マンションを相続したら何をする?名義変更・分け方・管理費・売却まで解説

マンション相続の手続きと選択肢を解説するコラムのアイキャッチ

親が住んでいたマンションを相続すると、「名義変更だけすればよいのか」「兄弟でどう分けるのか」「管理費は誰が払うのか」と、短期間にいくつもの判断が必要になります。

マンションを相続したら、まず遺言書・相続人・住宅ローン・管理費の状況を確認し、原則3か月以内に相続するか放棄するかを判断します。相続する場合は、誰が取得するかを決め、相続登記、管理組合への届出、相続税申告の要否確認へ進みます。

この記事を要約すると
  • マンション相続では、相続放棄3か月、相続税申告10か月、相続登記3年という期限を同時に管理します
  • 兄弟で分ける方法は、現物分割・代償分割・換価分割・共有分割の4つです
  • 管理費、修繕積立金、滞納、大規模修繕、相続税評価まで確認してから「住む・貸す・売る」を決めます
この記事をおすすめしたい方
  • 親が住んでいた分譲マンションを相続し、何から始めるか迷っている方
  • 兄弟でマンションを相続し、共有・売却・代償金のどれを選ぶか検討している方
  • 管理費を払いながら住む・貸す・売るのどれを選ぶべきか判断したい方

マンションを相続したら最初にする7つのこと

最初から売却や名義変更だけを考えると、住宅ローンや管理費の滞納、ほかの相続人、遺言書を見落とすことがあります。次の順番で確認すると、手戻りを減らせます。

1.遺言書の有無を確認する

自宅、公証役場、法務局の自筆証書遺言書保管制度を確認します。自宅で封のある自筆証書遺言を見つけた場合は、勝手に開封せず、家庭裁判所での検認が必要かを確認してください。法務局で保管されていた自筆証書遺言や公正証書遺言など、検認が不要な遺言もあります。詳しくは、裁判所の遺言書の検認案内をご確認ください。遺言書があれば、マンションを取得する人や遺言執行者の指定が手続きの出発点になります。

2.相続人とマンションの権利関係を調べる

戸籍で法定相続人を確定し、登記事項証明書で所有者、持分、敷地権、抵当権を確認します。夫婦共有や親子共有のマンションでは、亡くなった人の持分だけが相続対象です。固定資産税納税通知書だけでなく、登記情報まで確認しましょう。

3.住宅ローンと団体信用生命保険を確認する

住宅ローンが残っている場合は、金融機関へ死亡の連絡をします。団体信用生命保険で残債が完済されることもありますが、加入状況や免責事由によって扱いが異なります。ローンが消えると決めつけず、残高証明書、金銭消費貸借契約、保険の手続書類を確認してください。

4.管理会社へ連絡し、毎月の負担と滞納を確認する

管理費と修繕積立金は、所有者が亡くなっても止まりません。駐車場代、専用庭使用料、管理費の滞納、臨時徴収予定も含めて管理会社または管理組合へ確認します。

空室のまま相続人同士で話し合っている間も、管理費・修繕積立金・固定資産税などの保有コストは積み上がります。誰が立替えるか、売却代金からどう精算するかも記録に残しておくと安心です。

5.相続するか、相続放棄するかを3か月以内に検討する

マンションの価格だけでなく、住宅ローン、管理費滞納、修繕予定、ほかの借金を含め、相続財産全体で判断します。裁判所の相続放棄の案内によると、相続放棄は原則として、自分のために相続が始まったことを知った時から3か月以内です。

マンションだけを放棄して預金を相続する、という選び方はできません。負債の範囲で責任を負う限定承認もありますが、相続人全員で行う必要があり、手続きも複雑です。3か月で判断資料がそろわない場合は、家庭裁判所へ相続の承認・放棄の期間伸長を申し立てられることがあります。

相続放棄を検討している間は、売却や賃貸など、相続財産を処分したと評価され得る行為を避け、早めに専門家へ相談してください。詳しくは、マンションを相続放棄するときの注意点で解説しています。

