この記事を要約すると
- 未登記建物(未登記家屋)を相続すると、法律違反になったり今後の不動産売買がしにくくなったりする。また固定資産税の軽減措置が受けられないこともある
- 未登記建物かどうかは、「全部事項証明書」か「固定資産税・都市計画税の納税通知書」で確認できる
- 未登記建物を相続するときは、遺産分割協議書を作成したうえで、表題登記と所有権保存登記を行う
- 未登記建物であっても相続税は支払う必要がある
あなたのご実家の建物は登記されていますか?両親や親戚など身近な方が亡くなり、遺された建物が登記されていない「未登記建物」だとさまざまな問題がおこりがちです。
本記事では未登記建物を相続するリスクや未登記かどうかの確認方法、相続時の手続きの流れ、未登記建物の相続税などを解説します。
読むことで未登記建物の相続手続きをスムーズに進められるので、ぜひご覧ください。
目次
未登記建物とは
未登記建物とは、登記の記録をしておらず、誰が所有している建物なのかわからない状態の建物を言います
登記というのは、土地や建物の所有者を管理するための不動産登記のことで、土地を購入したり家を建てたりした場合は1か月以内に登記することが義務となっています。
登記をしていなくても普通に住むことができるので、未登記であることに普段気づくことは難しいでしょう。ちなみに、登記している建物は既登記建物と言います。
未登記建物の3つの種類
未登記建物には大きく分けて3種類あります。
未登記の種類 | 状態 | 必要な登記 |
1.未登記建物 | 登記ができる状態にも関わらず登記が全くされていない建物 | 表題登記 所有権保存登記 |
2.一部未登記建物 | 登記はされているが、増築などの変更がされていない建物 | 表題登記 |
3.一部未登記建物 | 登記はされているが所有者の氏名などが変わったのに変更がされていない | 所有権保存登記 |
不動産登記には表題登記と所有権保存登記の2種類があります。
表題登記とは、建物や土地の所在や規格などを登記すること、所有権保存登記とは、誰が所有者なのかを登記することで、表題登記に関しては、不動産登記法第64条で義務となっています。
(出典:不動産登記法|e-Gov法令検索)
そのため「1.未登記建物」と「2.一部未登記建物」は登記は義務となっていますが、「3.一部未登記建物」は法律上では義務ではありません。
しかし、所有権保存登記がされていないと権利証がもらえず、自分が所有する建物の権利を主張できません。登記費用はかかりますが、未登記建物はすべて登記した方が後々のトラブルを回避できます。
未登記建物の相続での5つのリスク
未登記建物(未登記家屋)とは、不動産の所有者を登録する不動産登記をしておらず、誰が所有しているのかがわからない状態の建物のことです。登記をしていなくても住むことができるので、普段は未登記であることに気づくのは難しいです。
未登記建物を相続すると5つのリスクがあります。
- 法律を守っていないことになる
- 融資を受けることができず、ローンを組めない
- 売却がしにくい
- 相続が複雑になる
- 固定資産税の軽減措置が受けられない
それぞれ解説します。
法律を守っていないことになる
家を建てたり増築をしたりした場合、1か月以内に登記を行うことが不動産登記法第47条第1項により定められています。登記をしないことでこの法律に違反してしまうと、10万円以下の過料という罰金を支払わなければなりません。
ただし、現段階では実際に罰金を払った人はおらず、未登記でもそのまま野放しになっているのが現状です。これからどうなるのかはわからないので、登記して法律を守っておくことに越したことはないでしょう。
融資を受けることができず、ローンを組めない
住宅ローンを組む時には、購入した人が住宅ローンを返済できなくなった場合に備えて、お金を貸した金融機関が抵当権を設定します。しかし、未登記建物にはこの抵当権が設定できないので、ローンを組むことができなくなってしまうのです。
例えば、未登記建物だとは知らずにリフォームをしようとしたら、抵当権がないのでローンが組めなかった…なんてことがあるので注意が必要です。
売却がしにくい
