この記事を要約すると
- 2024年9月、アニメ「ドラえもん」の声優として知られる大山のぶ代さんが死去。大山さんご夫妻は「任意後見契約」を終結していた
- 任意後見契約は本人が元気なうちに、認知・判断能力が低下したときのために後見人を指名しておく制度。効力は任意後見監督人が選定された後に生じる
- 任意後見契約には、効力の範囲やメリット・デメリット、煩雑な手続きなどがあるため、法律の専門家の手を借りながら進めるのがおすすめ
2024年9月29日、テレビ朝日系アニメ「ドラえもん」のドラえもん役などで知られる、俳優・声優の大山のぶ代さんが、老衰のため、90歳で亡くなりました。
ご夫妻の財産については、砂川さんのご兄弟が任意後見契約によりサポートし、砂川さん亡きあとも大山さんのマネージャーにお給料を支払われていた、といわれています。
今回は、大山さんご夫妻も選択されていた任意後見契約について紹介します。
大山のぶ代さんの経歴
大山のぶ代さんは、1933年に東京都で生誕。
高校在学中から俳優を目指し、俳優座養成所第7期生に選ばれます。1956年、NHKドラマ「この瞳」でデビュー。海外ドラマの吹き替えをきっかけに声優としても活躍されました。
1979年~2005年まで、テレビアニメ『ドラえもん』の主人公ドラえもん役をつとめ、自他ともに認める代表作となります。
日本中で広く知られたその声とキャラクターを武器に、歌手・ナレーター・作家・料理研究家・専門学校の声優養成部校長など、活躍の場を広げられていました。
私生活では、1973年に俳優、砂川啓介さんと結婚。多数の番組で共演、共著も多数執筆されています。
2012年に認知症を発症し、夫の砂川さんにより病名公表後、砂川さんご自身の闘病もあり、2015年より介護施設に入所。砂川さんの闘病中から、長年大山さんのマネージメントを務められていた方が、認知症を患う大山さんの介護を担っていたそうです。
認知症になる前に!任意後見契約を
大山のぶ代さんの生前、夫である砂川啓介さんが死去された際に「長年マネージャーを務めた人物が大山のぶ代さんのお世話」「砂川さんのご兄弟がご夫妻の財産管理事務をサポート」と、サポートを分業されていると一部週刊誌で話題になりました。
砂川さんのご兄弟と大山のぶ代さんご夫婦の間では、任意後見契約が結ばれており「大山さんの財産・砂川さんの遺産の中から、マネージャーにお世話代が支払われていた」ともいわれています。
高齢化社会を迎えた現在、老々介護について関心を持つ人が増えています。加齢や健康状態の悪化により、認知症や重篤な病になる未来を見越して、任意後見契約にも関心が高まっています。
今回は、任意後見契約の概要について一通り紹介します。
任意後見契約とは?なぜ必要?
任意後見契約とは「被後見人本人が一人でさまざまな事柄の判断が可能なうちに、認知症などに備えて財産や今後の生活について、さまざまな事務を委任する人物をあらかじめ選任し、後見契約を取り交わす」制度を指します。
後見人は、被後見人本人が選任し、後見開始後の報酬も自由に決められます。親族などが後見人となることが多いです。
認知症は「物忘れが増える病」として知られていますが、判断能力の低下や不穏も代表的な症状です。
こうした病状の元で、生活に必要なさまざまな契約を一人で理解し、終結まで進めることは難しいでしょう。中には、詐欺などの犯罪に巻き込まれる方もいます。
被後見人の認知・判断能力が衰えても、後見人の手を借りながら安心して暮らせるように、元気なうちに任意後見契約を結ぶ人が年々増えています。
背景には、数十年前に比べ、平均寿命が延びたり、家族がいない人が増えたりしていることも影響しているでしょう。
また、任意後見契約は「公証人が作成する公正証書によって結ぶ」ことも義務付けられています。契約に立ち会った公証人が任意後見契約締結の登記を法務局で行います。
認知症になった場合の任意後見監督人の選任とは?
