この記事を要約すると
- 公正証書遺言は高い効力を持つが遺言能力がない場合は無効になる
- 遺言内容の不明確さや真意でない作成は無効のリスクがある
- 健康な時期に作成し専門家に相談することで効力を確実にできる
公正証書遺言は公証人が作成する信頼性の高い遺言書ですが、「公正証書だから絶対に有効」というわけではありません。
実は、公正証書遺言でも無効になるケースが存在します。
この記事では、公正証書遺言の効力の範囲、無効になる具体的なケース、そして効力を確実にするための注意点を司法書士が詳しく解説します。
この記事はこんな方におすすめ
- 公正証書遺言を作成予定で、効力について詳しく知りたい方
- すでに公正証書遺言を作成済みで、本当に有効か不安な方
- 相続で公正証書遺言が見つかり、その効力を確認したい方
目次
公正証書遺言の効力とは?3つの法的効力を徹底解説
公正証書遺言は、公証人が作成に関与することで高い法的効力を持つ遺言書です。
ここでは、公正証書遺言の基本的な法的効力、自筆証書遺言との違い、そして効力が及ぶ範囲について詳しく解説します。
まずは公正証書遺言の効力の基礎知識をしっかり押さえましょう。
公正証書遺言の法的効力と強制力
公正証書遺言は、民法第969条(e-Gov法令検索)に基づいて作成される法的に有効な遺言書です。
公証人という法律の専門家が作成に関与することで、以下の3つの強力な法的効力を持ちます。
第一に、公文書※1としての高い証明力があります。
公証人が作成した公正証書は、公文書として扱われるため、その記載内容が真実であることが推定されます。
これにより、遺言の内容が争われた際にも、遺言書の真正性(本物であるということ)が認められやすくなります。
第二に、検認※2手続きが不要という実務上の大きなメリットがあります。
自筆証書遺言の場合は家庭裁判所での検認が必要ですが、公正証書遺言はこの手続きを省略できるため、相続開始後すぐに遺言の内容を実行できます。
参考:遺言書の検認 – 裁判所
第三に、原本が公証役場に保管されるため、紛失や改ざんのリスクがありません。
遺言者が手元に持つのは正本や謄本であり、万が一紛失しても再発行が可能です。
また、全国の公証役場で遺言書の有無を検索できる制度もあります。
日本公証人連合会の統計によると、平成29年の公正証書遺言作成件数は約11万件に達しており、年々増加傾向にあります。
これは、公正証書遺言の信頼性の高さが広く認識されている証拠です。
参考:平成29年の遺言公正証書作成件数について-日本公証人連合
※1公文書:公務員が職務上作成する文書で、高い証明力を持つ書類のこと
※2検認:家庭裁判所が遺言書の形状や内容を確認し、偽造や変造を防止する手続きのこと
自筆証書遺言との効力の違い3つ
公正証書遺言と自筆証書遺言は、どちらも法的に有効な遺言方式ですが、効力や手続き面で以下の3つの大きな違いがあります。
1.形式的要件の厳格さ
自筆証書遺言は、全文・日付・氏名を自書し、押印する必要があり、形式的な要件を一つでも欠くと無効になります。
一方、公正証書遺言は公証人が法的要件を確認しながら作成するため、形式的な不備で無効になるリスクが極めて低いです。
2.検認手続きの要否
自筆証書遺言は、相続開始後に家庭裁判所での検認手続きが必要です。
この手続きには1〜2ヶ月程度かかり、検認を経ずに開封すると5万円以下の過料※が科される可能性があります。
公正証書遺言は検認が不要なため、相続開始後すぐに遺言執行が可能です。
※過料:法律違反に対する金銭的制裁で、刑罰ではなく行政上のペナルティのこと
3.証明力の強さ
自筆証書遺言は、遺言者本人が書いたことや、遺言作成時の遺言能力について争われる可能性があります。
公正証書遺言は、公証人が遺言者の本人確認と意思確認を行い、証人2名も立ち会うため、遺言の真正性や遺言能力について争われにくい特徴があります。
公正証書遺言と自筆証書遺言の効力比較表
以上の事を表で整理すると以下の様になります。
| 項目 | 公正証書遺言 | 自筆証書遺言 |
|---|---|---|
| 法的効力 | 同じ | 同じ |
| 証明力 | 公文書として高い | 私文書のため争われやすい |
| 検認手続き | 不要 | 必要(1〜2ヶ月) |