未登記建物でも売却はできますが、買い手は未登記建物のリスクも一緒に背負うことになるので、売却がしにくくなります。登記をし直すとなるとお金もかかるので、買いたいと思う人は少ないでしょう。
相続が複雑になる
未登記建物を相続した場合に、リフォームや売却をするとなると登記が必要になります。
未登記のまま相続をして登記をするときは建物の図面や建築確認済証、評価証明書などの書類が必要になりますが、この場合は書類を紛失していることも多く、必要書類を揃えるだけでも相当な労力を要します。
また、書類を揃えるためには土地家屋調査士や司法書士などプロに依頼しなければならないことも出てくるので、未登記建物の相続における登記費用はかさみがちです。
2024年4月からは相続登記も義務化されました。未登記建物は相続登記義務化の対象外ですが、これを機に解決することをおすすめします。よくわからない場合は司法書士などのプロに相談してみましょう。
固定資産税の軽減措置が受けられない
固定資産税は、建物が建っている土地であれば軽減措置を受けることができ、固定資産税は最大で1/6程度、都市計画税であれば1/3程度減額されます。しかし、未登記建物の場合は建物が建っていることが把握されていないので、軽減措置を受ける対象にならない可能性があるのです。これはとてももったいない出費ですね。
このように未登記建物を放置するとさまざまな問題が起こります。未登記に気付いた時点で早急に登記を進めましょう。
未登記かどうかを確認する2つの方法
未登記建物かどうかを確認する方法は2つあります。
- 全部事項証明書を確認する
- 固定資産税・都市計画税の納税通知書を確認する
それぞれ解説します。
全部事項証明書を確認する
全部事項証明書というのは、法務局が管理している登記記録を全て記載した証明書のことで、手数料を払えば誰でも取得することができます。
取得方法は下記の3つです。
- 法務局の窓口で申請する
- 法務局から郵送で送ってもらう
- 登記・供託オンライン申請システムを使って自分で証明書を印刷する
固定資産税・都市計画税の納税通知書を確認する
未登記であっても税金は払わなければならないので、固定資産税や都市計画税を納税しているはずです。そのため、毎年役所から納税通知書が送られてきています。
そこに未登記と書かれていたり、家屋番号の欄が空欄になっていたりすると未登記の可能性が高いです。ただし、家屋番号の空欄は役所が登録を間違えている場合もあるので、しっかりと確認したい場合には全部事項証明書を取得することをおすすめします。
古い建物が未登記の場合の相続手続き方法
もし未登記建物を相続する場合は以下の手続きの流れになります。
- 遺産分割協議をする
- 表題登記を行う
- 所有権保存登記を行う
古い未登記建物の登記をする場合の必要書類も同時に確認しておきましょう。それぞれ解説します。
1.遺産分割協議をする
遺産分割協議とは、誰がどのくらいの割合で遺産を引き継ぐのか、相続人全員で話し合って決めることです。相続人全員が遺産の分け方に合意したら、遺産分割協議書を作成し書面に残しておきます。
これは相続する上で必要な手続きですが、万が一後々相続人同士でトラブルになった場合にも役立ちます。未登記建物を相続するときも遺産分割協議書は必要です。
2.表題登記を行う
表題登記とは、建物や土地の所在や規格などを新しく登記することで、未登記建物を登記するということです。相続することが決まったらすぐに表題登記をしましょう。
登記をするには、まず表題部という建物の情報(所在、構造、大きさなど)を登記し、次に権利部(所有者の氏名や電話番号など)を登記していきます。
未登記建物の相続における表題登記もこれに準じます。
表題登記を申請するときは主に以下の書類を準備し、未登記建物を管轄する法務局へ提出します。
- 登記申請書
- 建物図面・各階平面図
- 建築確認通知書(検査済証)
- 施工業者の工事完了引渡証明書・資格証明書・印鑑証明書
- 被相続人の住民票
- 相続に関する書類(戸籍謄本や遺産分割協議書など)
3.所有権保存登記を行う
所有権保存登記とは、誰が所有者なのかをはっきりさせるものです。未登記建物の相続のための名義変更を行いましょう。上の表題登記だけでは権利証(登記識別情報通知書)が発行されないので、こちらも必ず登記しましょう。
