【2024年最新】認知症基本法とは?成年後見制度との違いを司法書士が解説!

認知症基本法とは?

この記事を要約すると

  • 認知症基本法とは:認知症の人の尊厳や社会参加を守るために、国や地方公共団体が守るべき基本理念や方針を定めた法律です。
  • 認知症基本法の内容:認知症施策の推進に関する基本計画を策定し、予防、診断、治療、介護、バリアフリー化、社会参加などの具体的な施策を進めることを求めています。
  • 認知症基本法の影響:認知症基本法は2023年6月16日に公布され、1年以内に施行されます。国民は認知症に関する正しい理解を深め、共生社会の実現に努力する責務があります。

認知症の予防や診断・治療、介護、社会参加等の認知症施策を総合的かつ計画的に推進するために2023年に成立した「認知症基本法」

この法律は認知症の人の尊厳の保持や意思の尊重、社会的理解の促進を目的としています。

この記事では本法律の目的と具体的な内容、そして認知症の人や国・自治体にどのような影響があるのかを解説します。

認知症基本法の意味するところと、認知症施策推進の指針が定められた意義についても考えていきます

 

認知症基本法とは?どうすべきか?

認知症は誰でもなる可能性があり、国内では65歳以上の5人に1人が認知症になると推計されています。

この現実に対処するため、認知症基本法が制定されました。この法律は、認知症患者が希望を持って生活できるように、適切な医療サービスや家族への支援を提供することを目的としています。

特に重要なのは、社会全体が正しい認知症の知識を持つことで、これにより早期発見と適切な対応が可能になることです。

認知症の主なタイプはアルツハイマー型が多く、他にも脳梗塞などさまざま要因も影響を与えます。また、若年性認知症もあり、65歳未満で発症する可能性もあります。

早期発見は非常に重要で、周囲の人々が認知症の兆候に気づくことが求められています例えば、お金を数えることができなくなったり、外出を避けるようになったりすることがあります。

専門医は、認知症の症状が進行しているかどうかを判断するために、日頃から違和感の頻度、程度、範囲を見極めることが重要だと指摘しています。

「おかしいな」と感じたら早めに専門医を受診することで、早期発見、また適切な対応により症状の進行を遅らせることで、患者と家族のQOL(生活の質)の向上が期待できます。

また、認知症患者は具体的な出来事の記憶が失われても、感情の記憶は残りやすいとされています。そのため、患者との接し方を改めて考え直し、尊厳を守りながらサポートすることが重要であることを示しています。

さらに、家族やコミュニティのメンタルケアと社会的支援も重要で、教育と基本知識の提供が必要です。

地域包括支援センターなどは、認知症の疑いがある場合にどの病院に行くべきかなどのアドバイスを提供しており、認知症基本法はこれらの支援体制を強化し、患者と家族にとって価値のあるリソースを提供することを目指しています。

認知症はもはや特別な話題ではなく、法律、社会、個人のレベルでの対処と理解が必要です。

 

認知症基本法の意味、基本法とは?

2023年に公布された認知症基本法について、解説します。

認知症基本法とは?

認知症基本法は、2022年6月に参議院で可決成立した法律です。

この法律は、認知症の方が尊厳を保持しながら社会で共生できるよう、認知症施策を総合的かつ計画的に推進することを目的としています。

基本法とは、国の制度や政策の基本理念や方針を定める法律のことをいいます。直ちに国民の権利や義務が生じるものではなく、理念や方針を示すものです。

認知症基本法では、認知症の方の意思を尊重し、必要な支援を行うことなどの基本理念が定められています。今後、この基本理念に沿って、認知症施策を進めることが求められています。

認知症基本法の意味

認知症基本法が意味することは大きく2つあります。

基本人権の尊重

1つ目は、認知症の方が基本的人権を享有する個人としてより尊重すべしということです。

認知症の方は、症状の進行に伴い判断能力が低下することがあります。そのため、認知症の方の意思が尊重されず、適切な医療や介護が受けられない場合があるのが現状です。

認知症基本法では、認知症の方の意思を尊重し、個人の尊厳を保持することが明記されました。認知症であっても個人として尊重されるべきだという理念が示された意義は大きいと言えます。

国と自治体の指針が明確

2つ目は、認知症施策を推進する国と自治体の指針が明確になったことです。

認知症基本法では、認知症施策を進めるにあたっての基本理念と方針が定められています。

国や自治体は、この基本理念と方針に沿って認知症施策を策定し実行する義務を負うことになります。

認知症対策が法定の義務となったことで、認知症施策がますます重要視されることが期待できます。

 

