相続土地を国に譲渡できる国庫帰属制度の申請完全ガイド

国庫帰属制度

この記事を要約すると

  • 相続土地国庫帰属制度は令和5年4月開始で申請が急増中(累計2000件超)
  • 審査料14,000円+負担金20万円程度で更地・境界明確な土地が対象
  • 却下される場合は相続放棄・売却・寄付の3つの代替手段を検討する

令和5年4月に始まった相続土地国庫帰属制度が、最近になってこの制度の利用が急増しており、2025年9月末時点で累計申請件数が2000件を超え、1年前の2.3倍に達したことはご存知でしょうか。

売却や賃貸が困難な不動産を現世代で処分し、子や孫に管理負担を残したくないという相続人の意向が背景にあります。

参考:土地の国引き取り、申請1年で2.3倍 2000件超え – 日本経済新聞

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この記事はこんな方におすすめ

  • 相続した土地を手放したいが買い手が見つからない
  • 管理が難しい山林や農地を相続してしまった方
  • 相続土地国庫帰属制度の申請方法と費用を知りたい方

この記事では、相続土地国庫帰属制度の申請条件、手続きの流れ必要な費用、そして却下されるケースと代替手段まで、実務的な視点から徹底解説します。

読み終える頃には、あなたの土地が国庫帰属の対象になるか判断でき、具体的な手続きを開始できる状態になります。

相続土地国庫帰属制度とは?国に土地を譲渡できる3つの条件

令和5年4月スタート!不要な土地を国に引き渡せる新制度

相続土地国庫帰属制度は、令和5年4月27日に施行された新しい制度で、相続や遺贈※によって取得した土地を国に引き渡すことができる仕組みです。
相続登記※の義務化と同時にスタートしたこの制度により、管理が困難な土地を手放せるようになりました。

※遺贈:遺言書によって財産を特定の人に贈ること
※相続登記:不動産の名義を亡くなった方から相続人に変更する手続き

日本経済新聞の報道によれば、2025年9月末時点で累計申請件数が2000件を超え、1年前と比べて2.3倍に達しています。

売却や賃貸が困難な実家の土地や山林を、現世代で処分して次世代に負担を残したくないという相続人が増えているのです。

所有者不明土地の発生を防ぐため、相続等土地国庫帰属法(令和3年法律第25号)という法律に基づいて運用されています。

法務局が申請を受け付け、審査を経て承認された土地は国の所有となります。
ただし、誰でも申請できるわけではなく、厳格な要件が定められています。

参考:相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律について – 法務省

申請できる人は相続人のみ!生前の譲渡はできない理由

国庫帰属制度を申請できるのは、相続または遺贈によって土地を取得した人に限られます(※法定相続人以外への遺贈は対象外)。
生前に購入した土地や、贈与で取得した土地は対象外です。

売却できない土地を持っていて困っている方も多いと思いますが、この制度は相続によって意図せず土地を取得してしまった人を救済するための仕組みなのです。

申請者は土地の所有権を有していることが必要で、共有地の場合は共有者全員で申請しなければなりません。
一部の共有者だけが申請することはできません。

また、全員の申請(同意)が必要ですが、手続きの代表者を一人立てることは可能です

土地を相続してから何年経過していても申請できます。相続登記が完了していれば、相続後すぐでも、何十年後でも申請は可能です。
ただし、相続登記が完了していない場合は、まず相続登記を行う必要があります。

2024年4月から相続登記は義務化されており、相続を知った日から3年以内に登記しないと10万円以下の過料が科される可能性があります。

参考:相続登記の申請の義務化 – 法務省

承認される土地の3つの要件と却下される7つのケース

国庫帰属が承認されるには、3つの基本要件を満たす必要があります。

第一に、建物や工作物がない更地※であること。
第二に、土地の境界※が明確争いがないこと。
第三に、管理や処分に過分な費用や労力がかからない土地であることです。

※更地:建物や構造物が何もない土地
※境界:隣の土地との境目のライン

却下される7つのケースは以下のとおりです。

  1. 建物や構造物がある土地
  2. 担保権※や使用収益権が設定されている土地
  3. 他人の利用が予定されている土地
  4. 土壌汚染※がある土地
  5. 境界が不明確な土地
  6. 崖地※で管理に過分な費用がかかる土地
  7. 管理や処分に過分な費用や労力がかかる土地