所有権保存登記には、以下の書類を準備してください。
- 登記申請書
- 所有者の住民票
- 住宅用家屋証明書
この他に手続きの際 は登録免許税がかかります。
以上の手続きは専門的な手続きが必要となり、場合によっては土地家屋調査士へ依頼しなければなりません。未登記建物の相続登記を自分ですることも可能ですが、かなり難易度が高くなります。
相続のプロに任せたい場合はまずは司法書士に相談しましょう。
未登記建物の相続税
未登記建物には相続税がかかる
未登記建物であっても遺産であることに変わりはないので、きちんと相続税を支払わなければなりません。
相続税は、固定資産税評価額(固定資産税などの基準となる価格)の金額でおおむね推測でき、未登記建物の相続においても同様です。
固定資産税評価額を調べるには、役所から送られてくる固定資産税の納税通知書についている課税明細書を確認してください。価格の欄に記載しています。
相続税の申告の際は、対象物件の路線価や倍率(路線価がない場合に基準となる指標)を使用して「相続税評価額」で行います。ざっくりとではありますが、時価の7割が固定資産税評価額、8割が相続税評価額だといわれているので参考にしてください。
相続税の計算方法
固定資産税評価額が確認できて大体の相続税がわかったとしても、自分でしっかりと相続税を計算することはとても難しいです。
相続税というのは遺産の総額に税率を乗じればいいといという簡単なものではなく、誰がどの程度相続するのかによって税率の計算が変わってくるからです。簡単に流れを見ていきましょう。
①相続する遺産の総額を計算する
現金などはそのまま計算できますが、土地や建物などの不動産、株などの価値が変わるものは相続する時点での価値を参考にして計算します。
②遺産の総額から基礎控除を引く
遺産総額全てに相続税がかかる訳ではないので、基礎控除を引いた額が相続税の対象になります。基礎控除額は3000万円+600万円×相続人の数で計算されるので、相続する人数が多ければ多いほど控除の額も大きくなります。
③課税対象の遺産を相続人で分け、個人単位の相続税を計算する
相続する人によって受け取る遺産が変わってくるので、その人に応じた相続税を計算していきます。
④個人で出した相続税の額を全て合計する
相続する人それぞれの相続税を計算したからこれで終わり…ではなく、またすべてまとめて合計します。相続の形は法で定められた形だけではなく、遺言書で決まった形、相続人同士で話し合って決めた形、と様々です。しかし、まずは法律で定められた形で相続税を算出しなければならないので、このような計算の仕方をするのです。
⑤本当の相続税を計算する
相続税の合計額×その人の課税価格/課税価格の合計額という計算式に基づいて計算します。これでやっと相続税が判明するのです。
計算が複雑なだけでなく、相続税率がよく改正されていること、基礎控除だけではなく他にも使える控除があるかもしれないことなどを考えると、自分では難しい、できるだけ節税したいと考えている人は税理士などの専門家に相談することをおすすめします。
まとめ:未登記建物の相続では必ず登記しよう
いざ相続しようと思ったら未登記建物だったということはよくありますが、未登記建物を相続すると問題が発生することがあります。例えば
- 法律を守っていない
- 融資が受けられない
- 売却がしにくい
- 相続が複雑になる
- 固定資産税の軽減措置が受けられない
などの問題があげられます。
未登記建物かどうかは、法務局で取り寄せられる「全部事項証明書」か、毎年家に送られてくる「固定資産税・土地計画税の納税通知書」をみて確認しましょう。
未登記建物を相続する場合は、遺産分割協議をした上で法務局にて「表題登記」と「所有権保存登記」を行います。
未登記建物であっても、相続した人は相続税を支払わなければなりません。
登記をし直すにしても、登記をして相続税を計算するにしても、1人ではとてつもない時間と労力がかかります。相続税は間違えて計算してしまうと損をする可能性もありますので、不安な方はぜひ当事務所にご相談ください。一緒に相続について考えていきましょう。
この記事の監修者
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