この記事を要約すると
- 戸籍法の改正により、2024年(令和6年)3月1日から『戸籍の広域交付制度』が施行される
- 戸籍の広域交付制度が開始されると、本籍地以外の役所でも自身の生活圏における最寄りの市区町村役場の窓口で戸籍謄本を請求できるようになる
- 今年2024年4月1日には相続登記の義務化が施行され、相続人調査など手間のかかる作業を行わなければならない
改正された戸籍法は、2024年(令和6年)3月1日から施行されます。この広域交付制度により、戸籍謄本、除籍謄本の請求および取得は、本籍地以外の市区町村役場の窓口でもできるようになります。
これまで本籍地が遠方だった人は、戸籍謄本や除籍謄本を取得するためにわざわざ本籍地まで足を運ばなければなりませんでした。
しかし、新しい広域交付制度が施行されることにより、自宅や職場など最寄りの市区町村役場の窓口で用事を済ませることができるようになり、利便性が大きく向上したと言えます。
また、複数の本籍地の戸籍謄本を請求したい場合も、一つの市区町村役場の窓口でまとめて取得することが可能です。
目次
戸籍の広域交付制度とは?
令和元年5月24日、戸籍法の一部を改正する法律(令和元年法律第17号)が成立しました(同月31日公布)。
改正された戸籍法の運用は、今年2024年(令和6年)3月1日より開始されます。戸籍法の改正により、施行されることになった『戸籍の広域交付制度』とは何か説明します。
広域交付制度とは
行政手続きや相続手続きで必要となる、戸籍謄本が取得しやすくなる制度です。
本籍地以外の役所でも自身の生活圏における最寄りの市区町村役場の窓口で戸籍謄本を請求できるようになります。
利用にあたっての注意点
- 戸籍証明書等の請求を認められている人が、市区町村の戸籍担当窓口に来た人が請求する必要があります。
- 郵送や代理人による請求は認められていません。
- 窓口に来た人については、本人確認のため、運転免許証やマイナンバーカード、パスポートなどの顔写真付きの身分証明書の提示が必要です。事前に準備しておきましょう。
広域交付で戸籍を取得できる方
- 本人
- 配偶者
- 父母、祖父母など(直系尊属)
- 子、孫など(直系卑属)
戸籍証明書等を請求することができるようになります。
広域交付制度のメリット・デメリット
広域交付制度のメリット
どこでも取得できる
これまでは、居住地と本籍地が異なる場合、戸籍謄本を取得するためにわざわざ本籍地にある市町村役場に請求しなければなりませんでした。
しかし、改正された戸籍法に基づいて、新しく戸籍の広域交付制度が運用されるようになると、本籍地と異なる市町村役場でも戸籍謄本を請求できるようになります。
これは、本籍地が遠方にある方にとっては朗報であり、ご自宅の近くや勤務先の最寄りにある市区町村の窓口で請求できます。
まとめて請求できる
揃えなければならない戸籍の本籍地が、全国各地に点在していたとしても請求できるようになります。
一ヶ所の市町村役場の窓口で済ませられる点でかなり大きなメリットがあるといえます。
広域交付制度のデメリット
コンピュータ化されていないような一部の戸籍・除籍は対象ではないため除きます。
一部事項証明書、個人事項証明書については請求することができません。
戸籍のコンビニ交付と広域交付を比較してみた
引用:戸籍法部会参考資料よりhttps://www.moj.go.jp/content/001273675.pdf
コンビニ交付 | 広域交付 | |
概要 | 全国のコンビニで現在戸籍の 証明書を取得、行政機関等 に当該証明書を提出 | 全国の市区町村の役所又は役場等で現在戸籍及び従前戸籍(除籍を含む)の証明書を取得、行政機関等に当該証明書を提出 |
交付者/交付地 | 本籍地市区町村長/コンビニ | 交付請求地市区町村長/交付請求 地市区町村 |
対象となる証明書 | 現在戸籍の証明書のみ | 現在戸籍、従前戸籍(除籍)等、全ての証明書(電子化しているものに 限る。) |
ターゲットとなる行政手続 | 現在戸籍の証明書の提出で足りる行政手続 | 相続手続を含む、戸籍証明書が必要となる全ての行政手続 |
窓口対応 | コンビニ店員が関与することなく自動で交付 | 市区町村の職員に相談しながら、行政機関等に提出するのに必要な証明書を取得 |
請求者の条件・ 事前準備 | マイナンバーカードを所持 ・本籍地市区町村での事前 登録が必要(本籍地と住所 地が異なる場合のみ) | 特になし |
手数料 | コンビニが手数料分を控除し、残りは交付した市区町村 が領収 | 交付した市区町村が領収 |
実施市区町村 | 実施市区町村 戸籍証明書のコンビニ交付サービス実施市区町村(平 成30年10月1日現在で1,896市区町村中475市区町 村(その内、住所地と本籍地 が同一でない場合のコンビニ 交付は249市区町村が実施。) | 戸籍事務を電子情報処理組織によ り取り扱う全ての市区町村(平成30 年10月1日現在で1,896市区町 村中1,892市区町村) |
相続手続きと戸籍の関係
相続手続きでは、被相続人の出生から死亡までの全ての戸籍謄本および相続人全員の戸籍謄本を取得しなければなりません。
広域交付制度では、本人からみて「本人・配偶者・父母、祖父母など(直系尊属)・子、孫など(直系卑属)」の戸籍謄本等を取得できますが、兄弟姉妹やおじ、おばの戸籍謄本等は請求できません。
非対象者分については、これまで通り本籍地の市区町村役場で取得する必要があります。
相続手続きにおける戸籍謄本の取得は、非常に手間がかかります。一つでも金融機関での手続きに必要な戸籍謄本に不備があると、手続きを行うことができません。
改正された戸籍法により施行される「戸籍謄本の広域交付制度」は、どこの市町村役場でも戸籍謄本が取得できる点で、利便性の向上とともに上記負担を軽減できる革新的な制度であるといえます。
相続手続きにおける戸籍謄本の取得はめんどくさい?
