この記事を要約すると
- 不動産の共有名義にすると、相続人全員の合意がない限り、その不動産を売却や処分できない
- 相続が発生する前に遺産について相続人間で話し合い、専門家の助言を受けることは、将来のトラブルを避けるために重要
- 事前の話し合いをすることで相続後のトラブルを未然に防ぐことができる
遺産相続は相続人間で大きなトラブルを招きかねません。
本記事では、現物分割や換価分割、共有分割のメリット・デメリットを司法書士が詳しく解説し、スムーズな遺産分割の方法を提案します。
分割相続の方法1:現物分割
分割相続とは、遺産を複数の相続人の間で分ける手続きのことを指します。
通常、遺産分割は遺産分割協議、家庭裁判所の調停、または審判によって行われます。
現物分割のメリット
現物分割の主なメリットは以下の4つです。
手続きの簡便さ
現物分割は、遺産をそのままの形で相続人に分ける方法です。分割手続きが比較的簡単で、迅速に進められます。
特定の相続人に集中させやすい
特定の相続人に遺産を集中させる場合に適しています。
たとえば、「家を継ぐ長男に財産を集中させたい」ときには、現物分割が有効です 。
多様な遺産の分割が容易
多様な遺産がある場合、それぞれの相続人が特定の財産を取得できるので、不公平になりにくいです 。
預貯金などでの調整が可能
預貯金や現金がある場合、現物分割を行うことで、公平な分割が可能です。
現物分割のデメリット
現物分割の主なデメリットは以下の3つです。
財産価値の減少
特定の財産を分割することで、価値が下がる可能性があります。
例えば、不動産を複数の相続人に分割する場合、分割前の一体の土地や建物よりも個々の部分の価値が下がってしまいます。
分割の難しさ
不動産などは分割が難しく、細分化すると価値が下がる可能性があります。また、特定の相続人が価値の高い不動産を取得すると、他の相続人からの不満が出ることが予想されます。
共有の問題
法定相続分による相続登記を行うと、不動産が共有状態になることがあります。
この場合、不動産の管理や処分が難しくなり、相続人間での意見対立が生じやすくなります。
分割相続の方法2:換価分割
換価分割とは、相続財産を売却して得た現金を相続人間で分割する方法です。この方法にはいくつかのメリットとデメリットがありますが、相続人間の揉め事を避けるための手段として有効です。
換価分割のメリット
換価分割の主なデメリットは以下の3つです。
公平な分割
現物分割が難しい不動産などの財産を現金化することで、相続人全員が平等に相続できる点が大きなメリットです。
現物のまま分割する場合、評価額のばらつきや利用価値の違いなどで不公平感が生じることがありますが、換価分割ではそのリスクが低減します 。
納税資金の確保
相続税は通常現金で支払う必要があります。換価分割により、現金を確保して相続税の納付に充てることが可能です。
揉め事の回避
現物分割では相続人間の意見が対立しやすいですが、換価分割により現金を分けることで合意形成がしやすくなり、トラブルを防ぎやすくなります。
換価分割のデメリット
換価分割の主なデメリットは以下の3つです。
税金の発生
財産の売却により譲渡所得税が発生する場合があります。これにより相続人が受け取る金額が減少する可能性があります。
手続きの手間
売却には不動産の査定や売却手続きなど、多くの手間がかかります。
特に売却が迅速に進まない場合、相続税の申告期限に間に合わないリスクもあります。
売却価格の不確定性
希望通りの価格で売却できない場合もあり、その場合は相続人が思っていたよりも少ない金額を受け取ることになります。また、売却までに時間がかかることもあります。
分割相続の方法3:共有分割
共有分割とは、複数の相続人が相続財産を共有して所有する形態のことを指します。共有分割には、いくつかのメリットとデメリットがあります。
共有分割のメリット
共有分割の主なメリットは以下の3つです。
公平な分配
全ての相続人が財産の一部を共有するため、特定の相続人が財産を独占することがありません。共有分割をすることで各相続人が公平に財産を受け取れます。
財産の維持
不動産などを共有することで、財産の価値を維持できます。売却する必要がなく、将来的に価値が上がるなどのメリットもあります。
迅速な相続手続き
分割協議が難航した場合でも、共有分割にすることで速やかに相続手続きを終えられます。
共有分割のデメリット
共有分割の主なデメリットは以下の3つです。
共有者間のトラブル
共有分割は相続人全員が共同で財産を管理するため、意見の不一致や管理の仕方に関するトラブルが生じやすいです。
特に相続人間での対立が激しい場合、共有財産の利用や処分について争いが起きる可能性が高くなります。
処分の難しさ
共有財産を売却する場合、共有者全員の同意が必要です。同意が得られない場合、迅速な処分が難しくなることがあります。
管理費用の負担
不動産などの維持管理費用が発生する場合、共有者間で費用分担が必要となります。これが原因で更なるトラブルを引き起こすこともあります。
分割が難しければ共有すれば大丈夫?
不動産の共有は、一見すると相続人全員に平等な方法のように見えますが、実際には多くの問題を先送りすることになります。また、事前に十分な話し合いをしておくことも重要です。
共有は問題の先送り
不動産を共有名義にすると、相続人全員の合意がなければ、その不動産を売却・活用することができません。
共有名義にすると、もし将来的に不動産を売却・活用したいときに大きな障害となります。
また、共有名義の不動産は、管理や維持の負担も共有者全員で負わなければなりません。固定資産税の支払いや修繕費用、あるいは賃貸収入の分配など、さまざまな管理業務が発生しますが、これらに関する意見の対立もトラブルの元となります。
このように、共有名義にすることは一時的な解決策であり、将来的な問題を先送りするだけのことが多いのです。
前もって話し合っておくことの重要性
相続が発生する前に遺産について相続人間で話し合っておくことは、将来的なトラブルを避けるためにとても重要です。
話し合いの過程では、専門家の助言を受けることも有効です。司法書士や弁護士、不動産鑑定士などの専門家は、適正な不動産評価や法律に基づくアドバイスを提供してくれます。
これにより、相続人全員が納得できる形での遺産分割が可能となり、後々の法廷闘争や感情的な対立を避けることができます。
例えば、ある相続人が不動産に住み続けたいと希望する場合、その相続人が他の相続人に代償金を支払う形で合意することが考えられます。このようにして、事前に具体的な対策を講じておくことで、相続後のトラブルを未然に防ぐことができます。
まとめ
この記事では、相続財産の分割方法として、現物分割、換価分割、共有分割の各方法のメリットとデメリットを司法書士が解説しました。
現物分割は手続きが簡便ですが、不公平感が生じやすく、換価分割は公平ですが、譲渡所得税が発生するリスクがあります。
共有分割は全員が平等に財産を受け取れますが、管理や処分において意見の対立が生じやすいです。
相続トラブルを避けるためには、事前の話し合いが重要です。詳しい相談は、専門的な知識を持った司法書士の無料相談をご利用ください。
この記事の監修者
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