| 形式不備のリスク | 極めて低い | 高い(一つでも欠けると無効) |
| 紛失・改ざんリスク | 低い(原本は公証役場保管) | 高い(自己保管) |
| 作成費用 | 有料(数万円) | 無料(保管制度利用で3,900円) |
公正証書遺言の効力が及ぶ範囲
公正証書遺言の効力は、遺言者の全財産に及びますが、いくつかの法的制限があります。
効力が及ぶ範囲を正しく理解することで、適切な遺言内容を設計できます。
まず、財産に関する事項については、ほぼすべての財産の処分が可能です。
不動産、預貯金、株式、動産など、あらゆる財産について、誰にどのように相続させるかを指定できます。
また、相続財産の分割方法を指定したり、遺産分割を禁止したりすることもできます。
ただし、遺留分制度※1による制限があります。
配偶者や子などの法定相続人には、最低限の相続分として遺留分が保障されています。
遺言で遺留分を侵害する内容を書くことはできますが、遺留分権利者から遺留分侵害額請求を受ける可能性があります。
また、身分に関する事項では、認知や未成年後見人の指定、相続人の廃除などが可能です。
さらに、遺言執行者※2の指定や、祭祀承継者の指定なども遺言で行うことができます。
ただし、婚姻や離婚、養子縁組などの身分行為は、遺言によって行うことはできません。
※1遺留分制度:法定相続人(配偶者、子、直系尊属)に保障された最低限の相続分のこと
※2遺言執行者:遺言の内容を実現するために必要な手続きを行う者のこと
FAQ
Q. 公正証書遺言の効力はいつから発生する?
A. 遺言者が亡くなった時点から発生し作成時点では効力は発生しません。
Q. 公正証書遺言と自筆証書遺言どちら効力強い?
A. 法的効力は同じだが公正証書遺言は証明力が高く実務上の効力が強い。
Q. 公正証書遺言の効力に期限は?
A. 効力に期限はなく何年前の遺言でも有効です。
特に、遺留分制度による制限や、身分行為の不可など、効力が及ばない範囲についても理解しておくことが重要です。
公正証書遺言の作成を検討されている方は、無料相談で司法書士に相談し、効力の範囲を踏まえた適切な遺言内容を設計しましょう。
公正証書遺言でも無効になる3つのケース
公正証書遺言は公証人が作成に関与するため信頼性が高いですが、絶対に無効にならないわけではありません。
ここでは、公正証書遺言が無効になる具体的なケースを詳しく解説します。
無効になるリスクを理解し、適切な遺言作成に役立てましょう。
公正証書遺言が無効になる主なケース
| 無効ケース | 概要 | 具体例 | 対策 |
|---|---|---|---|
| 遺言能力の欠如 | 認知症等で判断能力がない | 中等度認知症での作成 | 健康な時期に作成・医師の診断書取得 |
| 強迫による作成 | 脅迫されて遺言を作成 | 「施設に入れる」と脅された | 第三者の立会い・記録の保存 |
| 詐欺による作成 | 虚偽の情報で判断を誤らせる | 虚偽の情報で特定の内容にさせる | 複数の専門家への相談 |
| 錯誤による作成 | 重要な事実の勘違い | 財産状況の重大な誤解 | 事前の財産調査・確認 |
| 内容の不明確さ | 財産や相続人の特定不足 | 「自宅付近の土地」など曖昧な表現 | 登記簿通りの記載・氏名と生年月日で特定 |
遺言能力がない場合の無効ケース
遺言能力※とは、遺言の内容を理解し、その結果を判断できる能力のことです。
公正証書遺言でも、作成時に遺言者に遺言能力がなかった場合は無効になります。
15歳以上で、意思能力があれば認められます。 最も多いのが、認知症による遺言能力の欠如です。
高齢の親が遺言を作成する際、認知症の進行度合いが心配になる方も多いでしょう。
実際に、医師の診断書で中等度の認知症と診断されていた遺言者について、公正証書遺言の作成当日の状態を詳細に検討した結果、遺言能力がないと判断され、遺言が無効とされたケースもあります。
遺言能力の判断では、以下の要素が総合的に考慮されます。
遺言者の年齢や健康状態、遺言内容の複雑さ、遺言作成前後の言動、医師の診断書の内容、要介護認定の状況などです。
特に、遺言作成の直前直後に認知症の診断を受けている場合は、遺言能力が争われやすくなります。
公証人は遺言作成時に遺言者と面談し、意思確認を行いますが、公証人が「遺言能力あり」と判断したことは、遺言能力の存在を推定する一つの事情にすぎません。
