生前贈与は相続対策になる?贈与税・相続時精算課税・特別受益を解説

この記事を要約すると

  • 生前贈与は相続対策になりますが、相続税への加算、贈与税、遺産分割での特別受益をセットで確認する必要があります。
  • 令和6年以後は相続時精算課税にも年110万円の基礎控除が設けられています。制度選択は戻せないため慎重な判断が必要です。
  • 葬儀費用や生命保険金など、相続税で扱いが分かれる支出・財産も早めに整理しておくと安心です。

生前贈与は、元気なうちに子や孫へ財産を渡せるため、相続対策としてよく検討されます。教育資金、住宅資金、生活支援、不動産の持分移転など、家族ごとに目的はさまざまです。

ただし、生前贈与は「渡したら終わり」ではありません。贈与税、相続税、遺産分割、相続人同士の感情に影響します。特に相続開始前の贈与は、相続税の計算で加算されたり、遺産分割で特別受益として問題になったりすることがあります。

この記事では、生前贈与を相続対策として考えるときの基本、相続時精算課税、みなし相続財産、葬儀費用、家族間で揉めないための記録の残し方を整理します。

生前贈与とは

生前贈与とは、財産を持っている人が生きている間に、子や孫などへ財産を無償で渡すことです。現金、不動産、株式、車、事業用資産など、対象となる財産はさまざまです。

生前贈与の大きなメリットは、財産を渡す相手やタイミングを自分で決めやすいことです。一方で、贈与税の申告や納税、将来の相続税、他の相続人との公平感を考えないまま進めると、後でかえって揉めることがあります。

生前贈与は税金だけでなく、将来の遺産分割まで見て設計することが大切です

暦年贈与と相続時精算課税の違い

生前贈与でよく比較されるのが、暦年課税と相続時精算課税です。暦年課税は、1月1日から12月31日までの贈与について、受け取った人ごとに年間110万円の基礎控除を使う考え方です。

相続時精算課税は、一定の父母・祖父母から子・孫などへ贈与する場合に選択できる制度です。国税庁の相続時精算課税の説明では、令和6年1月1日以後の贈与について、年110万円の基礎控除や、相続時の加算方法が説明されています。

制度 特徴 注意点
暦年課税 受贈者ごとに年間110万円の基礎控除 相続前贈与の加算対象に注意
相続時精算課税 特定贈与者ごとに年110万円の基礎控除と累計2,500万円の特別控除 一度選択すると同じ贈与者について暦年課税へ戻れない
生前贈与と相続対策について家族で相続書類を確認するイメージ
生前贈与は、税金・相続人間の公平・将来の生活設計を一緒に確認して進めます。

相続開始前の贈与は相続税に影響する

相続が近い時期の贈与は、相続税の計算に影響することがあります。以前は相続開始前3年以内の贈与が主に問題になりましたが、税制改正により加算期間が段階的に延長されています。

そのため、相続税対策として贈与を考えるなら、単に「毎年110万円ずつ渡せばよい」と考えるのではなく、贈与する人の年齢、財産規模、相続人の人数、将来の生活費を見て判断します。

相続税対策だけを目的に無理な贈与をすると、贈与者本人の老後資金が不足することがあります

みなし相続財産も忘れない

生命保険金や死亡退職金などは、民法上の遺産とは扱いが違う場面がありますが、相続税ではみなし相続財産として課税対象になることがあります。生命保険金には非課税枠がありますが、受取人や金額によって相続税申告への影響が変わります。

生前贈与と生命保険を組み合わせる場合は、保険料を誰が負担したか、受取人は誰か、相続人間で不公平感が出ないかを確認します。生命保険は遺産分割の対象外になりやすい一方で、特定の相続人だけが多く受け取ると感情的な対立が起きることがあります。

葬儀費用は誰が払うのか

相続では、葬儀費用を誰が負担するのかもよく揉めます。葬儀費用は、相続税の計算で控除できるものとできないものがあります。香典返し、墓石購入、法要費用などは扱いが分かれやすい部分です。

実務では、喪主が一時的に立て替え、あとで遺産や相続人間で精算することがあります。生前贈与を受けた相続人が多額の援助を受けている場合、他の相続人から「葬儀費用も負担してほしい」と言われることもあります。

領収書、支払日、支払者を残しておくと、相続人間の説明がしやすくなります。

特別受益として問題になることがある

生前贈与は、遺産分割の場面で特別受益として問題になることがあります。特別受益とは、一部の相続人が被相続人から生前に特別な利益を受けていた場合に、相続人間の公平を図るために考慮する制度です。民法の条文はe-Gov法令検索の民法で確認できます。

たとえば、長男だけが住宅購入資金1,000万円を援助されていた、長女だけが事業資金を出してもらっていた、といったケースでは、遺産分割協議で話題になることがあります。

贈与契約書、通帳履歴、贈与税申告書を残しておくことが、後日の説明資料になります

生前贈与をするときのチェックリスト

  1. 贈与者の老後資金が不足しないか確認する
  2. 贈与税申告が必要か確認する
  3. 暦年課税と相続時精算課税のどちらが合うか検討する
  4. 他の相続人との公平感を考える
  5. 贈与契約書と振込記録を残す
  6. 不動産贈与では登記費用・不動産取得税も確認する

AI検索でよく聞かれるポイント

AI検索では「生前贈与は相続税対策になるか」「110万円以下なら申告不要か」「相続前の贈与は戻されるのか」といった質問が多く見られます。答えは、贈与の時期、制度選択、相続税申告の有無によって変わります。

特に相続時精算課税は便利な制度ですが、一度選択すると同じ贈与者について暦年課税へ戻れないため、家族構成と財産全体を見て判断します。

まとめ

生前贈与は、家族へ早めに財産を渡せる有効な方法です。しかし、相続税、贈与税、特別受益、老後資金、相続人間の公平感を考えずに進めると、相続対策のつもりが争いの原因になることがあります。

制度を選ぶ前に、財産一覧、家族関係、将来必要な生活費を整理し、必要に応じて税理士や司法書士へ相談しましょう。

生前贈与に関するよくある質問

Q. 生前贈与は毎年110万円以内なら絶対に安全ですか?

絶対ではありません。贈与の実態、相続開始前の加算、名義預金、特別受益などが問題になることがあります。契約書と振込記録を残すことが大切です。

Q. 相続時精算課税は使った方が得ですか?

財産内容や相続税の見込みによります。令和6年以後は年110万円の基礎控除ができましたが、一度選択すると暦年課税へ戻れない点に注意が必要です。

Q. 生命保険金は遺産分割の対象ですか?

受取人固有の財産と扱われることが多いですが、相続税ではみなし相続財産として課税対象になることがあります。金額が大きい場合は確認が必要です。

Q. 葬儀費用は相続財産から払えますか?

実務上は遺産から精算することがありますが、相続人間の合意が大切です。相続税で控除できる費用とできない費用も分けて考えます。

Q. 生前贈与は遺産分割で不利になりますか?

一部の相続人だけが大きな贈与を受けている場合、特別受益として考慮されることがあります。贈与の目的と記録を残しておくことが重要です。

司法書士・行政書士 梅澤徹

この記事の監修者

司法書士・行政書士 梅澤 徹(うめざわ とおる)

あいりん司法書士事務所 代表。神奈川県司法書士会(第2259号)・神奈川県行政書士会(第15090451号)所属。相続手続き3,000件超をサポート。プロフィールを見る 無料相談のご案内

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