ある日突然、遺言書が見つかって問題が生じたという方からの質問が急増しています。
遺言書の問題はもう他人事ではなくなってきていると言えるでしょう。
今回は、一番問題に上がりやすい遺言書と相続問題について詳しく説明しますが、具体的には遺言書があるが相続人間で遺産分割協議ができるのか見ていきます。
遺言書があるからといって遺産分割協議書にサインをしてはいけません。この記事を読んでいただくと遺産分割協議に簡単にサインをしてはいけないことが理解できます。
遺言書の効果
遺産分割協議をすれば遺言書の内容は覆ることがあります
遺言書の効果とは、どのようなものでしょうか?
それは亡くなられた被相続人の方の最後の意思表示とも言えますので、相続人はこれに束縛されるという表現で表されることがあります。
では遺言書には相続内容が書かれているはずですが、その内容はのちの遺産分割協議で覆るのでしょうか?
つまり被相続人が作成した遺言書に相続人が納得いかない時、遺言書に従って分配せずに、ほかの相続人と話し合った内容で分割する事が可能かどうかです。
※一般的には、財産を所有していた遺言作成者の意思に従い尊重するのが好ましいです。
しかしその後、その財産を管理するのは相続人である事や、必ずしも遺言書の内容が相続人の考えに沿った内容ではない事も多い事などから、様々な問題が生じるケースが増えています。
結論をいうと遺言書がある場合でもいくつかのケースにおいて、遺産分割の協議をすることが可能です。
つまり遺言書があったとしても遺産分割協議により遺言書の内容が覆ってしまうのです。
また、遺言書があるから安心だとして遺産分割協議にサインをしようものなら当該遺言書は全くの無効になってしまうので是非ご注意ください。
遺産分割協議によりすべての遺言書の内容が覆るわけではない
さて、遺産分割協議を行ったから、という理由で遺言書の内容がすべて覆るのでしょうか。
結論としてはすべての遺言書の内容が覆るわけではありません。
1)遺言書に遺言執行者選任の記載がある場合
遺言書に、遺言執行者(相続に関わる手続きを単独で進める事が可能な人)が示されている場合は民法1012条1項によって以下の様に定められています。
遺言執行者が選任された場合は、遺言者執行者は相続財産についての管理処分権を有するとともに、遺言内容を実現する義務が生じます。
つまり、遺言執行者は遺言の内容が、しっかりと反映されるように行動する責任があります。そして、相続人が遺言執行者の遺言執行を妨げることはできません。
(この法律を読むと理論上、たとえ相続人全員の協議で合意に至ったとしても、遺言書とは、異なる遺産分割が不可能の様に解釈できます。)
ここが少しややこしい所ですが、以上のように誰もが望まない結論は遺言執行者の了解が得られた場合、遺言書とは異なる遺産の分割が可能だと解釈する見解が最も多いのが実情です。
遺言執行者が、わざわざ相続人全てが反するような分割をする可能性は極めて低いからです。
これは相続人に相続させる内容に限り有効です。
もし、第三者へ遺贈の場合、その者の同意が必要であり、たとえ相続人全てが遺産分割協議を行ってもそれは効力を持たないので注意が必要になってきます。
2)相続人の誰かが遺言内容に納得しなかった場合
もし相続人のひとりが、父の遺言書の内容に異議を申し立てた場合。 遺言は法的に、有効要件が定められています。
よって遺言書が公的な有効性について争って法律に則った遺産の分割を行う方法があります。
遺言そのものが、法的に無効である事が多いのも実情なのです。更に、兄弟姉妹を除いた相続人は遺留分内で相続権が確保されています。
例え、遺言内容に遺留分が確保されなくても限度内においては遺言に従わなくても良いケースもあります。
もし自筆の証書遺言であれば、家庭裁判所での手続きが必要ですし、公正な証書遺言でも法律に沿った遺留分問題などを検討する必要も生じます。
もうお分かりのように、ひとえに「遺言書の内容とは異なる遺産分割協議が可能かどうか?」という質問であっても、結果として、できるケースもあれば、できないケースも存在します。
まとめ
いかがだったでしょうか。遺言書問題については、親族間で感情衝突が生じて、大きく深刻な問題に発展する事も少なくありません。
円満解決のために、専門家を通す事が必要な場合も多々あります。
当事務所では、遺言書・相続手続きについてのご相談を積極的にお受けしております。
少しでも、遺言書問題に不安が生じた時はぜひ一度、当事務所へお問い合わせ下さい。あなたの問題に応じた詳しい業務内容や料金についても説明させていただきます。