この記事を要約すると
- 漫画界の巨星である鳥山明さんが残した遺産は、生前の活動内容から、莫大な金額になると予想されている
- 著作権とは、著作物を創作した者に与えられる、創作した著作物を無断で使用されたり、インターネットで利用されない権利。著作権には財産的な権利と人格的な権利がある。
- 絵画ではなく漫画であったとしても、作成された時点で著作権は発生し、著作者本人以外は本人の許諾がなければ、勝手に使用することはできない
漫画界の巨星である鳥山明さんが2024年3月1日、急性硬膜下血腫のため亡くなりました。年齢的にはまだまだご活躍が期待される68歳での急逝でした。
Dr.スランプやドラゴンボールといった人気漫画の原作者であり、ドラゴンクエストという大人気ロールプレイングゲームのキャラクターデザインも手がけていたことから、「とりやまあきら」という名前を知らない人はいないのではないでしょうか。
どのコンテンツも日本国内だけではなく、世界中でも認められていたことから、この急逝は世界の国々でも報道され、世界中の人々に衝撃を与える出来事になりました。
ドラゴンボールは漫画やアニメだけに収まらず、ゲームコンテンツや玩具、アニメ映画、実写映画化など、幅広く世の中に広がりました。
ドラゴンクエストも発売から約38年、テレビゲームから携帯端末ゲーム、携帯電話やスマホにも移植されるなど、多くのソフト、関連アイテムなども作られたことから、一度はプレイしたことがある方も多いことと思います。
このように大人気コンテンツでしたので、雑誌や単行本、関連する商品での売上は、計り知れない金額になっています。そこから考えると鳥山明さんの印税収入は、想像を絶するものになるでしょう。
ここで話題となるのが、鳥山明さんの遺産です。
鳥山明さんから相続されるものは、普通のサラリーマンの方の遺産とは次元の違うものになるのではと興味を持たれる方も多いのでは。
以前公開されていた納税者番付が今も続いていたら、鳥山明さんの収入は予測できるかもわかりません。
ですが現在はそのような制度がありませんので、鳥山明さん個人の所得については不明です。そのため、相続されるものについても推測の領域から出ることはないのです。
また、一般的なお金や不動産といった財産だけでなく、鳥山明さんのような芸術・文化関連の分野で活動されていた場合、その作品の著作財産権が残ります。
それにより生まれる財産も、莫大なものになるのではと考えられます。この記事では、鳥山明さんの印税を考察し、そこから考えられる相続の内容、著作権についてもあわせて解説します。
相続人は誰か、どのような遺産があるのか
まず、鳥山明さんの遺産については非公開であることから、正確な金額でないことはご承知おきください。
その前提で、解説をしていきます。まず、相続人についてです。
法定相続人については、これまでに公表されている家族構成から、奥様と3人のお子さんが該当するとみられます。
奥様は漫画家の「みかみなち」さん。お子さんは、長男の鳥山佐助さん、長女のきっかさん、それとお名前が公開されていない次女の3人となっています。
法定通りの相続であれば、奥様のみかみなちさんが遺産の半分を相続することになります。また、お子さんは残りの半分を3人で分配することになりますので、総額の1/6が1人当たりの相続額です。
遺産の全容
冒頭でも前提としてお伝えしているように、遺産の全容については公開されていないことからわかりません。そのため、これまでの売上などから簡単に試算してみます。
鳥山明さんの連載漫画については、Dr.スランプとドラゴンボールの2つがあります。後は短編連載や期間集中連載なので、ここでは計算から除外します。
Dr.スランプの場合、コミックスの累計発行部数は3000万部以上と云われています。
コミックス1冊当たりの印税は8~12パーセント程度ですので、計算上10パーセントと仮定します。
単行本1冊あたりの値段は初版販売当時の価格から考えると、現在の価格とは違うことから、平均して400円と仮定します。
すると印税は1冊当たり40円となることから、次の計算式になります。
3000万部×40円=12億円
アニメについては、第1作が1981年4月から1986年2月迄で全264話、第2作が1997年11月から1999年9月までで全75話放送されました。
1作当たりの原作使用料を10万円と仮定すると、下記の結果になります。
(264話+75話)×10万円=3390万円
Dr.スランプの漫画とアニメの合計で12億5000万円以上の印税があったのではと計算することができます。
次にドラゴンボールの場合、コミックスは累計発行部数2億6000万部以上となっています。
印税や単行本価格はDr.スランプと同じで計算を行うと、下記になります。
2億6000万部×40円=104億円
コミックスによる印税以外にも元々の連載時の原稿料もあることから、ドラゴンボールの印税だけでも105億は超えていると考えられます。
アニメについては、原作の単行本42巻分がドラゴンボールとドラゴンボールZとして制作されました。
この2つのシリーズだけで見ると、ドラゴンボールが153話、ドラゴンボールZが291話とスペシャルが2話となりますので、444話分制作されています。
つまり、444話×10万円=4440万円となります。
原作単行本42巻分とその原作から作成されたアニメだけで計算しても、105億は超える計算になります。
ドラゴンボールにはこの2つのシリーズ以外にも別のシリーズや劇場版、ゲーム作品なども多くあることから、105億では納まりきらない印税収入があったのではないかと考察することができます。
そして、鳥山明さんと言えば、ドラゴンクエストのキャラクターデザインの仕事もありました。鳥山明さんのイラストだからこそ、ドラゴンクエストの世界観が作られたのではないでしょうか。
このキャラクターデザインですが、亡くなるまでに販売されたナンバリングだけでも11本あり、そのリメイクや派生ストーリーなどのソフトも合わせるとドラゴンクエストの販売本数は8200万本以上と云われています。
