデメリットも存在します。それらを理解し、自身の状況と照らし合わせて最適な選択をすることが重要です。

デメリット

その後の人間関係に影響を及ぼす場合がある

姻族関係終了届を提出すると、法的には義理の家族との関係が終了します。これは、一方的に家族関係を断つことを意味し、その後の人間関係に影響を及ぼす可能性があります。

例えば、義理の家族との関係が良好であった場合、この手続きにより関係が悪化する可能性があります。

撤回できない

姻族関係終了届は、一度提出すると撤回することができません

そのため、後悔しても元に戻すことはできません。この点を理解した上で、慎重に決定することが求められます。

義両親等からの援助は受けられない可能性がある

姻族関係終了届を提出して姻族関係が修了した後も、直接会ってはいけないといった法的な縛りはありませんが、お互いに扶養義務がなくなるため義両親等からの援助が受けられない可能性があります。

自分のお墓を準備しなければならない可能性がある

姻族関係終了届を提出すると、自分のお墓を準備しなければならない可能性があります。一般的に姻族関係が終了した後、配偶者の親族が管理するお墓に入れる可能性は低くなるからです。

姻族関係修了届を提出する人の中には「配偶者やその親族と同じお墓に入りたくない」という理由の方もいらっしゃるかと思います。

そうした場合もやはり自分のお墓は自分で準備する必要があるでしょう。

子供との関係が悪くなる可能性がある

姻族関係終了届≒配偶者の死後に離婚をするようなものが、いわゆる「死後離婚」です。死後離婚はあくまで親の問題なので、死後離婚をすることで「なぜ亡くなったあとに離婚をするのか?」という疑問を持つかもしれません。

そのことがきっかけで子供とも関係が悪くなる可能性があります。

 

死後離婚をすると、遺族年金や遺産などの相続権・扶養義務はどうなる?

遺族年金

「死後離婚」は、自分と亡くなった配偶者との関係には影響を与えません。そのため、遺族年金等もそのまま受給することができます。遺族年金は、国民年金または厚生年金保険の被保険者または被保険者であった方が、亡くなったときに、その方によって生計を維持されていた遺族が受けることができる年金です。

「死後離婚」はかつての配偶者の義理の両親や兄弟・姉妹との縁を切るだけ(姻族関係を終了すること)であって、遺族年金には何の影響も及ぼさないのでご安心ください。「死後離婚」と遺族年金は別の問題です。

相続権

「死後離婚」と相続は全く別の問題であることを理解しておきましょう。死後離婚(姻族関係終了届の提出)を行っても、生存している配偶者が法定相続人であるという事実は変わりません。つまり、死亡した配偶者の財産は依然として相続することができます。

「死後離婚」という行為は、亡くなった配偶者との結婚関係には影響を及ぼしません。そのため、相続権にも影響を与えることはありません。 「死後離婚」を行ったからといって相続権を喪失することはなく、また過去の相続も無効になることはありません。

また、将来、舅や姑が死亡した場合、子が代襲相続します。「死後離婚」と相続は全く別の問題なのです。

扶養義務

死後離婚をすることで、配偶者の親族との法的な関係を解消し、扶養義務や責任を終了させることができます。日本社会ではまだまだ嫁が夫の両親の世話をしなければならないという風潮があります。

しかし、配偶者の親族とのお付き合いや介護が負担な人、もう配偶者の親戚とは付き合いたくないと思っていらっしゃる人は、「姻族関係終了届」を提出することで、配偶者の親族とは縁を切りたい、扶養はしないという意思を明確にできます。

姻族関係終了届を提出することで、その家の嫁(婿)でなくなりますので、舅や姑を扶養する義務も、法律的な義務を負うこともなくなります。世間的な体裁も気にしなくてよくなります。

 

亡くなった配偶者に借金があった場合は、別途相続放棄が必要

姻族関係終了届は配偶者の親族との関係を終了させるためのものです。そのため、配偶者の遺産相続には影響がありません。

しかし、亡くなった配偶者に借金があった場合どうしたらよいでしょうか?

借金を相続するとは?

相続とは、ある人が亡くなったときにその財産(遺産)が法律に基づいてその人の相続人に移ることを指します。

しかし、遺産には財産だけでなく、借金も含まれます。つまり、相続人は亡くなった人の借金も一緒に相続することになります。

相続放棄とは?

相続放棄とは、相続人が遺産を受け取る権利を放棄することです。これにより、相続人は遺産だけでなく、亡くなった人の借金を相続せずに済みます。

相続放棄は家庭裁判所に申述することで行うことができます。

配偶者の借金と相続放棄

配偶者が亡くなった場合、その借金は、生存する配偶者及びその子供が相続人となるため、生存する配偶者及びその子供が支払う必要があります。

しかし、適切に相続放棄を行うことで、その支払い義務から逃れることが可能です。

ただし、注意点として「日常家事債務」と呼ばれる、夫婦の日常生活のために作られた借金は、相続放棄しても返済義務が残る場合があります。

これは債権者である銀行などが主張するもので、具体的な状況によります。

相続放棄の期限と注意点

相続放棄は、原則として亡くなった日から3ヶ月以内に行わなければならないと法律で定められています。この期限を過ぎてしまうと、相続放棄を行うことが原則としてできなくなるため、注意が必要です。

また、相続放棄を行うと、遺産全体を放棄することになります。つまり、財産だけを受け取り、借金だけを放棄することはできません。

そのため、相続放棄を行う前には、遺産の全体像を把握し、専門家と相談することが重要です。

死後離婚した場合、祭祀の承継はどうなる?