6.誰が取得するかを決める

遺言書がない場合は、原則として相続人全員で遺産分割協議を行います。マンションは預金のようにそのまま人数分へ分けられないため、「誰かが取得する」「売って現金で分ける」などの方法を選びます。分け方は次章で比較します。

7.相続登記と管理組合への届出を行う

マンションを取得する人が決まったら、法務局で相続登記を申請します。法務省の相続登記の申請義務化に関する案内によると、相続で不動産を取得したことを知った日から3年以内の申請が必要です。遺産分割が後から成立した場合にも、その成立日から3年以内に内容を反映した登記が必要になります。

売却する予定でも、亡くなった人の名義から買主へ直接移すことはできないため、原則として先に相続登記が必要です。マンション特有の敷地権を含む手続きや必要書類は、マンション相続の名義変更手続きをご覧ください。

マンションを兄弟で相続する4つの分け方

分け方 内容 向いている場面 主な注意点
現物分割 1人がマンションを取得し、ほかの相続人は別の財産を取得する 預金など別の財産が十分にある 財産額のバランスを取りにくい
代償分割 1人がマンションを取得し、ほかの相続人へ代償金を払う 住み続けたい相続人に支払資力がある 評価額と代償金の決め方でもめやすい
換価分割 マンションを売り、諸費用を差し引いた代金を分ける 誰も住まない、現金で公平に分けたい 売却担当者、最低価格、費用負担を協議書へ明記する
共有分割 相続人が持分を持って共同所有する 当面の方針を決められない 売却・賃貸・修繕の意思決定が難しくなりやすい

共有分割は一見公平ですが、共有者が亡くなると、その持分が配偶者や子へ相続され、所有者が増えることがあります。売却や大きな判断のたびに調整相手が増え、連絡が取れない人が出ると手続きが止まりかねません。

「とりあえず兄弟共有」は問題の先送りになりやすいため、住む人が決まっているなら代償分割、誰も住まないなら換価分割を先に検討します。もっとも、相続人の資力や税務によって適切な方法は変わります。

実務のプチ情報:マンション1室だけを兄弟で相続する場合

相続財産の中心がマンション1室だけで、疎遠な相続人がいると、価格より先に「誰が連絡を取り、誰が売却を進めるか」が問題になります。

例えば、マンション1室を兄弟と代襲相続人が相続し、相続人同士が長年連絡を取っていないケースでは、戸籍収集、相続人への連絡、遺産分割協議、相続登記を順番に進めます。不動産の分け方だけでなく、連絡役・立替費用・売却担当者を決めることが、手続きを止めないポイントです。

相続すると決めたマンションは住む・貸す・売るのどれがよい?

次の3つは、相続する意思を固めた後の活用方法です。相続放棄や限定承認を検討している段階では、売却・賃貸・大規模改修を先に進めず、専門家へ相談してください。

選択肢 確認すること 向いているケース
住む 通勤・通学、住宅ローン、管理規約、リフォーム費用 取得者と家族が中長期で居住する
貸す 賃貸禁止・制限、家賃相場、修繕費、管理委託費、所得税 収支が黒字で、空室や設備故障の負担を許容できる
売る 査定額、残債、譲渡所得税、取得費資料、売却時期 誰も住まず、維持費を止めたい

売るか迷う場合は、1社の査定額だけで決めず、少なくとも複数社から査定を取り、管理費等の月額、大規模修繕の予定、室内の残置物処分費、譲渡所得税まで含めた手取り額で比較します。

マンション相続で確認したい費用と税金

管理費・修繕積立金・固定資産税

マンションを保有する間は、管理費と修繕積立金が毎月かかります。固定資産税・都市計画税の納付状況も確認してください。管理組合の総会議事録や長期修繕計画を読むと、修繕積立金の値上げや一時金徴収の予定が分かることがあります。

国土交通省のマンション標準管理規約でも、管理費等の支払義務はマンション管理の基本的な義務として扱われています。滞納の有無は、遺産分割前に必ず管理会社へ照会しましょう。