実際には、医学的な見地からの判断が重視される傾向にあります。
最高裁判所の司法統計によると、令和4年度の遺言無効確認訴訟の新受件数は約800件となっており、そのうちの多くが遺言能力の有無を争点としています。
遺言作成時の健康状態の記録や医師の診断書が、裁判での重要な証拠となっています。
※遺言能力:遺言の内容と効果を理解し、判断できる精神的能力のこと。
遺言者の真意でない場合の無効
公正証書遺言は、遺言者の真意に基づいて作成される必要があります。
他人の強迫や詐欺によって作成された遺言、または錯誤に基づく遺言は無効になります。
たとえば、「他の相続人があなたの財産を狙っている」などの虚偽の情報を伝えて遺言を作成させた場合です。
錯誤による無効は、遺言者が重要な事実について勘違いしていた場合に認められます。
ただし、錯誤が遺言の主要部分に関するものでなければ、遺言全体が無効になるわけではなく、その部分のみが無効となる場合もあります。
遺言内容が不明確で無効になるケース
公正証書遺言でも、遺言内容が不明確で解釈できない場合は、その部分または遺言全体が無効になることがあります。
あなたが作成した遺言書、または作成を検討している遺言書は、財産を明確に特定できていますか?
最も多いのが、相続財産の特定が不十分なケースです。
「自宅の土地建物を長男に相続させる」という記載であれば問題ありませんが、「自宅付近の土地を長男に」というように、どの土地を指すのか不明確な場合は、その部分が無効になる可能性があります。
不動産は登記簿の表示に従って特定する必要があります。 相続人の特定が不十分な場合も問題となります。
「長男の嫁に財産を遺贈する」という記載で、長男に複数回の結婚歴があり、どの配偶者を指すのか不明確な場合や、「孫に相続させる」という記載で複数の孫がいる場合などです。
相続人や受遺者は、氏名と生年月日で特定することが望ましいです。
また、遺言内容に矛盾がある場合も問題です。
たとえば、「A不動産は長男に相続させる」と書きながら、別の箇所で「A不動産は次男に相続させる」と記載されている場合、どちらが有効か判断できず、その部分が無効になる可能性があります。
このような矛盾は、複数回の遺言作成や、遺言内容の変更の際に生じやすいため注意が必要です。
FAQ
Q. 公正証書遺言でも遺言能力争われる?
A. 公証人関与でも認知症等で遺言能力なければ裁判で無効と判断されます。
Q. 公正証書遺言無効なら相続は?
A. 法定相続分に従うか相続人全員で遺産分割協議を行います。
Q. 公正証書遺言の無効を主張するには?
A. 家裁に調停申立てか地裁に訴訟提起が必要で専門家への相談をおすすめします。
特に、遺言作成時の遺言能力の証明、遺言者の真意の確保、遺言内容の明確化に注意しましょう。
公正証書遺言の効力を確実にする3つの注意点
公正証書遺言の効力を確実にするためには、作成時の準備と内容の明確化が重要です。
ここでは、遺言作成時に押さえるべき重要ポイント、遺言内容を明確にする記載方法、そして専門家への相談の重要性について解説します。
これらの注意点を守ることで、後々のトラブルを防ぐことができます。
遺言作成時の3つの重要ポイント
公正証書遺言を作成する際には、以下の3つのポイントを押さえることで、遺言の効力を確実にすることができます。
健康状態が良好な時期に作成する
遺言能力が争われるリスクを避けるため、心身ともに健康な時期に遺言を作成することが重要です。
特に、認知症の診断を受ける前や、大きな病気をする前に作成することをおすすめします。
高齢になってからの作成を考えている場合でも、できるだけ早めに作成することで、遺言能力を争われるリスクを減らせます。
医師の診断書を取得しておく
遺言作成時に医師の診断書を取得しておくことで、遺言能力があったことを証明する有力な証拠となります。
特に、高齢者や病気療養中の方が遺言を作成する場合は、「遺言作成に必要な判断能力がある」旨の医師の診断書を取得しておくと安心です。
診断書には、遺言内容を理解し判断する能力があることを明記してもらいましょう。
遺言作成の経緯を記録しておく
遺言作成に至った経緯や理由を、メモや日記に残しておくことも有効です。
