この記事を要約すると
- 正しい遺言書を作るには、民法の方式・財産の特定・遺言執行者の指定が重要です。
- 自筆証書遺言は手軽ですが、日付・署名・押印・財産目録の作り方に注意が必要です。
- 迷ったら公正証書遺言や法務局の保管制度を検討すると、家族の手続きが進めやすくなります。
この記事をおすすめしたい方
- 自分で遺言書を書こうとしているが、方式ミスが不安な方
- 遺言書 書き方、自筆証書遺言 ルールというキーワードで記事をお探しの方
- 50代から家族に迷惑をかけない相続準備を始めたい方
目次
正しい遺言書の書き方で最初に見るべきこと
遺言書は、思いを伝えるだけの手紙ではありません。相続が起きた後に、金融機関や法務局、相続人が手続きで使う法律文書です。だからこそ、読みやすさより先に「法律で決められた方式」を守る必要があります。
e-Gov法令検索の民法にある民法第960条は、遺言は法律で定められた方式に従わなければ効力がないと定めています。自筆証書遺言は民法第968条、公正証書遺言は民法第969条が基本です。
自筆証書遺言の基本ルール
自筆証書遺言は、遺言者本人が本文、日付、氏名を自書し、押印して作る遺言です。財産目録については自書でない方法も認められますが、その場合もページごとに署名押印が必要です。
自筆証書遺言では、日付・署名・押印の抜けが大きなトラブルになります。「令和○年○月吉日」のように日付が特定できない書き方は避け、年月日をはっきり書きましょう。
財産はできるだけ具体的に書く
不動産は、住所ではなく登記事項証明書の所在・地番・家屋番号で特定します。預貯金は金融機関名、支店名、口座種別、口座番号を書くと手続きが進めやすくなります。株式や投資信託も、証券会社名や銘柄を確認しましょう。
遺言書の文言があいまいな場合、最高裁昭和58年3月18日判決のように、遺言書全体や事情から遺言者の真意を探る考え方が問題になります。ただ、手続きでは争いを避けるため、最初から第三者が読んで分かる書き方にするのが一番です。

遺言執行者を指定しておく
遺言執行者とは、遺言の内容を実現する人です。預金解約、不動産手続き、受遺者への連絡などを進める役割があります。遺言書に遺言執行者を指定しておくと、相続開始後の手続きが進みやすくなります。
遺言執行者を決めておくと、残された家族が「誰が手続きするのか」で迷いにくくなります。信頼できる親族や専門家を指定することが多いです。
付言事項は家族への説明になる
付言事項とは、法的な効力そのものではなく、遺言者の気持ちや理由を書く部分です。「長男に自宅を相続させる理由」「長女に預金を多めに残す理由」などを書いておくと、残された家族が納得しやすくなることがあります。
ただし、付言事項だけで財産の承継先を決めるのは危険です。財産を誰に渡すかは本文で明確に書き、付言事項は補足説明として使いましょう。
法務局の保管制度も検討する
自筆証書遺言は自宅で保管すると、紛失、改ざん、発見されないリスクがあります。そこで、法務省の自筆証書遺言書保管制度を利用する方法があります。保管制度を使うと、遺言書の保管が安定し、相続開始後の家庭裁判所の検認も不要になります。反対に、自宅保管の自筆証書遺言が見つかった場合は、裁判所の遺言書の検認手続案内に沿って家庭裁判所での検認を検討します。
自筆証書遺言を作るなら、保管場所まで考えて初めて実務で使いやすい遺言書になります。
自筆証書遺言を書く前に整理しておきたいこと
遺言書を書き始める前に、いきなり本文を書かないことが大切です。まず、預貯金、不動産、株式、生命保険、借入金を紙に書き出し、「誰に何を渡したいのか」を一覧にしてください。財産を整理しないまま書くと、後から見つかった口座や不動産が遺言書から漏れてしまい、結局その部分だけ遺産分割協議が必要になることがあります。
不動産は、住所ではなく登記事項証明書に近い表現で特定した方が安全です。預貯金も「〇〇銀行〇〇支店 普通預金 口座番号〇〇」のように、相続手続きをする人が迷わない書き方を意識します。細かく書くことは面倒に見えますが、残された家族の負担をかなり減らします。
専門家に確認してもらった方がよいケース
自筆証書遺言は自分で作れますが、すべての家庭で自力作成が向いているわけではありません。再婚している、前婚の子がいる、子どものいない夫婦で兄弟姉妹が相続人になる、特定の相続人に多めに渡したい、不動産が複数ある、といった場合は内容の設計が難しくなります。
このようなケースでは、形式だけではなく、遺留分、相続登記、預金解約、遺言執行者の実務まで見ておく必要があります。遺言書は「書くこと」よりも、死亡後にきちんと使える状態にしておくことが大切です。
まとめ
正しい遺言書を作るには、民法第960条、第968条、第969条を踏まえ、方式を守ることが出発点です。そのうえで、財産を具体的に特定し、遺言執行者や付言事項も検討します。
自筆証書遺言は手軽ですが、方式ミスや保管リスクがあります。内容が複雑な場合や不動産がある場合は、公正証書遺言や専門家への相談も検討しましょう。
遺言書の書き方に関するよくある質問
- Q. 自筆証書遺言は全部手書きが必要ですか?
- A. 本文、日付、氏名は自書が必要です。財産目録は自書でない方法も認められますが、各ページへの署名押印が必要です。
- Q. 日付は「吉日」でもよいですか?
- A. 避けるべきです。日付が特定できないと方式違反が問題になります。年月日を明確に書きましょう。
- Q. 遺言執行者は必ず必要ですか?
- A. 必ずではありませんが、指定しておくと相続開始後の手続きが進めやすくなります。
- Q. 付言事項には何を書けばよいですか?
- A. 財産の分け方の理由や家族への思いを書きます。ただし、財産の承継先は本文で明確に書く必要があります。
- Q. 自筆証書遺言書保管制度は使った方がよいですか?
- A. 紛失や改ざんを防ぎたい場合に有効です。法務省の制度を確認し、必要に応じて利用しましょう。

