この記事を要約すると
- 親族は血縁関係や婚姻関係がある人同士のことを指し、養子縁組などの血が繋がっていない人も親族として扱われる。
- 親族の遠近を親等という数字で表し、数字が小さければ近い関係である。
- 親族であるか否かによって、相続人になれるか否か、相続税が2割多く加算されるか否か等、様々な違いがある。特に相続税の2割加算には注意。
人生100年時代と言われる現代の日本において、相続について考える機会が増えつつあります。しかし、その人生100年において相続を経験するのは多くても数回です。
そのため、相続に関係する言葉を知る機会も少なく、たとえば「親族とは何?」と聞かれても答えるのが難しいのではないでしょうか?
この記事では、親族の意味や「血族」、「姻族」、「尊属」など親族を正しく理解するための関連ワードに加え、「親等」の数え方について具体的に解説します。
親族とは?
親族とは、血縁関係(血族)または婚姻関係(姻族)がある人同士のことを指します。
その中でも親族は6親等内の血族、3親等内の姻族、そして配偶者を総称します。なお、親等については後ほど紹介します。
血族・姻族とは?
血族は、血縁関係がある人を指します。なお、実際に血が繋がっている自然血族だけでなく、養子縁組によって法律上親子関係がある法定血族も血族として扱われます。
姻族は、婚姻によって親族関係が生じる人を指します。夫または妻の配偶者の血族と血族の配偶者が姻族に該当します。
親等とは?
先ほどの親族のところで少し出てきた親等ですが、これは親族関係と対象者本人との距離を数字で表します。
数字が小さければ対象者との親族関係が近く、大きければ遠くなります。なお、配偶者は親等には含まれません。
親等の数え方
それでは、実際の親等の数え方を見てみましょう。親等は両親や子などの世代を経由するごとに1つずつ増えていきます。
まず、最も近い1親等についてです。1親等は本人の両親、子が該当します。「本人→親」、「本人→子」という流れです。
次に2親等は、本人の祖父母や本人の孫、兄弟姉妹が該当します。「本人→親→祖父母」、「本人→子→孫」、「本人→親→兄弟姉妹」となります。
なお、中には親等の数え方が複雑なケースがあるため、詳しくは「よくある質問」で紹介します。
姻族の数え方
姻族は、配偶者を基準に親等を数えます。先ほどの親等の数え方をもとに、配偶者の親を1親等、祖父母や兄弟姉妹を2親等・・・と数えていきます。
親族の範囲の図解
これまで代表的な親族について紹介しましたが、以下の場合も親族として扱われます。
※図の①、②は本人から見た親等を表します。
異母兄弟、異父兄弟も親族
異母兄弟、異父兄弟(半血兄弟姉妹とも言います。)の場合も、兄弟姉妹であることに変わりありませんので親族です。そして親等は2親等になります。
例:父が後妻との間に授かった子と本人との関係(異母兄弟)
離婚して疎遠になった親子も親族
親等は変わらないため親族です。子と離別した場合は、その子は1親等になります。
例:妻との離婚の末、親権が妻にわたり、妻子と離別した場合
認知された非嫡出子も親族
正式な婚姻関係のない相手との間の子のことを「非嫡出子(または婚外子)」といい、非嫡出子の子を自分の子であることを認めることを「認知」といいます。
ちなみに、子は母親から産まれ、分娩の事実によって血縁関係が生じるため、認知とは父親から子に対してのみ行われます。非嫡出子は認知されている場合にのみ、親族になるのです。
親族であるか否か(=認知の有無)の最大の違いは、相続人になれるかどうかにあります。
下図を見てみましょう。もし夫が死亡した場合、認知がない非嫡出子は相続人になれず、財産を承継することができません。一方で、認知されている場合は相続人として扱われ、財産を承継することができます。
養子も親族
養子縁組によって子となった養子も、実の子と同じく1親等の親族となります。また養親に加え、養親の血族や姻族とも親族関係になります。
例:養子縁組による養親と実子との関係
ちなみに、養子縁組には普通養子縁組と特別養子縁組の2種類があります。
普通養子縁組とは、当事者の合意に基づいて養子関係が成立するもので、実親との親族関係が継続するのが特徴です。
一方の特別養子縁組は、家庭裁判所の審判によって養子関係が成立するもので、実親との親族関係が終了します。