相続登記の登録免許税

相続登記の登録免許税は、原則として固定資産税評価額の0.4%です。マンションでは専有部分だけでなく、敷地権の対象となる土地の評価額も確認します。免税措置の対象と期限は、法務局「相続登記の登録免許税の免税措置について」で最新情報を確認してください。2026年7月24日現在、現行措置の期限は2027年3月31日です。

相続税の申告が必要か10か月以内に確認する

相続税は、正味の遺産額が「3,000万円+600万円×法定相続人の数」という基礎控除額を超える場合に申告が必要となるのが基本です。配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例を使って税額が0円になる場合でも、申告が適用条件となることがあります。

国税庁「相続税の申告と納税」によると、申告・納税期限は、被相続人が亡くなったことを知った日の翌日から10か月以内です。マンションの評価や遺産分割に時間がかかることを見込み、早めに申告要否を確認してください。

相続税評価は売却価格と同じではない

相続税を計算するための評価額と、不動産会社の査定価格は目的も計算方法も違います。高層階、築年数、総階数などによって市場価格との開きが大きいマンションが問題になったことから、2024年1月1日以後に相続・遺贈・贈与で取得した居住用区分所有財産には新しい評価方法が導入されました。

分譲マンションの相続税評価は、従来の固定資産税評価額と路線価だけで終わらず、「区分所有補正率」を使う場合があります。詳しい計算方法は、国税庁「居住用の区分所有財産の評価」を確認し、申告が必要な場合は税理士へ相談してください。

ニュースを相続実務に置き換える:マンション評価は2024年から変更

以前は、マンションの市場価格に比べて相続税評価額が低くなりやすい点を使った、いわゆる「タワマン節税」がたびたび報道されました。国税庁は市場価格との乖離を踏まえ、2024年から分譲マンションの評価方法を見直しています。

日常の相続に置き換えると、「固定資産税の通知書に書かれた金額だけを見て、相続税はかからないと判断しない」ことが大切です。売れる価格、相続税評価、遺産分割で合意する価格は、それぞれ別に確認します。

売却時の譲渡所得税

相続したマンションを売却して利益が出ると、譲渡所得に対して所得税・復興特別所得税・住民税がかかることがあります。取得費は、原則として亡くなった人の購入代金や購入費用を引き継ぎます。売買契約書、領収書、仲介手数料の資料は捨てないでください。

いわゆる「相続空き家の3,000万円特別控除」は、被相続人の居住用家屋が区分所有建物ではないことを要件としているため、分譲マンションはこの特例の対象外です。根拠は、国税庁の被相続人居住用財産の特例チェックシートで確認できます。

一方、相続人自身がそのマンションを自宅として使用した後に売る場合の居住用財産の特例や、相続税の取得費加算の特例は別制度です。適用要件を混同せず、売却前に税理士へ確認してください。確定申告は、相続不動産を売却したときの確定申告も参考にしてください。

2026年からは管理組合との連絡を放置しない

2026年4月1日に改正マンション関係法が施行され、所在等が分からない区分所有者を決議の母数から除外する制度や、所有者不明専有部分を管理する仕組みなどが整備されました。詳しくは、国土交通省「令和7年マンション関係法改正とこれからのマンション管理」で確認できます。

相続人側から見ると、亡くなった人名義のまま管理組合からの郵便を放置しないことが大切です。大規模修繕、建替え、売却などの重要な議案が進んでいる可能性があります。管理会社へ相続が発生したことと連絡先を伝え、総会資料・議事録・長期修繕計画を受け取れる状態にしてください。

マンション相続で起こりやすい5つの失敗

  1. 共有名義にして話し合いを先送りする
    次の相続で共有者が増え、売却の調整が難しくなることがあります。
  2. 管理費の引落しが止まったまま放置する
    滞納額や遅延損害金が増え、売却時の精算にも影響します。
  3. 査定額だけで遺産分割を決める
    税務評価、住宅ローン、売却費用、修繕予定を含めた手取りで比較が必要です。
  4. 相続登記前に買主探しだけを進める
    戸籍収集や協議が難航すると、予定した決済日に間に合わないことがあります。
  5. 相続放棄を迷いながら財産を処分する
    行為の内容によっては相続を承認したと扱われるおそれがあるため、先に法律相談が必要です。

司法書士・税理士・不動産会社のどこへ相談する?

