この記事を要約すると
- 証券保管振替機構「ほふり」の役割と重要性: 相続手続きにおいて、故人が保有していた可能性のある株式や投資信託などの有価証券を一括管理している「ほふり」は、証券会社や信託銀行の口座が不明な場合に重要です。「ほふり」を通じて、故人が持っていた上場株式や投資信託の有無を確認し、相続財産の確定を容易にします。
- 開示請求の手続きと必要書類: 「ほふり」への開示請求は、法定相続人やその代理人、遺言執行者に限られ、必要書類には開示請求書、身分証明書コピー、戸籍謄本、住所確認書類などが含まれます。開示請求には手数料がかかり、結果の受取りには2〜3週間要します。
- 相続手続きの流れ: 相続開始後、遺言書の確認、相続財産と相続人の調査、準確定申告、遺産分割協議、株式の名義変更、そして相続税の申告と納税を行います。特に株式の場合、「ほふり」を通じて情報を集めた後、証券会社に直接問い合わせることが必要です。
相続手続きにおいて、故人が保有していた株式や投資信託の有無を調査する際に役立つのが証券保管振替機構「ほふり」です。
この記事では、「ほふり」による調査の重要性、開示請求の手続きや必要書類、そして相続手続きの流れについて解説します。
相続財産の確定や適切な手続きのために、「ほふり」調査の利用方法や注意点を理解しましょう。
証券保管振替機構と相続
相続手続きにおいて、故人が持っていた可能性のある株式や投資信託などの有価証券の存在を確認することは重要です。特に、どの証券会社に口座を持っていたか不明な場合、この調査は不可欠です。その際、キーロールを果たすのが「証券保管振替機構(通称:「ほふり」)」です。
「ほふり」とは?
「ほふり」とは、株券などの有価証券の保管、受け渡しを簡素化することを目的として制定された機関です。
株券の電子化により、証券会社や信託銀行の口座で株主の権利がデジタル形式で管理されるようになりました。従来の紙の株券と異なり、オンライン化が進んだ現在では、所有している株式の情報が書面として残らないことも多く、相続人が故人の資産を把握するのが難しい場合があります。
相続における「ほふり」調査の重要性
故人が亡くなった後、相続人は「ほふり」に問い合わせることで、故人がどの証券会社や信託銀行に口座を持っていたかの情報を得られます。
「ほふり」調査のメリット
「ほふり」への調査により、故人の相続財産が不明な場合でも、証券会社、信託銀行等における口座の保有の有無を一括して調査できる点が大きなメリットです。
これにより、散在している可能性のある証券会社、信託銀行等の情報を効率的に集約し、相続手続きをスムーズに進められます。
注意すべきポイント
「ほふり」調査を行う際には、必要書類や調査請求書の記載方法に注意が必要です。また、この調査には手数料がかかることも念頭に置いておく必要があります。
相続手続きにおける「ほふり」の調査は、故人が保有していた証券会社、信託銀行等における口座の有無を確認する上で非常に重要です。
この調査により、相続財産の確定が容易になり、適切な相続手続きを進めるための大きな一歩となります。ただし、調査の実施には書類の準備や手数料の支払いなど、いくつかの注意点がありますので、これらを理解し、準備を進めることが重要です。
登録済加入者情報の開示請求の手続き
相続を開始した際、故人が保有していた証券会社、信託銀行等における口座の有無を確認する重要な手続きが「ほふり」の登録済加入者情報開示請求です。今回はこの手続きについて、具体的にどのように行うかを解説します。
開示請求ができる人
開示請求を行えるのは、「法定相続人」、「法定相続人の法定代理人または任意代理人」、そして「遺言執行者」の3者に限られます。
この点は特に注意が必要です。
必要書類
開示請求には以下のような複数の書類が必要です。
- 開示請求書
- 請求者の身分証明書コピーまたは印鑑証明書
- 被相続人の死亡記載の戸籍謄本
- 被相続人の相続人であることを証する戸籍謄本
- 被相続人の住所確認書類(住民票や戸籍の附票など)
- 遺言書(遺言執行者が開示請求する場合)
開示費用
開示請求には費用が伴います。現在、相続人等の請求の場合、1件につき1,980円が必要です。
この開示費用は、開示結果の受取時に代引きの方法で郵便局員に支払うことになります。
開示結果の受取り
開示結果は簡易書留で請求者のもとに届きます。ただし、必要書類に不備がない場合であっても、開示請求の郵送から開示結果の受取りまでには約2〜3週間かかることを覚えておきましょう。