祭祀の承継とは、先祖を祀るための祭祀財産(お墓やお仏壇など)を引き継ぐ人を決めることを指します。

祭祀承継者は、相続財産とは別に決められ、夫婦関係が続いている場合は、配偶者及び子が祭祀承継者となることが多いです。

しかし、夫の死後に妻が姻族関係終了届を提出することで、祭祀承継者から外れることができます。この場合、協議により新たな祭祀承継者を決めなければなりません。

もし、親族との協議がうまくいかず、祭祀承継者が決まらない場合は家庭裁判所が祭祀承継者を決定します。(民法769条)。

祭祀の承継については、地域によって異なる慣習があることや家族間の繋がりや責任を象徴する重要な事項であるため、専門家から適切な法的アドバイスを受けることをお勧めします。

死後離婚と再婚について

「死後離婚の手続きを経ないと再婚ができないのでは?」という疑問を持つ方もいらっしゃると思います。

実際のところはどうなのでしょうか。

死後離婚しないと再婚できないのは本当?

結論から言うと、配偶者が亡くなった場合、その時点で法的には姻族関係は解消されるため、死後離婚の手続きをしなくても再婚は可能です。

しかし、死後離婚をしないで再婚すると、元配偶者の親族との関係や、再婚相手と元配偶者の親族との関係に影響が出る場合があります。

死後離婚しないで再婚した場合、元配偶者の親族との姻族関係はどうなる?

配偶者が亡くなった場合、法的には姻族関係は解消されますが、元配偶者の親族との姻族関係は自動的には解消されません。

これは、法律上、死亡による姻族関係の解消と姻族関係の解消は別のものとされているからです。具体的には、元配偶者の親族との間には、配偶者が亡くなった後も一定の法的関係が続くことになります。

例えば、元配偶者の親族との間には、相続や遺言などの法的手続きに影響を及ぼす可能性があります。

死後離婚をしないで再婚した場合、再婚相手と元配偶者の親族との関係はどうなる?

再婚した場合、新たな配偶者とその親族との間に新たな姻族関係が生じます。元配偶者の親族との姻族関係が続いている場合でも、その関係が新たな配偶者やその親族との間に影響を及ぼすことはありません。

ただし、元配偶者の親族との関係が続いていると、再婚相手やその親族との間で混乱や誤解を生む可能性があります。

もし、元配偶者の姻族関係でトラブルになりそうな場合は姻族関係終了届を提出すると良いでしょう。

 

姻族関係終了届(死後離婚)、提出すると戸籍にはどのように記載されるか?  

姻族関係終了届とは、配偶者が亡くなった場合に、生存する配偶者が提出するもので、亡くなった配偶者の血族との姻族関係を終了させるために届出する書類です。配偶者が死亡すると、姻族との関係が問題となります。

そりの合わなかった姻族であっても、姻族関係終了届により、戸籍にどのような記載がなされるかわからなければ、自分に一生ついて回るものなので、慎重になるのが普通です。

届け出ることができる者は生存配偶者だけです。

必要な物はこちらです。

  1. 姻族関係終了届
  2. 戸籍全部事項証明書(戸籍謄本)
  3. 身分証明証(マイナンバーカード、運転免許証、パスポート等)
  4. 認印

届書を記載して、戸籍全部事項証明書とともに、これを市区町村役場に提出するだけで、裁判官の関与などもなく、姻族関係は終了します。生存配偶者の一方的な届出により姻族関係が終了するのです(728条2項)。

届出地は戸籍法第25条の規定により、届出者本人の本籍地又は届出人の所在地とされ、 届出の記載事項には、「死亡した配偶者の氏名」「本籍及び死亡の年月日」が挙げられます(戸籍法第96条) 。

では、姻族関係終了届により戸籍にはどのような記載がされるのでしょうか? 

姻族関係終了届を出した場合、戸籍に姻族関係終了の旨が記載されます。したがって、死亡配偶者の両親等が戸籍を取得した場合、姻族関係終了届がなされたことが判明します。

姻族関係終了届を提出しても、戸籍にその旨を記載するのみであり、戸籍に変動はありません。そのため、生存配偶者が婚姻前の戸籍に復籍するには、この後に説明する復氏届の提出も必要となります。

姻族関係の終了により、民法第877条第2項に規定する姻族に対する扶養義務などの権利義務が消滅します。その一方、姻族関係を終了したとしても、婚姻の事実は無くならないため、姻族関係終了の届出後であっても元配偶者が死亡したことに起因する遺産の相続権や遺族年金の受給権は有したままとなります。

復氏届とは?

では、復氏届とは何でしょうか?

