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離婚後の単独親権制度を見直し【共同親権導入】へ!

離婚後の単独親権制度を見直し共同親権導入

この記事を要約すると

  • 日本政府はこれまでの離婚後の単独親権制度を見直し、両親がともに責任を持って子育てに取り組むことを目的とした「共同親権制度」を導入しようとしている
  • 共同親権を認めると、離婚時のトラブル緩和や離婚後の面会交流、養育費の支払いがスムーズになるメリットが考えられる一方、離婚後の生活に関わるデメリットも考えられる
  • 離婚後に親権が無くなっても親子関係は切れないことから、別居している親が亡くなった場合でも子どもは遺産を相続する権利を有する

2024年1月30日、法務省の法制審議会家族法制部会は、離婚した夫婦が未成年の子どもの親権を共同で行使できるようにすることを柱とした、民法改正の要綱案を決定しました。

これにより、法務省は3月に、改正法案を2024年通常国会へ提出することを予定しています。 

この法改正は、共同親権とすることで、離婚後の父母双方が子どもの養育に責任を持つことを促す狙いがあります。

その一方、これまでの制度では親権を持たなかった親が親権を持つことで、子どもへの不当な介入や虐待が発生、継続するおそれも考えられています。 

このことから、共同親権についてのメリット・デメリットをしっかり理解しておくことが、共同親権を認める上で重要になってくるといえるのです。 

この記事では、共同親権の概要に触れつつ、共同親権のメリット・デメリット、相続についても解説します。

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共同親権の導入経緯

日本では、2011年の民法改正時から共同親権の可能性についての検討が開始されました。それから約12年間検討されてきたことが、2024年の法制化として動き始めたのです。

共同親権制度を導入した海外の国では、共同親権がもとでトラブルになっているケースも発生していることから、日本でも導入後にいろいろな問題が起こる可能性はあります。

現状の単独親権の制度とは違い、共同親権になると、別れた配偶者と接触しなくてはいけなくなるケースが増えてきそうです。

離婚に至った原因によっては、接触したくない元配偶者と接触しなくてはいけなくなることから、離婚の意味をなさなくなることも考えられます。

この問題点に対し、一律に共同親権を導入するのではなく、共同親権とするか単独親権とするかを離婚時に選択できる制度で検討されています。

協議で合意しない場合、離婚に至った経緯や原因を踏まえ、家庭裁判所がどちらの親権制度を適用するかを裁定することとなります。また、共同親権を認めた場合でも、単独親権に切り替えることができる条件なども盛り込んだ改正案として作成されています。

 

共同親権とはどんな制度? 

共同親権は、父親と母親の両親が、子どもに対する親権を持つ制度です。

親権とは、未成年の子の父母が持つ、その子に対しての身分上、財産上の権利や義務を指します。

日本での親権は、民法に定められており、下記の項目があります。

  • 監護と教育の権利義務(民法820条)
  • 居所指定権(民法821条)
  • 懲戒権(民法822条)
  • 職業許可権(民法823条)
  • 財産の管理権と代理権(民法824条)

これらの権利・義務がどちらか一方の親に生じるのではなく、父母それぞれに生じるのが共同親権です。

日本の親権制度における共同親権

日本の親権制度では、離婚後は単独親権が基本となっています。

父親か母親のどちらか一方が、子どもを育てる権利を持ちます。親権を得た親は、上記に記した権利と義務が発生し、子育ての責任を一人で負います。

婚姻関係にある父母には共同親権が認められています。婚姻関係にあって生まれた夫婦の子どもには、夫婦揃って親権が認められるのです。

離婚すると、共同親権でなくなるため、どちらの親が親権を持つかを取り決めしてからでないと、離婚は認められません。そのため、子どもを手放したくない両親間では、親権を巡っての調停や裁判に至ることがあり、離婚が進まないというトラブルが多く発生しているのです。

離婚成立後、親権を持たない親において、子どもに対する思いや責任感が薄れるという場合があります。養育費の不払いにつながっているため、単独親権を原則とする現状での問題点といえます。

再婚で共同親権が認められるケース

単独親権が原則のなか、親権を持つ親が再婚した場合、子どもの共同親権が認められるケースが2つあります。

親権を持つ親と再婚した相手が子どもと養子縁組を行った場合

民法818条2項において、『子が養子であるときは、養親の親権に服する』とされています。

つまり、養子縁組が成立すると、養親は親権を獲得できるのです。

養親が親権を獲得することで、親権を持っている実親と、養親となった再婚相手の二人での共同親権が認められるのです。

同じ配偶者と再婚した場合

この場合、戸籍に関しての手続きは発生するものの、実子であることから養子縁組の手続きは不要で、共同親権が認められます。

後者は限定的なものであることから、事実上親権を失った実親は、親権を失ったままとなります。

 

離婚後の共同親権を認めるメリット・デメリット

単独親権が原則であった日本ですが、離婚後の共同親権を認める動きが進んでいます。共同親権となった場合、離婚後の子育てがこれまでとは違ったものになってくるでしょう。

しかし、夫婦が離婚に至る経緯には、いろいろな事情があるものです。相手が離婚後の共同親権を認めてほしいと申し出た場合でも、素直に認められるとは限りません。

ここでは、共同親権を認める場合のメリット・デメリットを確認しておきましょう。

共同親権のメリット

共同親権を認めることで、離婚後に親が別々で暮らすようになったとしても、子どもの養育責任が両方の親に発生します。

別居親も子育てに協力することができるほか、単独親権時にトラブルになりやすい面会や養育費不払いなどの改善も期待できる、というメリットがあります。 

離婚時の親権争いの激化を防げる

令和2年の統計では、離婚件数は年間約19万件でした。

そのうち、約1万8千件が親権争いの調停や審判に至っています。

 現状の制度では、離婚時に親権を定めなければ離婚届が受理されません。共同親権が選択できるようになれば、このような親権争いを激化せずに離婚を成立させることが可能になります。