デザインの対価がどのような契約の元支払われているかは、依頼するデザイナーによってばらつきがあるようですので、仮にソフトが1本7000円としてそのうち0.5%が収入として支払われていたと仮定してみます。
8200万本×7000円×0.5%=28億7千万
このことから、ドラクエのキャラクターデザインだけでも約29億円に近い収入があったのではないでしょうか。
Dr.スランプ・ドラゴンボール・ドラゴンクエストの3つのコンテンツだけでも、ここで計算した生涯収入は252億5千万円となります。
そして、生前に現金として受け取っていた収入以外にも大きな財産が残ります。それが著作財産権による印税収入です。
著作権とは
著作権とは、財産的な価値を持つ情報に対し、法律によって決められた権利、または保護される利益に係る権利である「知的財産権」の一種になります。
小説や作文などの文芸、歌詞や楽曲などの音楽、設計図や模型などの図形、建築物や舞踊、写真や映画、プログラムなどの著作物を、保護する権利をいいます。
著作権には、財産権と著作者人格権があります。
著作権(財産権)
著作財産権は、著作権を持つ人の財産的な利益を守る権利です。
財産権には次の権利があります。
- 複製権
- 上演権・演奏権
- 上映権
- 公衆送信権
- 公の伝達権
- 口述権
- 展示権
- 譲渡権
- 貸与権
- 頒布権
- 二次的著作物の創作権
- 二次的著作物の利用権
財産権にある〇〇権とは、その〇〇を他人が無断ですることを止めることができるというものです。使用料などの条件を付けて、他人が〇〇をすることを認めるという権利になることから許諾権に該当します。
著作権の財産権は、特許権と同じく、相続することや譲渡することができます。
ただし、著作者が生前に第三者へ譲渡した著作権は、著作権者が亡くなったとしても著作権者から権利が無くなっていることから、法定相続人は相続することはできません。
著作者人格権
著作者人格権とは、財産権のような著作物の財産的な一面を保護するものに対し、著作者の人格や思想を守る権利になります。
著作者人格権には次の3つがあります。
- 公表権(無断で公表されない権利)
- 氏名表示権(名前の表示を求める権利)
- 同一性保持権(無断で改変されない権利)
財産権とは違い、著作者自身に帰属する権利であることから、譲渡や相続の対象とはなりません。
この権利は、著作者が生きている限り効力を持つことから、著作者は保護され続けますが、著作者が亡くなったあとについても、原則この権利を侵害するような行為はできません。
著作権の保護期間は70年
著作権の保護期間は、著作者の死後70年が原則とされています。
無名の著作物は、公表後70年間、著作物の著作者が判明し、死後70年経過が明らかであればその時点までが保護期間となります。
また、映画の著作物や団体名義の著作物については、公開後70年間、それらが作られてから70年間公開されないままであれば、創作から70年間が保護期間となります。
2018年の著作権法改正前は50年間となっており、2018年の改正に伴い、1968年以降に死亡した著作者の保護期間は延長されることになりました。
Dr.スランプやドラゴンボールなどの「漫画」にも著作権はあるのか
ドラゴンボールやDr.スランプに限らず、「漫画」にも著作権はあります。
例えば、ここで記事を読まれているあなたが、頭の中で描いたものを鉛筆で書きおろしたとしても、そのものには著作権が発生するのです。
著作権法第2条第1項第1号に該当するものは著作物となることから、その著作物には著作権が発生します。漫画を書けば、その作品が生まれた瞬間に著作権は発生します。メディアに乗ることは関係ないのです。
漫画家の場合、雑誌に漫画を掲載することで、出版社から原稿料を受け取るということは、著作権を持つ者として、雑誌に漫画作品を掲載することを認めた対価をもらっているということになります。
つまり、漫画が人気が出たから原稿料がもらえるのではなく、無名の新人漫画家であったとしても、その作品には、著作権が発生していることから、掲載するとなれば対価が発生するわけです。
鳥山明さんの場合、Dr.スランプやドラゴンボールの他にも、短期集中連載の漫画や短編が週刊少年ジャンプやVジャンプといった集英社の雑誌で掲載されることがありました。
これらのこの著作財産権は相続対象になります。
ドラゴンボールの著作権による印税を含む相続財産については、基礎控除額をゆうに超すであろうことから、相続税が発生することでしょう。
相続税評価額は「年平均印税収入額×0.5×評価倍率」で計算されます。そのため、著作権の相続税だけでも数百億円規模になる可能性があります。
Dr.スランプやドラゴンボールなど、鳥山明さんにかかる著作権については、2024年3月1日から2094年3月1日までの70年間保護されることとなります。
まとめ
鳥山明さんが急逝されたことは、日本国内だけに留まらず、世界中の漫画・アニメファンを中心に衝撃を与えた出来事でした。
1月の能登半島地震の際には、被災者を励ますメッセージを書かれており、鳥山明さんご本人も、まさかこの歳で命を落とすということを予期することは出来なかったことでしょう。
そのため、生前に遺産について考えられていたかということは、鳥山明さんやそのご家族の方でなければ知る由もありません。
鳥山明さんが生涯稼がれた金額は、サラリーマンでは想像のつかないものだったことでしょう。そうなると遺産も莫大なものになっていると考えられます。
著作権もこれから70年間あることから、法定相続人が著作権を相続するのではなく、鳥山明の遺産を管理・運用する財団が作られる可能性も考えられます。
鳥山明さんから産み出されたDr.スランプやドラゴンボールといった作品達は、一緒に旅立つことはなく、これからも継承されて世界中の方を楽しませてくれることでしょう。
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この記事の監修者
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