「ほふり」の開示請求により、株式に係る口座の開設先を調査できます。ただし、保有銘柄や保有株数、取引履歴、相続手続き等に関しては、「ほふり」の調査結果を基に、各証券会社等に直接問い合わせる必要があります。
これにより、相続手続きをよりスムーズに進められるでしょう。
開示結果について
証券保管振替機構(「ほふり」)の開示結果についての理解を深めるために、以下の点を説明します。
まず、「ほふり」の開示請求結果によって、被相続人が取引していた証券会社の名前が分かります。
しかし、この情報だけでは不十分で、さらなる調査が必要です。具体的には、開示結果に記載されている証券会社名を基に、被相続人が取引していた支店を特定する作業が必要です。
証券会社が他の支店の取引情報を共有していないため、被相続人の取引していた具体的な支店に直接問い合わせる必要があるからです。
(※顧客の同意がない限り、顧客の非公開情報は共有禁止とされています。)
次に、開示結果を受け取った後の手続きについてです。被相続人の死亡日現在の残高証明書を証券会社から請求し、それをもとに相続手続きを進めます。
株式を相続するときの流れ
続いて株式を相続するときの流れについて説明します。
遺言書の有無、相続財産の調査、相続人の調査を行う
相続が始まると、まず遺言書の有無を確認します。遺言書がある場合、その内容に従って手続きを進める必要があります。
次に、相続財産を把握するため、被相続人の財産一覧を作成します。株式を含む投資資産は特に注意が必要です。
これらの情報は、被相続人が利用していた証券会社から取得することが多く、証券口座の取引履歴や通知書で確認できます。また、相続人の調査も重要です。
さらに、非上場株式の場合は、被相続人が保有していた株式数やその会社の状況を把握することが不可欠です。非上場株式の情報は個人の記録や会社からの情報をもとに確認する必要があり、時には株主名簿の確認が必要になることもあります。
準確定申告を行う
準確定申告は、被相続人の最後の収入に対する税金を申告する手続きです。
特に、株式からの配当金や売却益は、被相続人の生前の収入として計上されるため、正確な申告が求められます。この申告は相続人が行うことになり、被相続人の死亡した年の1月1日から死亡日までの収入を相続開始を知った日の翌日から4か月以内に申告することになります。
準確定申告を怠ると、税務上の問題が生じる可能性があるため、注意が必要です。
遺産分割協議を行う
相続人が特定された後は、遺産分割協議に進みます。この協議は相続財産、特に株式を含む財産の分配を決定するためのものです。
すべての相続人が合意に達するまで協議を続け、合意が成立したら遺産分割協議書を作成します。この協議書は今後の手続きにおいて重要な書類となるため、内容を正確に記載し、全員が署名・捺印することが不可欠です。
株式の名義を変更する
遺産分割協議が終わり、株式の分配が決まったら、名義変更の手続きを行います。
上場株式の場合、証券会社を通じて行われ、相続人の証券口座へ株式を移管します。非上場株式の場合は、株式譲渡の手続きや株主名簿の変更が必要になります。これらの手続きは複雑であり、場合によっては専門家のアドバイスを受けることが推奨されます。
相続手続き、相続税の申告・納税
最終的には、相続財産全体について、相続税を計算して申告・納税します。相続税の申告は相続開始を知った日の翌日から10か月以内に行う必要があります。
株式の評価は市場価格や会社の業績によって変動するため、評価額の算出には注意が必要です。
また、相続税の計算は複雑であり、適切な申告を行うためには専門家のアドバイスを受けることが望ましいです。
まとめ
証券保管振替機構(「ほふり」)の調査は、相続手続きにおいて重要です。
「ほふり」は、上場株式や投資信託などの有価証券を一括管理する機関で、故人が持っていた可能性のある株式の有無を確認するために利用されます。
この調査には遺族が「ほふり」に問い合わせ、必要書類を提出し、手数料を支払うことが求められます。
「ほふり」からの調査結果により、故人の証券口座情報が明らかになりますが、さらに具体的な証券会社や支店に直接問い合わせが必要です。
「ほふり」は、相続財産の確定に役立ち、適切な相続手続きを進めるための重要な一歩となります。
この記事の監修者
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