離婚後も両親で協力して子育てできる

共同親権が認められると、一方の親が大きな責任や負担を一人で負うことなく、協力して子育てができるようになります。

離婚の原因が夫婦間の不仲やトラブルではなく、夫婦間の関係が悪化していないような場合であれば、共同親権は最大のメリットとなります。 

面会交流・養育費の支払いがスムーズに行われやすい

離婚後、親権者と子どもは一緒に暮らしますが、別居している親との面会交流も必要となることで、さまざまなメリットがあります。

共同親権となると、面会交流も親権と考えうることから、面会交流を拒むことができなくなるため、単独親権よりも面会交流を行いやすくなります。 

面会交流を拒否されているケースでは、子どもに会えないことでお金だけ払わされるのは不当というように感じ、養育費が支払われないというケースも多くあります。

共同親権で面会交流ができるようになれば、養育費がスムーズに支払われやすくなると考えられています。

共同親権のデメリット

離婚において、配偶者との関係がそれほど壊れていない場合、共同親権を認めて享受できるメリットはありますが、離婚原因によっては、共同親権のデメリットのほうが大きくなるケースがあります。

子どもへの負担が大きい

共同親権には、単独親権よりも子どもへの負担が大きくなるデメリットがあります。単独親権であれば、月に1度などの面会交流は限定的になります。

 共同親権になると、父と母と会うのも別々に会うことになり、子どもの遊ぶ時間や勉強などの時間を奪う形になってしまいます。また、離婚して両親が家に揃っていないことから、精神的な負担が大きくなり、不安定になってしまう可能性もあります。

遠方への引っ越しが難しい

共同親権を認めた場合、遠方へ引っ越しすることが難しくなる可能性があります。なぜなら、共同親権を認めたことで、別居親にも親権が発生するからです。

親権があることから、同居親は基本的に面会交流を拒否できなくなります

このことから、引っ越しする場合は面会交流に支障をきたさない範囲でなければ、引っ越しが難しくなる可能性が高いといえます。

DVやモラハラから逃れられない

配偶者からのDVやモラハラがもとで離婚に至った場合、面会交流を拒否する正当な理由があるという観点から、配偶者から逃れることが可能です。

共同親権を認めた場合、相手は親権者として子どもに接触することができるようになり、拒否することができなくなります。離婚が成立したとしても、親子ともに元配偶者からのDVやモラハラから逃げることができなくなる恐れがあります。

 

離婚をすると、子どもは親権者でない親の財産を相続できないのでしょうか?

親が離婚をし、どちらか一方の親と生活を共にするようになったとしても、子どもは両親の財産を相続することができます

親権制度と相続制度が、違う考え方で作られたものだからです。 

現状の親権制度では、親が離婚をした場合、いずれか一方の親のもとで子どもは育てられます。ただ、親権が一方の親にあったとしても、親子関係は切れるものではありません。

離婚後も面会交流が可能ですので、離れて暮らしていてもコミュニケーションは取れます。ですが面会交流を拒否している場合では、もう一方の親とは疎遠になってしまい、生涯会わないままになるケースもあります。

どちらの場合であっても、現状の相続制度では両親の財産は相続できるようになっているのです。

親権制度は、子どもの利益を守ることを目的として定められています。両親が離婚をすれば父親か母親の単独親権となることから、親権を持たない親とは別に暮らすようになってしまいます。

一方、相続制度は、『亡くなった方の財産は、なるべく親族に分配されるべきである』という考えをもとに作られた制度です。親族ということが重視されるため、別居していたとしても、実の親の財産は相続する権利があるのです。

例えば、夫婦に子どもが二人いて、離婚し、母親が親権を持った場合。姻族でなくなった母親は父親の財産を相続することはできません。ですが、親族である子ども二人は、父親の財産を相続することができます。

また、父親が再婚して再婚相手との間に子どもが二人いる場合で、子の法定相続分である財産の半分を、再婚相手の子二人と、四等分することになります。

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まとめ

こどもの親権を共同で行使できるようにする改正法案の要綱がまとまったことで、まもなく改正法案が国会に提出されます。法改正後は、夫婦が離婚しても親権を両親で持つことができるようになります。

そのため、子どものいる夫婦は、離婚したとしても縁が切れなくなるケースが今後増えていくでしょう。

今回の法改正では、共同親権か単独親権のどちらにするかを双方で協議し決めることができることで進んでおり、決められない場合は家庭裁判所が裁定する方針とのことです。

そのため、離婚の際には、共同親権制度のメリット・デメリットをよく考える必要があります。

離婚に至る原因は個別で違いますので、共同親権制度のメリットがプラスに作用することもあれば、デメリットがマイナスに作用することも考えられます。

それらを考慮して、どちらの親権制度を取るかを検討・決定しなくてはいけません。

制度が変わってすぐには前例がないことから、もし対応で悩んだ場合は、法律の専門家である弁護士や司法書士に相談することをおすすめします。

 

この記事の監修者

あいりん司法書士事務所    梅澤 徹

資格:司法書士・行政書士・宅建取引士

横浜市内の相続専門司法書士事務所で修行したのち独立。不動産が絡む難しい相続手続きが得意。宅地建物取引士資格も保有し、不動産コンサルティングには定評あり。

現在はあいりん司法書士事務所を経営。相続専門5期目として相続業務を幅広く対応。

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