相続で揉めないために「遺言書」が重要?
骨肉の争い、という言葉を聞いたことがあるでしょうか?
兄弟や親族など、血縁者の間の諍いや争いという意味ですね。この言葉がよく使われるのが「遺産争い」の場面です。
誰も揉めたくないのに、時に揉めてしまうのが相続というものです。
そんなとき、故人の遺言状があるかどうかで、状況はガラっと変わります。きちんとした手続きで作られた遺言状は、骨肉の争いを回避するために重要なんですね。
兄弟で揉めたくないし、自分の親にはきちんとした遺言状を書いてもらいたい。
そう思っている方は多いでしょう。
けれど、日本ではまだまだ遺言状を書くのは一般的ではありません。
それに、遺言状が残っていたとしても、法的に有効ではないものもあります。
正しい形式にのっとっていない遺言状は、無効になってしまったり、さらにはトラブルの原因となったりすることもあるのです。
まず、「遺言状があることで揉めてしまう」というケースを2つ紹介します。
◆1・遺言状の形式面に不備があって揉めてしまう
遺言状は、以下の2種類に分けられます。
・自筆証書遺言:本文を手書きして日付を入れ、署名・押印するなど、ほぼ自作できる。
・公正証書遺言:公証人のもと、公証役場で遺言書を作成する。(有料)
※これらは簡単なまとめなので、詳しくは専門家にご相談ください。
遺言書が遺言書として認められるためには、法的に効力のある形式を守る必要があります。
けれども、自筆証書遺言は、手書きでなかったり日付がなかったりと、不備となってしまうケースが圧倒的に多いのです。
「親が遺言状を残してくれたのに、不備があって無効と言い張られて裁判に」なんてケースもあるんですね。
一方、公正証書遺言の場合は、公証人という専門家が作成するため、不備があることは考えにくいです。
遺言状を作成するときは、その目的を考えると、費用が掛かっても公正証書遺言を作ることをお勧めします。
◆2・遺言状の内容で揉めてしまう
これも自筆証書遺言にありがちなのですが、遺言状の内容が曖昧だったり、資産の一部にしか言及していなかったりすると「じゃああの資産はどうなるの?」ということで、揉め事の原因になり得ます。
お金の話は難しいとは思いますが、曖昧な書き方ではなく、はっきりと記載することが重要です。
公正証書遺言を作る場合も、公証人が当人の財産を全て把握しているわけではないので、遺言状を作る本人が全ての資産を網羅し、また全ての相続人に対して言及しておくことが大切です。
財産の増減が考えられる場合は、「本遺言書に記載なき財産については○○へ相続させる」という風に、補足があると揉め事になりにくくなります。
また、遺言状は付言事項をつけることができます。これは故人の思いを残された家族に伝える文面です。
特に、財産分けに差が出てしまう場合、付言事項に「どうして差をつけたのか」という理由を書いておくとトラブルになりにくいのです。
「介護をしてくれた○○には多めに」
「○○は留学費用が掛かったから」
「お墓を守ってくれる○○にこの資産を」
など、どうしてこういう遺産分配になったかを明確にしておくといいでしょう。
でも、自分が書くならともかく、親に「遺言状を書いてほしい」とは言いにくいですよね。
こんなときは、どうすれば良いのでしょうか?
◆「遺言状を書いて」は絶対にNG!
骨肉の争いを避けるために遺言状が欲しいのは山々ですが、遺言状を書いてほしくて親と揉めてしまっては、意味がありません。
普通に「遺言状を書いてほしい」と伝えるだけで「死んでほしいのか」「お金が欲しいのか」と嫌な気分になる人もいるのです。
その結果「絶対に書かない」と決めたり、「この子にはお金を残したくない」と思ってしまう人もいます。
高齢になって健康や体調に不安を抱えている人ほど、遺産についてなど考えたくなくなっているものなのです。
そのため、書きたくない人に無理に書かせようとするのはお勧めできません。
大事なのは「遺言状を書こうかな」という気分になってもらうことです。
親族が亡くなったり、相続についてのニュースが流れてきたタイミングで、それとなく「遺言状があると助かるよね」というように話題を出していく。
そんな風に、ちょっとしたアピールに留めておきましょう。
人は、人に言われたことではなく自分で決めたことを実行するものです。
ご本人が「遺言状を書こう」と思ったそのときに「相談に乗るよ」という方向で、公正証書遺言の作り方などを伝え、専門家を紹介したり手続きを手伝ってあげるなど、スムーズに進むようフォローする形を取ることをお勧めします。
◆まとめ
相続については、あまり友人知人に聞けるものではありませんが、最近はニュースやコラムなどで色々なケースを知ることができるようになっています。
とあるアンケートによれば、親に遺言書を書いてほしいと考えている方は、全体の約半分程度を占めていたそうです。
しかし、実際に書いてもらうのは簡単ではありません。
書いてほしいと思ってすぐに書いてもらえるものではないと心得て、長めに時間を掛けて、「書こう」という意欲をもってもらうことが大切です。