姻族関係が終了しても、姻族関係終了届の提出だけでは、当然には以前の姓に戻りませんし、戸籍に変動もありません。そこで、婚姻により姓を改めた方は旧姓に戻りたければ復氏届を記載して、戸籍全部事項証明書とともに提出することで、婚姻前の姓に戻すことができます。

新しく生活を始めたいと言う方もいれば、配偶者の姓を名乗り続けることに抵抗のある方もいらっしゃるでしょう。そのような方々は、復氏届というものを家庭裁判所に提出することで当然に婚姻前の姓に戻すことができます。誰の許可もいりません。 

生存配偶者は復氏届を提出することにより当然に復氏します(戸籍法第95条、民法第751条1項)

復氏届の必要書類

裁判官の許可も親族の同意もいらないという点ではそうとも言えます。ただ、復氏届を出すには、次項で述べる書類が必要となります。

・戸籍全部事項証明書(戸籍謄本)

・分籍届

配偶者の戸籍から抜けることになるため、旧戸籍に戻るか、自己を筆頭者とする新しい戸籍を作らなければなりません。結婚前の戸籍に戻るためには、結婚前の戸籍謄本も必要です。一方、結婚前の戸籍に戻らずに新しい戸籍を作るためには、さらに、分籍届を一緒に出さねばなりません。

・認印

 復氏届を提出するとどうなるのか

死亡した配偶者の戸籍から抜けることになり、旧姓を名乗ることができるようになります。また、一面から見れば、それだけの効果とも言えます。

結婚前の戸籍に戻るにしても、新しい自分の戸籍を作るにしても、姓を変えただけであり、配偶者と離婚したわけではないので、遺産の相続権はなくなりません。

また、姻族との法律上の地位も変わらないので、扶養義務などは残るわけです。

この点、姻族関係も一緒に整理したいのであれば、姻族関係の終了届も一緒に出すべきでしょう。現在は価値観の多様化した時代です。どのような関係が正しくて、何が間違いなのか非常にわかりづらいです。

知人に相談しても解決しない問題なのかもしれません。相談するなら、法の専門家に頼ってみるのも一つの方策かと思います。

復氏届を出す場合のデメリット

姻族との関係性

復氏届を出す場合のデメリットとして、考えておかなければならないことは、まず、配偶者の血族、つまりは、あなたの姻族の気持ちです。

折り合いが良かったにせよ、悪かったにせよ、姓を変えるということは古いタイプの人にとっては関係性を一方的に切られるに等しく、あまり気持ちのいいものではありません。

一方、あなたの側には、心機一転、悲しみを振り切って新しい人生を切り拓くというプラスの面も考えられます。復氏をするのに期間の制限はありません。各々の立場で慎重に判断すべきでしょう。

名義書き換えなど手続きの多さ

そして、姓を元に戻すというと、数多くの公的書類等の名義変更をする必要が出てきます。忙しい中、自動車免許証や銀行口座や保険会社・クレジットカード会社などの名義変更の書面を書き続けることに疲れを感じる場面も少なくないでしょう。

また、名義書き換えの際、集めなければならない公的証明書も非常に多いです。多少の手間と出費と思っても、司法書士などの専門家に頼むことも念頭に置いたほうが良いように感じられます。この手間と出費が復氏のデメリットの一つと言えるかもしれません。

未成年の子がいて復氏届を出す注意点

生存配偶者が復氏をしたからと言って、未成年の子供の氏が自然に変わり、同じ戸籍に入れるわけではありません。ただ、日本は同居の親と子供は同じ姓であることが多い社会です。

子供の姓も変更したい場合、家庭裁判所に子供の氏の変更許可申し立てを行わなければなりません。用紙は裁判所のサイトからDLできるようになっています。

この許可申し立てが難しそうな状況なら、弁護士を立てることも考えておかなければならないことです。裁判所から氏変更の申し立ての許可の審判が下りたら、市町村役場に行き入籍手続きを取ることになります。

まとめ

私は「姻族関係終了届」の存在を全く知りませんでしたし、配偶者の死別後に姻族関係を終了したい人がいることや姻族関係終了届があることを知ってとても驚きました。また、相手方の親族との縁を断つことが一定の手続きを経て可能になるというのは意外でした。さらに裁判所の許可は必要なく、本人の意思で提出できることも驚きでした。

親族トラブルを抱える家庭は多いと聞きます。配偶者が亡くなったあとも精神的苦痛を感じるのは多大なストレスになるので、こうした「姻族関係終了届」が普及していくことで、そういったトラブルから解放されて新しい人生を進める人が増えると良いなと思いました。

ただし、メリットだけでなく届出を提出した後のデメリットもよく考えておかないと、せっかく姻族関係を終了したのに精神的苦痛は減らないことになるので注意が必要と感じました。

この記事の監修者

あいりん行政書士法人    梅澤 徹

資格:司法書士・行政書士・宅建取引士

横浜市内の相続専門司法書士事務所で修行したのち独立。不動産が絡む難しい相続手続きが得意。宅地建物取引士資格も保有し、不動産コンサルティングには定評あり。

現在はあいりん行政書士法人と司法書士事務所を経営。相続専門5期目として相続業務を幅広く対応。

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