この記事を要約すると
- 兄弟が親のお金を使い込んだ疑いがあるときは、感情的に問い詰める前に、通帳・取引履歴・領収書・介護記録などの客観資料を集めます。
- 親の生前は成年後見制度や任意の財産管理、親の死後は遺産分割協議・調停・不当利得返還請求など、時期によって使う手段が変わります。
- 使途不明金を相続で問題にするには、「いつ・誰が・いくら・何に使ったか」を証拠で説明できる形に整理することが重要です。
この記事をおすすめしたい方
- 同居している兄弟が親の預金を管理しており、残高や使途を開示してもらえない方
- 親のお金 使い込み 相続、兄弟 使途不明金というキーワードで記事をお探しの方
- 遺産分割協議の前に、通帳履歴や介護費用の支出をどう確認すべきか知りたい方
目次
兄弟による親のお金の使い込みは、まず「時期」で対応を分ける
親のお金を兄弟が使い込んでいるかもしれないという相談では、最初に「親が存命中か」「すでに相続が開始しているか」を分けて考えます。親が存命中で判断能力が残っているなら、親本人の意思確認と財産管理の見直しが中心です。親の判断能力が低下している場合は、家庭裁判所を通じた成年後見制度の利用を検討します。
一方、親が亡くなった後に預金の減少が判明した場合は、遺産分割協議の中で使途不明金を確認し、必要に応じて返還請求や調停を検討します。民法上は、法律上の原因なく利益を受けた場合の不当利得返還請求(民法703条)や、故意・過失により損害を与えた場合の不法行為責任(民法709条)が問題になります。条文の確認にはe-Gov法令検索の民法が参考になります。
使い込みを疑ったときに確認すべき資料
「何となく残高が少ない」という状態では、相続人間の話し合いも法的手続も進みにくくなります。まずは次の資料を時系列で整理します。
| 確認する資料 | 見るポイント | 注意点 |
|---|---|---|
| 預貯金通帳・取引履歴 | 高額出金、連続したATM出金、振込先 | 金融機関に相続手続として履歴開示を依頼する |
| 介護費・医療費の領収書 | 親のための支出か、私的流用か | 介護施設・病院の請求書と照合する |
| 親の生活状況 | 本人が支出を判断できたか | 診断書、要介護認定、日記、メールも資料になる |
| 兄弟とのやり取り | 財産管理を誰が任されていたか | LINEやメールは削除せず保存する |
重要なのは、出金があった事実だけでなく、その出金が親本人のために使われたのか、兄弟個人の利益になったのかを分けることです。介護費、生活費、家の修繕費など正当な支出もあるため、単に「出金が多い」だけでは返還請求の根拠として弱くなります。
親が存命中なら成年後見制度も検討する
親の判断能力が低下し、特定の兄弟だけが通帳やキャッシュカードを管理している場合は、成年後見制度の利用を検討します。成年後見人等が選任されると、本人の財産管理や身上保護を本人の利益のために行います。制度の概要は法務省の成年後見制度・成年後見登記制度Q&Aで確認できます。
ただし、成年後見制度は「兄弟を罰する制度」ではありません。目的は親本人の財産を守ることです。親の財産管理に不透明な点があるなら、今後の出金を止める、領収書を残す、定期的に収支報告をするなど、将来の相続争いを減らす仕組みとして使うのが現実的です。
相続開始後は遺産分割協議で使途不明金を整理する
親が亡くなった後は、相続人全員で遺産分割協議を行います。使途不明金がある場合、まずは兄弟に取引履歴の説明を求めます。説明がつかない出金については、遺産に戻す前提で協議する、またはその兄弟が取得する相続分から調整するなどの解決が考えられます。
話し合いがまとまらないときは、家庭裁判所の遺産分割調停を利用します。裁判所は、遺産分割について相続人間で話し合いがつかない場合に調停又は審判の手続を利用できると案内しています。具体的な手続は裁判所の遺産分割調停の案内を確認してください。
なお、使い込み分が「遺産そのもの」ではなく、相続開始前に失われた財産である場合、遺産分割調停だけで一挙に解決できないことがあります。その場合は、不当利得返還請求や不法行為に基づく損害賠償請求を別途検討します。
兄弟に返還請求できる可能性があるケース
返還請求を検討しやすいのは、親の判断能力が低下していた時期に、親の生活費や医療費と説明できない高額出金が繰り返されているケースです。例えば、親が施設入所中で現金をほとんど使わないのにATM出金が続いていた、兄弟名義の口座へ不自然な振込があった、親の通帳を管理していた兄弟が説明を拒む、といった事情です。
反対に、親本人が元気な時期に自分の意思で贈与していた場合は、単純な使い込みではなく、生前贈与や特別受益の問題として整理することがあります。相続では事実関係の分類を誤ると交渉が長期化するため、証拠を見ながら「使い込み」「贈与」「生活費」「管理費用」を分けていきます。
やってはいけない対応
- 証拠がない段階で兄弟を強く非難し、通帳や資料を隠される状況を作る
- 遺産分割協議書に署名押印した後で、使途不明金を初めて問題にする
- 親の口座から対抗的に引き出す
- 相続税申告や不動産の名義変更だけを急ぎ、預金履歴の確認を後回しにする
相続手続では、相続人全員の実印と印鑑証明書が必要になる場面が多くあります。納得できないまま遺産分割協議書に署名押印すると、後から争うハードルが上がります。疑問がある場合は、先に資料開示と説明を求めましょう。
専門家に相談すべきタイミング
取引履歴が数年分に及ぶ、親の判断能力低下が争点になる、相手方が説明を拒む、すでに調停や訴訟を検討している。このような場合は、早めに司法書士・弁護士などへ相談してください。戸籍収集、不動産の相続登記、遺産分割協議書の作成と、使途不明金の整理は並行して進むことが多いです。相続登記が関係する場合は、相続登記の義務化について法務省の相続登記義務化の案内も確認しておくとよいでしょう。
よくある質問
兄弟が親の通帳を見せてくれない場合、どうすればよいですか?
親が存命中で判断能力があるなら、まず親本人から説明を求めます。親が亡くなった後であれば、相続人として金融機関に取引履歴の開示を依頼できる場合があります。戸籍など相続人であることを示す資料が必要です。
親の生活費として使ったと言われたら返還請求は難しいですか?
生活費、医療費、介護費として合理的な支出であれば返還請求は難しくなります。ただし、領収書や請求書と照合できない高額出金が続く場合は、説明を求める余地があります。
遺産分割協議書に署名した後でも使い込みを請求できますか?
事情によります。署名前に分かっていた事実か、協議書で清算済みと扱われているか、相手方が事実を隠していたかで結論が変わります。署名前に取引履歴を確認することが重要です。
使い込みは特別受益になりますか?
親が贈与する意思で渡した財産なら特別受益の問題になります。一方、親の意思に反して無断で引き出した場合は、不当利得や不法行為として返還請求を検討します。
家庭裁判所の調停で使途不明金も解決できますか?
遺産分割調停の中で話し合うことはありますが、法的性質によっては別途の請求が必要になることがあります。まずは証拠を整理し、遺産分割の問題か返還請求の問題かを切り分けます。

