遺言書を作る理由はさまざまなものがあります。例えば、「すでに遺産をどのように引き継いでもらいたいか決まっている」「争族を避けるために遺言書が必要」などの理由です。相続時のトラブル回避という観点から、次のようなケースでは遺言書が特に必要なケースといえるでしょう。
遺言書は相続する上で、とても重要な書類です。残された家族が揉めないためにも、自分の意思を遺言書という形で残しておいたほうがよいでしょう。この記事では遺言書が必要なケースや、作成する理由や遺言書を作成タイミングなど注意点を含めて解説します。
遺言書が特に必要なケース
- 先妻の子と後妻の子がいる場合
- 子どもがいなくて、配偶者と親または兄弟姉妹が相続人となる場合
- 複数人子どもがいて、特別に多く遺産を渡したい者がいる場合
- 相続人の中に遺産を渡したくない人がいる場合
- 内縁関係のパートナーに遺産を渡したい場合
- お世話になった第三者に遺産の一部を渡したい場合
- 遺産の一部または全部を特定の団体に寄附したい場合
もし、遺言書が特に必要なケースに該当する場合、遺言書について専門家へご相談することをおすすめします。
遺言書はいつ作るべきか
遺言書は民法に規定されている以下の者に該当しなければ、いつでも作成することができます。
【民法に規定されている「遺言できない人」】
- 15歳未満の人
- 意思能力のない人
- 成年後見を受けている人は、事理を弁識する能力を一時回復した時には遺言することが可能。ただし、医師2名以上の立会いが必要
※また、遺言書はご本人しか作成することができません。つまり、誰かに代理で遺言してもらうということはできません。
「遺言できない人」に該当する方が作成した遺言書は、法的に無効となります。
「遺言できない人」のうち、「意思能力のない人」「成年後見を受けている人」は、認知症の方が該当する可能性があります。したがって、遺言書は認知機能に問題がない元気なうちに作成しておく方が良いといえるでしょう。
遺言書の種類
遺言書には、作成時点の状況に応じて普通方式と特別方式という2つの作成方式があります。
【普通方式】
普通方式は、特別方式以外の非常時以外に採用される遺言書の作成方式です。普通方式には、「自筆証書遺言」「公正証書遺言」「秘密証書遺言」の3つの種類があります。
【特別方式】
特別方式は、遺言者の生命に危険が迫っているとき、遺言者が隔絶された地域にいる場合に認められる例外的な遺言書の作成方式です。特別方式には、遺言者の生命に危険が迫っているときに認められる「死亡危急者遺言」「船舶遭難者遺言」、遺言者が隔絶された地域にいる場合に認められる「伝染病隔離者遺言」「在船者の遺言」があります。
今回は、普通方式3種類の遺言書について詳しく見てみましょう。
1.自筆証書遺言
自筆証書遺言とは、遺言者本人が本文・署名共に自筆で内容を記し、個人で管理を行うものをいいます。自筆証書遺言は紙とペン・印鑑があれば作成可能ですので、いつでもどこでも作成が可能といったメリットがあります。
しかし、遺言書の内容に不備がある場合、遺言書が無効になってしまう恐れがあります。また、遺言者自身で遺言書を保管する必要があるため、破棄・隠匿されるという危険性もあります。このような自筆証書遺言の危険性を回避するため、平成30年に民法が改正されています。
【平成30年民法改正① 自筆証書遺言の方式緩和】
自筆証書遺言はこれまで全て遺言者本人が自筆で記入する必要がありましたが、民法改正後は自筆証書遺言に添付する財産目録については自筆でなくても認められることとなりました。
自筆以外の財産目録の作成方法としては、パソコンで作成した書面や登記事項証明書や、預金通帳のコピーを添付する方法が挙げられています。なお、財産目録を自筆以外で作成した場合、財産目録の全ページに署名・押印する必要があるため、注意が必要です。
【平成30年民法改正② 自筆証書遺言の保管制度の創設】
自筆証書遺言はこれまで遺言者本人が保管することがリスクとなっていましたが、民法改正後は自筆証書遺言の原本を法務局に保管することが可能になりました。
保管する自筆証書遺言は、「特定の様式」で「封をしていないもの」でなければならないとされています。特定の様式には、自筆証書遺言の余白などが詳細に定められています。保管を検討されている場合は事前に確認しておきましょう。また、法務局での保管申請の際に遺言書の様式の確認はしてもらえますが、法的に有効か否かの確認まではしてもらえないため、注意が必要です。
2.公正証書遺言
公正証書遺言とは、公証役場において遺言者が事前に伝えた内容を公証人・証人と確認して作成する遺言をいいます。公正証書遺言の作成にあたって手数料がかかりますが、公証人によって作成されるため、法的に無効となるリスクが最も少ない遺言といえるでしょう。
また、公正証書遺言の原本は、公証役場で保管されるため破棄・隠匿・改ざんなどの恐れもありません。普通方式の3種類の中でもっともリスクの低い遺言の方法といえるでしょう。
3.秘密証書遺言