※担保権:借金の代わりに不動産を差し押さえる権利
※土壌汚染:土の中に有害物質が含まれている状態
※崖地:急な傾斜がある危険な土地

特に注意が必要なのは「管理や処分に過分な費用がかかる」という要件です。

たとえば、樹木が密集している山林や、廃棄物が大量に埋まっている土地などは、国が引き取った後の管理コストが高いため却下される可能性が高くなります。

FAQ

Q. 相続土地国庫帰属制度とは?
A. 相続した不要な土地を国に引き渡せる令和5年4月開始の制度です。

Q. 申請できる人は?
A. 相続または遺贈で土地を取得した人のみで生前購入の土地は対象外です。

Q. 承認される土地の条件は?
A. 更地で境界明確、管理に過分な費用がかからない土地が対象です。

 

 

国庫帰属の申請手続きと費用|審査料14,000円+負担金20万円~

法務局への申請から承認まで約8~10ヶ月の流れ

申請手続きは、土地の所在地を管轄する法務局で行います。
まず事前相談で土地が制度の対象になるか確認することをおすすめします。

法務局では制度の説明や必要書類のアドバイスを受けられます。

申請書類には、申請書、土地の位置や形状を示す図面、境界を明らかにする書類、相続や遺贈により取得したことを証明する書類などが必要です。
土地の現況を示す写真や、隣地との境界確認書があると審査がスムーズに進みます。

申請から承認までの期間は、通常8~10ヶ月程度かかります。
法務局が現地調査を行い、土地の状態や周辺環境を確認します。

審査の結果、承認されれば負担金の納付通知が届き、納付後に所有権が国に移転します。
不承認の場合は理由が通知されます。

審査料14,000円は却下されても返金なし!費用の内訳

国庫帰属制度の利用には、審査料負担金の2つの費用がかかります。
審査料は土地1筆※あたり14,000円で、申請時に納付します。この審査料は審査を受けるための手数料であり、申請が却下された場合でも返金されません。

却下されても返金なしと聞くと不安に感じるかもしれませんが、事前に法務局で相談することでリスクを減らせます。

※筆:土地の登記上の単位(1つの土地を1筆と数える)

複数の土地を申請する場合、審査料は筆数分必要です。
たとえば、3筆の土地を申請する場合は14,000円×3筆=42,000円の審査料がかかります。

審査料は収入印紙で納付するため、事前に郵便局や法務局で購入しておきましょう。

審査料以外に、申請書類の作成費用や測量費用が発生する場合があります。
境界が不明確な土地では測量が必要となり、数十万円の費用がかかることもあります。

司法書士に申請手続きを依頼する場合は、別途報酬が必要です。

負担金は面積で変動!宅地は面積×負担金単価で計算

負担金は、承認後に国が土地を管理するための費用として納付するもので、土地の種類や面積によって金額が変わります。
あなたの土地の負担金はいくらになるでしょうか。

宅地の場合、面積に応じて算定され、標準的な宅地では20万円程度からとなっています。

田や畑などの農地は、面積に関わらず一律の負担金が設定されているケースが多く、約20万円程度です。
山林の場合も同様に、一定の金額が設定されています。ただし、森林法に基づく保安林などは負担金が異なる場合があります。

負担金は承認通知を受けてから30日以内に納付する必要があります。
納付が確認されると所有権移転の登記が行われ、正式に土地が国の所有となります。

負担金を納付しなかった場合、承認は取り消されてしまいますので注意が必要です。

参考:負担金の算定 – 法務省

司法書士からのアドバイス
国庫帰属制度の申請は、要件確認や書類準備が複雑です。
事前相談で承認の可能性を確認し、申請が難しい場合は代替手段も検討する必要があります。まずは無料相談で専門家のアドバイスを受けることをおすすめします。

FAQ

Q. 審査料はいくら?
A. 土地1筆あたり14,000円で却下されても返金されません。

Q. 審査期間はどのくらい?
A. 申請から承認まで通常8~10ヶ月程度かかります。

Q. 負担金はいくら?
A. 土地の種類や面積で変動し、標準的な宅地で20万円程度からです。

国庫帰属が却下される7つの理由と代替手段3選

建物・工作物がある土地は100%却下!更地にする費用は?

