この記事を要約すると
- 相続した不動産は、売却したほうが増税リスクの軽減や維持管理の負担回避など多くのメリットが得られる
- 不動産売却により、現金化したほうが公平に遺産を分配しやすくなる
- 評価額を調べることは、不動産の資産価値だけでなく相続税額の把握にもつながる
土地や実家など不動産を相続した場合、相続人同士で分配方法について揉めたり、利用せずに放置してしまう等、問題が発生するケースは少なくありません。
その場合、相続した不動産を「売却する」のも有効な選択肢の一つです。
この記事では、相続した土地や実家などの不動産を売却するメリットや一連の流れ、相続した不動産の売却にかかる費用や査定方法について詳しく説明していきます。
相続後の不動産売却についてお悩みの方は、ぜひご参考にしてみてください。
相続した不動産を売却するメリット
相続した不動産を売却することにはどのようなメリットがあるのか説明します。
遺産を分割しやすくなる
土地などの不動産は、相続人同士で分割するのが難しい財産です。土地面積が広ければ分筆もできますが、その分土地面積が狭くなり資産価値が落ちる可能性があります。
その点、相続した不動産を売却して現金化すれば、分配するのが簡単になります。
節税しながら売却できる
相続した不動産を売却すれば、今後の増税リスクの対策にもつながります。
例えば、相続した戸建ての不動産を空き家のまま放置している場合、自治体から”放置していると周囲へ保安上・衛生上の問題がある”「特定空き家」に指定される可能性があります。
自治体からの改善指導や勧告に対応しなければ、固定資産税の軽減措置(土地の固定資産税を1/3〜1/6に減税される措置)から外される恐れもあります。
もしも、相続した不動産を活用しないのであれば、節税対策のためにも売却するのが無難です。
管理のことで近所とトラブルにならない
もしも、相続した戸建てが経年劣化している場合、台風や地震などの自然災害時に屋根材や外壁材が剥がれて飛んでいってしまったり欠落する危険があります。
近隣の住民に迷惑になりかねないのはもちろんですが、実際に歩行者や隣家に深刻な被害を出してしまった場合には、損害賠償を請求される可能性もあるでしょう。
だからといって、建物を取り壊せば解決するわけでもありません。たとえ更地にしても、定期的に草刈りなど管理をしなければ害虫や害獣による被害が出てしまったり、不法投棄の現場となるおそれがあります。
さらに固定資産税の軽減措置の対象から外れてしまい、税額が増えてしまうのも問題です。
相続した不動産を売却すれば、そのようなリスクを避けられます。
相続した不動産を売却する流れ
一般的に、土地や不動産を相続し、売却するまでの流れは以下のとおりです。
- 遺言書の有無を確認する
- 有効な遺言書がない場合は遺産分割協議をする
- 相続登記(名義変更)をする
- 相続した不動産を売却する
ちなみに、相続した土地の境界が曖昧である場合、売却前に測量をして正確な面積と境界を確定しなければなりません。
業者に測量を依頼するため、測量費の支払いが発生します。
①遺言書の有無を確認する
土地や不動産を相続するには、まず遺言書の有無を確認します。故人の遺言内容に沿って遺産が引き継がれるのが基本だからです。
ただし、遺言書があったとしても、日付や印鑑がないもの等、無効になってしまうものもあります。
②有効な遺言書がない場合は遺産分割協議をする
①の段階で法的に有効な遺言書がなく、遺産相続の権利がある人(相続人)が複数いる場合は、「遺産分割協議」により分け方や引き継ぐ割合を決めます。
遺産分割協議の内容は、遺産分割協議書に記載し、相続人全員が署名・押印します。
もしも土地を売却し、現金に換えてから分割する「換価分割」をする場合、相続人全員の意向が合致していなければなりません。
相続人の誰か一人でも反対した場合、換価分割はできなくなります。なお相続人が一人の場合は、遺産分割協議は不要です。
③相続登記(名義変更)をする
「遺産分割協議」により分け方や引き継ぐ割合が決まってから相続登記(名義変更)を行います。
相続登記は、相続した土地や建物などの所有者名を相続人に変更する手続きです。
ちなみに、換価分割をするために売却する場合も、相続登記を行って土地の所有権を相続人へ変更しておかなければなりません。
④相続した不動産を売却する
相続登記後は、いよいよ不動産会社に依頼して土地や建物を売却できます。
不動産売却の流れは、以下のとおりです。
- 不動産の調査・価格の査定
- 不動産会社と媒介契約を締結し販売開始
- 購入希望者との条件交渉
- 売買契約の締結
- 決済・引き渡し
購入希望者と売買契約を締結し、買主から代金が支払われたら、土地を引き渡して売却は完了です。換価分割の場合、得られた売却代金は遺産分割協議で決めた割合で分割します。
相続した不動産の売却にかかる費用
譲渡所得にかかる税金
相続した不動産を売却した際に、取得した金額に比べて高く売れたことにより、利益(譲渡益=譲渡所得)が発生したときには【譲渡所得税】がかかります。