本人の法律行為を支援する成年後見制度

成年後見制度は、認知症や精神障害を持つ人が法律上の権利行使を安心して行えるよう支援する制度です。

この制度は、個人の権利を守りながら、日常生活を安全かつ円滑に送れるように設計されています。ここでは成年後見人制度の基本と認知症基本法との関係について解説します。

成年後見制度の基本

成年後見制度は、本人の意思を尊重しながら、本人を代理、保佐、補助する役割を果たします。

この制度は、認知症や精神障害があるために、自分の意思を正しく表現することが難しい人を守るために存在します。

後見人の役割

後見人は、本人の法律行為を代理します。後見人は、本人の意向や利益を考慮しながら、財産管理や契約の締結、さらには医療の判断をサポートする役割を担います。

利益調整

後見人は、本人の利益を最優先し、他の関係者との利益の調整を行います。これにより、本人の生活の質を向上させることができます。

法律の枠組み

成年後見制度は、法律の枠組みの中で運用されます。後見人は、法律の知識を持ち、法律の枠組み内で本人を支援する責任を持ちます。

認知症基本法との関係

認知症基本法は、認知症を持つ人が社会的に安心して生活できるようにするための法律です。

成年後見制度と認知症基本法は、認知症を持つ人々の権利保護と社会参加を促進する目的で連携しています。

社会の理解と支援

認知症基本法と成年後見制度は、認知症を持つ人々に対する社会の理解と支援を促進します。この法律と制度は、認知症を持つ人々が安心して生活できる社会を作るために重要です。

法律の知識と専門家の支援

認知症基本法と成年後見制度は、法律の知識と専門家の支援を通じて、認知症を持つ人々の権利を保護します。これらは、認知症を持つ人々の法律行為を安心して行えるようにする役割を果たします。

 

成年後見制度を利用する際の三つのメリット

成年後見制度には、利用者にとって3つの大きなメリットがあると言われています。

財産管理

一つ目のメリットは、成年後見人に財産管理を任せられることです。

認知症などで判断能力が低下すると、自分の財産の管理が困難になります。そんな時、成年後見人が通帳や証券類を預かって資産の管理をしてくれます。これにより、本人や家族による資産の不正流用を防ぐことができます。

また、成年後見人は家庭裁判所に対して本人の資産状況を定期的に報告する義務があります。裁判所が成年後見人の管理状況をチェックするため、財産が適正に管理されることが期待できます。

契約の代理

二つ目のメリットは、必要な契約を成年後見人が代理で結んでくれることです。

認知症の方が判断能力が十分でない場合、自ら適切な介護サービスや医療サービスを契約することは困難です。そんな時に、成年後見人が本人に代わって必要な契約を締結してくれます。

例えば、認知症の方を専門とするグループホームへの入居契約や、認知症治療専門医の診療契約などを、成年後見人が代理で結んでくれるのは大変助かります。

ただし、「本人に判断力がない」と判断されないと、成年後見人がつくことはないので、成年後見人を利用したい場合は専門医に相談しましょう。

不利益な契約の取り消し

三つ目のメリットは、不利益な契約を取り消せることです。

認知症の方が消費者被害に遭うケースが社会問題となっていますが、そんな場合に成年後見人が本人に不利益な契約を取り消す権限があるのは大きな安心材料です。

成年後見人は、詐欺的な契約や明らかに不利な契約を取り消すことができます。保佐人や補助人の場合は取り消せる契約に制限がありますが、成年後見人の場合は幅広く取り消しを行うことが可能です。

このように、成年後見制度には財産管理、契約代理、不利益契約の取消しの3つの大きなメリットがあります。判断能力の低下により支援が必要な方にとって、成年後見制度は頼もしい味方となる制度といえるでしょう。

 

まとめ

この記事は、認知症基本法と成年後見制度について解説しました。

認知症基本法は、認知症の人の尊厳を守り、適切な医療や介護、社会的支援を提供するための法律です。認知症施策を総合的に推進し、認知症に関する理解を深めることを目的としています。

一方、成年後見制度は、認知症などで判断能力が低下した人の権利を守る制度です。成年後見人が本人の財産管理や契約締結を支援します。メリットは財産管理、契約代理、不利益契約の取消しなど。

この2つの制度は、認知症の人が尊厳を持って安心な生活が送れる社会の実現につながる重要な役割を持っています。

この記事の監修者

あいりん司法書士事務所    梅澤 徹

資格:司法書士・行政書士・宅建取引士

横浜市内の相続専門司法書士事務所で修行したのち独立。不動産が絡む難しい相続手続きが得意。宅地建物取引士資格も保有し、不動産コンサルティングには定評あり。

現在はあいりん司法書士事務所を経営。相続専門5期目として相続業務を幅広く対応。

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