リスクマネジメントと登記実務の概要
司法書士が登記を申請するまでに実務的にはなにを考えているのか、法律的になにをケア―すべきなのか、そのような観点からリスクマネジメントを主眼において解説します。
この記事を読んで下さることでリスクを最小化し、登記実務を理解できようになります。
日本の登記制度では登記に公信力があるように思われるぐらいの真実性を保つように司法書士が登記実務を築きあげてきました。
時代がかわり一般の方の権利意識が高まり、権利変動の実体を登記に反映し、登記の真実性を担保する意義がますます重要になりました。
リスクマネジメントの上ではこの実体にあった登記をすることが、登記の当事者の為には重要になるという認識をお持ちください。
さらに、既になされている登記やこれから行う登記に関して登記原因等を中心に、登記の真実性を高めるために重要になる登記原因証明情報について、登記識別情報をどのようにあつかえばいいのか、オンライン申請の利用など異なる観点から記事にします。
登記原因で気を付けること
リスクマネジメントのひとつとして登記原因に注目します。もっともスタンダートな登記原因である「売買」、この売買という登記原因で気を付けることは登記されているもしくは登記される人が真の所有者であるかということです。
「贈与」では、贈与税のことを考えずに贈与することや、親から子の一部に贈与した結果、ほかの子がクレームを起こすなど争いのタネになりがちです。
夫婦が離婚するに際し財産を譲るのが「財産分与」です。「贈与」とは異なり財産をあげる側に課税される点が特徴で、この事実を知らないで財産分与をした結果、課税されると思わなかった事例も多いです。
「譲渡担保」はどちらかというと担保権設定に似た概念です。つまり金銭を借りたときに担保として不動産を差し出すときに行います。
また、本来は借金を返す代わりに不動産で返すという場合には「代物弁済」を使います。
登記原因証明情報の作成について
登記原因証明情報はどのようなものを提出すべきか問題になります。法律的には「登記原因となる事実又は法律行為及びこれに基づき権利変動が生じたことを内容とする情報ということが定められているだけです。
登記原因とは、「登記の原因となる事実又は法律行為」ですので、登記原因証明情報は物権変動の原因行為とこれに基づく物権変動という2つの要素から構成するものです。
所有権移転実務では売買契約書などは法務局に提出しないで、登記原因証明情報を提出することがほとんどです。登記原因証明情報はひとつの書面である必要はなく、複数の書面を合わせて全体として登記原因を証明するもので結構です。
登記識別情報の扱いについて
登記識別情報は不動産登記実務のなかでは最も重要な書類である。登記識別情報は従来の登記済証の代わりに不動産登記法独自の本人確認情報の一つとして導入されたものです。
不動産登記法はこれをもっていれば本人に間違いないだろうと考えます。