譲渡所得は次の計算式によって算出されます。
“課税譲渡所得金額=譲渡価額(売却した金額)−(土地の取得費+土地の譲渡費用)“
『土地の取得費』は、土地を購入した際に支払う購入代金、仲介手数料、登録免許税などです。
取得費は、「譲渡価額の5%以下」または「不明」の際には、譲渡価額の5%相当額を取得費とします。
相続した土地を売却する場合の取得費については、「被相続人(故人)が取得した際の取得費」をそのまま引き継いで算出します。
『土地の譲渡費用』とは、土地を売却する際に支払う仲介手数料などです。
【譲渡所得税】は、その土地を所有していた期間によって『長期譲渡所得』と『短期譲渡所得』に分類されます。
相続した土地の場合は、「被相続人(故人)がその土地を取得した日」から数えた所有期間です。
なぜ、譲渡所得税を『長期譲渡所得』と『短期譲渡所得』に分けるかというと、所有期間によって税率が異なるからです。
2013年(平成25年)から2037年(令和19年)までの期間は、復興特別所得税として各年分の基準所得税額の2.1%を所得税と併せて申告・納付しなければなりません。
『長期譲渡所得金額』とは
所有期間が、売却した年の1月1日時点で5年を超えている不動産のことです。
税率は所得税15%・住民税5%となります。
『短期譲渡所得金額』とは
所有期間が、売却した年の1月1日時点で5年以下の不動産のことです。
税率は、所得税30%・住民税9%となります。
その他に相続した不動産の売却にかかる費用
譲渡所得から控除できる譲渡費用となるもの
- 売買契約書の印紙税
- 仲介手数料
- 貸家の賃借人に対する立退き料
- 建物の取り壊し費用
譲渡費用とならないもの
固定資産税や修繕費など土地の維持や管理に掛かった費用や弁護士報酬など譲渡代金の取り立てに掛かった費用などです。
相続した土地や家を査定する3つの方法
相続した土地や家を査定するには、以下の3つの方法があります。
- 不動産査定を依頼する
- 不動産鑑定を依頼する
- 自分で評価額を調べる
それぞれについて説明します。
不動産査定を依頼する
「不動産査定」とは、相続する不動産の市場価値を不動産会社に調べてもらうことをいいます。
不動産査定には、大きく二つに分けて「簡易査定(机上査定)」と「訪問査定」の方法があり、精度が高く現実的な査定結果を得られるのは、実際に訪問して家や土地を調べてもらう訪問査定がおすすめです。
基本的に、不動産査定は無料で受けられるものですが、法的効力がないことに注意が必要です。
もしも相続人同士でトラブルに発展してしまった場合、調停や裁判などの場に査定書を根拠として用いることはできません。
そのため、相続人が自分1人という場合や、売却することが確定している場合に利用するのがよいでしょう。
不動産鑑定を依頼する
「不動産鑑定」とは、不動産の適正な価値を専門家が算出するものです。
不動産査定と似ていますが、実際には大きな違いが明確に存在します。
不動産鑑定の場合、「国家資格者である不動産鑑定士のみが行えること」「不動産鑑定士によって作成される不動産鑑定書に法的効力があること」「有料であること」の3つの特徴があります。
相続人が複数いるなど、不動産を公平に分割したい場合には有効だといえます。
不動産鑑定に関する費用の相場は、およそ数十万円とされていますが、簡易鑑定にすることで費用を抑えることも可能です。
もしも、不動産査定と不動産鑑定のどちらを受ければよいか迷われる場合は、無料相談が可能な不動産会社へ相談してみると良いでしょう。
自分で評価額を調べる
「評価額」とは、不動産の価値を表す価格のことです。
相続する不動産をの「相続税評価額」は自分で調べることも可能です。
評価額を調べることは、不動産の資産価値だけでなく相続税の税額も把握することができるため、不動産査定や不動産鑑定を受ける方も、相続税評価額を調べておくことをおすすめします。
もしも、自分で計算するのが不安な方は不動産会社や税理士などの専門家に相談するのも一つの手です。
まとめ
不動産を相続した場合、何もせず放置するよりも売却したほうが、増税リスクの軽減や維持管理の負担回避など多くのメリットがあります。
また、相続人が複数人いる場合、相続した不動産を売却して現金化したほうが公平に分配しやすくなる点でも、得られるメリットは大きいです。
相続した土地や家の価値を知る方法については、無料でできる不動産査定や専門家に依頼する不動産鑑定があります。
他にも不動産の評価額については、自分で調べることもでき、不動産の資産価値だけでなく相続税の税額も把握することが可能です。不動産査定や不動産鑑定を受ける方も、相続税評価額については事前に調べておくことをおすすめします。
もしも、自分で計算するのが不安な方は不動産会社や税理士などの専門家に相談するのも有効な手段です。
この記事の監修者
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