この記事を要約すると
- 相続財産の評価額とは、相続税や遺産分割の前提になる「財産ごとの金額」です。
- 土地・建物・預金・株式・生命保険金など、財産の種類によって評価方法が違います。
- 相続税評価額と実際の売却価格は一致しないため、目的に応じて使い分ける必要があります。
目次
相続財産の評価額とは?
相続が始まると、まず「遺産がいくらあるのか」を把握しなければなりません。このときに問題になるのが相続財産の評価額です。預金であれば残高を見れば比較的わかりやすいですが、土地や建物、非上場株式、貸付金、生命保険金などは、単純に通帳の残高を見るようにはいきません。
相続財産の評価額は、主に二つの場面で使われます。一つは相続税申告のための評価、もう一つは遺産分割で相続人同士が公平に分けるための評価です。相続税評価額は税金計算のための金額であり、必ずしも売れる金額そのものではありません。ここを混同すると、「税務署に出す評価」と「家族で納得する評価」がずれて話し合いが止まります。
国税庁は相続税や贈与税の土地・家屋評価について、タックスアンサーNo.4602「土地家屋の評価」で、土地は路線価方式または倍率方式、家屋は固定資産税評価額を基礎に評価する考え方を示しています。実際の申告では、国税庁の財産評価基本通達や個別財産の通達も確認します。
相続税の基礎控除と評価額の関係
相続税がかかるかどうかは、遺産総額から債務や葬式費用などを整理したうえで、基礎控除を超えるかどうかで判断します。基礎控除は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」です。たとえば法定相続人が配偶者と子2人なら、3,000万円+600万円×3人=4,800万円が基礎控除額です。
ここで大切なのは、預金だけを見て判断しないことです。自宅土地の評価、建物、株式、投資信託、生命保険金、名義預金の可能性まで含めると、思っていたより遺産総額が大きくなることがあります。反対に、借入金や未払医療費など控除できる債務がある場合は、遺産総額から差し引けることもあります。
財産別の評価方法
| 財産の種類 | 評価の基本 | 注意点 |
|---|---|---|
| 預貯金 | 相続開始日の残高 | 定期預金は既経過利息も確認 |
| 土地 | 路線価方式または倍率方式 | 地形、道路付け、貸宅地などで補正 |
| 建物 | 固定資産税評価額 | 貸家は権利関係により調整されることがある |
| 上場株式 | 相続開始日の終値など複数基準 | 評価時点の選択で金額が変わる |
| 生命保険金 | 受取金額を基礎に判断 | 非課税枠や受取人固有財産との関係を確認 |
| 自動車・動産 | 時価や査定額 | 高額品は資料を残す |
土地については、路線価が定められている地域では路線価方式を使います。国税庁の財産評価基準書 路線価図・評価倍率表では、年分ごとの路線価や倍率表を確認できます。横浜市内の宅地でも、前面道路、土地の形、奥行、私道負担、セットバック、借地権などで評価は変わります。

土地と建物の評価でつまずきやすい点
土地の評価で多い誤解は、「固定資産税評価額がそのまま相続税評価額になる」というものです。建物は原則として固定資産税評価額が基礎になりますが、土地は路線価方式または倍率方式です。路線価地域では、路線価に面積を掛け、土地の形状などに応じた補正を行います。倍率地域では、固定資産税評価額に倍率を掛けて評価します。
国税庁のNo.4602でも、土地には路線価方式と倍率方式があること、家屋は固定資産税評価額に1.0を乗じて評価することが説明されています。つまり、土地と建物を同じ感覚で評価しないことが大切です。
また、相続税評価額はあくまで税務上の評価です。実際に売却するときの価格は、不動産市況、駅距離、建物の状態、買主の需要によって変わります。遺産分割で「売ったらいくらになるか」を重視する場合は、不動産会社の査定書を複数取ることもあります。
相続財産の評価で集める資料