相続手続きにおける戸籍謄本について説明します。
大改正相続登記が義務化に!まずは戸籍収集を!
今年2024年4月1日から相続登記の義務化が施行されます。あまり相続手続きに馴染みがない方にはピンとこないかもしれませんが、相続における相続人調査はなかなか面倒な作業です。
相続人調査とは、戸籍収集を行って相続人を調べることです。人数が多いほど手間が掛かってしまいます。
「なぜ相続人調査が手間のかかる作業なのか」具体的な理由は3つあります。
理由1 収集しなければならない戸籍の範囲が広い
基本的に相続人調査では、被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍(戸籍謄本、除籍謄本、改製原戸籍謄本)および相続人全員の現在の戸籍(戸籍謄本、戸籍全部事項証明書)が必要になります。
被相続人の出生日や転籍の回数、婚姻・離婚歴等で通数は異なりますが、被相続人の兄弟姉妹が相続人の場合は、さらに「被相続人の亡父母の出生から死亡までの連続した戸籍」が必要になります。
気づけば収集した相続人の戸籍が全部で20通以上になった、というケースも珍しくありません。
理由2 日常生活に必要のない戸籍の知識が求められる
ここまで読んで、『そもそも戸籍謄本、除籍謄本、改製原戸籍謄本なんて知らない』『被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍って何?』と疑問がいっぱいになっている方も少なくないかと思います。
簡単に説明すると、本籍を移す『転籍』や法改正により新たに戸籍を作り直す『戸籍の改製』などが行われた場合、「除籍」や「改製原戸籍」へと名称が変わります。
日常生活を送るうえで「除籍」や「改製原戸籍」の名称に関わることはありません。戸籍について知らないことが多いのは当然です。
専門的な戸籍の知識は、日常生活では必要ありませんが、相続手続きにおいては避けて通れません。
理由3 戸籍の見方・読み方・取り方を覚えなければならない
「出生から死亡までの連続した戸籍」を収集する為に、まずは被相続人の死亡の記載がある戸籍を取得します。そこから戸籍の内容を確認し、追加で請求する戸籍の情報を読み取る作業を行います。
戸籍を請求するには、役所に出向くのが一般的ですが、そのためには平日の9時~17時と限られた時間に窓口に行かなければなりません。仕事の都合でなかなか平日の日中は時間が取れない、という方もいるのではないかと思います。
役所の窓口以外にも、郵便で請求する方法もありますが、それには下記の作業として手間が掛かってしまうことは否めません。
- 申請書を役所のホームページからダウンロードする
- 印刷した申請書に記入する
- ゆうちょ銀行で定額小為替を購入して添入する
これらの作業をスムーズに行う為には、戸籍の見方・読み方・取り方を知らないといけません。
まとめ
戸籍法の改正に伴う『戸籍の広域交付制度』の開始により、戸籍の請求や取得がスムーズになります。相続手続きにおける戸籍収集は手間がかかるものなので、戸籍の広域交付制度はとても革命的な制度といえます。
とはいえ、すべて自分たちで行う必要はなく、専門家にも相続人を確定するために必要な戸籍謄本の取得を依頼できます。
今回の記事でご紹介したように、相続に関連する戸籍謄本の取得は、その情報量や誰が相続するか等により、とても複雑かつ時間がかかるものです。
もしも、故人が複数回にわたり移転や結婚を繰り返すことで戸籍に変動があった場合、そこに関連する複数の役所への手続きが必要になることがあります。ケースバイケースではありますが、ほとんどの方が煩雑さを感じるのではないでしょうか。
その場合には司法書士のような専門家へ依頼をするのも一つの手です。私たちあいりん司法書士事務所では、無料相談を受け付けております。お気軽にお問い合わせください。
この記事の監修者
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