国庫帰属制度で最も多い却下理由が、建物や工作物が残っている土地です。
古い家屋、物置、倉庫、ブロック塀、コンクリート基礎などがある場合、申請前に撤去して更地にする必要があります。
建物が残っている状態では100%却下されます

建物の解体費用は、木造住宅で1坪あたり3万円~5万円程度が相場です。
30坪の家屋なら90万円~150万円かかります。
これに廃棄物処分費、整地費用を加えると、総額で150万円~200万円程度の費用を見込む必要があります。

ブロック塀や門扉などの工作物も撤去対象です。地中に埋まっている浄化槽※や配管なども除去しなければなりません。
更地にする費用が高額になる場合は、国庫帰属ではなく別の方法を検討したほうが良いケースもあります。

※浄化槽:生活排水を処理する設備

境界が不明確・崖地・汚染土地は審査で不承認になる

境界が不明確な土地は審査で不承認となります。
隣地との境界杭が失われている、境界線の位置について隣地所有者と争いがある、といった場合は申請前に境界を確定させる必要があります。

境界確定には測量が必要で、費用は30万円~50万円程度かかります。

崖地の土地も却下される可能性が高いです。急傾斜地崩壊危険区域に指定されている土地や、土砂災害警戒区域内の土地は、管理に過分な費用がかかるため承認されません。
勾配が30度を超える崖がある土地は特に注意が必要です。

土壌汚染がある土地や、産業廃棄物が埋まっている土地も不承認です。
過去に工場や事業所として使われていた土地では、土壌汚染調査が求められる場合があります。
調査の結果、基準値を超える汚染物質が検出されれば、浄化費用が数百万円かかることもあります。

却下されたら?相続放棄・売却・寄付の3つの選択肢

国庫帰属が却下された場合、どうすれば良いか本当に困りますよね。
代替手段として、第一に相続放棄があります。相続開始を知った日から3ヶ月以内であれば、家庭裁判所に申述することで土地を含む全ての相続財産を放棄できます。
ただし、プラスの財産も含めて全て放棄することになるため、慎重な判断が必要です。

参考:相続の承認又は放棄の期間の伸長 – 裁判所

第二の選択肢は売却です。
不動産会社に相談して買い手を探す方法や、隣地所有者に売却する方法があります。

買い手が見つからない土地でも、価格を大幅に下げれば売却できる可能性があります。
また、空き家バンクや自治体の土地取引制度を活用する方法もあります。

第三の選択肢は寄付です。
自治体や公共団体、NPO法人などに寄付できる場合があります。

ただし、自治体は公共の用途がない土地の寄付は受け付けないことが多いです。
隣地所有者への贈与や、地域の自治会への寄付なども検討できます。

選択肢 メリット デメリット 適用条件
相続放棄 固定資産税・管理責任から完全に解放 プラスの財産も全て放棄、相続開始から3ヶ月以内 相続開始を知った日から3ヶ月以内の申述が必要
売却 現金化できる、自由度が高い 買い手が見つからない可能性、時間がかかる 不動産会社への相談、隣地所有者への打診
寄付 管理責任から解放、社会貢献 自治体は公共用途がない土地は受け付けない 自治体、公共団体、NPO法人への相談
司法書士からのアドバイス
国庫帰属が却下された場合、相続放棄は3ヶ月の期限があるため早急な判断が必要です。
売却や寄付も含め、個別の状況に応じた最適な解決策を見つけるため、まずは無料相談で専門家に相談することをおすすめします。

申請前に決断!「相続放棄」と「国庫帰属」どっちを選ぶ? 「とりあえず国庫帰属を申請してみて、ダメだったら相続放棄しよう」と考えていませんか?