連れ子も親族
連れ子も1親等の親族として扱われます。ただ、本人と連れ子に血の繋がりはありませんので姻族です。養子縁組で血族になることもできます。
親族の分類
これまで血族と姻族という親族の分類について紹介しました。
これ以外にも、親族を分類する方法があります。それが「直系と傍系」、「尊属と卑属」です。
直系と傍系
直系とは、直接的に血が繋がっている系統を指します。実の父母はもちろんのこと、その父母、つまり祖父母も直系です。また、本人の子や孫も直接的に血が繋がっていますので直系となります。
傍系とは、同じ祖先を持つ系統を指します。一番身近な傍系は兄弟姉妹です。その他、叔父叔母や甥姪なども傍系となります。
尊属と卑属
尊属とは、自分よりも上の世代を指します。父母や祖父母などがこれに当たります。
反対に卑属は、自分よりも下の世代を指し、子や孫などがこれに当たります。
最後に、これまでの分類をすべて整理したものが下図になります。
親族であることの法的効果
親族であることにより、できることとできないことがあると、民法等の法律上規定されています。
例:民法第895条第1項
推定相続人の廃除又はその取消しの請求があった後その審判が確定する前に相続が開始したときは、家庭裁判所は、親族、利害関係人又は検察官の請求によって、遺産の管理について必要な処分を命ずることができる。推定相続人の廃除の遺言があったときも、同様とする。
また、「3 認知された非嫡出子も親族」で紹介した通り、非嫡出子の場合は認知の有無によって相続財産上、法定相続分を有するか否かも変わってきます。
さらに、相続が発生した場合に相続人が支払う相続税には、特定の人だけ相続税額が「2割加算」される制度があります。特定の人とは、次の3つ“以外”の人が該当します。
- 被相続人(=死亡した人)の1親等の血族
- 被相続人の1親等の血族の代襲相続人
- 被相続人の配偶者
被相続人から遠い関係の人は、相続税が2割加算される点にも注意が必要です。
よくある質問
Q兄弟姉妹は何親等?
「3 親等の数え方」で紹介した通り、2親等になります。一見、兄弟姉妹を1親等と勘違いしがちですが、本人も兄弟姉妹も同じ親から産まれているので、「本人→親→兄弟姉妹」で2親等です。
Q父(または母)の前妻(前夫)の子どもは何親等?
2親等になります。父(または母)の前妻(前夫)の子どもは、片親が同じ兄弟姉妹の関係になります。そのため「本人→親→兄弟姉妹」で2親等です。
Q義理の兄(義理の姉)は何親等?
2親等になります。義理の兄や姉は配偶者の兄姉ですので「配偶者→配偶者の親→義理の兄・姉」で2親等です。
Qいとこは何親等?
4親等になります。いとこはおばやおじの子ですので「本人→親→祖父母→おじおば→いとこ」で4親等です。
Qおばやおじは何親等?
3親等になります。おじやおばは本人の親の兄弟ですので「本人→親→祖父母→おじおば」で3親等です。
Q祖父、祖母は何親等?
「3 親等の数え方」で紹介した通り、2親等になります。
Qひいおじいちゃん、ひいおばあちゃんは何親等?
3親等になります。ひいおじいちゃん、ひいおばあちゃんは祖父母の親ですので「本人→親→祖父母→ひいおじいちゃん、ひいおばあちゃん」で3親等です。
Q甥や姪は何親等?
3親等になります。甥や姪は兄弟姉妹の子ですので「本人→親→兄弟姉妹→甥や姪」で3親等です。
Q夫や妻は何親等?
「3 親等の数え方」で紹介した通り、配偶者に親等はありません。強いて言うなら「0親等」でしょうか。
まとめ
親族は広範囲にわたりますが、被相続人から遠い関係(2親等以下)の場合、相続税が高くなることがあります。
相続は複雑な点も多く、考えることを後回しにしがちです。しかし、一人一人が相続について向き合うことで、各種手続きがスムーズになるだけでなく、親族との関係が深くなることもあります。
そのために、まずはご自身の親族に誰がいるのか、そして相続が発生した際にどのような対応をとるべきかを考える機会を設けてみてはいかがでしょうか?
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この記事の監修者
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