認知症など、判断能力の低下が懸念される病気を発症した場合、任意後見人は、速やかに任意後見監督人の選任の申立てをする必要があります。
任意後見監督人とは、後見人の後見業務を監督する人です。任意後見契約をへて、任意後見人に選出された場合、被後見人本人の利益や希望をもとにしたサポートが求められます。
後見人の都合や利益のために、被後見人の財産や権利が損ねられることがあってはなりません。
そのため、任意後見契約は、家庭裁判所が任意後見監督人を選任した時点から効力が生じます。任意後見監督人決定後、任意後見人は任意後見契約で委任された事務を本人に代わって行えるようになります。
その後、任意後見人が正しく責務を全うしているか、任意後見監督人により定期的にチェックされ、家庭裁判所に報告されます。ほかにも、被後見人に代わって利益相反行為を行ったり任意後見人の代理を務めたりするのが、任意後見監督人の職務です。
任意後見監督人になれる人
職務の特性上、任意後見人本人・任意後見人の親族や血縁者・被後見人に対し訴訟を起こしたことがある人、その親族・未成年者・破産者や行方不明者などは、任意後見監督人にはなれません。
任意後見監督人には、司法書士・弁護士など、法律の専門家が選ばれることが多いです。必ずしも、希望が通るわけではありませんが、家庭裁判所に候補を申請することもできます。
任意後見人が、任意後見監督人を不服に思っても「正当な理由だ」と家庭裁判所が認めない限りは解任できません。あらかじめ、信頼できる司法書士などの法律の専門家を候補として家庭裁判所に申し立てるのがおすすめです。
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任意後見契約のメリットとデメリット
任意後見契約にもメリット・デメリットがあり、よく理解しておかないと「こんなはずではなかった」ということになりかねません。
任意後見契約のメリット・デメリットについて紹介します。
任意後見契約のメリット
任意後見契約では、被後見人の希望が尊重されやすい側面があります。「施設に入るか否か」「どのような施設に入居するか」「月々の生活費の目安」など、あらかじめ被後見人の意思を踏まえた契約内容が設定できます。
また、後見人は家族・親族など、親しく信頼できる相手に依頼できるため、報酬が抑えられたり、被後見人の不安が軽減できたりする可能性が高いです。
任意後見契約のデメリット
任意後見人には、法定後見人に認められている「取消権」や「被後見人死去後の事務処理や財産管理」などが認められていません。
ただし、被後見人死去後の事務処理・財産管理に関しては「死後事務委任契約」という別の契約を結んでおくことで対応が可能です。
しかし、取消権は、場合によっては被後見人の財産を守るために必要な権利でもあるため、認められないことで大きな問題に発展する可能性があります。
取消権がないことや、法律知識がないことなどから、被後見人の生活や財産を守ることに大きな重圧を感じる人もいるでしょう。任意後見監督人が決まるまでは、後見人から任意後見契約を解除できるため、後見人が一方的に契約を解除してしまうケースもあります。
こうしたリスクを避けるため、任意後見契約の手続きを司法書士や弁護士に後見人を依頼するケースも年々増加しています。
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任意後見契約や任意後見監督人の費用は?
任意後見契約や任意後見監督人の選任には、それぞれ費用がかかります。また、後見人・後見監督人に支払う報酬についても見ていきましょう。
任意後見契約にかかる費用
任意後見契約にかかる費用の内訳は、公正証書の作成費用や登記に関する費用と、後見人に対して支払う報酬です。詳しく紹介します。
任意後見契約の費用
任意後見契約を結ぶには、公証役場での公正証書を作成する必要があります。
契約や申請に必要な書類の取得費用のほかに公正証書の作成や登記申請には、約2万円ほど手数料がかかります。内訳は、以下の通りです。
費用の種類 | 金額 |
公証役場の手数料 | 11,000円 |
法務局に納める印紙代 | 2,600円 |
法務局への登記嘱託料 | 1,400円 |
書留郵便料 | 540円 |
正本謄本の作成手数料(1枚) | 250円 |
また、後見人が複数の場合は、手数料や郵便料は人数分の費用がかかります。
任意後見契約を司法書士や弁護士などに依頼するケースも増えています。各司法書士事務所や法律事務所によって料金は異なりますが、事務手数料込みで15万円程度になるところが多いでしょう。
任意後見人への報酬
任意後見人は、主に家族や親族が指名されるケースが多いです。報酬に規定がないため、無償でも有償でも構いません。
しかし、親族以外を任意後見人として指名する場合は、後見監督人と同額程度の報酬がかかるでしょう。
任意後見契約の手続きや任意後見人自体を法律の専門家に依頼したい場合は、まず無料相談のある専門家に価格も含めて相談するのがおすすめです。
任意後見監督人にかかる費用
任意後見契約に絶対にかかる費用は、公正証書の作成や登記申請の費用です。話合いやどのように任意後見契約をすすめるかによって、ほかの費用はケースバイケースといえます。
一方、任意後見監督人の選任や報酬には、一定の規定があります。詳しく紹介します。
任意後見監督人選任の費用
任意後見監督人の選任には、本人や家族、後見人による家庭裁判所への申立てが必要です。申立ての際は、以下の費用が必要になります。
費用の種類 | 金額 |
申立手数料 | 800円 |
後見登記手数料 | 1,400円 |
郵便切手代 | 3,000~5,000円 |
また、任意後見監督人選定の申立てには、被後見人本人が認知・判断能力が低下した状態にあるという証明をしなければなりません。
医師の診断のための診察料・診断書作成費用も必要です。ほかにも、被後見人の戸籍謄本や住民票などの取得費用がかかります。
任意後見監督人選定の申立て手続きを司法書士などに依頼する場合には、10万円前後がかかるケースが多いです。
任意後見監督人の報酬
任意後見監督人への報酬には、裁判所が提示する相場があります。管理財産額が5,000万円を超えるかどうかで報酬相場額が異なります。
管理財産額が5,000万円以下の場合は、任意後見監督人の報酬相場は月額1万〜2万円、年額でも12万~24万円程度と考えるとよいでしょう。
監理財産額が5000万円以上の場合は、月額2.5万~3万円、年額で30万~36万円程度の報酬が相場です。裁判所が公表しているとはいえ、あくまで相場ですので、物価や地域性によって、多少増減します。
まとめ
大山のぶ代さんご夫妻も締結されていたと推測されている、任意後見契約は、認知症など認知・判断能力が低下する事態になっても、本人の生活と財産を守るために、本人が元気なうちに後見人を定めておく制度です。
あくまで被後見人の権利や財産を守るための制度であるため、契約の効力が生じるのは、認知・判断能力の低下の診断がおり、任意後見監督人が選任された後、となります。
任意後見人契約を利用するにしても公正証書の作成や後見人の選定など、法律の専門家の手を借りたほうがスムーズに進む場合があるでしょう。
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この記事の監修者
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