相談先 主な相談内容
司法書士 相続人調査、遺産分割協議書、相続登記、抵当権抹消
税理士 相続税申告、マンション評価、売却時の譲渡所得税
不動産会社 査定、賃料調査、売却活動、残置物や修繕の提案
弁護士 相続人間の紛争、遺産分割調停、使途不明金などの対立

あいりん司法書士事務所では、マンションの相続人調査、遺産分割協議書、相続登記、不動産売却に必要な連携まで整理しています。複数の窓口へ同じ説明を繰り返したくない方は、不動産相続まるごとプランをご確認ください。

マンション相続のよくある質問

Q1.マンションを相続したら、まず何をすればよいですか?

遺言書、相続人、登記事項証明書、住宅ローン、管理費の滞納を確認します。そのうえで、ほかの財産と負債を含め、原則3か月以内に相続するか相続放棄するかを検討します。

Q2.相続したマンションの名義変更はいつまでですか?

原則として、相続でマンションを取得したことを知った日から3年以内です。正当な理由なく期限を過ぎると、10万円以下の過料の対象になる可能性があります。遺産分割がまとまらないときは、相続人申告登記も含めて司法書士または法務局へ相談してください。

Q3.兄弟でマンションを共有名義にしてもよいですか?

可能ですが、売却や賃貸、大規模な修繕の判断で共有者間の調整が必要です。次の相続で共有者が増えることもあるため、代償分割や換価分割と比較してから決めることをおすすめします。

Q4.マンションの管理費は遺産分割が終わるまで払わなくてよいですか?

いいえ。所有者が亡くなった後も管理費・修繕積立金は発生します。管理会社へ早めに連絡し、滞納額、支払方法、相続人の連絡先届を確認してください。相続人間の立替精算方法も記録に残します。

Q5.相続したマンションをすぐ売ることはできますか?

原則として、遺言または遺産分割で取得者を決め、相続登記をしてから売却します。売却活動と登記準備を並行できる場合はありますが、買主への所有権移転までに相続関係を整理する必要があります。

Q6.マンションの相続税評価は売却査定額と同じですか?

同じではありません。相続税評価は国税庁の評価方法、売却査定は市場で見込まれる成約価格を基にします。2024年以後に取得した居住用分譲マンションでは、区分所有補正率を使う場合があるため、申告が必要な方は税理士へ確認してください。

まとめ

マンション相続では、名義変更だけでなく、住宅ローン、管理費、修繕計画、相続税評価、売却時の税金を一緒に確認する必要があります。最初は次の順番で進めてください。

  1. 遺言書・相続人・権利関係を確認する
  2. 住宅ローン・管理費・修繕予定を確認する
  3. 相続放棄の3か月期限までに相続するか判断する
  4. 現物・代償・換価・共有から分け方を決める
  5. 相続登記、管理組合への届出、税務確認を行う

誰も住まないマンションは、話し合い中にも維持費が増えるため、共有で保留せず「誰が取得するか」「いつまでに売るか」まで決めることが重要です。

相続人が多い、疎遠な人がいる、住宅ローンや管理費滞納がある、売却まで一括して進めたい場合は、早い段階でご相談ください。

この記事の執筆者・原稿作成日

司法書士・行政書士・宅地建物取引士 梅澤 徹
相続登記、不動産を含む遺産分割、相続手続きの実務を扱っています。原稿作成日:2026年7月24日
※法律監修日・承認者は、公開前の法律監修完了後に記録します。

主な参考資料

司法書士・行政書士 梅澤徹

この記事の監修者

司法書士・行政書士 梅澤 徹(うめざわ とおる)

あいりん司法書士事務所 代表。神奈川県司法書士会(第2259号)・神奈川県行政書士会(第15090451号)所属。相続手続き3,000件超をサポート。プロフィールを見る 無料相談のご案内

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