秘密証書遺言とは、公正証書遺言と同じように公証役場で作成しますが、遺言内容は誰にも明かすことなく遺言の存在のみを公証人と証人に確認してもらう遺言をいいます。
公証人による承認と検認手続きを経ることで確実に遺言者が作成したものと証明されますが、遺言書自体の管理は遺言者自ら行う必要があるため、紛失や改ざんなどのリスクがあります。また、遺言の内容は誰にも明かさず作成するため、内容に不備があって遺言が無効となるリスクもあります。
秘密証書遺言は、公証役場で作成して遺言の存在は証明してもらえますがリスクがあるため、作成件数としては3種類の中でもっとも少ない遺言となっています。
遺言書はどこで作れるのか
今回ご紹介した普通方式の遺言のうち、自筆証書遺言・公正証書遺言がどこで作成可能なのか見てみましょう。
自筆証書遺言
自筆証書遺言は、紙・ペン・印鑑があればどこでも作成可能です。ただし、記載する内容が財産に関連することなので、ご自宅などでじっくり考えながら作成するのが良いでしょう。
自筆証書遺言に捺印する印鑑は認印でも可能とされていますが、書類として整えるなら実印を押すことが望ましいといえるでしょう。あいりん行政書士法人では、オリジナルの自筆証書遺言フォーマットをご用意しています。自筆証書遺言に書く内容が決まっている方は、ぜひご活用ください。
「これから自筆証書遺言を作成したい」「自筆証書遺言についてより詳しく知りたい」という方は、あいりん行政書士法人にぜひお気軽にご相談ください。
公正証書遺言
公正証書遺言は、全国に約300箇所ある公証役場で作成することができます。住んでいる場所の近くなどの決まりもありませんので、ご都合の良い公証役場にご相談することが可能です。
公正証書遺言の作成は、遺言の文案を準備して公証役場の公証人に見てもらいます。その後、公証役場で作成する日時を予約して、当日は2名の証人立合いのもと遺言の内容を確認して、相違なければ遺言者・証人がそれぞれ署名・捺印します。遺言書の原本は公証役場で保管され、遺言者には遺言書の謄本が作成後に交付されます。
公正証書遺言の文案について、インターネットで調べて作成することももちろんできるでしょう。ただし、遺言者の方のご希望通りにするには法律の知識が必要になります。
あいりん行政書士法人では、公正証書遺言の文案作成から公証役場との交渉・証人手配まで全てサポートいたします。公正証書遺言について作成を検討されている方、詳しく知りたい方、どうぞあいりん行政書士法人にご相談ください。
遺言書を作るタイミング
遺言書は、自分の意思を伝える最後の手段です。いざというときのために遺言書を用意しておきましょう。
人生のターニングポイント
入学式・卒業式・成人式・結婚・離婚など、人生にはさまざまな変化がおとずれます。その変化のタイミングで財産を渡す人というのも変ってきます。自分が今持っている財産をどのように分配するかをきちんと考えておくことが大切です。
財産というのは、手元で稼いでいるお金だけではありません。家や土地、車、借金なども含まれてきます。遺言書を作るという意識をすることで、今の自分が保有しているものや扱うことができる財産をきちんと把握・管理しておくこともできます。
子どもが生まれるなど家族構成が変化したとき
子どもが生まれたときには、その子の未来を考えていくことが大切です。子どもの人数に応じて、平等に財産が分配されるよう事前に考えておくことで、亡くなった後でも家族同士で揉めることを回避できるでしょう。遺言書があることでこうしたトラブルを未然に防ぐことができます。
自分がいま書こうと思うとき
自分がいま書こうというタイミングは、遺言書作成において最も大切なものです。自分が 書こうと思っている意欲というのは、主軸が自分ではなくなります。まわりのことを考えて作ることができます。また、年齢的な脳の機能の衰えや認知症やアルツハイマーなどの病気はいつ起こるかわかりません。判断力が衰えた状態の遺言書は正式には認められないので、元気なときに遺言書を作成しておくのがいいでしょう。
遺言書を特に残すべき人
遺言書を残すことというのは、残った人への最後の配慮です。以下のような場合には、特に遺言書を作成しておく方が良いでしょう。
- 独身で配偶者がいない
- 配偶者以外に子どもがいる
- 配偶者との間に子どもがいない
- お世話になった人に財産を残したいと考えている
- 自分名義の家や土地がある
- 事業を行っている場合
- 慈善団体に寄付を考えている
まとめ
今回は遺言書の種類や作るべき理由、タイミングについてまとめました。遺言書は、自分の意志で作るものです。遺言書を作ることで、自分が亡くなった後の身内同士のトラブルを回避することができます。また、遺言書があることで誰に何を相続するのか明確になるため、残された人の負担を減らすことができます。自分の意思をしっかりと残すために、きちんとした法的効果のあるものを作成しておくことをおすすめします。
この記事の監修者
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