また、遺言作成の前後で、遺言者が正常な判断力を持っていたことを示す証拠となる行動(銀行取引、契約行為、日常会話など)を記録しておくと、万が一遺言能力が争われた際の証拠となります。
遺言内容を明確にする記載方法
遺言内容の不明確さによる無効を防ぐため、以下の点に注意して遺言内容を明確に記載しましょう。
不動産の特定は、登記簿謄本の記載に従って正確に行います。
「所在」「地番」「地目」「地積」などを登記簿のとおりに記載することで、どの不動産を指すのか明確になります。
「自宅」「実家」といった曖昧な表現ではなく、登記簿に基づいた正確な表示を使用しましょう。
預貯金の特定は、金融機関名、支店名、口座種別、口座番号を明記します。
「○○銀行の預金すべて」という記載でも有効ですが、「○○銀行○○支店の普通預金口座番号○○○○」と具体的に記載する方が明確です。
相続人や受遺者の特定は、氏名だけでなく生年月日も記載します。
「長男」「次男」といった続柄での指定も可能ですが、氏名と生年月日を併記することで、より明確になります。
特に、養子や認知した子がいる場合は、誰を指すのか明確に記載することが重要です。
相続分の指定は、具体的な割合や金額で記載します。「多めに」「少なめに」といった曖昧な表現は避け、「2分の1」「3分の1」といった明確な割合や、「金1,000万円」といった具体的な金額で指定しましょう。
専門家への相談で効力を確保
公正証書遺言の効力を確実にするためには、司法書士や弁護士などの専門家に事前相談することをおすすめします。
専門家に相談することで、遺言内容の法的な問題点を事前にチェックできます。
たとえば、遺留分を侵害する内容になっていないか、相続財産の特定が十分か、遺言執行者の指定が必要かなど、法的な観点からアドバイスを受けられます。
また、遺言者の意思を正確に遺言書に反映するようなサポートも受けられるでしょう。
遺言者が「こうしたい」と考えていることを、法的に有効な形で遺言書に記載するには、単純に書くだけではNGで、専門家による専門的な知識が必要です。
さらに、公証人との打ち合わせや必要書類の準備が任せられるというのも大きなメリットです。
公正証書遺言の作成には、戸籍謄本、住民票、不動産登記簿謄本、固定資産評価証明書などの書類が必要です。
専門家に依頼することで、これらの書類収集や公証人との調整をスムーズに進めることができます。
無料相談を実施している司法書士事務所も多いため、まずは気軽に相談してみることをおすすめします。
遺言の内容や状況に応じて、最適なアドバイスを受けられます。
FAQ
Q. 公正証書遺言作成に司法書士依頼は必要?
A. 必須ではないが法的チェックや書類準備のため専門家依頼をおすすめします。
Q. 公正証書遺言効力確実にする最重要事項は?
A. 健康な時期に作成し医師の診断書を取得し遺言能力を証明することです。
Q. 公正証書遺言の内容変更したい場合は?
A. 新たに公正証書遺言を作成すれば前の遺言を撤回し内容を変更できます。
特に、遺言能力の証明、遺言内容の明確化、法的問題点のチェックは、専門的な知識がないと難しい部分です。
公正証書遺言の作成を検討されている方は、無料相談で司法書士に相談し、効力が確実な遺言書を作成しましょう。
まとめ:公正証書遺言の効力を理解し適切な遺言を
公正証書遺言は公証人が作成に関与するため高い法的効力を持ちますが、遺言能力がない場合、遺言者の真意でない場合、遺言内容が不明確な場合などは無効になる可能性があります。
遺言の効力を確実にするためには、健康な時期に作成し、医師の診断書を取得し、遺言内容を明確に記載することが重要です。
また、専門家に事前相談することで、法的な問題点を事前にチェックし、遺言者の真意を正確に反映した遺言書を作成できます。
公正証書遺言の作成や既存の遺言の効力確認について不安がある場合は、無料相談で司法書士に相談し、適切なアドバイスを受けることをおすすめします。
この記事の監修者

遺産相続の無料相談
横浜市の相続・遺言に関するご相談ならあいりん司法書士事務所へ。
相続のご相談は完全無料です。【横浜駅徒歩4分】 横浜市内で財産・不動産の相続・相続放棄・終活にお悩みの方はお気軽にご相談ください。
横浜での相続に精通したプロチームが、相続法務から税務にいたるまでお客様をフルサポートします。












