遺産分割の進め方と事例について

横浜 相続

遺産分割協議の進め方

遺産分割協議は相続人を確定する重要な協議です。遺産分割協議を御相続人の方々で行う場合は是非こちらで再確認をお願いします

まず、遺産分割協議をする前提として、①相続人の確定、②遺産の範囲の確定、③各相続人の意向確認が必要です。

その後の税申告の日程や遺産範囲の情報を共有し、協力して協議を進めましょう。皆さんの意見を吸い出し落としどころを見つけるのがポイントです。また、亡くなった方の意志をできるだけ反映させることが結果として納得いく協議になります。

1、相続人の日常の把握

まず、各相続人の日常を共有します。疎遠になったかたもいらっしゃるときにはここから始めることになります。残された配偶者がいらっしゃる場合、配偶者の生活が最も大事です。息子などの同居者がいないときは、一人暮らしができるか、誰かが一緒に配偶者とすむのか、配偶者に介護が必要になったらどうすべきか、全員で協議します。

また亡くなった方がビジネスをしている場合、その事業承継者は、可能な限り、事業用資産や債券を相続することをお勧めします。また、御相続人の中で生活困窮者がいる場合、一定の配慮をすべきです。

2、情報共有

相続人の日常の把握が終わったら、相続税申告までに至る工程表と、財産目録を作りましょう。遺産分割する基準としては法定相続がだいたいの基準ですが、相続人の生活状況は本協議の内容に加味することをお勧めします。

また、公平な相続のため、特別受益を得ている方や、寄与分のある方に対して、相続分を適切に配分します。少額の場合は省略しても結構です。

3、妥協点、落としどころを定める

 

遺産分割は、最小回数で協議完結すればよいですが、複数回にのぼることもあるかと思います。各相続人は争続のデメリットを十分に把握して相違点があれば冷静に検討することをお勧めします。

分割の方法としては、代償分割や換価分割などがあり、さまざまですので専門家のアドバイスを受けることが良いでしょう。

遺産分割協議の具体的な事例

ご主人であるAが亡くなって一か月後に奥様であるBが亡くなりました。Aの遺産分割をしていないケースで考えてみましょう

Aが亡くなり、Bがすぐに亡くなった時、いまだAの遺産分割が終了していない場合、Aの遺産分割はどのようにすればいいのでしょうか。Aの相続に関して、Aが亡くなった時にBはまだ生きていましたので、息子であるCと妹であるDとBが法定相続人でした。その場合、Bが2分の1、残りがCとDが4分の1で相続することになります。(一次相続)

その後、Bが亡くなった場合、母はAから相続した相続財産と別途B固有の財産がありますので、この時CとDが母Bの相続財産を2分の1ずつ相続します。(二次相続)なので母Bの遺産分割協議も必要になります。

一次相続と二次相続では相続人の範囲が違いますので、一次相続では母B、C、Dで遺産分割をし、二次相続ではCと妹Dが遺産分割を行います。なお遺産分割協議書にはどの程度具体的に記載しておくべきか、こちらで明らかにしておきます。土地であれば所在地番地目が必要であり、地積の記載がないものであっても法務局には受理されます。

建物であれば所在、家屋番号、種類、構造などの記載があり、登記記録との同一性が確認できるものであれば床面積の記載がないものであっても受理されます(登記研究568)

いわゆる1人遺産分割協議について

上記事例で、Aが亡くなり、Bが亡くなって、Cが単独の相続人だった場合はどうでしょうか?

C自身は父Aの直接の相続人であり、また、母Bの相続人でもあります。相続登記では遺産分割協議書を添付しますが、私一人のみによって作った遺産分割協議書を添付してC名義に直接相続登記ができるのでしょうか?

この点は東京地方裁判所平成26年の判決により明確に個別の遺産分割協議が必要であるとされました。どのように登記するかというと、①父A→亡母B、Cに対する法定相続による相続登記②亡母BからCに対する法定相続による相続登記の2件ということになります。

相続人全員で遺産分割協議をすべきか。

共同相続人の一部の者を除いて遺産分割協議をした場合、その遺産分割の効力はどうなるか。遺産分割協議はすべての相続人が集まって、その全員の同意を得ることで成立します。(民法907条)仮に相続人ABCのうちAを除いてまとめた遺産分割協議はすべて無効になります。

この場合、AだけではなくBCも再分割の協議や調停、審判をすることができます。同様に相続人ABCのうち、BCのみで成立した遺産分割協議によって作成された遺産分割協議書を添付してされた相続登記の申請は受理されません。また相続人ABCのほかに相続分をと越える特別受益を得たものがある場合には、その者を除いて遺産分割協議をすることができます。(登記研究114)

遺産分割協議の当事者の一人に胎児を含めることができるか

胎児を含めて遺産分割協議ができるのでしょうか。胎児については民法上、相続に関して言えば既に生まれたものみなすことになっています。(民法886条)ですが、「胎児の出生前については、相続関係が未確定状態となり、胎児のために遺産分割をすることはできないとされています(昭和29・6・15民甲)

親権者Aとその未成年の子Bによる遺産分割協議は利益相反行為になるのか

共同相続人間の利益相反の問題です。利益相反にあたる遺産分割協議をする際は、Bのために特別代理人を選任する必要があります。(民法826条)仮に協議の結果、親権者が相続財産を受けない場合でも、特別代理人の選任は必要です。ちなみに共同相続人である親権者は未成年者Bが特別受益者である旨の証明書を作ることができます。

不在者財産管理人は遺産分割協議に参加することができるのか

不在者財産管理人をもって遺産分割協議に参加するためには、不在者財産管理人の選任を受け、不在者財産管理人の権限外行為の許可を得、ほかの共同相続人に交じり遺産分割協意義にさんかすることができます。(昭和39年・8・7)

遺産分割協議書には個人の実印の押印と印鑑証明書の添付が必要か

遺産分割協議を添付して相続登記を申請する場合、協議書の記名押印者全員の印鑑証明書が必要になります。厳密にいえば申請人の個人の実印と印鑑証明書は不要ですが、登記実務では、慣習的にすべての相続人のものをつけています。

また相続人ABCで遺産分割協議の結果、甲不動産をA(3分の1)とB(3分の2)の共有となった場合、相続による所有権移転登記申請は、共有者の一人からすることができます。(登記研究553)この申請には当然にほかの共同相続人全員の印鑑証明書を添付することになります。

また共同相続人3人中、1人は特別受益証明書を添付し、ほかの2人で遺産分割協議をしたとする相続登記の申請は受理されるのでしょうか。この場合、特別受益証明書と遺産分割協議書を添付した相続登記は法務局に受理されます。なお、特別受益証明書と遺産分割協議書には印鑑証明書を添付しなければいけません。(昭和30年4月23日民甲742)

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