遺言書はいつ作る?50代から始める相続対策と公正証書遺言の選び方

生前贈与と相続対策を家族で確認するイメージ

この記事を要約すると

  • 遺言書は「高齢になってから」ではなく、家族構成や財産に変化があった時に作るものです。
  • 50代でも、子どもがいない、再婚、事業、不動産、親の介護などがある場合は早めの検討が有効です。
  • 自筆証書遺言・公正証書遺言・法務局保管制度の違いを知ると、失敗しにくくなります。

この記事をおすすめしたい方

  • 50代で遺言書をいつ作るべきか迷っている方
  • 遺言書 作成 タイミング、遺言書 種類というキーワードで記事をお探しの方
  • 子どもがいない・再婚・不動産ありなど、相続で家族に迷いを残したくない方

遺言書を作るベストタイミングはいつか

遺言書というと、80代や90代になってから作るものと思われがちです。しかし実務では、「もっと早く作っておけばよかった」という相談が少なくありません。遺言書は亡くなる直前の書類ではなく、家族に迷いを残さないための準備です。

特に50代は、親の相続を経験し始めたり、自分の子どもが成人したり、住宅ローンや不動産の整理を考えたりする時期です。まだ元気だからこそ、落ち着いて判断できます。遺言書は判断能力があるうちにしか作れないため、早めに考えることが大切です。

遺言に関する基本ルールは、e-Gov法令検索の民法で確認できます。民法第960条は、遺言は法律で定められた方式に従わなければ効力がないと定めています。つまり「紙に希望を書けば何でも有効」ではありません。

条文と判例で見る遺言書の基本

遺言書でまず押さえたいのは、民法第960条、民法第961条、民法第968条、民法第969条です。民法第961条は満15歳に達した人は遺言ができると定め、自筆証書遺言は民法第968条、公正証書遺言は民法第969条に方式が定められています。

また、遺言書の文言が争われた場合、最高裁昭和58年3月18日判決のように、遺言書全体の記載や事情から遺言者の真意を探る考え方が問題になります。つまり、遺言書は「なんとなく伝わる」ではなく、第三者が読んでも意味が分かる書き方にすることが大切です。

50代で遺言書を考えたいケース

ケース 遺言書を考えたい理由
子どもがいない夫婦 配偶者と兄弟姉妹が相続人になることがある
再婚している 前婚の子と現在の配偶者の調整が必要
自宅や収益不動産がある 誰が不動産を取得するか決めておくと揉めにくい
事業や会社株式がある 承継先を決めないと経営が止まることがある
相続人同士の仲がよくない 遺産分割協議がまとまらないリスクがある

遺言書がない場合、相続人全員で遺産分割協議をします。民法第907条は共同相続人が協議で遺産を分けられることを前提にしていますが、全員の合意が必要です。一人でも納得しなければ、手続きは止まります。

50代の夫婦が遺言書作成のタイミングを相談するイメージ
遺言書は高齢になってからではなく、家族構成や財産が変わった時点で検討すると安心です。

遺言書に書いて効力がある主な内容

遺言書には、法律上の効力がある内容と、気持ちを伝える内容があります。効力がある主な内容は、誰にどの財産を相続させるか、遺言執行者を誰にするか、子の認知、未成年後見人の指定などです。相続の実務で多いのは、財産の承継先と遺言執行者の指定です。

一方で、「兄弟仲良くしてほしい」「家を大切にしてほしい」という希望は、法律上強制できる内容ではありません。ただし、付言事項として気持ちを書くことはできます。家族が遺言内容を受け入れやすくなることもあるため、実務では大切な役割があります。

遺言書の種類と選び方

代表的な遺言書には、自筆証書遺言と公正証書遺言があります。民法第968条は自筆証書遺言の方式、民法第969条は公正証書遺言の方式を定めています。自筆証書遺言は自分で書けるため費用を抑えやすい一方、方式ミスや紛失のリスクがあります。公正証書遺言は公証人が関与するため、形式面の安心感が高く、原本も公証役場で保管されます。

また、自筆証書遺言については、法務局の保管制度を利用できます。制度の概要は法務省の自筆証書遺言書保管制度で案内されています。保管制度を使うと、遺言書の紛失や改ざんを防ぎやすく、相続開始後の家庭裁判所の検認も不要になります。

自筆証書遺言を自宅で保管する場合の封筒の書き方・封印方法と、法務局へ預ける場合の違いは、遺言書の封筒は必要?書き方・封印方法と法務局保管の違いで詳しく解説しています。

遺言書を作るときの注意点

遺言書で失敗しやすいのは、財産の特定があいまいなケースです。「横浜の自宅を長男へ」と書いただけでは、土地と建物、私道持分、マンションの敷地権などが漏れることがあります。不動産は登記事項証明書どおりに書くのが基本です。

また、遺留分にも注意が必要です。配偶者や子どもなどには、最低限の取り分として遺留分が認められることがあります。すべてを一人に渡す遺言を作ること自体は可能でも、あとで遺留分侵害額請求が起きる可能性があります。遺言書は「書けば終わり」ではなく、残された家族が手続きできる内容にすることが大切です。

一度作った遺言書は見直せる

遺言書は一度作ったら終わりではありません。財産が増減した、相続人が亡くなった、再婚した、孫が生まれた、不動産を売却した、家族関係が変わった。このような時は見直しのタイミングです。古い遺言書が残ったままだと、今の希望と合わない内容で手続きが進むことがあります。

50代で作った遺言書を、60代・70代で見直すことは自然です。むしろ早めに一度作っておくと、自分の財産や家族への考え方が整理されます。

まとめ

遺言書作成のベストタイミングは、「高齢になった時」ではなく、「家族や財産に変化があり、将来の分け方を考え始めた時」です。50代でも早すぎることはありません。

自筆証書遺言、公正証書遺言、法務局保管制度にはそれぞれ特徴があります。大切なのは、方式を守り、財産を特定し、家族が実際に手続きできる遺言書にすることです。

遺言書作成のよくある質問

Q. 遺言書は何歳から作れますか?
A. 民法第961条により、満15歳に達した人は遺言ができます。ただし実務では、財産や家族構成が具体的になった時点で検討することが多いです。
Q. 50代で遺言書を作るのは早いですか?
A. 早くありません。子どもがいない、再婚、不動産、事業、相続人同士の不仲がある場合は、50代でも作る意味があります。
Q. 民法第968条の自筆証書遺言と、民法第969条の公正証書遺言はどちらがよいですか?
A. 費用を抑えたいなら自筆証書遺言、形式面や保管の安心を重視するなら公正証書遺言が向いています。内容が複雑なら専門家に相談した方が安全です。
Q. 法務局の遺言書保管制度は使った方がよいですか?
A. 自筆証書遺言の紛失や改ざんを防ぎたい場合に有効です。保管制度を使うと相続開始後の検認も不要になります。
Q. 遺言書はあとから変更できますか?
A. 変更できます。家族構成や財産が変わったら、古い遺言書を見直すことが大切です。
司法書士・行政書士 梅澤徹

この記事の監修者

司法書士・行政書士 梅澤 徹(うめざわ とおる)

あいりん司法書士事務所 代表。神奈川県司法書士会(第2259号)・神奈川県行政書士会(第15090451号)所属。相続手続き3,000件超をサポート。プロフィールを見る 無料相談のご案内

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