評価額を正しく把握するには、資料集めが先です。固定資産税納税通知書、登記事項証明書、公図、地積測量図、預貯金の残高証明書、証券会社の残高証明書、生命保険金の支払通知書、借入金や葬式費用の領収書などをそろえると、専門家との打ち合わせが進みやすくなります。
資料が足りないまま概算で話し合うと、後から新しい財産や債務が出てきて、協議をやり直すことがあります。特に預金の取引履歴から生前贈与や名義預金の問題が見つかることもあるため、相続税申告が必要な家庭では早めに税理士へ相談しましょう。
遺産分割では評価時点も重要
相続税申告では原則として相続開始時の価額を基準にします。一方、遺産分割協議では、相続開始時の評価で話すのか、協議時点・売却見込み額で話すのかが問題になります。不動産や株式の価格が大きく動くと、相続人の納得感が変わるからです。
たとえば、相続開始時には土地評価が4,000万円でも、協議時点で周辺相場が下がっていることがあります。逆に上場株式が値上がりしていることもあります。どの評価時点を使うかは、相続人全員で確認し、協議書の前提としてメモを残しておくと後日の説明がしやすくなります。
評価額を間違えやすい財産
相続財産の評価で見落としやすいのが、名義預金、貸付金、未収家賃、還付金、ゴルフ会員権、暗号資産、ネット証券口座です。被相続人名義ではない預金でも、実質的に被相続人のお金で管理されていた場合、相続財産として問題になることがあります。家族名義だから絶対に相続財産ではない、と単純には言えません。
また、生命保険金は受取人固有の財産と説明されることがありますが、相続税の計算では「みなし相続財産」として扱われる場面があります。非課税枠がある一方で、受取人や保険料負担者によって税目が変わることもあります。相続財産の評価では、名義だけでなく、お金の出どころと管理実態を見ることが重要です。
相続税申告が必要か迷ったときの考え方
相続税申告が必要かどうか迷ったら、まず基礎控除を計算し、そのうえで大きな財産から概算評価を出します。自宅土地、収益不動産、預貯金、有価証券、生命保険金の順に確認すると、全体像をつかみやすくなります。基礎控除を少し下回ると思っていても、小規模宅地等の特例を使う前提で下回っているだけなら、申告が必要になる場合があります。
相続税は、原則として相続開始を知った日の翌日から10か月以内に申告・納付します。期限があるため、評価が難しい財産を後回しにすると慌ただしくなります。特に土地の評価、非上場株式、過去の贈与、名義預金は時間がかかります。
まとめ
相続財産の評価額は、相続税申告にも遺産分割にも影響する重要な出発点です。土地は路線価方式・倍率方式、建物は固定資産税評価額、預貯金は相続開始日の残高というように、財産ごとに見方が違います。
相続税評価額、実勢価格、家族間の公平は完全には一致しません。だからこそ、国税庁などの公的情報を確認しながら、資料をそろえ、必要に応じて税理士・司法書士・不動産会社の意見を組み合わせることが大切です。
相続財産の評価額に関するよくある質問
- Q. 相続財産の評価額とは何ですか?
- A. 相続税や遺産分割のために、土地・建物・預金・株式などの財産を金額で把握したものです。財産の種類ごとに評価方法が異なります。
- Q. 土地の評価は固定資産税評価額でよいですか?
- A. 土地は原則として路線価方式または倍率方式で評価します。固定資産税評価額がそのまま使われるとは限りません。
- Q. 建物の相続税評価額はどう決まりますか?
- A. 国税庁の説明では、家屋は固定資産税評価額に1.0を乗じて評価します。したがって、原則として固定資産税評価額と同じです。
- Q. 相続税評価額と売却価格は同じですか?
- A. 同じではありません。相続税評価額は税務上の計算基準であり、売却価格は市場の需要や物件状態によって決まります。
- Q. 相続財産の評価は誰に相談すべきですか?
- A. 相続税申告は税理士、不動産登記や協議書は司法書士、不動産の売却価格は不動産会社に相談するのが一般的です。
この記事の監修者

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