実は、その順番では手遅れになる可能性があります。

なぜなら、相続放棄には「相続開始を知ってから3ヶ月以内」という厳しい期限があるからです。一方、国庫帰属の審査には約半年〜1年かかります。

つまり、審査結果(却下)が出た頃には、とっくに相続放棄の期限が過ぎてしまっているのです。

そのため、申請を出す前の段階で、以下のフローチャートに沿って方針を決める必要があります。

1.相続発生から「3ヶ月以内」の方

まずは「相続放棄」が可能かどうかを最優先で検討してください。

  • 借金がある、または土地以外にめぼしい遺産がない場合: 迷わず家庭裁判所で「相続放棄」の手続きを検討しましょう。
    これが最も確実にお金と手間をかけずに土地を手放す方法です。
  • 預貯金などの遺産は引き継ぎたい場合: 相続放棄はできません(全ての財産を放棄することになるため)。
    この場合は、遺産を相続した上で、「国庫帰属制度」の利用へ進みます。

2.相続発生から「3ヶ月以上」経過している方(または過去に相続した方)

残念ながら、原則として相続放棄はもうできません
不要な土地を手放すには、以下の順番で検討を進めます。

国庫帰属制度の要件チェック:更地にする費用や審査手数料を払っても手放したい場合は申請へ進みます。


売却・贈与(国庫帰属が難しい場合) 「建物の解体費用が高すぎる」「境界争いがある」などで国庫帰属が使えない場合は、近隣住民への格安での売却や、無償譲渡(贈与)を模索します。

寄付自治体や法人への寄付を打診します(ただし、ハードルは非常に高いのが現実です)。

万が一、国庫帰属の審査で「不承認(却下)」となってしまった場合、その時点で相続放棄に戻ることはできません。
その場合は、解体費用を貯めて再申請するか、あるいは「空き家バンク」「民間の土地引き取りサービス(有料)」などを活用して、粘り強く処分の道を探すことになります。

FAQ

Q. 却下される理由は?
A. 建物がある、境界不明確、崖地、汚染土地などが主な理由です。

Q. 相続放棄の期限は?
A. 相続開始を知った日から3ヶ月以内に家庭裁判所へ申述が必要です。

Q. 却下後の選択肢は? 
A. 相続放棄、売却、自治体や公共団体への寄付の3つがあります。

 

 

まとめ

相続土地国庫帰属制度は、相続した不要な土地を国に引き渡せる画期的な仕組みです。
令和5年4月の制度開始以降、利用者は急増しており、2025年9月末時点で累計2000件を超える申請がありました。

ただし、建物がない更地で、境界が明確で、管理に過分な費用がかからない土地という厳格な要件があります。

申請には審査料14,000円と、承認後の負担金20万円程度が必要です。審査期間は8~10ヶ月程度かかり、審査料は却下されても返金されません。
建物や工作物がある土地、境界不明確な土地、崖地、汚染土地は却下される可能性が高いため、事前に法務局で相談することをおすすめします。

国庫帰属が難しい場合は、相続放棄、売却、寄付といった代替手段も検討しましょう。
土地の処分方法に迷ったら、司法書士や不動産の専門家に相談することで、あなたの状況に最適な解決策が見つかります。

相続土地の問題は複雑で、個別の事情によって最適な対応が異なります
まずは無料相談を利用して、専門家のアドバイスを受けてみてください。
相続登記から国庫帰属申請、代替手段の検討まで、トータルでサポートいたします。

この記事の監修者

“横浜市内の相続代行の相談を受ける司法書士”

あいりん司法書士行政書士事務所 梅澤 徹

資格:司法書士・行政書士・宅建取引士

横浜市内の相続専門司法書士事務所で修行したのち独立。不動産が絡む難しい相続手続きが得意。宅地建物取引士資格も保有し、不動産コンサルティングには定評あり。

現在はあいりん司法書士事務所を経営。相続専門7期目として相続業務を幅広く対応。

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